表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
30/164

30、攻略開始、盗賊のアジト

 盗賊のアジトに向かった俺は、洞窟の中の罠に引っかかってアッサリ死んだ。


「うん、我ながらヒドイな」


 今までで一番ヒドイ、というか情けない。


 一応、罠があるかもと思って注意していたが、しょせんは素人。

 罠を見抜けるはずもなく、盗賊のアジト攻略は最悪のスタートとなった。


「さて、それでは早速、生き返る為の儀式を行いましょうか」


 ここは真っ白な空間。死んだ俺がやってくる場所だ。


 ラブ姉の姿をした神様が、俺に近づいてくる。


 俺の身体が勝手に直立し、動かなくなる。


 俺はこの世界では、死んでも生き返る事ができるのだ。いわゆる死に戻りだな。

 しかしそれには、4つのルールがある。


 1、死んだ場合はその日の一番最初に、俺が目覚めた時間に戻る。

 2、俺以外は死ぬ前の事を覚えていない。

 3、所持金が半分になる。俺以外はそれが元々の金額だと思い、減ったと認識できない。

 4、生き返る前に3分間、神様に尻を撫でられる


 ちなみに、俺が生き返る時には時間が戻るだけらしいので、俺が死んだ後の世界とか、パラレルワールドとかは生まれないらしい。


 それにしてもだ、だからと言って気軽には死ねない。

 所持金が半分になるのも問題だが、何より……


「さあ、今回もその素晴らしいお尻を堪能させてもらいましょうか?」


 この変態神様に、3分間、尻を撫でられなければいけない。


 一応、生き返らせる為に、尻に神様の力を注ぎこむのが目的だとは聞いているが、この神様を見ていると、尻を触る為に無理矢理作ったルールなんじゃないかと思えてくる。


「それでは、触りますよー? その間、あなたは生き返った後の事を考えておいて下さいね」


 そう言って、神様は俺の尻を撫で始める。



 ん? ……気持ち悪……くない?


 な、なんだこの感覚は?


「ふふふ」


 神様が笑いながら、ラブ姉の大きな胸を、俺の背中に押し付けてくる。


「ふあぃっ!?」


 思わず変な声が出る。


 そうだ、今回こいつはラブ姉の姿なんだ。前回の男勇者の姿とは違う。


 つまりだ、前回の様にゴツゴツした手で撫でられるのではなく、ラブ姉のしなやかな指で撫でられるわけで……そして背中に当たる大きなラブルンがやわらかいわけで……


「はい、3分終了です」


 え? もう?


 って何考えてるんだ俺!? むしろ何も考えてないよ俺! どうするんだよ、何も思いつかないまま生き返っちゃうよ!


 俺は自分の馬鹿さ加減にうずくまって頭を抱えた。


「それでは素晴らしき尻魔道士よ、そなたに もう一度、機会を与えよう!」


 俺の目の前が光り輝き、真っ白になった。




 目が覚めるとそこは、マイルームの俺の部屋だった。


「ちくしょう、あの神様め……ラブ姉は反則だろう」


 俺はラブ姉の指の感触を振り払う様に、頭を振った。


「とにかく、罠対策だ。これは素人の俺じゃどうにもならん。ちゃんとみんなに相談しよう」


 俺は所持金が5Pになっている事を確認した後、部屋を出て、マイルームの1階に向かった。



 それぞれ準備を終えた所で、俺はみんなに話しかけた。


「みんな、聞いてくれ。このまま盗賊のアジトに向かっても、アジトの中は罠でいっぱいだろう。素人の俺じゃ、罠にかかって速攻で死んでしまうかもしれない。何か対策方法はないかな?」


 まあ、死んでしまうかもじゃなくて、実際に速攻で死んでしまったんだけどな、俺。


「罠か……確かに、ありえるわね」


 魔法使いがアゴに手をあてて考える。


「簡単なものだったら、俺がなんとかできるぞ?」


 そう言って名乗りをあげたのは、意外にも戦士だった。


「いや、簡単じゃない罠だった時が問題だ、相手を甘く見ない方がいい」


 そう、戦士ではダメだ。


 俺があの時、罠に引っかかった時の隊列は、戦士、男勇者、俺、魔法使い、僧侶、コルット、ユミーリアだった。


 戦士は俺より前に居たのだ。にもかかわらず、罠には気付いていなかったと思う。


 確かあの時、罠に気づいた様に見えたのは、コルットだったか?


「コルット、お前何か、罠に気づきやすいとか、そういう技とかあるか?」


 俺はあの時、罠に気付いたっぽいコルットに声をかけた。


「え? うーん、私は特に、そういうのは無いと思うけど?」


 本人には自覚無しか。それとも、あの時は偶然だったのか?


「いえ、そうとも限らないわ」


 ここで声をあげたのは、魔法使いだった。


「あなたもしかして、モモフ族じゃない?」

「え? はい、確かに私はモモフ族ですけど」


 何その可愛い種族名。

 種族か……ゲームでは、ケモ耳幼女としか説明はなく、種族名とか書いてなかったな。


「なら、尻魔道士さんの言う通りよ、モモフ族は罠とか周囲の異変に気付きやすい特性を持っているの」


 なんと、メチャクチャ便利な、まさに今回の為にある様な特性じゃないか。


「そうと決まればコルットちゃん、あなたが先頭に立ってくれれば問題ないわ。罠に気付いたら教えて。それで安全に進めるでしょう」


 コルットは俺を見てくる。


「頼めるか? コルット」

「わかった! おにーちゃんのお願いなら、わたしがんばる! 任せて!」


 コルットが笑顔で承諾してくれた。



 こうして、なんとか罠への対策ができた。



 俺達は盗賊のアジトへまっすぐ向かい、前回と同じ様に、男勇者と戦士が見張りの盗賊を倒した。


 そして盗賊のアジトとなった、洞窟の中を進んでいた。


「そこに変なくぼみがあります。あ、そこ触らないでください、何か変です」


 コルットが的確に罠を見抜いていく。


 これがモモフ族の力か、すさまじいな。


「モモフ族はその特性から、冒険者に好かれているわ。もっとも、モモフ族は争いを好まない種族だから、冒険者の仲間になってくれる事はほとんどないけどね」


 俺の後ろにいる魔法使いが解説してくれる。


 コルットはどちらかというと好戦的な性格なのだが、おそらくそれは、親父さんの影響だろうな。


 親父さんもモモフ族なのだろうか? それともお母さんの方かな?


 そんな風に考えながら、俺達は盗賊のアジトの奥へと向かった。



 しばらく進むと、広間に出た。


「なんだ貴様らは!?」


 盗賊達が20人ほどいた。


 そこに覆面を被った、邪神の使徒の姿は無い。


 どうやらここにいるのは、盗賊達だけみたいだ。


「戦闘開始だ! みんな、油断するなよ!」


 男勇者が号令をかける。


 こういう時はさすが勇者だ。リーダーっぽく、サマになっている。



 俺達は次々と盗賊達を蹴散らした。


 男勇者と戦士とユミーリアの剣が、相手を次々と切り伏せて、魔法使いの攻撃魔法が飛び交い、コルットは拳と蹴りで盗賊達を倒していく。


 僧侶はそんなみんなを補助呪文で強化していた。


 俺も負けてられないと、ランラン丸を鞘から抜き、盗賊のひとりに切りかかる。


「うおおおおお!」


 以前ランラン丸と融合した時の動きを思い出し、盗賊を斬る。


「ぐあああ!!」


 そういえば、俺は今、初めて人を斬って、殺した。


 ランラン丸と融合した時は、相手を殺したりはしなかったし、これまで斬って殺してきたのは、モンスターだけだった。


 よくある罪悪感や嫌悪感……は、あまりなかった。


 しかしこれで俺も人殺しだと思うと、なんとなく、動きが止まってしまった。



 それが間違いだった。


「ちょっとあんた! 何ボーっとして……!」

「え?」


 魔法使いの声が聞こえた時には、すでに俺の後ろに、盗賊がせまっていた。



 盗賊の持つ斧が振り下ろされ、俺の意識はそこで途絶えた。




「おお、素晴らしき尻魔道士よ! 死んでしまうとは なさけない」


 俺は再び、真っ白な神様の空間に居た。


「……しょうがないじゃん! 初めて人を斬ったんだぞ!?」


 さすがに今回はしょうがないじゃないかと思った俺は、神様に文句を言った。


「何言ってるんですか、考えるなら敵を全て倒してから、やるべき事をやってからにしなさい。そんなだから、またここに来る事になるんですよ。生き返る事ができなかったらどうするつもりなんですか?」


 神様の言う通りだった。


 神様は悩むなとは言わなかった。

 ただ悩むなら、なすべき事を果たしてから、考えるべき時に考えろと、正論を言われた。


「くそ、さすがに今回は俺が悪いか……いや、大体俺が悪いんだよなぁ」


 俺は座り込んでひとり、自己嫌悪した。


「はいはい、反省するなら、お尻を撫でられながらしてくださいねー」


 神様がそう言うと、俺の身体が勝手に立ち上がった。


 動けなくなった俺の尻に、神様が指をはわせてくる。


「あ、こら……ふああっ!」

「ふふふ、この姿で撫でると、あなたの反応がおもしろいですねえ。前回の様に嫌がる姿もいいですが、これはこれで……」


 ダメだ、ラブ姉の姿で撫でられると、どうしても、女性に尻を撫でられていると意識してしまう。


 相手は神様だ。男も女も無い。ただの変態なんだ。


 落ち着け俺、反応したら相手の思うツボだ。


 考えろ、次回どうするかを考えるんだ俺!



 しかし俺は、またしても何も考えられないまま、死んだ日の朝に戻された。



 俺はマイルームのベッドで目覚めると、ひとり反省会をする。


 相手は盗賊とはいえ、人を殺した。


 だからって、それで動きが止まって殺されるって、どんだけ馬鹿なんだよ俺は。


 というかだ、今回は盗賊を殺さなければいけないなんて事は、最初からわかっていたはずだ。

 わかっていたのに、覚悟が足りなかった。だからあんな事になってしまったんだ。


「……まあ、一度殺したんだから、次は大丈夫だろう。また何か悩むにしても、全部終わってからだ」


 俺はそう自分に言い聞かせる。



 みんなで準備をした後、俺は前回判明した、コルットの事を話した。


「実はコルットはモモフ族なんだ、盗賊のアジトにはどんな罠があるかわからない。だから俺は、コルットに罠の探知をお願いしたいと思う」


 俺の言葉にみんなはもちろん、コルットも驚いていた。


「おにーちゃん知ってたの? 私の種族の事」

「ああ、実はコッソリ聞いた事があってな」


 誰に、とは言わない。あとで確認されたら、実際には誰にも聞いていないからだ。


「そう、お父さんかお母さんだね。わかったよ! 私、おにーちゃんの為に、がんばる!」


 俺はそう言ってくれるコルットの頭を撫でてやった。

 ケモ耳をピコピコ動かして、とても気持ち良さそうにしてくれるのが、うれしかった。


「むう、ずるい、コルットちゃんばっかり……」

「はっはっは、ユミーリアもがんばらないとね」


 勇者兄弟がなにやら話していた。


 いや、俺だってユミーリアの頭を撫でたいが、どうしてもコルットと違って、ためらってしまう。


 幼女の頭を撫でるのと、好きな女の子の頭を撫でるのは、難易度が違いすぎるんだって。



 そんな風に思いながら、俺達は盗賊のアジトに向かった。



 俺達は盗賊のアジトに入り、コルットのおかげで罠をくぐり抜け、前回死んだ広間に着いた。


「戦闘開始だ! みんな、油断するなよ!」


 男勇者が号令をかける。


 俺はすぐさま、近くの盗賊をにらみつける。


 今度は前回の様なヘマはしない。さっさと倒して、どんどん倒す。

 この世界で生きていく以上、慣れるしかないんだ。


 俺はランラン丸を振りかぶり、盗賊を斬った。


 そしてすぐに、周囲を警戒する。


 もうひとりの盗賊がこちらに向かってきていた。


 俺はランラン丸で、横なぎに盗賊を斬った。


 これで前回と合わせると、3人目。

 もうためらう必要は無い。考えるにしても後だ後!



 そんな風に思っていると、ユミーリアの声が聞こえてきた。


「てやあああ!!」


 ユミーリアがものすごい張り切っていた。

 男勇者達があきれるほど、どんどん盗賊を切り伏せていた。


 は、張り切りすぎじゃないか? 今日のユミーリア。



「な、なんだ? 勇者だけだと思っていたが、なんなんだ貴様は!?」


 いつの間にそこに居たのか、緑色の覆面を被った邪神の使徒が叫んでいた。


 確か、覆面の色によって階級が違うんだっけ。緑は一番下っ端だったはずだ。


「私も勇者よ! あなた達が何をしようとしているか知らないけど、あなた達には死んでもらうわ! 私がリクトに褒められる為に!」


 なんと、そんな理由で張り切っていたのかユミーリア。

 言ってる事は物騒だが、さすがにそこまでハッキリと言われると、ちょっと照れる。


「ゆ、勇者だと? まさか、勇者が二人? そ、そういえばキサマは! くそ、そんな馬鹿な事が……」


 邪神の使徒はユミーリアが勇者であると知ると、頭を抱え、何かを考え始めた。



「……おのれ! こうなったら仕方ない! ヤツだ! ヤツを出せ!」


 突然、邪神の使徒が近くにいた盗賊に向かって、叫びだした。


 ヤツ? 何の事だ?


「し、しかし、アレは……制御するのは不可能だと聞いていますよ!?」


 邪神の使徒の近くに居た盗賊が、何かをためらっている。


「かまわん! 勇者が二人もいる以上、ここで逃がすわけにはいかん! ヤツを出すんだ、すぐに解放するんだ!」

「わ、わかりました!」


 邪神の使徒の近くに居た盗賊が、奥へと走っていった。



 嫌な予感がしたが、盗賊を追おうにも、すぐに奥から残りの盗賊達が出てきて、俺達の前に立ちふさがった。


 俺達は盗賊たちと戦うべく、武器を構えた。



 向かってくる盗賊達を倒していると、奥の方で爆発音が聞こえた。


「な、なんだ?」


 広間の奥から振動と爆発音が響いてくる。


 すると奥から、煙と共に、何か大きなものが出てきた。



 そこから現れたのは、見た事ないモンスターだった。


「ゴアアアアア!!」


 俺の3倍位はある大きさのオーガ……いや、顔はライオンの様だった。よく見ると背中から腕が2本生えている。肩とヒザから角も生えていた。


「ふははは! 見たか! これぞ邪神様の力の結晶! ライオルオーガだ!」


 確か邪神の使徒は、邪神復活の実験として、邪神の力を使ってモンスターを改造しているという設定だった。


 それがこのモンスターってわけか。


 しかしなぜだ?

 こんなモンスターは見た事ない。



 そもそも、この盗賊のアジトで戦うのは盗賊と邪神の使徒くらいで、こんなモンスターはいなかったはずだ。


 やっぱり、ストーリーが変わってしまっている。


 なぜだ? 何がキッカケでこうなったんだ?


「こいつは偶然生まれた、制御できない程の恐ろしいモンスターだが、勇者が二人もいるとなれば話は別だ。そんな危険な存在を放っておくわけにはいくまい! たとえここで我らもこのモンスターに殺されるとしても、ここで終わりにしてやる!」


 そう叫んだ邪神の使徒は、次の瞬間、ライオルオーガに踏み潰された。


「ああっ!?」

「や、やっぱりダメだ! 逃げろ!」

「ヒアアアアっ!?」


 それを見た盗賊達は、我先にと逃げ出した。


「ゴオオオオオオオオ!!」


 しかしそんな盗賊達を、ライオルオーガは4本の腕でなぎ払っていく。



「と、とんでもないモンスターだな」


 戦士が汗をかいている。


 俺達も、盗賊達がなぎ払われるのを、黙って見ているしかできなかった。



 俺はそんなモンスターを、ライオルオーガをジッと見つめた。

 俺の尻が光り、光は文字となって俺の前に現れる。



《ライオルオーガ 冒険力57,000》



 前回覚醒したユミーリアの冒険力が、12,000だっけ?

 そこからレベルアップしているとしても、たとえ勇者が二人居るとしても、絶対勝てないヤツだ。


 俺は考える。

 なぜこんなモンスターが出てきたのか。出てきた時点でゲームオーバーじゃないのかと。


 そして、邪神の使徒の言った事に気がついた。


 -勇者が二人もいる以上、ここで逃がすわけにはいかん!-

 -勇者が二人もいるとなれば話は別だ-


 ……そうか、勇者が二人居るからか。


 元々、ここに来て盗賊のアジトを制圧するのは、勇者ひとりだ。


 それが勇者が二人も来たもんだから、相手も玉砕覚悟でこのモンスターを解き放ったって事か。



「逃げるぞ! みんな!」


 男勇者が号令をかける。


 確かにここで逃げれば、俺達は助かるかもしれない。


 だが、こいつをここで放っておけば、ストーリーがさらに変化していってしまうだろう。


 こいつが与えるであろう影響は、あまりにも大きすぎる。後で修正するのは大変だ。



 なら、こいつがここで出てくる条件はわかったんだ。こいつが出てこない様にすればいい。

 これ以上、このまま続ける必要はあるまい。


 いくら元に戻るといっても、俺以外の仲間の誰かが死ぬ所は、見たくないしな。



「うおおおおおお!!」

「リクト!?」


 俺はライオルオーガに向かって走り出し、渾身のパンチをお見舞いした。



 もちろん、パンチは当たる事無く、俺はライオルオーガに踏み潰された。




「おお、素晴らしき尻魔道士よ! 死んでしまうとは なさけない」


 俺は再び、真っ白な神様の空間に居た。




 そういえば、初めて自分から死にに行ったなと、俺はぼんやりと考えていた。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ