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新米教師の革命クラス  作者: YUME
欠陥クラス?
4/6

二日目

 ジリリリリッ


 耳元で鳴り響く悪魔の鳴き声。


 カチッ


 俺は、腕を真上に伸ばして止めた目覚まし時計の針を眺める。

「……んんっ……ん?」

 視界が鮮明になっていき、時計の針の数字を見る。

 長針は11と12の間、短針は7と8の間を指していた。

「…………やっべぇぇぇぇ!?」

 布団から飛び起き、急いで準備する。

 家から出て鍵を掛ける。そして学校に向かって走り出す。

 それなりに走ったところでふと思った。

「……あれ!? なんか既視感デジャブ!?」




 キーンコーンカーンコーン


「……まったく、どうしてあなたはいつもいつも私を焦らせるのですか」

 やれやれといった表情で凛が視線を向ける。

「毎度毎度申し訳ございません」

 凛の視線の先で俺が正座する。

 周りから見たら廊下で変なことをしてるようにしか見えないだろう。

「申し訳なく思うなら少しは改善できるように努力したらどうなのですか」

 目の前でぷりぷり怒っている凛も可愛いと思ってしまうのはおかしいのだろうか……。

「ちょっと和人! 聞いているのですか!」

「は、はい! 最善の努力はしています!」

「それでは、どのような対策をしているのですか」

「えっと……目覚まし時計を増やしたり……」

「結果が伴っていませんが」

「うっ、言い返せない……」

 苦し紛れの言い訳もすぐに跳ね返される。

「凛ちゃんせんせー、何やってるのー?」

 背後から聞こえてきた声は昨日聞いた覚えのある声だった。

「伊澤さん、おはようございます。どうもこうも見ての通りですよ」

 後ろを振り向くと昨日、担当クラスになった生徒の一人。伊澤葵いざわあおいだった。

「見ての通りって言われても周りから見たら、廊下でおかしなことをしてる人にしか見えないよ」

「ほらみろ、伊澤もこう言っているぞ」

「和人、あなたが口出す権限はありません」

「そうだよせんせー」

「………………」

 味方がいるのかいないのかよく分からない状況なんだけど……。

 途中から怒られていたはずの俺が省かれて、凛と伊澤の話し合いが続いた。

 しばらくすると……。

「何しているんですか……」

「おお、青山。いいとこに来たな」

 これまた現れたのは、昨日の自己紹介で一番最初に自己紹介をした青山悠斗あおやまゆうとである。

「……それで、鳥海先生と伊澤さんは何の話し合いをしているのですか」

 青山が首を傾けながら訊ねてくる。

「さあ、俺も途中から全く把握をとしてない」

 二人の話し合いはHRホームルームの時間まで続いた。



「よーし、出席とるぞー、青山悠斗」

「はい!」

「伊澤葵」

「はーい」


 ……………………時間経過


「おーし、全員来てるなー。そんじゃ鳥海先生から何か今日の一言」

「ふぇ!?」

 俺からのムチャ振りに凛が素直に反応する。

「おー! 凛ちゃん先生期待!」

 すぐに伊澤がノッてくる。

 すると、クラス内が凛に期待する雰囲気に包まれる。

 (フッフッフ、さっきのお返しだ♪)

「えっと……皆さん、今日は遅刻する人も遅刻しそうな人もいなくて素晴らしいと思います。ところで、どこかの担任教師のように遅刻ギリギリで来る人がいましたので皆さんは遅刻をしないようにしましょう」


ギクッ


「「「はーい」」」

「ってか桐島先生、今日遅刻したのかよ」

「マジかよ先生ー。ちゃんと朝起きろよー」

 クラス内に笑いの渦が巻き起こる。

「くっ……」

「自業自得ですよ、和人」

 言い返せない……!

「さ、もうすぐ授業始まりますよ。授業の準備をしましょう」

 凛の締めでクラス中が授業の準備を始める。

「今日から本格的な教師生活が始まりますよ、桐島先生」

 クラス中が準備をしてる中、凛がそっと声を掛けてくる。

「あぁ、またよろしくな鳥海先生」




 一時間目 地理


「はーい、というわけでまずは隣同士でペアになって47都道府県の名前と場所を書いた上でその県の……そうだなあ……特産物にすっかな。特産物とその特産物が最も多く生産されている市町村を書けよー」

 日本の形と各都道府県の県境だけを書いたプリントを配っていく。

「せんせー、やることが多いよー」

 伊澤が軽い文句を言ってくる。

「高校生ならこのくらい出来るだろ。分からない所があったら俺か鳥海先生に聞けよ。答えは教えないがヒントくらいは教え……」

「凛ちゃんせんせー、ここの答えなんだと思います?」

「早いなおい! 鳥海先生、伊澤にはまだヒントを与えなくていいぞ」

「えー、せんせーひどいー」

「「「ハハハハハ」」」


 二時間目 英語


「It might be hot , so be careful. この文を訳せよ……青山」

「は、はい! えっと……あ、熱すぎるの、ので、お、お気を付けください!」

「よし、まずは落ち着け。それと答え自体は惜しい回答だ。そんじゃ正解を鳥海先生」

「この場合は、熱すぎる。ではなく、熱いかもしれない。と訳すのが正解ですね。断定してはいけませんよ」



「ふぅー、初日だからかな、ちょっと疲れてるな」

 午前の授業が終わり、昼休みとなり、俺と凛は職員室にいた。

「お疲れ様ですな~」

 背後から突然声を掛けられた。昨日と同じ様な感覚に襲われつつ後ろを振り返ると……。

「やほやほ~」

 手をひらひらさせている学院長だった。

「あぁ、やっぱり」

「お疲れ様です、学院長先生」

 両極端な対応をする俺と凛。

「どう? 教師生活一日目の調子は?」

「まずまずですねー」

「そうだろうね~実際に活動するのって初めてだもんね~」

 確かに、今までインターンシップや実習でそれなりに教師というものを経験はしてきたが、こうやって一日フルで働くのは初めてのことだった。

「さてと、G組の生徒の様子はどうかな?」

「そうですね、今のところ特には……昨日頂いたデータも使ってはいませんね」

 俺はそう言いながら名簿を上げる。

「ふむ、まあ、始まってすぐだし、いきなり使うってことはそこまでないだろうね」

「あのー、あれって結局何の意味があるんですか?」

 凛が手を挙げながら質問する。

「そのうち分かるよ」

 学院長がへらへらした感じで答える。

「ま、現状は分かったよ。午後も頑張ってね~」

 そう言いながら職員室から出て行った。

「本当にあの人何者なんだ?」

 スッと現れては、フラーっと消えてく感じだ。

「この学院の学院長ですよねー」

 ……凛ってまさかの天然なのか…。…

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