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107、ロイヤルなお姫様

 俺達はついにデンガーナにたどり着いた。


 たこ焼きそっくりなマルダコを食べたり、他にもおいしそうな匂いがしたり、にぎやかなこの国がちょっと好きになっていた。


 だが、そんな気分を一発で吹き飛ばす人が出てきた。


「いやーーーん! リクトちゃんったら、ピンク色でかーわーいーいー!」


 デンガーナの、王様だ。


「もうね、ウワサに聞いてから直接見てみたかったのよー。でもほら、アタシって王様じゃない? なかなか外に出ていけないのよねー。ねえリクトちゃーん。アナタのピンク色に光るオ・シ・リ、見せてくれない?」


 王様がクネクネして俺にお願いしてくる。


 俺の背中に、嫌な汗が大量に流れていた。


「は、はぁ、わかりました」


 俺は大人しく後ろを向いて、尻を光らせる。


「ゴッドフラッシュ」


 俺の尻が、ピンク色に激しく光る。


「あんっ! すごい、すごいわリクトちゃん! これは確かに、神の光ね! でもすっごくまぶしい!」


 王様が手を顔の前に出し、光をさえぎりながら俺の尻を見る。


「なるほど、みんながあなたを求める理由がわかったわ。あなたのその光、とっても暖かくて綺麗だもの。アタシも、ちょっとやる気出てきたわ」


 王様がしゃべる度に身体をクネクネ動かしている。


 控えめに言って気持ち悪い。


「カマーン様、私達は今、勇者の装備を集めています。この国の西の海底にその勇者の装備がある様なのですが、何かご存知ありませんか?」


 マキが王様の動きに動揺する事なく、丁寧におじぎする。


「んもうマキちゃんッたら、同じ王族なんだから、アタシの事はカマちゃんで良いって言ってるのに!」


「いえ、お断り致します」


 バッサリと断った。


 マキの返答に、王様は自身の身体を抱きしめる。


「あんっ! その冷たい態度、ステキ! ゾクゾクきちゃう! ね? リクトちゃん」


 なぜ俺に聞く。


 そしてさっきから動きがいちいちウルサイ。


「そうねえ、確かに我が国には、勇者の装備についての伝説が残っているわ。教えてあげてもいいんだけど……それには条件があるわ!」


 条件か。

 簡単には教えてもらえないとは覚悟していたが、いったいどんな条件を出してくるつもりだ?



「そう身構えないで。簡単な事よ? リクトちゃんには、私の娘をもらって欲しいの」



 なん……だと……?


「お、王様……け、結婚してたのか!?」

「え? そこ?」


 てっきり男しか愛せない人なのかと思ったが、どうやら違ったみたいだ。


「もうリクトちゃんったら、アタシだって王様なんだから、結婚くらいするわよー」


 結婚する理由が王様だからってのはどうなんだろう?


 どうもこの王様、言ってる事がいまいちかみあわない。


「リクトちゃん、これって大事な事よ? 注目される人間や大きな力を持つ人間には大きな責任がともなうの。アタシやリクトちゃんが、望まぬ結婚をしなきゃいけないのも、そのひとつよ?」


 責任か、前にもマキが言っていたな。


 だが……


「ひとつ、訂正してもらいたい。俺はユミーリア達と望んで結婚するんだ。望まぬ結婚なんて言わないで欲しい」


「……そうね、失言だったわ。アタシも妻の事は愛しているし後悔はしていないわ。ごめんなさい。撤回するわ」


 王様がうれしそうに笑った。


 どうやら、1から10までふざけている人ではないようだ。


「とはいえ、これまでは望んだ相手でも、これからはそうはいかないかもしれないわよ? 現にリクトちゃんには、嫌でもアタシの愛する娘と結婚してもらうんだから」


 この王様の娘、か。

 あんまり良いイメージないな。


 ヒゲのおっさんみたいな女性が出てきそうな気がする。


 俺は想像して、ゾッとした。


「あの、勇者の装備の事は自分達で探しますんで、お断りしてもいいですか?」


「ダメよん。あなたが拒否するなら、縁もゆかりもない国々にこれ以上の援助は出せないわ。そうなると、帝国との戦いで困るでしょ?」


 うーん、そうきたか。


 俺はマキとエリシリアを見る。


 二人は黙ってうなずいた。


「アタシもいじわるで言ってるわけじゃないのよ。そうでもしないと、色々うるさい人達が多くてね。善意だけでは人もお金も動かないのよー」


 なるほど、そう言われると理解できないほど俺も馬鹿じゃない。


 人が動くのにはお金がかかる、お金が動くのには理由がいる。


 身内の危機でもない限り、簡単にはお金も人も動かせない、か。


 そうなると、自分達の身内が他の国に居た方が都合が良いという事だ。


「他の国の王子様とかと結婚すればいいんじゃないのか?」


 俺は疑問に思った事を素直に聞いてみる。


「ダメよー。それだとその国しか助けられないじゃない? セントヒリアとウミキタとパッショニア、そしてウチのデンガーナが一致団結して帝国と戦うとなると、中心になる存在が必要なのよ。それがリクトちゃん、あなたってわけ」


 なんとも、都合が良いように利用されている気がしてきた。


 だけどまあ、どうせ帝国とは戦わなければならないし、マキやエリシリアの話を聞いていると、デンガーナの支援ってのは無いと困るレベルなのは確かなのだろう。


 だからって、会った事もない相手と結婚ってのはなぁ。


「カマーン様、リクト様はお会いした事もない姫様と結婚するという事に難色をしめされています。ここは一度、姫様に会わせて頂いてから決める、という事でどうでしょうか?」


 マキが俺の意図を汲み取って提案してくれる。


 先ほどまでの話を聞いているとほとんど強制っぽかったが、そうでもないのか?


「そうね! まずはお見合いからよね! さっすがマキちゃん。それじゃあ呼んでくるから、待っててね」


 王様がクネクネしながら奥へと歩いていった。



「なあ、マキ」

「はい」


 俺はみんなの方を振り返る。


「俺、お前達以外と結婚したくない」


 正直な俺の気持ちを告げてみた。


 その言葉を聞いて、みんな若干うれしそうな顔をした。


「リクト様、そのお言葉は大変うれしいのですが、リクト様の立場上、そうはいきません。私はリクト様の立場に近いのでなんとなくわかりますが、これはおそらく価値観の違いです。受け入れてください」


 マキがそう言って頭を下げる。


 価値観の違い、か。


 立場に近いというのは、お互い異世界から転生したという事だろう。


 俺はこことは全然違う世界で、マキは魔界という違いはあるが、異なる世界、異なる文化である事は確かだ。


「変なヤツだなリクトは。普通は嫁が増えると男はよろこぶものだが……まあ、お前を独占したい気持ちがないわけではないから、私としてはお前のその気持ちはうれしいがな」


 エリシリアが顔を赤らめて俺の腕に引っ付いた。


「だが、お前はすでに認められた人間だ。お前が嫁をとらないと国家間の問題が起きるのだ。私としてはそれは本位ではない。だからリクト、一緒に受け入れよう。お前一人ではなく、私達みんなで受け入れるんだ」


 みんなで受け入れる、か。

 その発想はなかった。


 そうだ。結婚するとなれば、それは俺だけの問題じゃないんだ。


「そうだよリクト。何もリクトひとりが頑張らなくてもいいんだよ? それに私達もどんな人がくるのか、ちょっと不安だしね。リクトと一緒だよ?」


 ユミーリアが苦笑する。


 そうだよな。結婚すれば、みんなで一緒になるんだ。

 不安なのは俺だけじゃない。


 ちょっと気持ちが軽くなった。


 やっぱりみんな、最高だ。最高の嫁達だ。


「わっ」


 俺はユミーリアとエリシリア、マキを一緒に抱きしめる。


「ありがとう、ちょっと気持ちが楽になった」


「えへへ」

「そ、そうか、それは良かった」

「リクト様」


 三人が俺に身を預けてくる。


「わたしもー!」


 コルットが足に抱きついてきた。

 俺はコルットを抱きかかえる。


「そうだな、コルットも一緒だな」

「うん!」


 コルットの笑顔が咲いた。


「ふふふ、そして最後はそう!」


 アーナが一度ジャンプして自身を指差す。


「わしじゃよ!」


「え?」

「え?」


 俺とアーナがお互い不思議そうな顔をする。


「えってどういう事じゃ?」

「俺、お前と結婚するつもり、ないぞ?」

「え?」


 一瞬、沈黙が場を支配する。


「なぜじゃ!」

「むしろなんで勝手に俺の嫁になっているんだよお前は」


 俺はユミーリアとエリシリアとコルットとマキとは婚約したが、アーナとは婚約した覚えはない。


「酷いのじゃ! 今までの流れからすれば、パッショニア代表はわしじゃろ?」

「えー」


 アーナは見た目は好みだが中身がイロモノすぎてなぁ。


「ほら、パッショニアはまだ国じゃないし」

「カマセーヌが聞いたら泣くぞ、それ」


 うーん、どうしたものか。


 この国の姫様もそうだが、パッショニアからも嫁をとらないといけないんだよな。


 面倒だがユミーリア達が受け入れると覚悟を決めている以上、俺も受け入れなければなるまい。


「とにかく、みんなの気持ちはわかった。俺も前向きに受け入れようと思う。だけど、どうしても無理だったら、その時は断るからな?」


「はい、それは仕方ありません」


 マキも納得してくれたみたいだった。



「待たせたわねーん!」


 王様が奥から戻ってきた。


 その隣には、綺麗な女性、おそらく女王様と……小さなお姫様が居た。


 お姫様は、真っ赤なウェーブがかかったロングヘアーで、身長はコルットと同じくらい小さいが、その瞳には、強い意志が宿っている様に思えた。


「初めましてリクト様、プリムと申します」



 なるほど、そうきたかぁ。



 俺は忘れていた。というよりその可能性を考えていなかった。


 これまで俺の嫁候補は、みんなゲームで知っているキャラだった。


 さすがにもうこれ以上は出てこないだろうと思っていたのだ。


 だけど、また出てきちゃったよ。



 現れたお姫様は、ゲーム《ロイヤルぱにっく》の主人公、プリムだった。


 ロイヤルぱにっくはアクションゲームだ。

 ワルイゾウ帝国から国を救う為に、お姫様が跳んだり魔法を使ったり大きなスプーンを使って敵を倒したりして進む横スクロールアクションで、最後はワルイゾウというゾウみたいな敵と邪神を倒して……


 あー、考えてみればあれか。


 今俺達が戦っている、魔王ゾウマがワルイゾウに当たるのか。そしてアクデス帝国がワルイゾウ帝国で、やっぱり邪神がバックに居ると。


 ここまでくるとアレだな、出てくるべくして出てきたキャラなのか。


 そしてこのデンガーナは、ゲーム中では名前が出てこなかった、ロイヤルぱにっくのお姫様の国だったのか。


「あの、リクト様?」


 プリムが反応の無い俺を心配して、もう一度話しかけてきた。


「あ、ああ、すまん、考え事をしていた」


 俺はあわてて取り繕う。


 それにしてもだ、ゲームだとドットだったし、説明書にも小さなお姫様と書かれていたが、本当に小さいな。


「あの、王様、さすがに小さすぎませんか? まだ結婚には早いんじゃ?」


「あら? あなたの後ろに居るその子は、あなたの婚約者じゃないのかしら?」


 王様はコルットを見ていた。


「いえ、コルットは確かに俺の婚約者ですけど、コルットもまだ早いと思ってるんですよ?」


「愛に歳の差なんて関係ないわよ! それにウチの子はしっかりしてるし、きっとリクトちゃんの役に立つわよ! ね? プリム」


 王様がプリムに向かってウインクをする。


「はい、お父様。リクト様、私の事を気遣って頂いているのはわかります。でも、私もいつまでも子供ではありません。全て承知の上で、リクト様のお嫁さんになる決意を致しました」


 プリムはスカートのすそをつまんでおじぎする。


 確かに受け答えはしっかりしている。

 ゲームでも強い意志を持ったしっかりとしたお姫様だった。


 でも……それでもだ。


 コルットだってまだまだ親離れできていないんだぞ?


 どう見ても同じくらいのこの子がひとりで嫁に来るなんて、大丈夫とは思えない。


「プリム様」


 マキが前に出る。


「マキ様、お久しぶりですわね」


「ええ、お久しぶりです。プリム様、失礼ながらリクト様の嫁になるにあたって、ひとつ質問がございます。よろしいですか?」


 プリムがジッとマキを見つめる。


 そしてゆっくりと頭を下げた。


「はい、なんなりと」

「ありがとうございます。聞きたい事はひとつです」


 マキはプリムを見つめて、少し間を置いてから、口を開いた。


「あなたにとって、一番大事なものは、なんですか?」


「リクト様ですわ」


 即答だった。


「かしこまりました。リクト様、私はプリム様でよろしいかと思います。いかがでしょうか?」


 いかがでしょうかと言われても、正直困る。


「私も、ひとついいかな?」


 エリシリアが手をあげる。


「はい、なんなりと」


 そんなエリシリアに、プリムは涼しい顔で答える。


「これから私達は、魔王軍や帝国、そして邪神と戦う事になる。つらい修行にも参加してもらう事になるかもしれん。それでもついてこられるか?」


「はい、事前にお話は聞いておりましたから、戦う覚悟は出来ております」


 これも即答だった。


 まあ、ゲームだと自らひとりで帝国に乗り込むくらいだもんな、この子。


「はい! 私も、いいですか?」


 今度はユミーリアだ。


「はい、どうぞ」

「ありがとうございます!」


 ユミーリアが前に出て、俺の背中を押す。



「リクトの顔、どう思いますか?」


 ……何を言ってるんだこの子は?


「……」


 さすがに即答とはいかなかったか。


 というか何聞いてるんだよユミーリア、プリムも困ってるじゃないか。


「その、世間一般的なイケメン、という感じではないと思いますが……正直、実際に会ってみて、なんといいますかその、意外と好みというか、ちょっと、カッコイイと思います」


 プリムが顔を赤くしてモジモジしはじめた。なんか可愛い。


「やったねリクト! このお姫様なら大丈夫だよ!」


 ユミーリアが満面の笑みを見せる。


 とりあえず、ユミーリアも納得した様だ。


「なんと、この子も趣味が悪、いや、呪われた感受せ、いや、変わった子でござったか」


 ランラン丸が驚愕していた。


 誰の顔が趣味悪いだコノヤロウ。


 最後にコルットが、トテトテとプリムの元へ歩いていく。


「わたし、コルット」

「プリムです。よろしくお願いしますわ、コルット様」


 プリムがコルットに手を差し出す。


「コルット!」

「……ええ、わかりましたわ、コルット」


 少し驚いた顔をしたが、すぐに笑顔になり、再びコルットに手を差し出した。


「うん、よろしくね、プリム!」


 コルットがニッコリ笑って、プリムと手を繋いだ。


 プリムもさっきまでの表情とは違い、歳相応の顔をしていた。


 コルットの友達としても、プリムは良いのかもしれない。


 みんなが認めたんだ、俺も覚悟を決めざるを得ないか。


「フッフッフ、やはり最後はこうなったか。そう、最後にお姫様に質問するのは……!」


 アーナが勢いよく3回転くらいする。

 そして止まって、自身を指差す。


「わしじ」

「王様」


 俺はアーナの主張をさえぎって、王様に話しかけた。


「んー? どう? 気持ちは固まったかしら?」


「……はい」


 俺は一度、深く深呼吸した。


 そして……ガバッとその場に土下座した。


「娘さんをください!」


「ええ、いいわよ! 大事にしてあげてね」



 こうして、俺の新たな仲間、そして新たな嫁が増えた。


 まだお互いの事は良くわかっていないけど、それはこれから知っていけばいいだろう。


「よろしくな、プリム」

「ええ、よろしくお願いしますわ、リクト様」


 俺はプリムの小さな手を取った。


 なんとなくだけど、うまくやっていける気がした。




「……わしじゃよ?」


 アーナの小さなつぶやきは、コルットしか聞いていなかった。



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