始まり
すみません、カオスになりそうです(ゴリラ
僕の名前は佐藤太郎。身長、体重、顔。何にしたってごくごく普通の『不老不死』だ。
……不老不死というところでもう普通ではないのだが、しかしここはあえて普通と言わせてもらおう。何せ、生まれてこのかた普通と言われたことがないのだから、別に「普通」の二文字くらいいいじゃんと思う次第だ。
さて、実のところをいうと、僕を知ってもらいたいのではないのだ。本当に知るべき存在というのは、いかにも異形で、スライムで、スライムに筋肉質な人の手足をつけたような者である。
それでは紹介しよう。僕の友人、権田スライムさんだ。
「うおおぉ……!! アダマンチウムの爪生えろおおおぉ……!!」
スライムさんは、スライムの顔をぷるぷるさせながら悶え苦しんでいた。
「どうしたんですかまったく……」
「太郎くん、俺ってミュータントじゃないん?」
「違いますよ。スライム星から来たスライムの(自称)異端児です」
「そうだったな……うおおおぉ!!」
そうは言いながらも、またスライムの顔をぷるぷるさせる。
「もう、カーテンも開けないで」と僕は言い、四畳半の窓にあるカーテンを開けると、日の光が差し込んで明るくなった。
「太郎くん、俺らスライム人にとって太陽は敵だ。それをなぜ……!!」
どうやらスライムさんは、太陽に当たると水分がなくなり、干からびて死んでしまうみたいなのだ。とは言うも、この間なんて一日中外にいたから、そのようではないらしい。もしくは嘘かもしれない。
「さっ、暇を潰しにいきましょうか」
「まぁ、そうだな。せっかく太郎くんが誘いに来てくれたんだ。行かねばなるまい」
「そうそう、リーゼントさんも待ってますし」
「番長もか、わかった。すぐ用意する」
「……ところで、その体ってどのような構造になっているんですかね?」
たずねると、スライムさんは「カレーが五十パーセント、ビーフジャーキーが五十パーセントだ」と言った。
「嘘ですよね?」
「嘘ではない、冷蔵庫の中を見てみろ。それしかないぞ」
腕を組んで頷くから気になる。台所の隣にある小さな冷蔵庫を覗いてみると、レトルトカレーとビーフジャーキーしかなかった。
「本当なんですね……」
「うむ、それだけで一年はもつ」
振り返ると、スライムさんは専用の茶色いロングコートを着るところだった。ロングコートって言っていいのかはわからないんだけど。
「行くぞ、太郎くん。で、どこに行くんだっけ?」
「河川敷しかないじゃないですか」
「まぁな、では行こうか」
「はい」
どたどたと大根足を進めると、スライムさんは玄関の扉を開けた。