僕
僕の夢は小説家だった。ずっとバイトしながら頑張っていた。めげずに、諦めずに努力した。でも夢は結果【夢】で終わってしまった。努力も、汗も涙も全て儚く消えた。
僕はそんな僕が世界で一番嫌いだった。何のために頑張っていたのかすらもわからなくなってしまった僕が大嫌いだった。僕は僕であり続けるのが嫌になって、ゲームに逃げてしまった。
でもその判断は今は間違いじゃなかったと言えるんだ。現実の僕自身とは正反対の僕、仮想世界の僕【Yukise】をつくったからこそ、今の僕は強くいられる。
努力を、「頑張る」ことをまた出来るようになったのだから。
疲れきった自分が携帯の画面に反射してうつる。なんて酷い顔だ。僕は前からこうだったか?こんなにゲッソリと...痩せ細っていただろうか?
ああ、きっと疲れてしまったんだな。頑張ることに、努力することに。夢は小説家なんだ、なんて思って頑張ってきたけど、結局どれも不採用、不合格ばかり。
何がダメなんだ、何が足りないんだ。わからないことだらけでいつしか夢すらもわからなくなってしまった。ああ、そうだ。もうやめよう。僕には無理難題だった。そうさそうさ、向いてなかったんだ。やめてしまおう。
そんなふうに自分の夢と決着をつけた雪野瀬 翔はパソコンの中に沢山ある不採用や不合格となった作品データを消そうと思い立って起動した。
データ消すためだけにパソコン開くのもなぁ。開いたあとに気付くなんてね、はははは。気分転換にゲームでも入れてやってみるか。
なんか面白そうなのないかな。
データをいっきに削除した後、今度はゲームを探し始める翔。小説を書くために身につけたキーボードのタイピングスピードはとんでもないはやさ。そのはやさを今はなんとゲーム検索に使っているとは皮肉なのかどうなのか。
カタカタと部屋中に鳴るタイピング音。それがぴたりとやんだのは始まりやから約十五分後である。