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34、情報共有

 前回のあらすじ! 邪神の使徒が神の尻を持つ男の狂信者になったよ、やったね!


 うれしくねえよ!



 俺達は盗賊のアジトを攻略した。

 その時に現れたのが、この邪神の使徒であり、Aランク冒険者だった、ライシュバルトだ。


 俺のゴッドヒールで輝いた尻の光を見て、それが後光に見えたんだそうだ。

 で、俺の事を神の尻を持つ男だとか言って興奮していた。


 正直、かかわりたくなかった。なんかこいつ気持ち悪い。


 とはいえ、こいつは邪神の事、邪神の使徒の事を詳しく知っているはずだ。

 今後の為にも、どれだけゲームと違うのか、確認しておきたかった。


 だが、それを男勇者やユミーリア達が知ってしまうのはマズイ。

 ゲーム上、知りえない事を先に知ってしまうと、ストーリーが変わってしまうかもしれないからだ。


 だから俺は、俺と、ライシュバルトと、ギルド長と、ヒゲのおっさんの4人で話がしたいと提案した。



「リクト、それはリクトの……例の秘密の任務にかかわる事なんだね?」


 男勇者が俺に聞いてくる。


「ああそうだ。だからできるだけ、話をする人間を減らしたい」


 俺の言葉に男勇者がうなずいた。


「わかった、ここはリクトに任せよう。もし話せる事があったら教えてくれ。僕はなんでも協力するからね!」

「はいそこ! 勝手な約束しない! あと、秘密を秘密って言ったらダメって言ったでしょ!」


 魔法使いに怒られながら、男勇者達は退室していった。



「リクト、私達はどうしよう? 下で待っていればいい?」


 ユミーリアが俺を見ていた。

 可愛い。

 思わず頭を撫でたくなる。


 だが、今はその時ではない。超絶可愛いが、ここは我慢だ。


「できればその……私、こういう難しい話って苦手なんで、リクトに任せたいかなーって、あはは」


 ユミーリアは笑っていた。

 そうか、ユミーリアはこういう会議みたいなの苦手なのか。覚えておこう。


「わたしも、ちょっとついていけてないというか、眠くなってきちゃいました」


 コルットはコルットで、可愛かった。さすがはケモ耳幼女。そろそろお昼寝の時間だよな、うん。


「ごめんなコルット。なんだったら先に宿屋に戻ってお昼寝してていいぞ」

「ほんと? うん、わかった。じゃあわたし、家に帰るね」


 そう言って、ユミーリアとコルットはラブ姉と一緒に部屋を出て行った。


「さて……」


 俺はあらためて、3人に向き合った。



「良い子たちじゃないかシリト、ああして気を使ってくれるなんてな」

「いやいやあんた、あれは本気だよ、単に難しい話が苦手なのと、お子様なのさ」


 ヒゲのおっさんとギルド長が苦笑しあっている。


「どちらにしても、俺にとっては超絶可愛い、大切な仲間ですよ」


 俺は一呼吸置いて、話に入った。


「さて、先程も言った通り、邪神の、邪神の使徒の話をしたいのですが、ギルド長はどこまで邪神の使徒の事を掴んでいますか?」


 俺はギルド長を見る。やっぱり怖い。


「どこまで、ねえ。それはおいそれと話せるものじゃないんでね、先にそちらがどこまで知っているか、聞かせてもらうか」


 なるほど、そうきたか。

 確かに、俺の様なDランク冒険者に話せる内容じゃないよな。


「俺が知っているのは、邪神の使徒のアジトが、霊聖樹れいせいじゅの下にある事、霊聖樹の下に邪神が封印されている事、あとは邪神の教祖の正体、ですかね」


 俺は切り込んだ。かなり重要な情報だ。


 俺の予想通り、ギルド長と、ライシュバルトの表情が変わった。


「さすがは神の尻を持つ男、そこまでご存知とは」

「待ちな! 今の話は……本当かい?」


 ライシュバルトの方はさすがと納得していたが、ギルド長の方は表情が強張こわばっていた。


 どうやら知らない情報があったらしい。


「本当、というのはどれの事でしょうか? できればそちらの情報と照らし合わせたいと思っているのですが」


 俺はギルド長を見る。

 今度は怖くない。アドバンテージはこちらにある。


「……こちらが把握していた事は、この街に邪神の使徒なんてやつらが潜んでいる事、邪神ってのが世界を滅ぼすと言われている事くらいだ。そのアジトの場所や、霊聖樹邪神が封印されているなんて聞いた事がない。それに教祖の正体だって? 本当にそこまで知っているのかい?」


 ギルド長がこちらをにらんでくる。


「俺の情報が正しければ、ですが……」


 俺はそう言って、ライシュバルトを見る。


「はい、あなたの言う通りです。我ら邪神の使徒のアジトは霊聖樹の下に位置します。さらにそこには邪神が封印されている事も事実です」


 ライシュバルトの言葉を聞いて、ギルド長の表情がさらに厳しくなっていく。


「はぁ……これはなんとも、とんでもない情報だね。人数を減らしたのは良い判断だったよシリト」

「いや、だから俺の名前はリクトなんですけど」


 俺の言葉を無視して、ギルド長は話を進める。


「まさか霊聖樹にかかわる事だなんて、この街では一番のタブーだ。霊聖樹があるからこの街は発展し、霊聖樹があるからこの街の人たちは安心して暮らしていけるんだ」


 霊聖樹がある暮らし。この街の人たちにとって、霊聖樹はなくてはならない、神聖なものなんだろう。


「それが、その下に邪神の使徒のアジトがあって、邪神が封印されているだって? 冗談じゃ済まない話だよ」


 ギルド長がため息をつく。


「それで、その邪神ってのはなんなんだい?」


 俺はライシュバルトを見るが、やつも俺を見ている。どうやらこちらがどこまで知っているか試しているらしい。


「邪神は、この世界を滅ぼすもの。霊聖樹と対になるもので、確か目が3つで緑色の肌に腕が6つ、大きな羽が生えていて、巨大な尻尾が4つあったかな。冒険力は10万くらいだったはずだ」


 俺の言葉を聞いて、ライシュバルトが驚いていた。


「な、なんと! そこまでご存知なのですか、神よ?」

「だから俺は神じゃないって。お前こそ、邪神の事はどこまで知ってるんだよ?」


 俺はライシュバルトに質問を返した。


「私はむしろ、邪神とは世界を滅ぼすものというくらいしか存じておりませんでした。まさかその見た目や冒険力までご存知とは、恐れいりました」


 なんだよ、ほとんど何も知らなかったんじゃないか。


「霊聖樹と対になるってのは、どういう意味だい?」


 ギルド長がこちらに聞いてくる。


「聖なる気の霊聖樹と、邪悪なる気の邪神は表裏一体なんです。つまり、お互い同じ力を共有しているって事ですね」


 俺の回答を聞いて、ギルド長が黙ってしまった。


「……あんたは、どうしてそこまで知っている? あんたは、何者だい?」


 そして、ようやくギルド長からその質問がきた。


「俺は、勇者の未来を見る事ができるんです。その未来に、邪神の事がありました」

「勇者の未来だって?」


 あらかじめ用意していた回答だ。

 ゲームの設定やストーリーはほとんど勇者にかかわる事だ。ならば勇者の未来が見えるで通せばいい。


「勇者はこれから、邪神の使徒にかかわり、やがて邪神を倒します。その未来が俺には見えるんです。だから未来で勇者が乗り込む予定の邪神の使徒のアジトの場所もわかりますし、邪神がどういう見た目かも、未来で勇者が戦っているのを見たんです」


 ギルド長は、黙って聞いていた。


「にわかには信じられない話だが……」


「そうでもないだろう。今回、盗賊のアジトがあるって言い出したのもシリトだしな、勇者が盗賊のアジトをぶっ潰す未来を見たが、その通りにいかなかったんで自分で潰しに行ったんだっけ?」


 ヒゲのおっさんが補足してくれた。

 ていうかおっさん、意外と人の話、聞いてるんだな。


「それじゃあもう1つの質問だ、邪神の使徒の、教祖の正体を知っていると言ったな?」

「はい」

「誰なんだ、そいつは?」


 俺はクエファンの設定資料集を思い出す。ゲーム内ではあんまり詳しく語られなかったからな、あいつ。


「エラソーディア13世、霊聖樹の管理を任されている一族の長です」


 その言葉を聞いて、ギルド長が立ち上がった。


「あんた、自分が何を言っているのか、わかっているのかい?」

「はい?」


 ギルド長は大量の汗をかいていた。ヒゲのおっさんも今回は驚きを隠せないでいる。


「神よ、あなたは今、禁断の扉を開けてしまったのですよ」


 ライシュバルトがまたわけのわからない事を言っている。


「それが本当なら、大問題だ。まさかあの一族が邪神の使徒だなんて……」


 どうやら俺が思っている以上に、この事は重大らしい。


「えっと、俺としては、そのエラソーディア13世が重要な立場にいる事は知っています。だから多分、この事を突き詰めても、証拠が無いとか適当な理由で逃げられるでしょう」


 俺の言う事を、みんなが黙って聞いている。


「だからまあ、相手が動き出すまでは手を出さない方がいいと思うんです。というか、それが俺が見た未来ですから、できればそっとしておいてほしいんです。相手が動き出せば、あとは勇者が倒してくれますから」


 ギルド長が座って頭をかかえた。


「こいつはマズイよ、かつてないほどの大問題だ。あんたの話だけなら、何を馬鹿なと信じる気すらしないが……ライシュバルト、あんたはこの話、どう思うんだい?」


 ギルド長はいまだロープでしばられたままのライシュバルトに話を向ける。


「先の事はわかりませんが、これまでの事は全て事実ですね」


「はぁ……まったく、カンベンしてほしいね」


 ギルド長を気遣ってか、ヒゲのおっさんがギルド長の肩に手を置き、俺に話しかける。


「悪いなシリト、この話は今日はここまでだ。一度情報を整理したい。ライシュバルトの事は俺に任せてくれ。悪い様にはしない」


 俺はおっさんの言葉に素直にうなずいた。


「わかった、俺も今日は疲れたからさ。あと、この話は絶対に他の人にはしないでほしい」


 あんまり知ってる人が多くなると、未来が、ストーリーが変わってしまうからな。


「それは俺のセリフだ。お前さんが俺達4人にしぼったのは大正解だ。こいつは他の人間に話していい事じゃねえ。お前さんも他にこの話をするんじゃないぞ」


 俺はおっさんに適当にあいさつして、会議室を出た。



 下に降りると、ラブ姉が笑顔で迎えてくれた。


「お疲れ様です、リクトさん。色々と大変だったみたいですね」


 ラブ姉が気遣ってくれる。


「あはは、なんだか大事になりましたよ。俺としては、ユミーリア達とのんびりマッタリ冒険者ライフをしたいんですけどね」


 しかしその為には、メインストーリーをクリアする事は必須だ。

 ユミーリアと一緒にいると決めた以上、それまでは、がんばらなければならない。戦わなければならないんだ、俺も。


「そういえば、今回の報酬はどうしますか?」

「報酬?」

「はい、倒したモンスターの魔石等、ユウさん達とどう分配しますか?」


 そうか、今回は2パーティの共同クエストだったからな。


「俺達は依頼した側ですし、全部向こうにあげてください。俺達は俺達で、また稼ぎます」

「おお、強気ですねーリクトさん。まあ、今後もイノシカチョウのレア肉を気軽に取ってこられるのであれば、その余裕もわかりますけどね」


 俺は今回の報酬について、ラブ姉に任せて、ギルドを出た。



「あ! お疲れ様、リクト」


 ユミーリアが待っていてくれた。


 辺りはすっかり夕暮れ時になっていた。


 ユミーリアの金色のトリプルテールが、美しく輝いている。


 ……お疲れ様、か。


 うん、なんだか今回は本当に疲れた。


 初めての遠征、初めてのランランとの融合、そしてあの邪神の使徒に、ギルド長達との会議。



 しかしそんな疲れも、ユミーリアの笑顔を見たら、吹っ飛んだ。


 さすがは俺の女神だ。


 そうだ、さっさと邪神を倒して、ユミーリアと幸せに生きるんだ。


 俺はあらためて決意する。




 宿屋に帰り、コルットの家族と一緒に食事をする。ユミーリアも一緒だ。


「私もこの宿に来てもいいかな?」


 食事中、ユミーリアが聞いていた。


「おお、そうしてくれ。コルットのお仲間さんなら、宿代はいらねえぜ。むしろこうしてイノシカチョウのレア肉をわけてもらえるなんて、感謝したくらいだ」


 コルットの親父さんの提案で、明日からユミーリアもこちらの宿に移る事になった。


 しかし、いつまでも親父さんの世話になるわけにもいかない。


 イノシカチョウのレア肉をもっと取って稼いで、自分の家を持たないとな。

 そうすれば、マイルームももっと生かせるだろう。


 やりたい事がいっぱいある。


 俺は先程までの疲れや面倒くさい事は忘れて、再び始まる、明日からの冒険者ライフに胸を躍らせていた。




 次の日の朝、俺とユミーリアとコルットは、一緒にランニングをする事になった。

 少しでも鍛えようというランラン丸の提案だった。


「ねえリクト」


 ユミーリアが走りながら話しかけてくる。

 大きな胸がゆれていて、気を抜くとガン見してしまう。


 だから俺は、ユミーリアの方をできるだけ見ない様に返事をする。


「なんだ?」

「私ね、考えたんだけど、しばらくはレベルアップの為に、別行動しようと思うの」


 それは突然の提案だった。


「べ、別行動?」

「うん、リクトは今日も、イノシカチョウを倒しに行くんだよね?」


 その通りだった。イノシカチョウを少しでも倒して、お金を稼ぎたかった。


「私は今回、ううん。前回のゴブリンクイーンの時もそう、役に立ててない。だからもっと、強くなりたいの」


「あ! わたしもです! ユミーリアさん、私も修行したいです!」


 ユミーリアに続いて、コルットも手をあげる。


 修行か。


 確かに、今の俺達は今後の事を考えると、戦力不足だ。


「けど、何かいい方法はあるのか?」

「うーん、ゴブリン退治でもしようかなって思ってる」


 ユミーリアの考えは正しい。この位のレベル帯だと、ゴブリンを倒しまくるのが、レベル上げには一番良い。


「わかった、じゃあ今日は別行動だな。金を稼ぐのは、俺に任せてくれ」


 なんだか一家の大黒柱みたいでカッコイイぞ俺。



 ランニングが終わった俺達は、マイルームのシャワーで汗を流していた。


 全員がシャワーを浴び終わった所で、急に目の前に、メッセージが現れた。



《マイルームの地下が解放されました》

《重力修練場が解放されました》



 ……地下?


 見ると確かに、部屋の端っこに、地下への階段が増えている。


「どうしたの? リクト」

「いや、なんか地下ができたんだってさ、見てみよう」


 俺はユミーリアとコルットとランラン丸を連れて、地下へ降りる。



 そこは広い空間になっていた。


 中心には、大きな機械が置いてある。


 調べてみると、それは重力発生装置だった。設定した重力にできるみたいだ。


「ユミーリア、コルット、こいつはいい修行になるかもしれないぞ」


 俺の言葉に首をかしげる二人。

 ランラン丸も部屋の中をキョロキョロ見ている。



 俺の世代で、修行といえば、重力修行。そう考える人は少なくないはずだ。


 こいつはいい。もしかしたら俺達、一気にパワーアップできるかもしれないぞ。



 俺は重力修行という言葉に、ワクワク感を隠せないでいた。


「よし! 早速、試してみよう! いくぞ、みんな!」



 俺は意気揚々と、重力発生装置のスイッチを押した。



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