24、これからの事
今の俺の気持ちを一言であらわすなら、こうだ。
どうしてこうなった!?
状況を整理してみよう。
俺は昨日、ユミーリアとパーティを組む事にした。
その日の朝は、ユミーリアとのラッキースケベイベントがあって、ユミーリアが引きこもった。
ギルドでタカリ野郎や先輩冒険者に絡まれてランラン丸と覚醒融合した。
宿屋に帰ったらコルットのお母さんが病気だと知って、それをゴッドヒールで治して、
実は武道家で魔法も使える事がわかったコルットともパーティを組む事になったんだっけ?
で。
朝になったからユミーリアとの待ち合わせに、コルットと一緒にここまできて……
「あ!」
そ、そうか! ユミーリアにコルットの事を全然説明していない。
そんなユミーリアから見れば、俺はどこから連れてきたのか、ケモ耳幼女と手をつないで登場した、不審者……幼女誘拐犯だ。
「ち、違うんだユミーリア!」
俺はユミーリアに説明しようとして
「俺はロリコン犯罪者じゃない!」
余計な事を叫んでしまった。
ポンッと、誰かが俺の肩に手を置いた。
「ちょっと話を聞かせてもらおうか?」
鎧を着込んだ、兵士のお兄さんだった。
「ち、違うんですよ!」
「詳しくは詰め所で聞くよ」
俺は兵士の詰め所に連れていかれた。
「え? な、なに? リクト? リクトー!?」
ユミーリアの声が、むなしく響いた。
兵士の詰め所で、俺は兵士さんとユミーリアに状況を説明した。
コルットも説明を手伝ってくれたので、なんとか俺がコルットを誘拐した犯罪者じゃないかという誤解は解けた。
そうして説明している内に、ユミーリアとコルットは仲良くなっていた。
「よろしくね、コルットちゃん」
「はい、よろしくお願いします、ユミーリアさん」
俺はなんとか無事に、釈放された。
「そうだ、最近お尻が光る不審者がいるってウワサもあるから、君達も気をつけてね」
……はい、それ俺です。スミマセン。
兵士のお兄さんはそう言って、詰め所に戻っていった。
ランラン丸は終始、爆笑していた。
「と、とりあえずマイルームでゆっくり話そうか」
「あはは、そうだね」
ユミーリアが苦笑する。
「まいるーむ?」
そうか、コルットはまだ見た事がなかったっけ?
「マイルーム」
俺の尻が光り、尻からニュッと扉が現れる。
「わっ! おにーちゃんのお尻から何か出た!?」
そ、その言い方はやめてほしいかな。
俺達はマイルームに入った。
「ふあー、なんだか見た事ないものばっかり」
コルットがマイルームに入り、キョロキョロしている。
「ささ、それでは拙者がマイルームを案内するでござるよ」
マイルームに入って人の姿になったランラン丸が、コルットの案内をしようとする。
「え? ど、どなたですか?」
当然、コルットは人の姿になったランラン丸とは初対面だ。驚くのも無理はない。
「ランラン丸はダメ! コルットちゃん、私が案内してあげるね」
「えー」
ユミーリアがランラン丸の案内を却下した。
「まずはトイレと、シャワーの使い方を教えてあげるね」
どうやら、先日ランラン丸に色々騙されたり、ちゃんと案内されなかった事を根に持っているらしい。
「ゆ、ユミーリア殿ー、拙者が悪かったでござるから、許して欲しいでござるー」
ランラン丸がユミーリアにすがりついた。
「……ほんとに反省してる?」
「してるでござるー!」
「じゃ、一緒にコルットちゃんを案内しよっか」
そう言って、ユミーリアはニッコリ笑った。
こうして、ユミーリアとランラン丸による、マイルーム案内が始まった。
俺はそんな様子を、ソファに座ってゆっくり見ていた。
今日もユミーリアは超絶可愛かった。
ランラン丸の紹介も終わり、いよいよ本題に入る時が来た。
俺は三人にソファをゆずり、手前に椅子を持ってきて座る。
「さて、いよいよ今日から俺達のパーティとしての冒険が始まるわけだが、ここでこれからの予定と目的を話しておこうと思う」
俺の言葉に、みんながうなずく。
「ユミーリアには少し話した事があるが、俺は勇者の未来を少しだけ見れる魔法が使えるんだ」
「みらい?」
コルットが首をかしげる。
「ああ、勇者限定でな」
まあ、未来を見るというよりは、勇者が主役のゲームのストーリーを知っているだけなんだけどな。
「勇者はこれから、この世界の存亡をかけた戦いに巻き込まれていくんだ。俺は自分が平和に生きていく為にも、勇者を助けていこうと思っている」
この世界に来た最初の頃は、俺がかかわる事によってストーリーが変わってしまう事を恐れて、できるだけ勇者やユミーリアにかかわらないようにしていた。
だが俺は、たとえ何が起きるかわからないとしても、ユミーリアと一緒にいる事を選んだ。
だから今は、早くストーリーを終わらせる為に、勇者を助ける方向にシフトチェンジする事にしたんだ。その後の平和で楽しい生活の為に。
「世界の、存亡?」
コルットはいまいちピンときていない様だった。
「ああ、詳しくは言えないが、色々な戦いや事件に、これから勇者は巻き込まれていくんだ。問題はその勇者というのが、ユミーリアなのか、兄のユウの方なのかわからない事なんだが……」
二人はどちらも勇者だ。
前回のゴブリン退治の様に、二人とも同じ事件が起きるのか、それぞれ別の事件が起きるのかはわからない。
「ふむ、詳しく言えないのはなぜでござる?」
「俺自身がハッキリとした未来を見ているわけじゃないし、中途半端な情報で間違って伝わるかもしれないからだ」
俺はランラン丸の問いに答える。
「だから簡単に流れだけ説明する。勇者はこの後、Cランク昇格の為の3つの試験を受ける。商隊の護衛では盗賊に襲われる。遺跡調査では謎の敵と戦う事になる、フレアイーグルの討伐ではなぜかショシンリュウが出てくる」
「え? ショシリンリュウって、ドラゴンだよね? なんでドラゴンが?」
「謎の敵って、なに?」
ユミーリアとコルットが早速質問してくる。
「なぜドラゴンが出てくるかはわからないし、謎の敵は俺もよくわからなかったから、そうとしか言えないんだ。ちゃんとわかったらまた話すよ。今は続きを聞いてくれ」
二人は俺の言葉にうなずく。
「Cランクになった後は、オーガの群れが街に襲ってくる。勇者は討伐に参加する事になり、そこでオーガキングと戦う事になる。しばらく依頼を受けて今度はBランク昇格試験を受ける。そこでも謎の敵が襲ってくる。謎の敵が勢力を増してきた事を察したギルドが討伐隊を組み、勇者もそれに参加する事になる。あとは色々小さな事件があって、勇者はAランクになる。最後は謎の敵を倒して、世界は平和になって、勇者はSランクになって終了。というのが俺が見た未来だ」
俺の話を聞いて、三人が黙って考えていた。
「まあ、今はなんとなく、そんな感じの事がこれから起きるかも、くらいに思っていてくれ」
「その謎の敵が、世界の敵であり、拙者達の最大の敵になるというわけでござるな?」
ランラン丸が俺に聞いてくる。
「そうだ、そいつらが具体的に何なのかは、俺にもよくわからなかったから、謎の敵とした」
本当は、邪神の使途ってやつらで、霊聖樹の下にいる邪神がラスボスなんだが、これを知っている前提で動くと、ストーリーが変わってしまう可能性が高いからな。今の所は、知っているのは俺だけでいいだろう。
「じゃあ早速、兄さん達にこの事を教えて……」
「それはダメなんだ」
俺はユミーリアを止める。
「ど、どうして?」
「先の事を知っている前提で動くと、本来の未来が変わってしまうかもしれない。そうなったら、せっかく未来の事がわかっているのに、全然違う未来になったら対処できなくなるだろう?」
「あ……」
ユミーリアも、俺が言いたい事に気付いてくれたみたいだ。
「だから俺は、男勇者であるユウには最低限のアドバイスで、できるだけ未来が変わらない様に動いてもらおうと思ってるし、ユミーリアの方に敵が現れるとしても、できるだけ本来の未来の通りに対処したいと思っている」
俺の言葉に、ユミーリアがうなずく。
「そういう訳だからユミーリア、難しいかもしれないが、できるだけこの事はユウには黙っていてくれ」
「わかったわ」
俺はユミーリアを見た後、コルットの方を向く。
「コルット、仲間になったばかりなのに、いきなりこんな話でゴメン。これがウチのパーティのしばらくの方針なんだけど、一緒についてきてくれるか?」
「うん! 私の力が少しでも役に立つなら、がんばるよ!」
俺は力強くうなずいてくれるコルットの頭を撫でた。
「ランラン丸、これからもよろしく頼むぞ?」
「ふむ、色々言いたい事はあるでござるが、拙者の答えは決まっているでござる。これからも我が主、リクト殿と共に、拙者はどこまでもついていくでござるよ」
俺はランラン丸とうなずきあった。
「さて、ここからはより具体的な話だ。まずはユウに追いつく為、俺達もDランクになる。その為の試験を受けようと思う」
俺の言葉に、三人がうなずく。
「そういえばコルットは、冒険者登録はしているのか?」
「うん! みんなと同じ、Eランクだよ」
おおそうか、ランクが一緒でスタートできるのはありがたい。
「よし、それじゃあ準備をして、ギルドに行って、ラブ姉に相談するか」
俺達は立ち上がり、それぞれ準備を整える。
「そういえばおにーちゃん、こんな立派なお部屋があるのに、どうしてウチに泊まってるの?」
「あ! 私もそれ思った。リクト、ここに住んでないよね? リクトの部屋、リクトの匂いがしなかったし」
ユミーリアとコルットが俺に聞いてくる。
ユミーリアが何か気になる事を言った気がしたが、ここはスルーだ。
「いや、ここに住んでるとギルドから何かあった時とか、誰かからの呼び出しがあった時にわからないだろう? だからマイルームは、風呂とか荷物の出し入れとか、遠征した時に使うくらいにして、普段は宿屋に泊まるようにしているんだよ」
「あー、なるほどね」
ユミーリアとコルットは納得した様だった。
「他にも何かあったら気軽に聞いてくれよ、俺達はもう、仲間なんだからさ」
「うん! そっか、私達、仲間……なんだよね、えへへ」
ユミーリアとコルットが俺の言葉を聞いて笑っていた。ランラン丸はなぜか、ニヤニヤしていた。
俺達はマイルームを出て、ギルドへ向かった。
「きたか! シリト!」
そんな俺達を迎えたのは、ヒゲのおっさんだった。
「だから俺の名前はリクトだって」
「シリト! お前、オシリ丸って知ってるか?」
オシリ丸。
それは先日、俺と融合したランラン丸が名乗った名前だ。
「知らん」
「俺のかみさんに勝ったあいつとぜひ戦ってみたいんだ、何とかならないか?」
「だから知らん……って、ちょっと待て、かみさん? おっさん、結婚してたのか?」
俺はヒゲのおっさんから出たかみさんという言葉が引っかかった。
「おう、言ってなかったか? 俺のかみさんはこのギルドのギルド長でな」
「なん……だと?」
衝撃の事実。アリアさん、結婚してたのか。しかもこのヒゲのおっさんと?
そんな設定、ゲームではなかったぞ?
「それでだシリト、何とかなりそうか? 俺もオシリ丸と戦ってみたいんだ」
「残念だが俺はそのなんとか丸の事は知らん、知らんったら知らん」
俺はそう言っておっさんを振り切るが、その後も何人もの冒険者から紹介してくれと言われた。
ええい! どいつもこいつもバトルジャンキーばっかりか!
「だから知らないって言ってるだろう!」
なんでも尻関係を俺に持ってくるんじゃない。
まあ、あれは俺なんだけどさ。
どうやったらもう一度ランラン丸と融合できるかもわからないし、いちいち誰かと戦ってられるかっての。
俺は冒険者達を振り切って、ギルドのカウンターへ向かう。
「リクトさん! お待ちしていました! ってあら? もしかしてコルットちゃん?」
「お久しぶりです、ラブルンさん」
どうやらラブ姉とコルットは顔見知りの様だった。
「久しぶりねえ、お母さん、元気になったの?」
「はい! おにーちゃんのおかげで!」
「ああ、そういう事。ふふ、さすがですね、リクトさん」
ラブ姉は俺が回復魔法でコルットのお母さんを治した事を察した様だった。
「それでラブ姉、何かあったんですか? 俺を待ってたって言いましたけど」
「はい! 実はですね、リクトさんにはぜひDランク昇格試験を受けて頂こうと思いまして」
Dランク昇格試験、まさに俺達が今から受けようとしていた事だ。
「それはむしろ望む所なんですけど、どうして急に?」
「リクトさんのウサギットのレア肉の評判が大変良くて、それでもしかしたら、幻のイノシカチョウのレア肉も取ってこれるんじゃないかという話になりまして。リクトさんがまだEランクである事を告げると、すぐに昇格試験を受けさせる様にと方々から言われたんです」
イノシカチョウ? そんなモンスター、いたっけ?
まあ、俺はそもそも、Dランクへの昇格試験がどんなものかも知らない。
ゲームではFランクからDランクへ一気に昇格したからな。そこは謎だった。
「イノシカチョウの討伐依頼を受けられるのはDランクからになっていまして、Dランク昇格試験も、このイノシカチョウの討伐になっているんですよ」
なるほど、俺がレア肉をドロップしやすいと見て、そのイノシカチョウのレア肉も取ってこれるんじゃないかと思ったから、早くランクを上げる為、試験を受けさせたいというわけか。
「さいわい、ユミーリアさんとパーティも組まれましたし、コルットちゃんともパーティを組むんですよね?」
「はい」
俺はそう答えて、コルットの頭を撫でる。
「でしたらパーティの戦力も問題ありません。Dランク昇格試験、ぜひ受けて頂きたいんですが、どうでしょう?」
俺はユミーリアを見て、お互いうなずきあう。
「はい、ぜひ! これから討伐に行ってきます」
俺達はDランク昇格試験を受けて、イノシカチョウが生息するという、北西の平原へ向かう事になった。
「ところでリクトさん、あのオシリ丸さんって……」
「知りません」
ラブ姉の追及を振り切って、今度こそ俺は、イノシカチョウが生息するという、北西の平原へ向かった。




