7-3話
「 まったく、やってくれたね 」
戴冠式後、前王(戴冠式が終わったので、前王になる)が退出した後エリカスはため息と共に吐き出した。
ぐったりと玉座にもたれる彼を見て、ユイカは少し申し訳なくなった。
「 謝ったほうがいいですか?
相談もなしにやってしまったこと・・・」
とはいえ、相談してたら絶対止められていたが。
それは分かっているのかエリカスは頭を横に振った。
「 考え方の違い・・・だからね。
先に言われてたら止めてただろうし、納得はできないがしょうがない。
君がやらなくても、父上がやらかそうとしてたようだし、今の状況は変わってないだろうさ。
それよりユイカ、君に少し来てもらいたい所がある 」
「 わたしに? 」
「 あぁ、来てほしいというより、合わせたい者がいるの方が正しいが 」
「 はぁ 」
***
誘導された場所は地下にあった祭壇の間と類似しているものの、もっと光が多く入る王の間だった。
主に王が謁見をするために使われるその部屋には、常駐する兵士が扉に立ち警護をしている。
前王と城廷剣士として城に勤める契約をしたのもここだ。
今まで前王が座っていた場所にエリカスがすわり、その隣にユイカが座る。
前妃は自分がこの城へ勤める前にすでに亡くなっているため会ったことはなく、ここはいつも空席だった。
エリカスが合わせたい人物は控の間で待機しているらしい。
彼が呼んでくるように伝え、入ってきた者は見覚えのある少女と知らない少女だった。
ポニーテールにしたピンクの髪と、力強く赤い瞳が印象的な少女の名前はなんだったか・・・
赤を連想させる名前だったとは思うのだが。
もうひとりの少女は、藍色の髪に紫の瞳をしており、どこかおどおどした雰囲気を感じる。
赤の少女がここにいるということは、大会参加者に声を掛けてここへ呼んだとみるべきだろうか?
「 彼女はロゼリア・ガーネットとカリア・チャロアイトだ。ガーネットとは戦ったから面識があるとおもう。
大会参加者の女戦士で実力のありそうな者数人に声を掛けたところ、快い返事がもらえたのは彼女達だけでね。 彼女達は君の兵士として雇う事になった 」
( え? )
突然の事に戸惑うが、今それを表面に出してる場合ではない。
「 はい 」
「 まだ未熟な部分はあるが、そこは君が鍛えてやってくれ 」
「 分かりました 」
「 簡単な自己紹介をユイカにそれぞれしてもらえるか? 」
それを受けてまず赤の少女がペコリと頭を下げる。
「 私はロゼリア・ガーネット、13歳です。得意な得物は双剣。よろしくお願いします 」
言葉はしっかりしているのだが、こちらを見る瞳がものすごくキラキラしていて眩しい。
犬の尻尾が幻視できそうだ。
「 わ、私はカリア・チャロアイト・・です。
16歳・・得意な武器は槍です。 よ・・ろしくお願いします 」
チャロアイトは紫色の石だったはずだ。なかなか覚えやすい名前で助かる。
ただあまりにおどおどしている為、実力がありそうだと判断された理由が分からない。
実戦になると変わるのだろうか?
「 こちらこそよろしく 」
「 これで面通しは終わりだ。2人は下がってくれ 」
「「 はい 」」
2人が退室したのを見届けて、ユイカは胡乱な目をエリカスに向けた。
「 で?どういうことかしら? 」
「 どうもこうもないさ、君が僕の横で共に剣を携えると言っているんだ。
戴冠の儀で公言するとはさすがに思わなかったが、大会で君に負けてから近いことは予想していたよ。
今は運よく戦争が起こっていないが、再び起きる可能性は常にある 」
その言葉に数年前のことがよみがえる。
ビッツが負傷し、兵士を辞めるきっかけになったと思われる戦。
「 君はこうと思ったら猪突猛進だからね。放っておいたらひとりででも動いてしまう。
どんな危険があったとしても、自分の危険は顧みないだろう?
彼女達を君の兵士として雇ったのは、それを少しでも減らすためだよ。
まずは君の身辺を固めるために実力のある女性兵を増やしていく。
たぶん、気位を自慢する貴族達は君を快く思わないだろうからね。
後々は男性兵も入れる予定だがこっちは難航しそうだな・・・ 」
確かにエリカスが言うことはもっともだ。
自分に降りかかる火の粉はさっさと振り払うだろうが、彼に危険が迫ればそんなことは気にもしないだろう。
でも、自分専用の兵士がいれば?
少なくとも彼を守るために打つ手が広がるのは確かだった。
ただ、彼が望むような行動をとれるかは謎だが・・・
さっきの少女達が危機に面したら、自分は間違いなく彼女達を守るために動いてしまうだろうから。
なんにせよ、
「 とりあえず、わかったわ。
決定事項のようだし、私の兵士として彼女達を鍛えていく、でいいのね? 」
「 あぁ 」
「 それでは、私は支度の為に部屋に戻るわよ? 」
「 あぁ、ウェディングドレス姿楽しみにしてるよ 」
王の間を退室したユイカは侍女に付き添われるなか、窓から見える空を見上げた。
雲一つなく晴れた空。輝く太陽。
いつ来るかわからず準備はしておいたが、幸先がいいとは思えないことが今日来ると勘が告げている。
婚礼式間近でどこか慌ただしい城内。
戦闘へ赴く前の怜悧な空気をどことなく漂わせながらユイカは自室へと向かうのだった。
だんだん設定への違和感が強くなってきてますが、書き切るのを先にしてるため、違和感バリバリのままラストへ突っ込んで行きたいと思います。