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4-4話


「 次の選手は中へ! 」


回想している間に決着がついていたらしい。

会場が歓声に包まれ騒がしいことに、競技運営に()てられた兵士に呼びにこられて初めて気づいた。

悩みは同時に(なり)(ひそ)め、次の対戦相手はどんな人間だろうかという、わくわくした興奮に包まれる。

選手を闘技場へと導く兵士について幅の狭い通路を抜ければ、芝生が広がる中央にあるステージと、四角くすり鉢状になった客席とが視界に入った。


「 龍門からはユイカ! 獅子門からはルナウ・ドゥーナス! 」


ステージの中央に歩み出れば、審判は声高々に両者の名前を読み上げた。


対戦相手は自分よりも大きい男だった。

自分が1Mと60少し。

40cmを超える差があることから、相手は2M以上あるだろう。

力で押すタイプのようで全身筋肉ががっしりとついており、立ちはだかる様はまるで筋肉の壁だ。

武器は体格に合うような幅広の大きな刀。

刃先は鋭利とはいえないが、得物(えもの)の扱いは扱い慣れた者のそれだ。

試合用に用意したわけではなく、元から叩きつけるような攻撃が中心なのだろう。


「 公正なる判断の元各々の力を示せ! それでは――はじめ!! 」


ユイカはすぐさま抜刀し構えた。


その剣は重さは同じだが普段帯剣している物ではなく、練習用の刃挽きされた物を使っている。

この剣で城に居る間練習試合をすることもあるので、使い慣れないということはない。

予選なので実力差がありすぎる可能性の方が高いのでそれへの配慮だ。

余談だが、2週間前のあの戦いは帰る間際だったので真剣である。

それはさておき、


( あまり攻撃は受け止めたくないわね。 もし受け止めるようなことになっても受け流さないと )


ユイカは体格の違う相手とどうやり合うか思案した。

剣術に差があったとしてもこの体格差はさすがに大きい。

まともに剣を結べば力負けするだろうし、筋力による力の差はかなりあると思っていい。

けれど、筋肉のつき方をみる限りは・・・


「 どりゃああぁ!! 」


男が刀を振り上げたのを視認してユイカは通常よりも少し大きめに回避した。

その大刀の威力を示すかのようにステージの床が割れ、欠片が(つぶて)のように飛び散る。

しかし、大きく回避したことで、飛び散った欠片を浴びることはない。


( やっぱり。攻撃スピードはものすごく遅いわ )


つけすぎた無駄な筋肉に行動を阻害されているのだ。

これなら回避もたやすい。


「 この、ちょこまかと! 」


ブンッと横()ぎに刀を振り、当たらないとみると縦に振り下ろす男。

攻撃パターンは縦か横。

攻撃を叩きつけたときに飛び散る破片で追加ダメージを与える戦い方のようだが、回避してしまえば問題ない。

加えて言えば、冷静沈着なタイプでもないようだ。

顔を赤くしているところを見ると、攻撃がことごとく(かわ)される為にムキになっているらしい。

回避するたびに飛び散る欠片が増えていく。


( さて、しかけますか )


ユイカは回避を続けつつ、ステップをいつでも切り替えられるように相手を注視する。

狙うは男が攻撃に入った瞬間だ。


「 うるあああぁ! 」


男が攻撃の為に刀を振り上げた。大刀が男の頭の後ろまで逸らされる。

そのタイミングでユイカは相手の懐へと飛び込み剣を走らせた。


「 くっ。 この! 」


男は苦しそうな声をあげた。だが倒れない。

逆に追撃を仕掛けてきたのでそれをひらりと(かわ)す。


着地して男と向き直ったが、回避した身軽さとは裏腹に少しだけ渋い表情が出てしまった。

男がそれを見てニヤリと笑うのが目に入る。


( 真剣だったら、もうちょっとダメージを与えられたのに・・・ )


過剰につけすぎた筋肉が動きの遅さとは反対に鎧の代わりをしているのだ。

刃挽きされた剣では斬る攻撃も打撃攻撃に近くなる為このてのタイプには効きにくい。

加えて、あの剛剣を受け止める訳にはいかないせいで浅くしか切り込めなかったのも要因の一つだ。


( 手数と急所狙いで勝負ね )


大会のルールとして対戦者を殺してはいけないことになっているので加減は必要だが、あの筋肉ならそこそこ耐えられるだろう。


「 無様な負けをさらす前に降参するならいまのうちだぜ 」


「 お気遣い、ありがとう。 というか、攻撃してきながらよくそんな事言えるわね 」


そう、言葉ではそんなことを言っているが攻撃の手を休める気はないところから、実際はユイカを叩き伏せたいと思っているのが明白だ。

ユイカの攻撃が己に大ダメージをあたえるものではないと分かったからか、男は先ほどよりも攻撃が積極的になっていた。


( 隙が増えてありがたいけどね )


男が攻撃してくるのと同回数ユイカもカウンターに近い形で攻撃を叩き込む。

その際に(かす)めるだけだとしてもきっちりと急所を狙うのを忘れない。


「 はっ。 そんな攻撃俺には効かん!! 」


さっきから思うのだが、この男こういった言葉を以前から使ってみたいとかいう願望でもあるんだろうか。

それとも調子に乗ってるだけ?

お決まりパターンすぎるというかなんというか・・・。


「 さぁ、どうかしら・・・ね!! 」


それなら自分もお決まりのセリフを返しておこう。


ユイカは言葉の最後と共に今までよりか強めの攻撃を急所へと加えた。

男は目を見開いた。まさかという表情だ。


「 がっ・・・ぐっ・・・ 」


男は膝をついて崩れ落ちた。

体を必死に立て直そうとあがいている男の首にユイカは自分の剣を突きつける。


「 ・・・勝者、ユイカ!! 」


一拍の間の後審判が勝者の名を告げた。

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