5-3話
本戦初日。
青い空の下、闘技場のステージの上には予選を勝ち残った10人が整列する姿があり、彼らの視線の先では観覧席の上のバルコニーに王がちょうど立ったところだった。
「 本日は天気にも恵まれ―― 」
予選では行われなかった開会式の最後、国王の挨拶が始まる。
「 ここに集う猛者達よ。ここまでの道程は長く険しかったと思う。
じゃが、本番はここからじゃ。今日を含め後2日。
勝ち抜き栄誉を手にする者は誰か。
ここまで勝ち進んだ主等の実力を、主等の本気を我等へと見せて欲しい。
それ次第では・・・おっとここからは秘密じゃったの。 」
その言葉に選手はもちろん観客席もざわめく。
"戦績が良いものは国に雇用される可能性があるらしい"という噂。
そのことを指しているのではないか?と皆感じたのだ。
「 それではここに集う者達の健闘を祈る 」
王がそう言葉を締めくくり席へ戻ると、まだざわめく会場を後にして選手は控室へと退場していった。
***
(予選初日はここが人でごった返していたなんて・・・)
100以上の人数が軽く入るような部屋に10人しいないので、とても広々として感じる選手控室。
当日はきっと乗合馬車が満員だった時のような状態だったのではないだろうか。
そんなことを考えながら、部屋に入るなり思い思いに散らばっていった9人の様子を眺めつつ、ユイカは部屋の端にテーブルがあるのを見つけ、そこへと陣取る。
壁際であり部屋の中央ともいえる場所な為、軽く首を巡らせれば部屋にいる面々の姿が簡単に目に入る。
ユイカが何故ここにいて、例の個室にいないのかというと、本戦では人数が10人に絞られたというのもあり、一般選手用の待機室に居た方が選手全員の動向を把握しやすく安全だということで、こちらを利用することになった。
確認はしていないが、安全だというのはユイカに対してではなく、選手ではない一般人に対してだと思われる。
じゃないと予選の間襲撃され続けたあの部屋を変更しないのはおかしい。
( それと隔離・・・でしょうねぇ )
自分が、未だに顔をみせない彼の隠し事に気づいてしまわないように。
ここまで徹底して顔をみせないおかげで、逆に予想しやすいのはご愛嬌だろうか?
ユイカはちらりと自分の壁側の右角に座る黒フードを被った男にチラリと視線を向け、また元に戻した。
予選の最後でビッツが負けた男。
ビッツのあの時の微妙な顔は負けることが前提だったからだろう。
彼が負けなければいけない相手。つまりはそういうことだ。
終わったら見てなさいよ。
ユイカはそう心に誓った。
それよりも、反対の左角からすごく熱い視線を感じるのだが・・・。
なんとなく視線を合わせたくなくて前を向いたまま、ユイカはそこに座っている者を思い浮かべた。
さっき部屋を見渡した時に、こっちをキラキラした大きな赤い瞳で見つめていた小柄な少女。
活発そうな彼女に似合ったピンクのポニーテールが印象的だ。
齢13ながらの実力者。
自分が親元を離れて旅に出たのがその歳だった。
彼女は当時の自分よりも強いだろうか?できれば対戦してみたい相手である。
「 第一試合の組み合わせを発表する 」
選手以外の気配に入り口へ目を向ければ、係が丸めた羊皮紙を小脇に抱えて立っていた。
試合の組み合わせは直前になるまで分からないようになっている。
「 では、これから名前を呼ぶものは私の後についてステ-ジへ―― 」
例によってあとがきは活動報告にて。