48、街の中の攻防戦
そうか、そうだったんだ!
考えてみればシンプルな答えだった。
どの出入り口も無事なら、敵はそこから攻め入ったわけじゃない。
それでも街が燃えるのだから、敵は最初から、街の中に居たんだ!
なんでこんな簡単な事に気付かなかったのか。
完全に敵は外から来ると思い込んでいた。
「よし、答えが出たなら、急ぐぞ」
エリシリアが立ち上がる。
「え?」
俺は立ち上がった、エリシリアを見る。
「お前が未来を見るという事は、ヒゲゴロウ殿から聞いている。正直信じていなかったが、それが本当なら、今の話はこれからこの街に起こる事なのだろう?」
なんと、おっさんめ、みんなに話してまわってやがるな。
「ならばこうしている場合ではない、急いで街に戻るぞ。敵は街にいる。お前の話が本当なら、今頃街を燃やそうとしているはずだ!」
そうだ、おそらく今のが正しい答え。
敵は街の中に居る!
「俺、おっさんに話してくる」
「私も、団長に話す」
俺は立ち上がる。そして、あらためてエリシリアを見る。
「一緒に来てくれるのか?」
「今の話が本当かどうか確かめる必要もあるしな。それに、お前一人には任せておけん」
なんとも信用が無かった。
だが、これ以上心強い味方はない。
俺達はおっさんとロイヤルナイツの軍団長に話をした。
「どう思う、ヒゲゴロウ?」
「シリトが言うんだ、可能性は高い。というか今の話が本当なら、シャレにならんぞ」
そりゃそうだ、なにせ街が燃えてしまうんだからな。
「よし、エリシリア、お前は尻魔道士についていけ。ここは私達でなんとかしよう」
「はい!」
エリシリアが団長さんの命に、ビシッと敬礼する。
「シリト、間に合うか?」
「ああ、あんまり人に知られたくないが裏技を使う。というわけでおっさん、見なかった事にしてくれ」
俺は手を前に出して、叫ぶ。
「マイルーム!」
俺の尻がピンク色に光り、尻から扉が出てくる。
「うわ」
「なんだそりゃ!?」
団長さんとヒゲのおっさんが驚いていた。
エリシリアは、驚いて声も出なかった様だ。
「これですぐギルドの前に移動できる! エリシリア、きてくれ!」
「え? ああ」
俺はエリシリアの手を取る。
軍団長さんが認めたんだ、今のエリシリアは、俺のパーティ扱いで中に入れるはずだ。
俺はエリシリアとマイルームの中に入る。
「な、なんだこれは!?」
マイルームの中を見て、ついにエリシリアが声を出して驚く。
だが、今は説明している暇は無い。
俺はマイルームの出口をギルドの前に設定して、再び扉を開く。
「さあ、出るぞエリシリア!」
「あ、ああ」
戸惑いながらも外に出るエリシリア。
「なんだと!?」
そして、そこがギルドの前だった事に、また驚いていた。
「お前は、いったい何者なんだ?」
エリシリアがこちらを見る。
「悪いが今説明している暇は無い。それよりも、街の中に敵がいると思うんだけど、どこにいるかは、わからないかな?」
エリシリアが一度頭を振って、考え始める。
「東でも、南でも、西でも、同じ様に街が燃え上がるのが見えたんだな?」
エリシリアが俺に確認をとる。
「ああ、確かそうだった」
「ならば、街全体が燃えていたか、あるいは中央辺りで燃えていたのだろう」
俺はその言葉を聞いて、走り出す。
目指すは中央広場だ。
「待て! まだ中央と決まったわけではないぞ!」
エリシリアが走って追いかけてくる。
「でも、複数箇所だった場合、どこに居るかわからないだろう?」
そう、複数で街を燃やしていた場合、そいつらがどこに居るかは、見当がつかない。
今は次官が無い。ならば中央に行って、敵が居ればそいつを倒す。
もし中央に敵が居なければ……正直嫌だが、死んででもどこが燃えるか確認するしかない。
確認するのには、中央に居た方がいいだろう。
だからどちらにしても、今回は中央に行くのがいいんだ。
俺達は中央広場に着く。
目の前には、この街のシンボルである、大きな霊聖樹がある。
俺とエリシリアは、霊聖樹をながめていた。
こんな状況じゃなければ、きっとデートにでも見えたかもしれない。
だが、今は生きるか死ぬかの瀬戸際だ。
俺は周囲を見渡すが、怪しい人物は居ない。
「どうだ、エリシリア?」
俺はエリシリアに確認する。
「ダメだ、それらしい人物は居ない」
やはり俺と同じか。
くそ! また死ぬのか……俺は。
「なぜキサマは、ここに居る?」
上空から声が聞こえてきた。
すると、空から人が飛び降りてきた。
その人物は、地面に落下し、大きな土ケムリをあげる。
それは、オウガだった。
「オウガ!?」
「尻が光る男よ、なぜここに居る?」
オウガはさっきと同じセリフを吐いた。
「……いやなに、もしかしたら、街に敵が入り込んでいるんじゃないかと思ってさ」
俺はオウガに警戒しつつ、そう語る。
するとオウガの顔色が、あきらかに変わった。
「その事に気付くとはな……やはりキサマは危険だ。ここで排除させてもらう」
オウガが俺に対して構える。
「こいつが街を燃やす敵か?」
エリシリアが俺の隣で構える。
だが、こいつは街を燃やす実行犯ではない。
こいつはいつも、俺の所に来るからだ。
「いや、こいつは実行犯じゃない。街を燃やす敵は、別に居る」
俺の言葉を聞いて、オウガが驚く。
「なぜそこまで知っている? いや、違うな。知っているのになぜ止めようとしていない? ……そうか、そういう事か」
オウガがひとりで話し出し、ひとりで納得した。
「キサマ、さては街の中に俺達の同胞がいるとは知っているが、場所も人数も知らんな?」
その通り、よくわかってるじゃないかこいつ。
「さてな?」
俺はあえて、とぼけてみる。
「とぼけても無駄だ。今ここでこうしているのが、どこに同胞が居るのか、わかっていない証拠」
まあそうだよな。というか、今の言葉から察すると、ここには敵は居ないのか。
ならどこにいるんだ?
「ふむ、そろそろ時間か……残念だったな尻が光る男よ。街の中に俺達の同胞が居ると気付いたまでは良かったが、時間切れだ」
オウガが構えをといた。
すると突然、地面に何か文字が浮かび上がった。
「な、なんだ!?」
俺は周囲を見渡す。
地面に浮かび上がった文字は、あたり一面に描かれていた。
何の文字なのか、何が書いてあるかはわからない。
だが、なんとなくわかる。これは、魔法陣だ。よくある、ルーン文字というやつだろうか?
「三人だ」
オウガが突然、話し出す。
「俺達の同胞は、三人。魔法陣は以前から用意されていた。そして、その起動を行うのは、三人の優秀な魔法使いだ」
オウガが笑いながら、指を三本立てている。
「つまり、キサマは元々、どうする事もできなかったのだ。離れた場所にいる三人を一気に倒す事などできまい?」
よく見れば、空に向かって3本の光が伸びている。
ギルドの近くと、宿屋がある辺り、それに……住民街か?
「エリシリア!」
「ああ! おそらく敵はギルドのそば、宿屋や飯処が並ぶ辺りと、住民街に居る!」
どうやら俺の予想は外れていないみたいだ。
だが、予想外だったのはその人数だ。
まさかの三人……俺とエリシリアの二人じゃ、足りない。
というかだ、すでに魔法陣が起動してしまった以上、もはや間に合わないだろう。
「終わりだ、これで全てが終わる」
その瞬間、地面に書かれた魔法陣がより強く輝き始めた。
魔法陣は街の外周をグルッと囲む様に描かれており、街全体が、炎に包まれた。
俺は炎の熱さを感じる間もなく、目の前が真っ赤に染まり、意識を失った。
「おお素晴らしき尻魔道士よ、死んでしまうとは なさけない」
結局俺はまた、死んでしまった。
だが、ようやく活路が見えた。
敵は街の中に居る。場所も大体は把握できた。
やってやる、次こそクリアだ!
「さて、それでは前回お伝えした通り、今回は倍の6分間、お尻を撫でさせてもらいますからね?」
「……」
ヒゲのおっさんの姿をした神様が、両手の指をいやらしく動かしながら、せまってくる。
「いやあああああ!!」
「それでは素晴らしき尻魔道士よ、そなたに もう一度、機会を与えよう!」
俺の目の前が光り輝き、真っ白になった。
俺はマイルームで目を覚ますと、すぐに行動……できなかった。
尻を撫でられた感覚がまだ残っている。6分間は、長かった。
俺は絶対に、今回で終わらせると決意した。
さて、問題は誰をつれていくか、だ。
街の中には敵が3人。どんな敵かわからないから、誰でもいいというわけではない。
しかも大体の場所しかわからなかったから、ある程度は街の地理に詳しい人じゃないといけない。
一番キツイのは、ユミーリアとコルットが駄目な事だ。
二人が居る所には、ジャミリーとフィリスが来てしまう。街を燃やす敵を相手にしている場合じゃなくなってしまうのだ。
俺とエリシリアと、せめてあとひとり、なんとかならないものか。
その時、俺の脳裏に、ニコニコ笑いながら俺の尻を撫でる、神様の姿が浮かんだ。
「ああもう! 神様め、なんでヒゲのおっさんの姿なんだよ! あんまりにも何度も撫でられたせいで、つい思い出して……待てよ?」
俺はそこで、自分に待ったをかける。
ヒゲのおっさん。
ギルド長の旦那で、ギルドメンバーや街の事にも詳しく、ロイヤルナイツや軍団長とも親しい。
「……おっさんに、相談してみるか」
考えてみれば、ユミーリアとコルットが西と南に配置につく事にも協力してくれているし、街に詳しく、敵を倒せるほどの誰かを紹介してもらうには、うってつけじゃないか?
俺はユミーリアとコルットを起こして、おっさんの所へ向かった。
「お前ってやつはほんと……はあ、しょうがねえなあ」
俺はヒゲのおっさんに状況を説明した。
ユミーリアとコルットは、すでに南と西に行ってもらっている。
「ついてこい、ゴッフにも話さなきゃならねえ」
ゴッフというのは、ロイヤルナイツを率いる、この国の軍団長だ。
俺はおっさんについていき、おっさんと軍団長の話が終わるのを待った。
「いったい、二人は何を話しているんだ?」
エリシリアがこちらにやってきた。
そうだ、エリシリアにも協力を頼まないといけない。
「エリシリア! たのむ! 俺に力を貸してくれ!」
俺は全力でエリシリアに頭を下げる。
「い、いきなりなんだ?」
「信じてもらえないかもしれないが、今敵が、街の中にひそんでいるんだ。おっさんと軍団長さんはその事を話している。できればエリシリアにも、一緒に来てほしいんだ」
敵の力が未知数である以上、エリシリアの力が必要だ。
それにエリシリアなら、文句無く、信頼できる。
「たのむ! 今俺がこうして頼れるのは、エリシリアだけなんだ!」
俺はエリシリアの回答を待つ。
「……お前は、なぜ私をそこまで信頼しているんだ? 私とお前はほとんど初対面だぞ?」
そうか、そういえばエリシリアにとってはそうだったな。
「私はお前を、尻が光る、うさんくさい男だとしか思っていない。なのになぜ、お前は私をそこまで信頼しているんだ?」
なぜ、か。
「……エリシリアは覚えてない、いや、わからないかもしれないけど……エリシリアは俺を、何度も助けてくれたんだ」
「私が、お前を?」
「ああ、俺が困った時、もう駄目だと思った時、エリシリアはそっと、助け船を出して、俺を立ち上がらせてくれたんだ」
それは、ゲームの中の話だけじゃない。
実際に俺は、助けられた。視野がせまくなっていた俺に、エリシリアは助言をしてくれて、そして立ち上がらせてくれて、一緒に行動してくれた。
「私には、何の事かわからないが……」
そうだ。これは俺だけの記憶。
だけど。
「エリシリアたのむ! 一度だけ、俺を信じて、俺に力を貸してくれ! 俺はこの街を、みんなを守りたい! もう二度と、死にたくないんだ」
俺は再び、頭を下げる。
「……」
エリシリアは何も言わない。
「おいシリト! エリシリア! 話はまとまったぞ、すぐに準備しろ、街へ向かう」
ヒゲのおっさんが話しかけてきた。
「ヒゲゴロウ殿、どういう事だ?」
「なんだ、シリトから話を聞いてないのか? 街の中に敵がいる可能性があるから、俺とシリトと、お前さんで街に戻るんだよ」
え? 今なんて?
「おっさんが来るのか?」
「おうよ! そこそこ実力があって、街の中にも詳しい。しかもここから離れても差し支えないといえば、俺しかいないだろう?」
まあ確かに、条件としては合っているが……
「でだ、敵は三人いるらしいからな。ロイヤルナイツからひとり来てもらう様にゴッフに頼んだ所、おまえさんを連れて行けと言われたのさ」
おっさんの説明中に、軍団長もこちらに来ていた。
「そういうわけだ、エリシリア。俺はそっちの尻魔道士はいまいち信用できないんだが、ヒゲゴロウの事は信用している。一緒に行って真実を確かめてきてくれ。そして本当だったなら、敵を倒して来い」
軍団長の言葉に、エリシリアは敬礼した。
「わかりました。軍団長の命とあれば、このエリシリア、全力で任務に挑みます」
良かった。とりあえずエリシリアは協力してくれるみたいだ。
「じゃあいくぞ! シリト、エリシリア!」
おっさんの号令に、俺達はうなずく。
その時、エリシリアが俺につぶやいた。
「お前の事は信用できないが、だが、お前が言った……街を、みんなを守りたいという言葉は、信じてやろう」
エリシリアは、こちらを向かずに、そうつぶいやいた。
俺は、ガラにもなく、目頭が熱くなってしまった。
俺は頬を両手で叩き、気合いを入れなおす。
「おっさん、今すぐギルドに行く方法があるんだ、黙ってついてきてくれるか?」
俺はおっさんを見る。
「お前の尻魔法か?」
「ああ。あんまり人に知られたくないヤツだから、できれば見なかった事にしてほしい」
俺は手をかざし、マイルームを発動する。
「マイルーム!」
俺の尻がピンク色に光り、尻から扉が出てくる。
「うわ」
「な、なんだ!?」
俺は驚くおっさんと軍団長とエリシリアを気にせず、強引に話を進める。
「おっさん、エリシリア、さあ来てくれ! 急がないと、時間が無い!」
「お、おい!」
俺はエリシリアの手を取って、マイルームに入る。
おっさんも渋々マイルームに入る。
俺は扉を閉じて、ギルド前を出口に設定して、再び扉をあける。
外に出ると、そこはギルドの前だった。
「お前は……何者なんだ?」
エリシリアが驚いていた。
「おっさん、敵はギルドの近くと、住民街と、宿屋が密集している辺りにいる。誰がどう動いたらいいと思う?」
俺はおっさんに聞いてみる。この街をよく知っているおっさんなら、いい案が浮かぶはずだ。
「……ギルド周辺は俺に任せろ。住民街は、普段見回りをしているエリシリアがいいだろう。シリトは宿屋周辺だ」
なるほど、確かに俺は住民街には行った事ないし、ギルド周辺なら、おっさんが適任だろう。
「わかった、それじゃあ早速向かおう!」
俺は宿屋に向かおうとした。
「おい! わかったからいい加減、この手をはなせ!」
エリシリアに言われて気付いた。俺はエリシリアの手をにぎったままだった。
「ご、ごめん!」
俺は急いでエリシリアの手をはなす。
「まったく、なんなんだお前は……」
エリシリアはにぎられていた右手を左手で撫でていた。
「エリシリア。どんな敵がいるかわからないから、気をつけてくれ」
俺がそう言うと、エリシリアはなぜか困った顔をした。
「ど、どうした?」
何か変な事を言ってしまっただろうか?
「……変なヤツだな、お前は。私はロイヤルナイツのリーダーだぞ? そこらのやつに、遅れはとらんさ」
エリシリアはそのまま、住民街の方へ向き、歩き出した。
だが、すぐに立ち止まった。
「シリト、だったか?」
「リクトだ。あれはおっさんが勝手につけたあだ名だ」
おっさんはほんと、いい加減にしてほしい。初対面人はみんな俺の事、シリトだと思っているじゃないか。
「そうか……リクト、この戦いが終わったら、色々話したい事がある。逃げるんじゃないぞ?」
「ああ、俺もエリシリアとは、ゆっくり話がしたい。だから、無事で居てくれ」
エリシリアはフッと笑うと、そのまま住民街に向かって走っていった。
「シリト! お前もゆっくりしてる場合じゃないぞ! 早く動け!」
おっさんに言われて、俺も行動を開始する。
「マイルーム!」
俺はマイルームを発動して、いつもの宿屋に移動する事にした。
「おっさんも、気をつけろよ!」
「おう! また後でな!」
俺はマイルームに入り、出口を宿屋の裏に設定して、マイルームを出た。
「え?」
「え?」
宿屋の裏に出ると、そこに青い覆面を被った、邪神の使徒が居た。
「お前が、魔法陣を発動しようとしているヤツだな!」
俺はランラン丸を抜いた。
「ひ、ヒイ!? なぜこんな所に人が!? しかも魔法陣の事を知っているだと!?」
邪神の使徒は一目散に逃げ出した。
「この! 待ちやがれ!」
邪神の使徒は表に出た。
俺もそれを追って表に出て、邪心の使徒に斬りかかる。
「大人しくしろ! この野郎!」
俺はランラン丸で邪神の使徒を斬りつける。
「待てい!」
その時、空から大声が聞こえた。
俺と邪神の使徒は、空を見上げる。
そこには……空を飛ぶモンスターが、そしてそのモンスターの上に、オウガが居た。
「おいおい、なんでだよ? 俺を見つけるの、早すぎるだろう?」
ヤツは俺を見つけて、いつもやってきた。
だが、今回は俺は東に居たわけでも、南や西に居たわけでもない。
街にきてからも、そんなに時間は経っていないはずだ。
なのになぜ、こいつはこんなに早く俺を見つけられるんだ?
オウガが俺の前に降り立つ。
「オウガ、なぜここに?」
「キサマこそ、なぜこんな所にいる?」
オウガは俺と、邪神の使徒を見る。
「まさか、計画に気付いたというのか?」
オウガの黒い闘気が、ゆっくりと膨れ上がっていく。
「キサマを探す前に、一度街を見ておこうと思ったのだが、まさかそこにキサマが居るとは思わなかったぞ」
……そういう事か。
今回は、いつもより早く行動していた。
オウガはいつも、街を空から見回ってから、俺を探していたのだろう。
つまり、今回は俺を探していて見つけたわけではなく、たまたまそこに俺が居たというわけか。
まったくもってついてない。
だが、今ならまだ間に合う。
邪神の使徒さえ倒せばいいんだ。オウガは放っておけばいい。
「うおおおお!」
俺はオウガを無視して、邪心の使徒に斬りかかる。
「むん!」
いつの間に移動したのか、俺と邪神の使徒の間にオウガが現れ、俺の刀を弾く。
「この! 邪魔すんな!」
「キサマこそ、俺達の計画の邪魔はさせん!」
俺はオウガと向き合う。
邪神の使徒は、オタオタしている。
「何をしている? 早く魔法陣を発動させろ!」
オウガが一喝すると、邪神の使徒が再び宿屋の裏に戻ろうとした。
マズイ、ここまで来て、逃がしてたまるか!
「ま、待て!」
「待つのはキサマだ!」
オウガが俺の前に立ちはだかる。
くそ! こうなったら、融合してオウガを先に倒すか!?
だが、あとどれくらい時間があるのかがわからない。
早くしないと、だけど、どうしたらいいんだ!?
「ハアッ!」
俺が悩んでいる隙をついて、オウガが攻撃をしかけてきた。
「しまっ!」
俺はなんとかランラン丸で防ごうとするが、間に合わない。
オウガの拳が、俺の腹につきささった。
「がふっ!」
俺はそのまま、近くの小屋に吹き飛ばされた。
「ぐ、ぐうっ!」
完全に油断していた。
俺は腹をおさえて、立ち上がろうとする。
だが、相手はそんな時間を与えてはくれなかった。
オウガの身体から、黒い闘気があふれ、その気はオウガの両手に集まる。
オウガは腰を深く落とし、両手を右の腰近くに持っていく。
あれは、オウガの必殺技、邪動波だ。
あの黒い闘気を両手に集めて、相手に向かって放つ技。
まずい、あれを食らったら、また死んでしまう。
「これで終わりだ、尻が光る男よ」
オウガが両手を前に出し、黒い闘気を放つ。
「くそおおお!!」
俺は叫ぶ事しかできなかった。
もう駄目だ、と思ったその時……
俺の目の前で、黒と青の光が、弾けた。
「なんだと!?」
オウガの顔が、驚愕に染まる。
「ずいぶん勝手な事してくれてるじゃないか、オウガ」
その人物は、ゆっくりと歩いてきて、俺の前に立った。
「あ!」
その人物は、ヤードヤの宿の主人、コルットの父親さんで……
「キサマ、まさかリュウガか!?」
オウガが親父さんを見る。
そう、コルットの親父さんは、ストレートファイターの初代主人公、このオウガのライバルの、リュウガだった。
「久しぶりだな、オウガ」
「リュウガ……キサマ!」
リュウガとオウガ。
かつてライバルだった二人が、今再び、ここで相対した。




