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111/164

111、突入、魔王城!

 俺達は再び魔界を訪れていた。


 異世界から来た俺。

 クエストオブファンタジーの勇者、ユミーリア。

 ストレートファイター2の格闘家、コルット。

 サンダーの紋章の騎士、エリシリア。

 プリンセスメイドの元魔界の姫、マキ。

 ロイヤルぱにっくの勇敢な姫、プリム。

 そしてこの世界出身のエルフとドワーフの混血のアーナに、どこからきたのかわからない、刀のランラン丸。


 まさにオールスターだった。


 もしこれだけのキャラクターが集まるゲームがあれば、俺は間違いなく予約買いしているだろう。


「ところでアーナ、本当についてきて良かったのか?」


 俺は戦う力がないと豪語するアーナに話しかける。


「うむ、確かにわしは戦闘力は無いが、家族の大事な戦いにそばに居ないというのは嫌じゃ。心配するな、自分の身は自分で守る。最後までお主達と一緒じゃ」


 アーナはそう言って、みんなに笑いかけた。



 魔界の空は、相変わらず紫色の雲におおわれていて、雷鳴がとどろいている。


 地にも空にもモンスターだらけ。


 今回は魔王が魔界に戻ってきているせいか、前に来た時よりも空気が重苦しい気がする。


「しかし、これが魔界か、わしも初めてきたが、なんとも暗い感じじゃのぉ」

「ええ、邪悪な気配がただよっています。あまり長居はしたくありませんね」


 魔界に初めてきた、アーナとプリムは魔界の空気にふれて、その顔をゆがめた。


 確かに、魔界はあまり良い印象とは言えない。


 しかしこれでも一応、マキの故郷なのだ。


 俺はマキを見る。


 マキは俺の考えを察したのか、ニッコリ笑って頭を下げた。


「リクト様、お気遣いありがとうございます。しかし今の私は人間のマキです。もはやここは私にとっても、暗い感じで邪悪な、あまり長居したくない場所なのです。今回の事で魔界が滅びても構いません」


 マキが俺にしか聞こえないくらいの小さな声で語る。

 そんなもん、なのかな。


「それに、すでに私にとって大切だった存在は、魔王の手により消されています。リクト様も、魔界に対してはどうかご容赦なきよう、お願い致します」


 そうか、そういう事か。


 マキにとって大事なもの、先代の魔王やその側近は、すでに魔王に殺されている。

 だからこそ、マキにとって魔界とは、むしろ憎むべき存在となったんだ。


「そんな顔をしないでくださいリクト様。私は再び大事なものを手に入れました。リクト様をはじめ、ユミーリア様にエリシリア様、コルット様にプリム様。そしてアーナ様とランラン丸様。大事な家族、大切な人達。私は今、しあわせです」


 そう語るマキの肩を、俺は思わず抱いた。


「必ず魔王をぶっ倒して、みんなで帰るぞ」

「はい」


 俺達は、はるか先に見える魔王城を見る。



「なんだか、二人で勝手にいい感じになってる」

「今だけはそっとしておいてやるのじゃユミーリア。マキにとって、この戦いはとても大事なものなのじゃよ」


 ユミーリアがむくれていた所に、アーナが声をかける。


「そういえば、魔王軍のやつらがマキの事を何度か姫と呼んでいたな。何か関係があるのか?」


 マキはウミキタ王国の姫だ。だから姫と呼ぶのは間違いではない。

 だが、なぜ魔王軍が姫と呼ぶのか、エリシリアはほんの少しだが疑問に思っていた。


「わしもよくは知らぬ。しかしわしはエルフの血が混じっているので多少耳が良くてな。二人の会話が聞こえてしもうた。マキにとって大事な何かがこの戦いにはある。だからこそ今は、そっとしておいてやるのが一番じゃ」


 ユミーリアとエリシリアがいまいち納得のいかない顔で、お互いを見る。


「それにのぉ、マキのやつ、リクトだけでなく、わしらも大事な家族じゃと言っておったぞ? ここはつまらぬ嫉妬ではなく、そっと支えてやるのが良いとわしは思うぞ」


 アーナの言葉を受けて、ユミーリア達はお互い笑ってうなずきあい、リクト達の意識が戻ってくるのを待つ事にした。



「マキ、魔王はあの、魔王城に居るんだよな?」


 俺はずーっと先の方にかすかに見える、城っぽい建物を指差した。


「はい。魔王が居るとすればあの魔王城でしょう」


 マキは魔界出身者、というより魔族から人間に転生した身だ。魔界の事なら、マキが一番詳しい。


 俺達はマキの案内の元、魔王城へと向かった。


 魔王城へ向かうには、途中に深い谷や森があった。


 道中、相変わらずモンスターが襲ってきたが、コルットの遊び相手にしかならなかった。


 プリムも修行の成果を見せると張り切っている。


 プリムはゲームの様に、衣装チェンジなんて芸当は出来ないみたいだったが、コルットと同じく、格闘と魔法をうまく使って戦うスタイルだった。


 コルットが格闘重視、プリムが魔法重視といった感じだな。


 二人は仲良くモンスターを倒していた。


 谷を越え、森の中を進み、やがて魔王城が近づいてくる。



 森を抜けると少し開けた場所に出た。


 そこから魔王城へと道が伸びている。


 その道の途中に、見覚えのある魔族が居た。


「やはりきたか」


 ライオンの顔をした魔族、六魔将軍のひとり、ライトニングレオだった。


「魔王様の邪魔はさせん。今すぐここから立ち去るのであれば見逃してやるが、逆らうというのであればここで死んでもらうぞ」


 ライトニングレオ……いちいち名前が長いな、レオでいいか。レオが巨大な剣を背中の鞘から抜いた。


 真っ直ぐにその剣先をこちらに向けてくる。


 当然、俺達は引く気はない。


「引かぬか。ここまできたのだ、当然だな……ならばそこの男、お前が戦え」


 レオは俺に剣を向ける。


「俺は女を斬る趣味はない。貴様が死ねば、残りの者は立ち去ってもらおう」


 そういえば、ゲームでもそんな様な事を言っていたな。それでマキになめるなと攻撃されて、戦闘が始まるんだっけ。


 なら俺も、同じ様にしてみるか。


 俺はランラン丸に手をかける。


「なめるな!」


 俺は地を蹴って、レオとの距離を詰める。


 そしてランラン丸を抜き、レオの剣を弾く。


「ぐっ! 面白い、貴様……できるな!」


 レオはすぐさま両手で剣を持ち、振り下ろしてくる。


 俺はそれをかわし、半回転した勢いで、刀でレオの身体を斬りつける。


「ぐあっ!」


 刀はレオの左脇腹を斬り裂き、紫色の血が噴き出した。


 俺はその勢いのまま、刀を振りかぶり、斜めにレオを斬り裂いた。


「ぐ、ぐおおお!!」


 決まった。


 そう思ったが、レオは剣を振り回し、こちらに攻撃してきた。


「うお!」


 俺は刀で受け止めるが、勢いが強く、弾き飛ばされてしまう。


 なんとか姿勢を保ち、再び刀を構える。


 レオも身体から血を噴き出しながら、剣を構えていた。


「ハッハッハ! 俺とここまで戦える戦士だったとはな。正直、ただ尻が光るだけの男かと思っていたぞ!」


「これでも、他の六魔将軍を倒してきてるんだけどな」


 俺のその言葉を聞いて、レオがうっすらと笑う。


「そうだったな。これほどの力だ。他の六魔将軍では勝てないのもうなずける。だが……俺は他の将軍とは一味違うぞ?」


 レオはそう言うと、剣を地面に突き刺した。


「コオオオオオ!」


 レオはうなり声を上げて、気を高める。


 全身の毛が逆立ち、毛の色が、黒く染まっていく。


「ガアアア!!」


 一度大きく叫ぶと、レオの全ての毛色が真っ黒になり、全身から黒いオーラが立ち上がってきた。


 あの黒いオーラ、どこかで見た事がある気がする。


 ……ああそうか、オウガと同じなんだ。


「その力、邪神の力か?」


「ほう? 知っていたか。その通りだ。我らが魔王ゾウマ様を導き、我に力を与えてくださったお方、それが邪神様だ」


 邪神か。


 これまで姿すら見ていないが、もしかしたら、今回あいまみえるかもしれないな。


「さあ、ここからが本当の戦いの始まりだ! いくぞ! ピンクの男!」

「ああ、こい! ライオン野郎!」


 俺達は互いに地面を蹴って、お互いの距離を詰める。


 剣と刀で、激しく打ち合う。


 10、20と打ち合った所で、一度お互い距離を置く。


「はぁ、はぁ、はぁ、人間が、ここまでやるとはな」


「ふう、いい加減、観念して欲しいぜ」


 お互い、肩で息をする。


 だが、消耗具合は同じではなかった。


 レオはすでに大きく息があがっているが、俺はまだ余裕がある。


 重力修行の成果だ。


 限界まで修行して回復し、再び修行を続けるという事を繰り返した結果、俺達のスタミナは通常よりもはるかに上がっていた。


 それを察した俺は、手数で勝負をつける事にした。


「海の尻!」


 俺の尻が光り、白濁液が尻からしたたり落ちる。


 後ろでみんなが距離を取るのがわかり、ちょっと悲しくなる。


 海の尻によってスピードが上がった俺は、何度も何度も、レオを刀で斬りつけた。


 レオもそれを剣で防ぐが、次第に追いつかなくなってくる。


「ぐっ! 貴様、スピードが! 何をした!? うおっ! なんだこの汁は! ベタベタして気持ち悪い!」


 刀を振るう際に、俺の尻から出た白濁液がレオに降りかかっていた。


 ちょっと申し訳ない気もするが、カンベンしてほしい。


 攻撃を続ける内に、やがて俺の攻撃が通る様になる。


 斬りつけられた先から血が噴き出し、レオの体力を削っていく。


「が、ガアア! ぐうっ! おのれ、この、俺が!」


「これで終わりだ! 今のお前じゃ防げまい!」


 俺は一度大きく息を吸い込み、必殺技を叩き込む。



「爛々百烈斬らんらんひゃくれつざん



 すさまじいスピードで、敵を100回斬りつける。


「グアアアア!」


 レオが全身から血を噴き出して、倒れた。


「み……見事だ……貴様、名は?」


 俺はレオを見下ろして、答えた。


「リクトだ」


「シリ? ……すでに耳がよく聞こえん。シリト、か? フフ、貴様の名前……地獄にいっても忘れんぞ」


「おいちょっと待て!」


「さらばだ、シリト、我が宿敵よ」


 レオはそう言うと黒い霧となり、消滅した。


「どう聞き間違えたらそうなるんだよ! 俺の名前はリクトだあああ!」



 俺の叫びが、魔界の空に響いた。



「リクト、大丈夫だよ。私達はちゃんと、リクトの名前、覚えてるからね?」


 ユミーリアが俺をなぐさめてくれる。


 ちなみに俺のテンションが低いのは、レオに名前を間違って覚えられたから、というだけではない。


 尻がグチョグチョしている。


 先ほどの海の尻のせいで、ズボンとパンツが白濁液でグチャグチャなのだ。


「ごめん、やっぱりちょっと履き替えてくる」


 俺はみんなに断って、マイホームを出して部屋に戻った。


 白濁液まみれのズボンとパンツを見て、ちょっと泣いた。



 再び魔界に戻った俺は、魔王城へと侵入する。


 中には、モンスターの気配はなかった。


「おそらく魔王は、最上階にいると思われます。急ぎましょう」


 マキが階段をのぼっていく。


「コルット、何か罠があるかもしれない。マキと一緒に先頭に立ってくれ」

「うん、わかった!」


 コルットは罠を見抜くのが得意な種族だ。こういう時、本当に頼りになる。


 コルットがケモ耳を動かしながら進んで行き、俺達はその後ろを警戒しながらついていく。



 やがて、大きな広間に出た。


 広間に足を踏み入れた瞬間、笑い声が響いた。


「ホーーーホッホッホ! ようこそ姫様! そしておろかなる人間共よ!」


 かなり高いキーの男の声だった。


 どこから聞こえてくるのかと警戒していると、広間の真ん中に、紫色のローブをまとった男が現れた。


 ローブで顔は見えないが、顔色が青い事から人間ではなく、魔族だという事がわかる。


「お待ちしておりました。どうやらライトニングレオ様は倒されたみたいですね。いやはや恐ろしい」


 どうにも不気味な男だった。


 何が楽しいのか、常に笑っている。


「ですが、それもここまでです。この私、キョウフクロウがあなた達に真の恐怖を与えてあげましょう」


 顔をおおっていたローブがめくれ、フクロウの顔が見えた。


「いでよ! 恐怖の戦士達!」


 キョウフクロウがそう叫ぶと、手前に3本の光の柱が現れる。


「気をつけてください、やつは六魔将軍ほどの力はありませんが、相手の思考を読み取り、怖いと思うものの姿をしたモンスターを生み出します。モンスターの力自体は強くはありませんが、恐怖にのまれれば、危険です!」


 マキが俺達に注意をうながす。


 怖いものか、いったい、何が出てくるんだ?


「さすがは姫様! しかし私は知っているのですよ? あなた達のパーティは、そこの男が中心だと! ゆえに私が生み出すモンスターは、そこの男が恐怖するもの! さあ、怯えるがいい!」


 光の柱から、モンスターが生まれてくる。


 俺が恐怖するものだと?


 悪いが俺には思い当たるものがない。きっと大した事はないだろう。


 3体のモンスターが、形を成していく。


 その姿は……


「え?」



 ひとりは、ふんどし一丁のヒゲのおっさんだった。


 ひとりは、ふんどし一丁のデンガーナの王様だった。


 最後のひとりは、ニコニコ笑った、ふんどし一丁のユウだった。



「ヒゲゴロウ殿?」

「お父様!?」

「にいさん?」


 みんなその姿に驚いていた。そして、俺を見た。


「……」


 俺はなぜか、嫌な予感がした。


 おっさん達はこちらを見ると、低いうなり声をあげた。


「揉ませろ」

「撫でさせて頂戴」

「撫で撫でしますよー」



「その尻を、生でっ!」



 怖ええよ! ていうか最後の、ユウじゃなくて神様だろ! 俺の中の神様のイメージだろそれ!


「えーと、なんだ? お前、これが怖いのか? なんかこう、思ってたのと違うんですけど」


 キョウフクロウが困惑していた。


 みんなもわけがわからないといった感じだ。


 ただひとり、俺だけが恐怖していた。


「シリトぉおおお!」


 ふんどし姿のおっさん達と、笑顔のユウが、恐ろしい勢いで俺にせまってきた。


 俺は思わず構えるが、男達は攻撃はしてこなかった。


「ソイヤ!」

「ソイヤ!」

「ソイヤ!」


 ふんどし姿の男達が、叫びながら俺の周囲をまわる。


「ソイヤ!」

「ソイヤ!」

「ソイヤ!」


 そして、順番にサッと尻を撫でてくる。


 怖ぇ、普通に怖ぇえよ!


 こんなもん誰でも恐怖するわ!


「はっ! り、リクト!」


 ユミーリアが意識を取り戻して、俺の名を呼ぶ。


 みんなもユミーリアの声で、意識を取り戻したようだ。


「ほ、ホーホッホッホ! なんだかよくわからない状況に混乱してしまいましたが、よく考えればそいつらはお前達の身内の姿! 身内の姿が相手では攻撃できまい! モンスター達よ、その男を殺せ!」


 キョウフクロウが男達の姿をした、モンスターに命令を出す。


「ソイヤ!」

「ソイヤ!」

「ソイヤ!」


 しかし、モンスター達は順番に俺の尻を撫でては俺の周囲をまわっているだけで、攻撃はしてこなかった。


「な、何をしている! なぜだ! なぜ攻撃せず、尻を撫でるだけなのです!?」


 むしろこっちが知りたい。


 そしてすごく汗臭い。

 むさくるしい。


 なんという恐怖。


 男達のあまりにも真剣な顔に、手が出せない。というか出したくない。


 そうこうしている内に、俺のまわりに熱気がうずまいていた。



 俺は男達のかもし出す熱気によって、意識が遠のいていくのを感じていた。



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