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最終話、やっぱりゲームの世界は最高だぜ!

 邪神を倒した俺達は、崩壊するダンジョンから脱出する為に、マイホームに入った。

 そこで俺は神様と最後の話をして、みんなの元に戻ってきた。


「ねえリクト、邪神のダンジョンは……霊聖樹れいせいじゅはどうなったのかな?」


 俺の腕に抱きつきながら、ユミーリアがこちらを見上げて聞いてくる。


 ゲームの通りなら、ラストダンジョンは崩壊して、霊聖樹もそれと一緒に消えていくはずだ。


「外に出てみよう、それでわかるはずだ」


 俺達はマイホームの外に出る。

 出口は霊聖樹の前の広場を設定しておいた。



「およ?」


 ランラン丸が変な声をあげる。


「りりり、リクト殿! 拙者、拙者の身体が!」


 ランラン丸が自分の身体をペタペタと触っていた。

 そうか、そういえば神様がご褒美にって、外でもランラン丸が人型で居られる様にしたんだっけ。


「さっきのは、夢じゃなかったのでござるな」

「覚えてるのか?」

「うむ、覚えているでござるよ。邪神を倒した事でホッとして、都合の良い白昼夢でも見たのかと思っていたのでござるが……む? しかしそうなるとリクト殿の腰にある刀と拙者の腰にある刀はいったい?」


 ランラン丸が自分の腰にある刀を取り出した。

 俺も自分の腰にある刀を取り出す。


「同じでござるな」

「そうみたい、だな」


 ランラン丸が増えた。


「おーい、ランラン丸ー」


 しかし、増えた分のランラン丸はしゃべらない。


「普通の刀だな」

「その様でござるな」


 俺達は刀を仕舞う。


「ねえリクト、そろそろ私達にも説明してくれない?」


 ユミーリアが俺のそでを引っ張った。


「ランおねーちゃん、お外に出られる様になったの?」


 コルットが不思議そうに聞いていた。

 そうか、コルットにとってはランラン丸はマイホームから出られない人って感じだったのか。


「むっふっふー、そうでござるよコルット殿。これからは外でも拙者と遊べるでござる」

「わーいやったー!」


 コルットがうれしそうにピョンピョン跳ねる。


「どういう事なんだリクト?」

「ご褒美だってさ。俺と一緒に邪神を倒したから、神様がランラン丸にご褒美をくれたみたいなんだ」


 俺はユミーリアとエリシリアに対してそう答えた。


「なんじゃ、ランラン丸にだけなのか? わしらには何もないのかのう?」


 ふむ、アーナの言う事ももっともだ。とはいえ俺にはそれに対する答えがなんとなくわかっていた。


「何か欲しいなら、俺がなんとかしてやるさ」


 多分、神様なら他の人達の分はあなたが何とかしなさい、なんて言うだろう。


「ほう? なんでもいいのか?」


 アーナの目がギラリと光る。

 いや、アーナだけではなかった。みんなの目もギラリと光っていた。


 ……早まったかな。

 俺はそんな風に思いながら、まずは霊聖樹を見に行こうとごまかして、霊聖樹の元へと向かった。




「お、シリト、戻ってきたか」


 俺達が霊聖樹のそばまで来ると、そこにはヒゲのおっさんが居た。


「おっさん」

「ついにやったんだな、シリト。見ろ、霊聖樹が消えていく」


 俺達はおっさんが見た方を見る。


 そこには霊聖樹があった。

 しかし、霊聖樹は大きくふるえており、上の方から消滅しているところだった。


 ゲームの通りだ。

 霊聖樹は邪神を失って、邪神を封印するというその役目を終えて消えていく。


 霊聖樹は元々邪神を封印する為にできたもので、モンスターを寄せ付けないというのは副産物だった。

 もしくは人間に信仰され、大事にされる様にそうなったとも言われている。


 全部設定資料集に書いてあった話だけどな。


 役目を終えた霊聖樹が消えていく。

 この街の人達は、今この光景をどんな気持ちで見ているのだろう。


 今まで自分達を守ってくれた、見守ってくれていた霊聖樹が、消えていく。


 消えていく。

 霊聖樹は、静かにゆっくりと……消えていった。

 街に出ていた霊聖樹の根も、光と共に消滅した。


 霊聖樹の最後を見ていた人々は静まり返っていた。


 後に残ったのは、何も無い広場だった。


「本当に、なくなってしまったんだねぇ」


 ギルド長が霊聖樹があった場所に手を当てて、呟いた。


 俺も霊聖樹があった場所を見る。


 わかっている、何も無いのだ。

 霊聖樹は消滅して、人々はこれから霊聖樹無しで生きていく。そういう結末だ。


 それでも俺は何となく、霊聖樹があった場所に、手を触れてみた。



 俺の尻が光った。



「な、なんだ?」


 俺の尻からあふれたピンク色の光が、空を舞い、霊聖樹があった場所へと降りていく。


 その光は大地へと染み込んでいき、やがて……大地から、小さな息吹が芽生えた。


「こ、これは!」


 ギルド長と隣で見ていたヒゲのおっさんが驚愕する。


「芽だ! 霊聖樹の芽だ!」


 ギルド長が叫ぶ。


 その声を聞いた人々が次々に押し寄せ、そこに芽生えた新たな息吹を見る。


 人々が歓声をあげた。


「ハハッ、やってくれたなシリト! やっぱりおめえは、神様なのかもしれないな」


 ヒゲのおっさんが俺の肩をバンバン叩く。


「いや、俺はまだ神様じゃないさ……」

「まだときたか、ほんとにおめえってヤツは……ハッハッハ!」


 そう、俺は神様じゃない。とはいえ神様からいずれ神になると宣告されてしまったからな。


「これが俺の、神様としての最初の仕事だったのかもしれないな」


 俺は新たに芽吹いた小さな芽を見る。


「しかしリクトよ、霊聖樹が復活したという事は、また邪神が生まれたという事ではないのか?」


 アーナの言葉にみんなの動きが止まる。


 そう言われてみればそうだ。霊聖樹と邪神は一対になっている。霊聖樹が復活したという事は邪神を封印する必要ができたという可能性もある。


「なに、その時はシリト、またおめえがブッ飛ばせばいい。それに今度こそ封印を解くような事をしなければいいわけだしな。それよりも、こいつが生き返った事をよろこんでやろう」


 おっさんがそう言うと、周りの人達も納得した様で再びおおいに盛り上がった。


「ヒゲゴロウ殿の言う通りだな、今回の事はしっかりと記録に残しておこう。私達が居なくなった後の、遠い未来でも、同じ過ちを繰り返さない様にな」

「そうですね、早速各国に通達して、伝承として広めていきましょう」


 エリシリアとプリムが話し合っていた。


「まずはこの芽を大事に育てていかねばなりませんね」

「だいじょーぶだよ、この木はちゃんと、おっきな木になるよ」


 マキに対して、コルットがそう言った。


「ほう? コルット、おめえにはそういうのがわかるのか?」

「うん! おじちゃんも知ってるでしょ?」


 ヒゲのおっさんはコルットが何を言っているのかわからないといった感じだった。


「だってわたしたち、未来でおっきくなった木を、ちゃんと見たもんね」


 そうだった。

 俺達は見ているのだ、未来で大きく成長した霊聖樹を。


 そうか。あの時、消滅したはずの霊聖樹が未来にあったのは、こういう事だったのか。


 本来のゲームの未来であれば、霊聖樹は消滅したままだった。だからクエファンの続編であるゲームでは霊聖樹は存在していなかった。実際、親父達は霊聖樹が突然街に復活した事におどろいていた。


 しかし、あれは俺達の未来だったから、だから霊聖樹が突然現れたのだろう。


「そっか、そうだったな。コルットの言う通りだ」


 俺はコルットの頭をそっと撫でる。


 俺達は未来の霊聖樹を想像して、空を見上げた。


 紫色の雲におおわれていた空は、すっかり元の青空に戻っていた。



 それからは大変だった。

 街の復興に加えて、俺達の受勲式やらなんやらで大忙しだった。


 何より大変だったのは、俺達の結婚式の準備だ。


 邪神を倒した事で、いよいよ結婚する事になったのだ。


 当然嫁にはランラン丸も加わった。嫁というよりは相棒といった感じなのだが、みんながランラン丸だけのけ者はかわいそうだ、みんなで家族になろうと主張したのだ。


 まあ、ランラン丸もまんざらではなかった様で……。


「ふ、ふつつか者でござるが、よろしくお願いします」


 なんてしおらしく言ってきた時はちょっとドキッとした。でもなんか悔しいからランラン丸には秘密だ。


 結婚する前に、俺は貴族になった。

 エラソーディア家の代わりに、霊聖樹の管理を任される事になったのだ。


 おかげで霊聖樹のそばに引っ越す事になった。

 まあ、外側が変わるだけで、結局中身はマイホームのままなんだけどな。


 俺が死んだ後のマイホームはどうなるのかと思ったが、目の前に説明文が出てきた。どうやらマイホームはこの場所に固定されるみたいだ。


 貴族になった俺は、一応セントヒリアの貴族扱いの様だが、政治への干渉は一切しない事になった。

 俺の嫁にはエリシリア、マキ、プリムと各国のお姫様が居るからだ。


 これで政治に口を出すとなると、影響力が大きすぎるのだ。

 もちろん助言をする事はあったが、政治の面で俺達が表舞台に立つ事はなかった。


 そんなわけで、平和な余生を過ごせる環境が整った。



 そして、ついに結婚式の日がやってきた。


「うお……綺麗だ」


 ユミーリアも、コルットも、エリシリアも、マキも、プリムも、アーナも、ランラン丸も、みんなウェディングドレスに身を包んでいた。


 服に着られている俺とは違って、みんな似合っていて、美しかった。


 結婚式は盛大に行われた。

 何せ三国の姫様と勇者、そしていまや伝説となったリュウガの娘の結婚式だ。


「俺はまだ死んでねえよ、勝手に伝説にするんじゃねえ」


 リュウガ本人は照れくさいみたいだ。

 コルットの親であり俺とコルットの師匠でもあるリュウガは、それはもう大層な伝説の人扱いとなったのだ。


 それでマゲールやゴンにからかわれていた。


「おめでとう、コルット」

「あ、ネギッツ! ありがとー!」


 ゴンと一緒に招待されていたネギッツがコルットを祝福しに来た。

 あれからは邪神の力は捨てて、マジメに修行している様だ。


「結婚に関しては先を越されたけど、私達の戦いはまだ終わっていないわ。今度こそ、私が勝つからね!」

「うん! またやろーね!」


 なんとも微笑ましい光景だった。この後の二人のガチの戦闘をのぞけば、だがな。


「リクト」

「なんだ親父さん」


 リュウガが俺の隣に立つ。


「お前は俺の恩人で、自慢の弟子で、大事な娘を任せる、大事な息子だ。しあわせになれよ? 何かあったら俺を頼れ」

「……ありがとう、親父」


 俺とリュウガは、笑って拳を付き合わせた。



「ふははは! 今日の主役は誰じゃ? そう!」


 アーナが人々の中心で、ビシッと自身を指差す。


「わしじゃよ!」


 ウケていた。

 俺はこの時、後にわしじゃよが世界中で流行る事になるとは、夢にも思わなかった。


「本当に、良かったでずわ、アーナざん……グスッ」


 カマセーヌさんが大泣きしていた。


「ええいカマセーヌ、恥ずかしいからやめぬか!」

「だっで! わたぐし、どっでもうれしぐて、アーナざんがじあわぜになって、本当に!」

「わかった、わかったから泣くでない! ああもう、わしまで泣けてくるではないか!」


 アーナとカマセーヌさんが抱き合って、泣いていた。



「おいテメエ! 聞いてんのかオイ!」


 突然話しかけられた。


「えっと、ジョンだっけ?」

「ザインだよ! 人の名前勝手に使っておいて、忘れてんじゃねえよ!」


 ああそうだった。犬っぽいってイメージだけが先行して忘れていた。


「テメエ、ついにエリシリアと結婚しやがって! エリシリアを泣かせたらただじゃ済まさねえからな!」

「よせよせザイン、それでは本当に負け犬の遠吠えだぞ」


 いきがるザインを、セントヒリアの王子、マクライドがいさめる。


「うるせえ! テメエは黙ってろ」

「はぁ、ザイン。そんなだからエリシリアに見向きもされないのだよ」


 王子はため息をついた。


「あら、でもエリシリアをしあわせにしなかったらただじゃおかないってのは、ザインだけじゃないわよ?」


 やってきたのはロイヤルナイツのメンバーだ。

 今やロイヤルナイツのリーダーとなったフレイラがにこやかに俺をおどしてくる。


「そうです、お姉様に何かあれば、即刻殺します」

「馬鹿者、人の旦那を勝手に殺すな」


 レズリーがエリシリアに頭を小突かれていた。


「あなたは私の恩人です。ですから何も心配はしていません。エリシリアの事、よろしくお願いします」


 シズカがそうやって頭を下げる。


「よさないかシズカ。まったくお前達は……ありがとう」


 エリシリアがロイヤルナイツのメンバーと去っていく。


「あいつは俺にとって娘みたいなもんだったからな、よろしく頼むぞ」


 いつの間に後ろに居たのか。

 セントヒリアの軍団長に肩を叩かれた。


「もちろん、しあわせにしますよ」

「そうか、頼む」


 そう言って軍団長は、酒を持って去っていった。



「ハッハッハ、ゴッフのやつ、ガラにもなく涙ぐんでやがる」

「そう言ってやるなヒゲゴロウ、あいつも俺達も歳をとった。そういう事だ」


 続いてやってきたのはヒゲのおっさんとウミキタ王国の王様だった。


「俺も娘が嫁にいくのが、こんなに寂しいものだとは思わなかった。シリト、マキの事を頼むぞ、あいつはあんなだが案外寂しがり屋だ。しっかり見てやってくれ」

「はい」


 俺は王様に対してしっかりとうなずいた。


「誰が寂しがり屋ですか、勝手な事を言わないでください」


 いつの間にかマキが王様の後ろに立っていた。


「おおうマキ、居たのか。しかしお前のメイド服以外の姿は久しぶりに見たな」

「本来はこういう席でこそスーパーメイドとしての活躍を見せたいのですが……今日の私は、メイドよりリクト様のお嫁さんを選びます」


 マキが俺の腕に胸を押し付けてくる。やわらかい。


「オイオイ、親の前で見せ付けてくれるじゃねえか」

「すぐに孫も用意しますので、楽しみにしていてください」


 そういう事をサラッと言うんじゃない。まったく。


「む? リクト様、あちらで少々問題が起きているようですので失礼します」


 マキはそう言って、メイドさん達の所へ行った。ドレスを着ているというのにその動きは洗練されていた。さすがはスーパーメイドだ。


「ところでヒゲゴロウ、おめえのとこの子供はまだなのか?」

「ブーッ!」


 ヒゲのおっさんの後ろで酒を飲んでいたギルド長が吹いた。


「ハッハッハ! その様子だともうすぐみたいだな。子供はいいぞー。今ならまだシリトの嫁に間に合うんじゃないか?」

「生まれる前から勝手に人の子供を嫁にするんじゃねえ!」


 咳き込むギルド長の背中をさすりながらヒゲのおっさんがため息をついた。


「だがなシリト、おめえの事はおめえの親からよろしくされたからな、子供をやるかは別だが、おめえは俺の息子みたいなもんだ。何かあったら言えよ」

「……ありがとう、おっさん」


 なんだか、この世界に来て親が増えた気がする。いや、実際嫁が7人だからな。そりゃ増えるか。



「リクトちゃーん、楽しんでるー?」


 やってきたのはデンガーナの王様だ。


「いやーん! リクトちゃんタキシードすてきー! もう私が結婚しちゃうー!」

「あらあなた、浮気したら殺しますと言ってありましたよね?」

「じょ、冗談よー。だからそんなに本気の目をしないで?」


 王様と女王様の関係は相変わらずだった。

 そんな二人を見て、プリムがため息をつく。


「はぁ、まったくお父様とお母様は。お兄様の前で恥ずかしい事をしないでください」


 王様達はプリムに怒られていた。


 デンガーナ王国で大人気のプリム姫は、一番贈り物が多かった。それだけ民に愛されていたのだろう。今日の料理もデンガーナ産のものがほとんどだった。


 プリムは両親の態度にあきれながらも、常に笑顔だった。

 これからもこの小さな笑顔を守っていきたい。



「リクト殿、プリム殿を見つめてニヤニヤしていると、完全にヘンタイみたいでござるよ?」


 いつの間にかそばに居たランラン丸が俺を見てニヤニヤしていた。


「嫁を見てニヤついて何が悪い」

「うわ、開き直ったでござるよ」

「ちなみに、お前もすでに俺の嫁だ。だからお前のそのドレス姿を見て、俺は何度もニヤニヤしているぞ?」

「やめて! 実はメチャクチャ恥ずかしいのでござるよ! 拙者はどちらかというと、着物が良かったでござるー」


 ランラン丸が大きく開いた胸元を隠す。


「隠すほど無いじゃな」

「それ以上言ったら斬るでござる」


 ランラン丸が殺気を放ってジト目で見てくる。

 俺はちっぱいもでっぱいも好きなんだがなぁ。


「……着物にした方が良かったか?」

「いや、みんなとおそろいが良かったでござるから、これでいいのでござるよ」

「そっか」


 確かに、みんなで揃ったウェディングドレスは綺麗だった。

 でもまあ、みんなの着物姿もそれはそれで見たい気もする。


「おっと、リクト殿の一番の嫁がきたでござるよ。拙者はご飯でも食べてるでござるー」


 そう言って俺からはなれるランラン丸。


「俺にとってはお前も大事な嫁だ。一番とか順番をつけるつもりはないぞ」

「……えへへ、拙者はリクト殿のそういう所、大好きでござるよ」


 ランラン丸は笑顔で去っていった。



「リクト」


 そして、ランラン丸の言う俺の一番の嫁、ユミーリアがやってきた。


「ランラン丸と何を話してたの?」

「ユミーリアが俺の一番の嫁だってさ」

「え? もう、ランラン丸ったら」


 ユミーリアの顔が赤くなる。


「でも駄目だよ? 私はうれしいけど、誰が一番とか言ったらケンカになっちゃうからね?」

「わかってるよ。俺にとってはみんなが一番だ」

「うん、そうだね」


 ユミーリアが俺に寄り添ってくる。


「ねえリクト、私ね、今とってもしあわせだよ」

「ああ、俺もメチャクチャしあわせだ」


「リクト!」


 二人の良い雰囲気を台無しにしたのは、ユミーリアの兄、勇者ユウだった。


「馬鹿! ちょっとは空気読みなさい!」

「ええ? マホ、どういう事?」


 そして魔法使いに怒られていた。


「ごめんねユミーリア、この馬鹿には後でしっかり言っておくから」

「うん、よろしくね、義姉さん」


 そう、ユウは魔法使いと結婚する事になったのだ。ちなみに戦士と僧侶も結婚するらしい。


「あんたが義理とはいえ、弟になるなんてね」

「まったくだな」


 まあ、俺は何となくわかってたけどな。


「それにしても、今日はイノシカチョウのレア肉にデリシャスギュウのレア肉と、本当にもう天国だわー!」


 レア肉好きのマホ姉さんが大興奮していた。この日の為にたくさん狩っておいたからな。


「さあユウ! そろそろ行くわよ」

「ま、まってマホ! まだちょっと言いたい事があるから!」


 ユウがマホから解放され、俺に近づいてくる。


「リクト、本当にありがとう。邪神を倒せたのも、世界を救えたのも、みんな君のおかげだ。僕は君の事を、勇者として、そしてユミーリアの兄として、誇りに思う」


 昔は俺の分身であり、憧れでもあった勇者であるユウにそう言われると、なんとも照れる気がした。

 だけど、勇者に認められたというのは、素直にうれしい。


「ありがとう」

「ああ、これからもよろしくねリクト!」

「こちらこそよろしく、義兄さん」


 俺とユウはしっかりと手をにぎりあった。

 そしてそれが終わると、ユウはマホに引っ張られていった。


「あはは、ゴメンねリクト、兄さんが騒がしくって」

「いや、こういう席は騒いでなんぼだからな、うれしいよ、本当に」


「その通りだよリクト君」


 振り返るとユミーリアのお父さんとお母さんが居た。


「おめでとーユミーリアーえへへー」


 お母さんの方は酔っ払っていた。


「ごめんねー。邪魔するつもりはなかったんだけど、やっぱり一言直接言いたくてね」

「いえ、ありがとうございます」


「こらお前達! 若いもんの邪魔をするんじゃない」


 ユミーリアのおじいさんまで現れた。


「なによお父さん……って、今はおじいちゃんだったわよねー。ううん、今度はひいおじいちゃんになるのかしらー?」

「この酔っ払いめ、まったく、邪魔したのユミーリア。ああそうそう、おめでとう、しあわせになるんじゃぞー」


 ユミーリアのおじいさんはそう言ってお母さんを連れて行った。


「リクトのおかげだよね、お母さんとお父さんと会う事ができたのも」

「そんな事はないさ」

「ううん、リクトが居なかったら、私……ここまでこれなかったと思うの」


 俺達は会場を見る。

 みんなが笑顔で、俺達を祝福してくれていた。


「リクト」


 ユミーリアが俺を呼ぶ。


 そしてそっと、俺に口付けをした。


「これからもよろしくね、リクト」

「ああ、愛してるよ、ユミーリア」



 その後、俺達のキスをしっかりと目撃していたみんなにキスをせがまれて、大勢の人の前でキス大会をする事になったのは、俺にとっての黒歴史であり、最高の思い出となった。




 それから時が流れた。


 俺は霊聖樹を管理する貴族をしながら、冒険者も続けていた。


 というか暇なのだ。霊聖樹を管理といっても、日々成長する霊聖樹を見守るだけだ。邪神の気配なんてありもしないし、地下のラストダンジョンはガレキに埋もれたままだ。


 エリシリアはロイヤルナイツの名誉顧問として城で働いている。

 日々兵士達の訓練を手伝っているみたいだ。


「たまにはリクトも訓練に参加してやってくれ。お前の剣や格闘技を見たいという兵士が多くてな。お前のファンも多いんだぞ?」


 エリシリアにはそう言われたが、俺としては面倒くさいので基本パスしている。


「ちなみに女性のファンとの交流は却下だ。お前は私のものなんだからな?」


 相変わらずエリシリアは直球だった。俺は恥ずかしくなって、顔が赤くなる。

 そしてそんな俺を見て、馬鹿者、恥ずかしがるなとエリシリアも顔を赤くする。


 しかし訓練に戻るとすぐにキリッとした表情に戻る。

 エリシリアは綺麗で美しく、可愛かった。



 コルットはリュウガ流の道場を開いた。

 コルットが師範となり弟子達の育成をしている。俺もその下の師範代という形でたまに参加させてもらっていた。

 さすがにリュウガの弟子としては面倒くさいからと断れないのだ。


「あ! おにーちゃんだ!」


 道場におとずれた俺を見て、コルットが駆けてくる。


 コルットは大きく……なってなかった。相変わらず小さいままだ。


「おにーちゃん、やっぱりおっきくないとダメなの?」


 コルットはそう言って自分の胸を見る。

 俺はちっぱいもでっぱいも好きだと言っているがそれでもコルットは納得しないみたいだ。


「大丈夫だ、いずれ大きく……なるのかな?」

「ぶー! おにーちゃんひどい!」


 コルットが俺をポカポカ殴ってくる。


「あはは、大丈夫だって。コルットが大きくならなくったって、俺はコルットの事、愛してるからさ」

「ぶー、またそうやってごまかして……」


 俺はそっとコルットの頭を撫でてやる。

 コルットはピクピクとケモ耳を動かして、気持ち良さそうにしていた。


「おにーちゃん、すき」

「ああ、俺もだ」


 コルットと過ごす平和なひなたぼっこ。俺にとっては一番の癒しとなっていた。



 コルットと違って、立派なレディに成長したのはプリムだ。

 幼女だったプリムは背もグングン伸びて、いつもコルットがうらやましそうにしていた。


「お兄様、こちらが今日の予定になります」


 俺の前にドバッと紙が置かれた。


「えー」

「えーじゃありません。王族ではないとはいえ、貴族として最低限こなして頂かなくてはなりませんから、観念してください」


 そう、いくら暇な貴族とはいえ、それなりにやる事もあるのだ。

 まあほとんどは他の貴族や王族と笑って飯を食うだけなんだけどな。


「この間の様に、マキ姉様を使って逃げたりはしないでくださいね?」

「はーい」

「お・兄・様?」

「は、はい、もうしません」


 プリムが顔を近づけてきて俺をにらむ。

 しかしフッと表情をゆるめると、そっとキスをしてきた。


「ちゃんとご褒美もあげますから、頑張って下さいね、旦那様」

「……おう」


 どうもプリムが大人になりすぎている気がする。最近はこうして手玉に取られる事も多くなってきた。

 なんだかんだ言って、あの女王様の血を引いているという事か。末恐ろしかった。



「それではリクト様、参りましょう」

「ああ」


 マキを連れ添って、俺はいつもの集会場へと向かう。


「これ、まだやらなきゃ駄目なのか?」

「はい、リクト様が神になる為には必要な事ですから」


 マキには俺が将来神様になる事を話しておいた。

 俺は将来、神様になる。それにはシリト教が必要で、マキはシリト教の実質管理者だったからだ。


「リクト様が神になるお手伝いができる……ああ、なんともメイド冥利に尽きます」


 それはメイドの仕事なのだろうかと思ったが、あえて突っ込みはしなかった。


「きたかシリト、さあ、今日もいっちょやってくれ」


 俺はヒゲのおっさんにそう言われて、祭壇上にあがる。

 そして今日も、俺は尻を光らせるのだ。


「ゴッドフラッシュ!」


 信者達が、俺の尻から出るピンク色の光に、祈りをささげていた。



「プーハッハッハ! 相変わらずリクト殿は面白いでござるなー」

「まったくじゃ! 尻が光る事で神様扱いじゃからな」


 ランラン丸とアーナがソファでくつろぎながら笑っていた。

 こいつらはマジ変わらん。いつもダラダラ生きていやがる。


「収納」


 俺がそう呟くと、俺の尻が光ってランラン丸とアーナを吸収し始める。


「いいいいやあああああ! やめて! 拙者もう人の姿になったんだから、それはやめてえええ!」

「というかなんでわしまで!? 嫌じゃ! 尻の中に入るのは嫌じゃあああ!」


 俺はランラン丸とアーナの頭がすっぽり尻にハマッた所で、プリッと外に出してやる。


「ううう、拙者もう、お嫁にいけない」

「お前は俺の嫁だろうが」


 ランラン丸がシクシクと泣いていた。


「ふむ、いっそ神の尻に突っ込んだ頭として信者どもに自慢して」

「おいよせヤメロ!」


 アーナはケロッとしていた。コイツ、強すぎる。



 その後、街の広場で……。


「あの神の尻を持つ男、素晴らしき尻魔道士であるリクトの尻に顔を突っ込んだ者がおる! そう、それこそが!」


「わしじゃよ!」


 そう言って自身を指差すアーナを見たが、俺は見なかった事にした。



 ユミーリアは、勇者として冒険者を続けていた。俺が冒険者を続ける理由のひとつがこれだ。


「ねえリクト、リクトは毎日忙しいんだから、私に付き合わなくてもいいんだよ?」

「俺がユミーリアと一緒に冒険したいんだよ」


 俺は今日もユミーリアと冒険に向かう。とはいえ、そんなに大変な事はない。ちょっと強いモンスターが現れたらユミーリアかもうひとりの勇者であるユウにクエストがふられるくらいだ。


「今日もいい天気だね」

「ああ、素晴らしい冒険日和だ」


 俺達は二人で空を見上げる。雲ひとつ無い、綺麗な青空だった。


 風がユミーリアの、黄金のトリプルテールをゆらす。

 それは今見た青空よりも、とっても綺麗で、美しかった。


「私ね、こうしてリクトと一緒に冒険できる日を、ずっと夢見てたの……今はその夢が叶って、とってもしあわせ」


 ユミーリアがこちらを振り向いて笑う。


「ああ、俺もだ。ユミーリアと出会って、ユミーリアとこうして一緒に過ごして、とっても、しあわせだ」


 ユミーリアがこちらに近づいてきて、俺の腕にしがみつく。


「今度は、子供達と一緒に冒険したいね」

「おお、それは楽しそうだ」

「うん。えへへ……リクト、好きだよ」

「俺も好きだ、ユミーリア……大好きだ、愛してる」


 さわやかな風が吹く中、俺はユミーリアに、そっとキスをした。




「緊急事態です! リクトさん!」


 ある日ラブ姉が俺達の家にやってきた。


「東のドラグーン山にオメガドラゴンが現れたらしいんです! すぐに出動してください!」


 オメガドラゴンか、久しぶりの強敵だな。


「よし、たまにはみんなで行くか!」

「おー!」


 俺の嫁達が手をあげる。


「トリプルテイルズ、出動だ!」


 俺、ユミーリア、コルット、エリシリア、マキ、プリム、アーナ、ランラン丸はそれぞれ冒険の準備をする。


 俺はマイホームの出口をドラグーン山の近くに設定した。


「頼みましたよ! みなさん!」


 ラブ姉のラブルンが大きくゆれて、俺達を激励げきれいしていた。

 そしてそんなラブ姉のラブルンを見ていたら、エリシリアに耳を引っ張られた。


「痛い痛い!」

「馬鹿者! 早く行くぞ」


 俺達は順番に外に出る。


 その時、ユミーリアがふっとどこかを見て、そっと呟いた。



「……ばいばい」



 ユミーリアがトリプルテールをひるがえし、マイホームの外へ出て、扉を閉じた。



 俺達はドラグーン山に向かい、新たなる強敵と戦いを繰り広げた。


 そんな日常が続いていく。


 幸せだった。

 俺にとってこの世界は……最高だった!





「お父さーん! そろそろご飯よ……ってまたそのゲーム? もう何週目?」

「そういうなよ、どうにもハマっちまって、何度もやりたくなるんだよな、これ」


 男はゲームをしていた。

 妻はそんな旦那を見て、ため息をつく。


「まあ、私も見るの好きだけどね、そのゲーム」

「ああ、特になんか、主人公の仲間のこいつが良い感じなんだよな」

「そうね、私もそのキャラクター、好きよ」


 そう言って、夫婦は主人公の隣の、ピンク色のキャラクターを見る。


「変な設定だけどな」

「そうね、でも……面白いじゃない」


 夫婦は笑った。

 しかし妻はすぐに現実に戻る。


「さあ、いいから早くセーブして、ご飯冷めちゃうわよ」

「わかったよ」


 男はゲームをセーブして、タイトル画面に戻る。



 タイトル画面には……

《クエストオブファンタジー外伝 勇者と素晴らしき尻魔道士》と表示されていた。




 THE END



終わりました! 

第二作目、神の尻を持つ俺がゲームの世界で最高のエンディングを目指す! これにて完結です!


ああもう思い入れが強くなり過ぎて、終わりたくない! といった気持ちでいっぱいです。

しかし、元々決めていたゴールにたどり着いてしまった以上、ちゃんと終わらせるのも自分の役目だと思い、走りきりました。


改めまして、ここまで読んで頂いて本当にありがとうございます。

皆様に感想を頂いたり、ブクマを頂いたり、日々のアクセス数を見てはげまされてきました。


まだまだ拙い文章ですが、少しでも楽しんで頂けたなら何よりです。


皆様の好きなゲームはなんでしょうか?

好きなゲームのヒロインやヒーロー達が集まる世界に行けたらどうでしょうか?


そんな妄想のキッカケになれば幸いです。


さて、現在は燃え尽き症候群でまだユミーリア達と離れたくないーといった感じなのですが、次回書きたい事も決まっています。

しばらくは書き溜めをして、また皆様の前に戻ってこれたらと思っています。


それでは、ここまでお付き合い頂き、本当に、本当にありがとうございました!

皆様にいつまでも、ピンク色のお尻の輝きがありますように。



2017.11.17 きゅんZ


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