72、マイホームパーティ
俺達はついに、マイホームを手に入れた。
そんな俺達のマイホームがあるキョテンの街から北にあるという、ウミキタ王国。
ゲームでは存在しなかった国なので、そこに何があるのか、どんな国なのかサッパリわからない。
「順を追って話そう。私はまず、マイホームの私の部屋に荷物を運ぶ為、城に向かったのだ」
エリシリアが語りだしたので、俺は椅子に座って聞く事にした。
「すると王子に話しかけられてな。あの美しい尻の男は元気かと」
「誰の事だ?」
「お前の事だよリクト」
うん、知ってた。
この国の王子様はどうも大層な尻好きみたいで、俺の尻を見て一目惚れしたらしい。最低だ。
「でだ。元気にやっていると告げると、そうかとつぶやいてどこかへ行ってしまったんだ」
それで終わりか? なんだか不気味だな。
「それから私は荷物をマイホームに運んでいたんだが、今度は城のメイドに、王様が呼んでいると声をかけられてな。王様に会いに行ったら、先ほど言った様に、この国の大使としてウミキタ王国に行ってほしいと言われたという訳だ」
「なんか、えらい唐突な話だな」
何の前ぶりも無しに、いきなり他の国へ行けと? しかも大使としてとか、どういう意図があるんだ?
「そこには王子も居てな。ウミキタ王国に行ったら、あの尻魔道士の尻の光を見せつけてきてほしい。と言われたんだ」
何考えてるんだよあの王子は……だいたい誰に対して見せつけるんだよ。
「ちなみに、拒否権とかは?」
「他に用事があるならそれが終わってからで構わないが、出来るだけ急ぐ様に言われたな」
それって、拒否って言わないじゃん。
「ウミキタ王国に行く事に関してだが、これには一応理由もあるんだ」
「そ、そうなのか?」
何の前ぶりもないも無いのかと思っていたが、そうではない様だった。
「帝国が近々攻めて来そうな事はお前も知っているだろう? 我が国としては帝国が攻めてくる前に、近隣の国や街と同盟もしくは停戦をしっかりと行いたいのだ。今回の遠征は、その為でもある」
ああなるほど。そういえば俺達、帝国にケンカ売られてたんだっけ。
色々あって完全に忘れてた。
「誰かが行かなければならなかったのだが、リクトが行けばついでにマイホームの移動先に登録も出来るだろう? それに我々は勇者とロイヤルナイツという肩書きもある。まあ私は元だがな」
確かに、移動先が増えるのは良い事だ。
そう思うと、観光気分で行くのもありかもしれないな。
「最終的な判断はお前に任せるが、私は悪くない依頼だと思っている。別に誰かと戦って来いという話でもないしな」
それはありがたい。とりあえず今回は死なずに済みそうだ。
「あと、向こうでの重要な話は、ヒゲゴロウ殿が話してくれるらしい」
オイ、ちょっと待て。
「ヒゲのおっさんも来るのか?」
「ヒゲゴロウ殿はウミキタ王国の国王と親しい仲だそうでな。我々は大使といっても、どちらかというとヒゲゴロウ殿のお供になるわけだ」
何かと縁があるな、ヒゲのおっさん。
ていうか何気に国王と仲良しとか、ギルド長の旦那でもあるし、何者なんだよおっさん。
「まあ、そこまで話が決まっているなら断れないだろうし、俺としても移動先は増やしておきたいしな。いいんじゃないか?」
俺の言葉を聞いて、エリシリアがため息をついた。
「そうか。そうだな……ただひとつ、問題があってな」
「問題?」
エリシリアの顔が浮かばない。いったい何があるのだろう?
「ウミキタ王国にはひとつルールがあってな。あの国入るにはその……」
なんだろう? いまいち歯切れが悪い。
「あの国では、外に出る時は水着着用が義務付けられているんだ」
「よしすぐに行こう!」
なんという素晴らしい国だ、ウミキタ王国!
うん、最高だ、よくやったぞウミキタ王国!
「ずいぶんうれしそうだな?」
「当たり前だ! もう一度、エリシリアやユミーリアの水着が見られるんだぞ!?」
前回体験した、水着でお風呂イベント。
あの時の水着姿は素晴らしかった。
それがまた見られるというのだ。
ありがとう、ウミキタ王国。
ありがとう、ルールを決めてくれた人!
「そ、そう面と向かってハッキリ言われると、こちらとしても嫌ではないというか……」
エリシリアの顔が赤くなっていた。可愛い。
「はぁ、わかった。お前がノリ気だというのは伝えておこう。いつ出発する?」
むちろん、早ければ早いほど良い。
俺は早く水着が見たい。
「明日、みんなでBランク昇格の申請と処理にギルドに行くから、可能ならその後すぐに行ってもいいんじゃないかと思う」
現在、俺達が行うイベントは明日のBランク昇格だけだ。
その後はしばらくイベントはなかったはずだからちょうどいいだろう。
「リクト、パーティの事を忘れているぞ? 今日はこのままマイホームへの引越し作業をして、明日はBランクの昇格、そして準備をして、夜はパーティだな。明後日出発でいいだろう」
そうだった。マイホームが出来た記念のパーティをしてくれと、男勇者の仲間の魔法使いに言われてたっけ。
こういうのは早い方がいいしな。
「そうだな、それでいこう」
「パーティに呼ぶメンツはどうする?」
そうか、せっかくだから男勇者達以外にも呼んでもいいかもしれないな。
「ロイヤルナイツのメンバーはどうだ?」
「いいな。あとは軍団長と、同行するヒゲゴロウ殿とギルド長のアリア殿も呼ぶか」
「なら、ラブ姉もだな。結構多くなるな」
俺はマイホームを見渡した。
もう少し1階の広間が大きくならないかなーと思ったら、なんと大きくなった。
置かれていた机も大きくなり、椅子も人数分増えた。
「リクト、お前何をした?」
「いや、もうちょっと部屋が大きくなって、机とか椅子も必要だなって思ったら、こうなった」
俺の言葉にエリシリアが目を丸くしていた。
「さすがはリクトだ。すごいな。これならみんなを呼んでも大丈夫だろう」
実際、俺も驚いていた。
さすがチート能力だな、マイホーム。
「あれ? なんだかお部屋、おっきくなってない?」
「うん! おっきくなってる!」
ユミーリアとコルットが2階から降りてきた。
「机と椅子も買ったのか? えらい増えてるじゃねえか」
コルットの親父さんとお母さんも降りてきた。
俺はみんなに、明日のパーティの事、ウミキタ王国に行く事を話した。
みんな了承してくれたので、俺達は明日からまた色々と動く事になった。
その夜、俺はコルットの親父さんと、宿場地区にある広場で修行していた。
夜の修行はすでに日課となっていた。
「そういえばリクト、お前らが行く、ウミキタ王国なんだがな」
基本的な型を練習していた俺に、親父さんが話しかけてきた。
「あそこには、俺の知り合いの格闘家が何人か居てな。お前さんの事を知ったら、もしかしたら戦いを仕掛けてくるかもしれんぞ」
おいおい物騒だな。まあ、ストレートファイターって元々、現地であった格闘家達がその場で戦いを始めた、って話が多いゲームだしな。
「どんなやつが居るんだ?」
「そうだな、ヨガが得意なヤツがいたな」
駄目だ。そいつとだけは会っては駄目だ。
さすがにごまかしがきかない。聞かなかった事にしよう。
「ほ、他にはどんなヤツがいるんだ?」
「他か? 他はそうだな、スモウって技を使うやつが居たな。あとは蹴り主体のヤツも居たぞ」
なんだろう、水着に近い格好の奴らばっかりなイメージだ。
まあ、外に出る時には水着が義務らしいから、そうなってくるのか?
「よし! おめえに新しい必殺技を教えてやろう! これならスモウにも蹴りにも勝てるはずだ。普通なら難しい技だが、おめえになら、いや! おめえだからこそ使いこなせるはずだ!」
「おお! ありがとう親父さん!」
俺は親父さんから、新しい技を教えてもらった。
確かに、その技は俺にはうってつけだった。
その日の夜はその技の習得に必死になり、なんとか新しい技を覚える事が出来た。
そして次の日、俺達はギルドでBランク昇格の手続きを済ませ、ついにBランクになった。
「おめでとうございます、リクトさん!」
ラブ姉が祝ってくれる。
「今日はこれで、リクトさんのマイホームとBランク昇格おめでとうパーティになりますね」
そうか、そういう意味もありか。
「そうですね、ラブ姉もぜひきてくださいね」
「ええ、必ず行かせて頂きます」
ラブ姉がニッコリ笑うと、幸せの塊が弾んだ。
そしてエリシリアのチョップが俺の頭にヒットした。
俺達は買い物を済ませて、パーティの準備をした。
そして夜。
俺のマイホームに、みんなが集まった。
俺、ユミーリア、コルット、エリシリア、ランラン丸。
コルットの親父さん、お母さん。
男勇者、魔法使い、戦士、僧侶。
ギルド長、ヒゲのおっさん、ラブ姉。
ロイヤルナイツのフレイラ、エール、レズリー、シズカ、そして軍団長のゴッフさん。
尻好きの王子に合体姫様、そして王様と王妃様も来ていた。
「なんで王様まで!?」
「俺が呼んだ」
ヒゲのおっさんのしわざだった。
お城から料理人達もきていたので、俺はキッチンの使い方を説明した。
どうなるか不安だったが、さすがは料理人、すぐに理解して料理にとりかかってくれた。
こうして、俺がこの世界で出会った人達が、ここに集まってくれた。
改めて見ると、なんだか感慨深かった。
「えー、今日は俺達のマイホームが出来た事と、Bランク昇格のお祝いのパーティに来てくれて、ありがとうございます! 今後も楽しく冒険者をやっていきたいと思いますので、これからもよろしくお願いします!」
「いいぞシリト! ここで一発、あの光を見せてくれ!」
ヒゲのおっさんがすでに酒を片手に叫んでいた。
メンドクサイと思いながらも、俺は先日手に入れた、新しい技を使ってみる事にした。
「よし、今日はサービスだ! いくぞ、ゴッドフラッシュ!」
俺がそう叫ぶと、俺の尻がピンク色に輝いた。
「いいぞシリト! シリトの尻の光に、かんぱい!」
「かんぱい!」
ヒゲのおっさんがかんぱいの音頭を取ってしまった。
みんなもその勢いで、かんぱいしてしまう。
なんてこった。尻にかんぱいしてしまった。
だが、みんなの楽しそうな顔を見ていると、どうでもよくなってきた。
俺もジュースを飲み干し、みんなのもとへ向かった。
「なんだリクト、おめえ酒は飲めねえのか?」
「今日は主催側だから遠慮したんだよ。まあ、元々強くないけどな」
あれ? でも俺この世界じゃまだ未成年じゃなかったっけ?
飲まないのかって聞いてくるって事は、この世界では俺くらいの年齢なら酒を飲んでもいいのかもしれない。
「すまなかったな、急に押しかけて」
ヒゲのおっさんの隣に居た王様が話しかけてきた。
「いえ、こちらこそお越し頂き、ありがとうございます。この様な場所ですみません」
「何を言う。見た事のないものばかりだ。面白い場所ではないか」
王様はマイホームを見渡した。
確かに、この世界には無いものがたくさんあるからな。退屈はしないだろう。
「ああ! おいしいわ! やっぱりイノシカチョウは最高よ!」
魔法使いがイノシカチョウのレア肉を食べて、おおげさに叫んでいた。
今日はお城の料理人たちが調理しているので、さらにおいしく出来ているのだろう。
「確かに! これは素晴らしい!」
「ええ、おいしいですわお兄様!」
王子様と姫様もよろこんでいた。
「今日はこの為に張り切ってイノシカチョウを狩りまくったからな! 在庫はいくらでもあるぞ!」
「ヒャッホー! 尻魔道士サイコー!」
魔法使いがノリノリだった。
「リクト、今日はありがとう。ユミーリアも幸せそうでなりよりだ」
話しかけてきたのは男勇者だった。
最近こいつの姿をした神様に尻を撫でられまくったせいで、ちょっと近づきたくない。
「そ、そういえば、そっちは最近はどうだよ?」
「僕らはまだCランクだね。ついにリクト達に追い越されちゃったよ。もっと頑張らないとね」
そう言って苦笑する男勇者。
うん、イケメンだな。だがあの尻好き神様のせいで完全に変態のイメージしかない。
「もう兄さん、リクトに変な事言わないでよ?」
「何も言ってないよ! まったくユミーリアは。ユミーリアこそリクトに迷惑かけてないだろうね?」
「かけてないわよ! ……かけてないよね?」
ユミーリアがこちらをチラッと見てくる。
「ああ、むしろ俺がユミーリアに助けてもらってばっかりだよ。ユミーリアとパーティを組んで、本当に良かったと思ってる」
「リクト……」
見つめあう俺達。
「あーうん、仲が良いみたいで良かったよ」
男勇者の言葉に我に返り、ユミーリアの顔が真っ赤になった。超絶可愛かった。
「今日はお招きありがとうございます」
ロイヤルナイツの現リーダー、フレイラが話しかけてきた。
「ふふ、どうだみんな? 私とリクトの家は最高だろう!」
エリシリアがすでに酔っているようで、真っ赤な顔で自慢していた。
「って誰だよ!? エリシリアに酒を飲ませたのは!?」
エリシリアはゲームでも酒に弱く、酔うとすぐにハイテンションになっていた。
「お姉様、ささ、グイっと!」
「うむ!」
「お前かあああ!」
犯人はレズリーだった。
「リクトー、ほらー、お前も飲め飲めー。んー? それとも私の口移しがいいか?」
酔ったエリシリアが絡んできた。
色々当たってるし顔が近い。そして酔っていても美人だからタチが悪い。
「さあリクト、今日はお前は私のモノだ。いいな?」
エリシリアが俺の首に腕をまわしてくる。
「ちょっとエリシリア! やりすぎだよ!」
止めてきたのはユミーリアだった。
「なぜ止めるユミーリア!? リクトは私のモノだぞ!?」
「ち、違うもん! リクトは誰のモノでもないというか……その、私だって……」
急に最後の方が声が小さくなっていくユミーリア。
だが、そんなユミーリアを見て、エリシリアがニヤっと笑った。
「フッ、甘いなユミーリア! リクトが私のモノだというのには、理由がある!」
「え?」
「え?」
ユミーリアだけではなく、俺もビックリした。
「いいか! 私はエリシリア! 私の名前の中には、シリがある! つまり! リクトは私のモノだ!」
わけがわからなかった。
「じゃ、じゃあ! 私もユミシリアになる!」
ユミーリアもわけのわからない事を言い出した。
「わたしも! コルシリアになる!」
「コルットはコルットのままでいいからな。混ざらなくていいからな」
俺がそう言うと、コルットはションボリしていた。
「よーし、ならばユミーリア! 勝負だ!」
「負けないもん!」
ユミーリアとエリシリアが酒飲み勝負を始めた。
周りがあおっているせいか、ユミーリアもつい乗せられてしまったみたいだ。
コルットもミルクを飲んで対抗していた。
「拙者はランシリアにはならんでござるよ?」
「うん、わかってる」
ランラン丸も少し酔っていた。
「まさかリクトの刀が、こんな美少女だったなんてな」
ランラン丸は戦士と僧侶と飲んでいた。
「ええ、驚きましたわ。私の杖も、人型になったりするのかしら?」
僧侶は自分の杖を見つめて、いとおしそうに撫でた。
「どうでござるかな? 拙者も自分の事はよくわかってないでござるからなー」
「その割には、ずいぶん気楽みたいだがな」
戦士がそう言うと、ランラン丸が突然泣き始めた。
「そうでもないのでござるよー! 最近のリクト殿ときたら、コルットの親父殿とばっかりイチャイチャして、刀である拙者は使ってくれないのでござるー! 昔は拙者をあんなに乱暴に扱ったくせに!」
ランラン丸の言葉を聞いて、戦士と僧侶がこちらをにらんできた。
「ひどい男だ」
「ひどい男ですね」
ひどい誤解だった。
「王様にロイヤルナイツと、豪華なもんだな」
俺の師匠、コルットの親父さんが周りを見て、なつかしそうに目を細めた。
「親父さんは、みんなと知り合いなのか?」
「昔、ちょっとな。俺にも色々あったのさ」
親父さんは以前、俺がロイヤルナイツのひとりがオウガが使った技とよく似た技を使用したと話をした時、心当たりがある様な事をつぶやいていた。
「昔、お城で働いていたとか?」
「どうだろうな。少なくとも、ゴッフのやつには負けた事はないぜ?」
親父さんがニヤリと笑う。
「まあ、昔の話だ。今はただの宿屋の親父だよ、俺は」
そう言って、親父さんは酒をあおった。
騒ぎが続き、そろそろお開きの時間となった時、ヒゲのおっさんが前に出て叫んだ。
「よっし! シリト! そろそろ締めの光を見せてくれや!」
俺に視線が集中する。
「また俺かよ!?」
「あのピンク色の光を見ないと、終わった気がしないんだよ。ほれ、頼む!」
わけがわからん。
だけどまあ、今日くらいはいいかと思えるほど、俺も楽しかった。
「わかったよ、みんなよく見てろよ! ゴッドフラッシュ!」
まばゆいピンク色の光がみんなを照らし、その日はお開きとなった。
みんなが帰った後、俺は改めて家を見る。
夜でも自己主張の激しいピンク色だった。
楽しかった。
俺は改めて、このゲームの世界は最高だと思った。
そして、夜が明けた。
俺達は準備を済ませ、ギルド前に集まった。
「よし、ウミキタ王国に行くぞ! みんな、水着の準備はいいか!?」
「おー!」
元気に返事をしたのはコルットだけだった。
「あ、ああ」
「う、うん」
「お、おお」
ユミーリア、エリシリア、ヒゲのおっさんは調子が悪そうだった。
「おにーちゃん、みんなどうしたの?」
「二日酔いだな」
俺は三人にゴッドヒールを唱える。
三人の調子が復活したが、先行きがちょっと不安になった。
こうして、俺達は北にある国、ウミキタ王国へと旅立った。




