4-5話
ステージを後にするユイカと、いまだ体が動かず数人の兵士に担がれ運ばれていく男。
試合の余韻はまだ退かず観客席は興奮に包まれていた。
そしてここにも一人――
「 すごいすごい! さすがユイカ様!! 」
観客席の目立ちにくい隅っこで、桃色の髪の小柄な少女が感嘆の声と共にぴょんぴょんと跳ねていた。
高い位置で一つに結った髪が尻尾のように弾む。
「 あんなムッキムキの大男を倒しちゃうなんて!
私があの男と戦ったら勝つのかなり難しいかも。
どうやったら確実に勝てるかな・・・
ユイカ様と同じように行きたいところだけど、私の剣じゃ大会では使えない戦法だし。
うーん? 」
少女はぶつぶつと独り言を言って首を捻った。
言動からして大会の参加者のようだ。
「 ねぇカリア、カリアはあの大男と戦って勝てる? 」
「 わ、私? 私の武器は剣じゃないからやってみないと分からないかなぁ? 」
突然振られた為わたわたとしながら、カリアと呼ばれた藍色な髪の少女はそう返事した。
桃色髪の少女と比べるとかなりの長身だ。
「 カリアならどんな戦い方をするのか参考にしたかったんだけど、それもそっか。
でも、戦ってみないと分からないてのはダメだよ?
せっかく試合見れたんだから、今後の自分の為に少しでも考えとかないと 」
「 う、うん 」
「 あぁ。でも、なんて素敵なことなんだろう。
憧れの人と対戦できるなんて!
ユイカ様と剣を交えるなんてもう一生ないと思ってた 」
少女は青い空に向かって、思い描いている憧れの人にキラキラとした眼差しを向けた。
「 ろ、ロゼ?まだ戦えると決まったわけじゃないよ 」
「 わかってる 」
嫌な顔をすることなく元気よく頷いた少女は、にっこりと笑ってカリアを見上げた。
「 試合の順番がユイカ様とはかなり離れてるから本戦に出るまで手合せできないけど、幸い本戦まではたいした相手いなさそうだもの。
まぁ、いまのところはだけど 」
「 慢心は禁物だよ? 」
「 わかってるって。 あ、ほら次の試合が始まるよ? 」
『 龍門からはカルタ・ウノ! 獅子門からはビッツ・ファルデン! 』
ステージには傭兵のような黒髪黒目の男と不敵な笑みを浮かべた茶髪茶目の男があがっていた。
「 あの茶色い人・・・ 」
カリアがポツリと言葉を漏らす。
黒い男は部分鎧だが防具をつけているのに対して茶色い男は街でよく見かける服装のままだ。
装備を見ると大丈夫なのかと言いたくなる。
だけどカリアが言いたいのはそんな事ではない。
「 うん。 あの人きっと強い 」
ロゼとカリアは居住まいを正すと、その試合を食い入るように見詰めるのだった。
あとがきは活動報告にてポツポツと語ってます。