5-7話
「 それでは表彰式を始める 」
決勝終了から休憩を1時間挟んだ後、国王の宣言により表彰式は始まった。
「 まずは今大会に参加するべく集ってくれた多くの猛者達に感謝の意を伝えたい。
告知から受付締切までが2週間と僅かな期間しか設けられなかったにも係わらず、主等が集まってくれたおかげで、今大会の大きな趣旨であった国一番の実力を持つ者を決めるに相応しい大会となった。
変装して参加していた我が愚息については、一個人として参加したのだという個人の意思を汲んで偽名のまま表彰することとする。
それでは、今大会を勝ち抜いた強者達3名を迎えようと思う。
ユイカ! クロイ・ファレオ! アディラス・ファルジーオ! 前へ!! 」
呼ばれた3名は観客達の拍手に迎えられ、龍門から休憩の間にステージ上に設置された表彰台の前まで歩むとユイカを先頭にして三角を描くように跪き頭を垂れた。
「 アディラス・ファルジーオ! 」
「 はっ 」
呼ばれたアディラスは右手を左肩へと当て立ち上がった。
「 我が王国の兵士団長の名に恥じぬ戦いであった。
これからも国の為に尽力を尽くしてほしい 」
言葉と共に係の者から手のひらより少し大きいブロンズ制のトロフィーが渡され、受け取ったアディラスは再び跪く。
「 クロイ・ファレオ! 」
「 はっ 」
「 お前が大会に参加してるとはさすがに思わなかったが、今大会はよい経験になっただろう。
これを今後に活かすとよい 」
エリカスにはシルバー制の兵士が持つ盾を模した物が渡された。
「 そして、今大会の優勝者。 ユイカ!! 」
「 はっ 」
先の2人と同じように左肩に右手を当ててユイカは立ち上がった。
「 さて、表彰と行く前に少々皆に話さなくてはならんことがある。
ユイカ。 よいな? 」
「 はい 」
「 ユイカを剣士として王城に迎え入れて4年。
多くの者が彼女の素性を知りたいと思っているのではなかろうか?
今まではとある事情から話すことができなかったが、それも今大会の開催で可能となった。
まずは彼女の本名からじゃな。
彼女の名前はユイカ・アングル・ヴァスクード 」
それに会場は囁き声でいっぱいになった。
「 アングル・ヴァスクードだと? 」
「 それって・・・ 」
エリカスもアディラスも思わずというように顔をあげた。
「 国民の者は皆知っておるな?
アングルの名はかつて、わしが王国の貢献の証にと彼の者へ送った名じゃ。
我が国の英雄と言っても過言ではない。
ガディウス・アングル・ヴァスクード。その娘がユイカじゃ 」
今度こそ会場は騒然となる。
「 ガディウスの娘!? 」
「 あの強さはだからなのか!! 」
「 英雄の娘!! 」
「 それでは改めて表彰の続きを行いたいと思う。
ユイカ・アングル・ヴァスクード前へ! 」
「 はっ 」
ユイカは一歩前へ進んだ。
「 今大会の優勝を前にお主の実力を疑う者はおらぬだろう。
しかし、これから背負う物は今大会優勝だけでも国一番の実力者だけでもない。
"英雄の娘"それはいかなる称号よりも重い。
けれどそれはお主がお主たるために進む為の道を照らすものともなるだろう。
これからも、国に寄り添って支えて欲しい 」
その言葉は遠回しではあるが、ユイカがこれからも剣を持って過ごす事の許可だ。
この先国王となるエリカスの傍に、彼を・・曳いては国を守るために剣を持って立つことを許すとそう言われたのだった。
「 はい! 」
「 お主にはこれを 」
渡されたのは柄は金で、刀身は水晶でできた剣だった。
「 他2名も前へ、観客にもその証を見せるとよい 」
剣を掲げるユイカの右隣にエリカス左隣にアディラスがそれぞれの盾とトロフィーを掲げ、会場は入場時よりも大きい拍手に包まれた。
「 これにて表彰式を終了する!! 」
王の退場後、獅子門から3人が退場するまで拍手は鳴り響いていたのだった。