あたしは彼女の・・・
こんな視点だとガールズラブなんていうのも変かな?
先に投稿した「私の彼女」の「彼女!」の視点で表現したものです。合わせて読んでいただければ幸いです。
2/22 誤字脱字 修正しました。
私が女になろうと決心したのは、とも子が私との結婚を持ち出したからだった。そして、結婚するためには性転換することが条件だったからだ。
元々、女装だとか性転換なんかに興味はなかった。確かに男らしさとは程遠く、背丈も体格も小柄で、男性用のスーツより女性用のスーツのほうがピッタリくるぐらいだった。性格も引っ込み思案だし、女性をリードするなんてできそうもなかった。2~3歳年上で、体格も私よりも大柄で、しっかり私をリードしてくれる女性が好みだった。しかし、そんな都合のよい女性などいるわけもなく、20代も後半にさしかかったのに女性と付き合ったことすらなかった。そんな時、学生時代の友人が結婚することになって祝賀パーティーが開かれた。新婦の友人が大勢出席すると聞いて期待に胸膨らませて出席したのだった。
パーティーは立食形式で最初は我々悪友連10数名は纏まって飲んでいたが、少々離れたところのテーブルに固まっている新婦の友人と思しき女性の集団が気になってしょうがなかった。その中で私が気になったのは、女性陣の中では年長のようで、背が高く一寸見にはつんとすましたように見える女性だった。女に飢えた狼のような悪友たちがしばしばその女性集団に接近するものの、彼女だけは男に全く目もくれず無視していた。他にも可愛らしさや美しさではずっと上の女性が何人もいたが、その一見冷たそうな長身の女性に私の意識は集中していた。しかし、私は彼女と会話するなんてことはできるはずもなかった。
結局今回のパーティーも女性には縁がなかった、とあきらめの気持ちで日常生活に戻った。10日ほどたったある日、会社からの帰宅途中、ターミナル駅で彼女を偶然見かけた。同じ方向に帰るらしく私が乗ろうとしていた電車に乗りこむところだった。私は彼女と同じ車両に乗り、横顔をじっくり観察した。ちょっと冷たそうな、それでいて理知的な感じのする横顔、間違いなかった。結婚祝賀パーティーで気になっていた彼女だった。毎日同じ時間の同じ車輌の位置で待ってみた。毎日と言うわけにはいかなかったが、2~3日に1回は彼女を見かけることができた。
暫くたったある日、いつものように駅で彼女が来るかどうか待っていると彼女が現れた。ホームに停車している電車には乗らず、次の電車を待って座っていくつもりのようでホームに並んでいた。私は即座に彼女の後ろに並び次の電車がホームに入るのを待った。電車が到着し扉が開くと、並んでいた人たちは一斉に車内に駆け込んだ。私は運よく彼女の隣に座ることができた。
左腕に彼女の温もりが伝わってきた。ただ座っているだけで満足するのか。声を掛ける絶好の機会ではないか。脇の下にも、額にも、汗が滲んだ。のどもカラカラになった。電車が発車しポイントを通過する時に少し揺れ、前に立っていた乗客がのしかかるような姿勢になった。私と彼女は同時にその圧し掛かってきた乗客の方に顔が向き、お互いに顔を見合わせるような姿勢になった。「あっ、お久しぶりです・・・」まるで今気がついたかのように思わず声を掛けてしまった。
「家は同じ方向なんですね。」
「ええ・・・」
彼女は私のことなど全く記憶にないようだった。
「このまえ結婚した高木の学生時代の同級生で・・・」
「えっ・・・?」
「高木は○○社の可愛い女性を射止めちゃってね。」
「ああ、じゃああのパーティーにいらしてたんですか。」
ようやく話しが通じた。
次の日から会社の帰りは毎日駅のホームで待っていた。彼女に話しかけられそうなタイミングはせいぜい週一回程度だった。それでも片山智子という名だけは何とか聞きだすことができた。一ヶ月ほどたったある日、彼女はホームで次の電車に乗るために並んでいた。私も即座に彼女の後ろに並んだ。
「次の電車にするんですか?」
「あら、こんにちは。またご一緒しましたね。」
「電車の中も何なんで、ちょっとそこらでお茶でもいかがですか。」
「じゃあ、ちょっとだけなら。」
心臓はバクバクだった。こんなに頻繁に帰りの通勤電車で会えるなんて、偶然のわけがない。私が待ち伏せしていることは彼女にばれているはずだ。それでも彼女から拒否されなかった。
高木を呼び出した。
「どうだい、新婚生活は。」
「まあまあってとこかな。まだ他人同士の共同生活って感じだよ。」
「ちょっと奥さんに聞いてほしいことがあるんだけど。」
「なんだい。」
「結婚式に奥さんの友人ということで出席してた片山智子っていう女性のこと、どんな人か聞いてくれないかな。」
「どうした、一目ぼれしたか」
「電車でよく会うもんで・・・」
「じゃあ、わかったら電話するよ。」
翌日の昼休み、さっそく携帯に返事が返ってきた。
「おい、ちょっとやっかいな女かもしれないぞ。」
「社長の娘とか・・・」
「いや、そんなんじゃない。年は嫁さんより三つ上だそうだ。ということは俺たちより二つ上。」
「もっと年上かと思った。」
「嫁さんに仕事を教えてくれてたそうで、なかなか優秀な女性だそうだ。」
「仕事一筋っていうわけか、それもいいんじゃないか。それより、彼女は独身なんだろうね?」
「もちろん、だけどやっかいなことはそういうことじゃない。」
「なんだ、もったいぶらずに言ってくれよ。」
「彼女はレズビアンなんだそうだ。」
「・・・」
「単に恋愛対象が女というだけでなくて、男を毛嫌いしてるみたいなんだそうだ。男性社員に何かといえば突っかかってくるんで、上司や男性社員は往生してるようだよ。夜ちょっと一杯やって話そうと声を掛けても軽蔑したような返事しか返ってこないそうだ。でも仕事はよくできるらしい。」
「・・・」
「うちの嫁さんも言い寄られて困ってたようだ。そんな女じゃ相手もしてくれないだろ。」
「実は何回かお茶に誘ったんだ。そうしたら、特に拒む様子も見せず付き合ってくれたんだ。」
「不思議だ。男の誘いに乗るなんてありえないんじゃないか。ひょっとしてお前は男に見られてないのかもしれないぞ。」
「まさか・・・」
何回か会ううちに、喫茶店ばかりでなく居酒屋での軽く一杯も応じてくれるようになった。誘うのはもっぱら私のほうだが、会話は彼女がほとんどリードしていた。そのうち彼女は、私のプライベートをほとんど聞き出していて、生活態度や趣味、癖に至るまで「私が好きなのは・・・」というように、私の全てを自分好みに仕立て上げようとしているように感じた。私の生活全てが彼女に支配されようとしていると思うと、私の少しマゾヒスティックな感情が高揚した。彼女に従属したいという気持ちが私の心を満たしていた。
ある日私が、「好きです。」と告白したとき、彼女も自分がレズビアンであることを告白した。それでも私のことを否定しなかった。そのうち、彼女が私を女にしたがっていることがわかりはじめた。でも、私は片山智子が好きだった。私の容貌や性格から考えれば、彼女の前で女を演じてもそれはそれでいいのかもしれないと思った。
初めて休日に恋人同士らしいデートをした日、彼女からホテルに行こうと誘われた。私は有頂天になった。キスすらしたことがないのに、いきなり体の関係を求めてくるというような彼女の気持ちは理解できなかったが、ほとんど童貞同然の私にとっては憧れの女性と結ばれると考えると感極まって周囲の状況などほとんどわからないほどだった。彼女のリードでホテルに入ったが、彼女が求めていたのは肉体関係ではなかった。彼女を抱きしめようとするとあからさまに私を拒否した。呆然として立っていると、私たちがホテルに来る前に立ち寄ったデパートで彼女が購入した女性用の衣類やランジェリーを取り出し、私に身に着けるように強要したのだった。私はこの数週間の彼女との付き合いの中で、彼女の要求を拒否するという行動を取れなくなっていた。彼女の要求を拒否すると、彼女が離れていってしまうような気がして、彼女の求めにはすべて応じてきていた。
一人で洗面所に行き裸になった。女性用の下着を身に着けた。そして女性用の服を着た。何でこんなことまでしなくてはならないのか。彼女の前に立った私は屈辱で打ち震えていたが、彼女は今まで見せたことがないような表情を見せていた。嬉しそうだった。どちらかというと冷たい表情の彼女がこんな明るい表情を見せてくれたことに驚いた。明るい表情の彼女は美しかった。私が彼女をこんなに美しくしたという事実に酔った。彼女を喜ばせる嬉しさは屈辱に打ち勝った。美しい彼女を手の内にするため屈辱に耐えることにした。
デートのたびに女装させられた。彼女と私は服のサイズが大差ないことから、彼女が着なくなった大量の服を押し付けられた。化粧もさせられ、アクササリーも身に着けるように強要された。私は彼女の喜ぶ表情を見たいがために全て彼女に従った。そのうち、男の姿で会うことも彼女が嫌がるようになり、デートの時は家で女装し、帰宅するまでずっと女を演じるようになった。会社帰りでも、サラリーマンの姿の私を嫌った。彼女に逢うため会社のロッカーに女性用の服や化粧道具を用意し、帰りに多目的トイレで着替えと化粧をした。男の服はコインロッカーに預け翌朝出勤前に回収した。会社で婦人服の裾がロッカーの扉に挟まっていたことがあった。女装していることが会社に露見することを恐れロッカーにしまうことを止めた。デートの日は女性用の服をコインロッカーに預けて出社した。会社の帰りにコインロッカーから取り出し多機能トイレで着替えた。夜はそのまま帰宅し、翌朝女装して家を出て、コインロッカーにある男性用の服に多機能トイレで着替え、女性用の服はコインロッカーにしまった。そのうち、彼女からも頻繁にデートの誘いがあるようになり、昼休みに突然今日の帰りに会いたいというメールも来るようになった。私はいつでも彼女とのデートに対応できるように、毎朝女装で出勤し、トイレで着替え、女装して帰宅するようになった。
久しぶりに高木に会った。
「片山智子とつきあってるのか?」
「うん、まあね。」
「やっぱり。お前、会社の帰りに女装してるって噂があってね。」
「なんでそんな噂が。」
「お前が多機能トイレに大きな紙袋持って入るところをみたやつがいるんだ。そいつ、出てきたところで声掛けてびっくりさせてやろうと考えたんだな。それでトイレの脇でずっとまってたんだが、出てきたのは同じ紙袋を持った女だったんだそうだ。不思議に思ってよく横顔を見たらお前らしいとわかったようだ。さすがに声は掛けられなかったそうだ。」
「・・・」
「片山智子は真正のレズビアンだから、男のお前じゃ付き合えないっていうんで女装させたんじゃないか?」
「・・・」
「彼女と付き合うのはまずいと思うよ。」
「気をつけるよ。」
家を出る時も帰宅する時も女装しているようになり、近隣の人にも異様に思われ始めた。大学時代に実家を出てからずっと都会の一人暮らしだ。今でも、ワンルームマンションを借りてすんでいる。近所付き合いなどしたこともないが、隣室の住人とは時に顔を合わせる。管理会社のおじさんとも顔馴染みだ。女装での部屋の出入の時は誰にも顔をあわせないように注意をしていたが限度があるようだった。会釈くらいしていた隣人が、顔を背けるようになった。管理会社のおじさんも笑顔は見せない。預ってもらった宅急便を貰うときも、無言で投げるように荷物をよこすようになった。
彼女は私に女らしくなることを求め続けていた。服やアクセサリーにも注文をつけてきた。買い物に付き合ってくれることもあったが、自分ひとりで買うように求められた。服は試着をしなくてはならないから女装して買いに行けといわれていた。ターミナル駅構内のブティックで婦人服を物色してる時、会社の女子社員に遭遇したこともあった。目があったが私だと気づいたのかどうかはわからない。下着も自分で買うようにいわれていた。駅ビルのランジェリーショップの店員は、あからさまに私を変質者扱いしていた。他の店に行くと「女性のお客様が嫌がるので、来てもらっては困ります。」とはっきり拒否された。私は徐々に変質者の仲間入りをしていったのだ。
彼女とのデートは密度を増していった。しかし、肉体関係には全く至らなかった。キスすら拒否された。女装して手を繋いで歩くだけだった。女装姿を誰かに見られないかと気になりいつも下を向いて彼女に隠れるようにして歩いた。そんなおどおどした私の姿が彼女のお気に入りのようだった。彼女の私を見る目の優しさは増し、表情はどんどんきれいになっていった。私はそんな彼女を失いたくなかった。自分が
どんなに変態扱いされるようになっても、彼女が喜んでくれさえすればよかった。
「君に変な噂があるんだがね。」
ある日、課長に突然話しがあるといわれ応接室に呼び出された。
「女装が趣味なのかね?」
「なんでそんなことを・・・」
「君が女装しているところを何人も見かけてるんだ。」
「・・・」
「ある女子社員は、君の爪にマニュキュアが残っているのを見たことがあるといっている。君とすれ違ったとき女性用の香水の香りがしたという者もいる。」
「・・・」
「プライベートでの趣味は、違法なことでさえなければ文句を言う筋合いはない。でも会社に何らかの影響があるようじゃまずい。取引先からお宅の社員には変な人がいるようですね、なんていわれたり、同僚とうまくいかなくなるようじゃ困るということだ。」
「・・・」
「趣味をどうこう言うつもりはないが、気をつけてくれよ。」
「わかりました。」
ついに、会社にも知られたようだ。彼女との行動エリアが会社の人たちの行動エリアと重なっていればいずれこうなることは明らかだった。自分でできることといえば、女装しても男の自分と見破られないほど女性らしくなることだった。自分には関係ないことと無視していたネットの女装趣味者のサイトも頻繁に見るようにした。いかに「パス」するかの研究のためだった。
ある日彼女はついに禁断の薬を持ってきた。プレマリン、すなわち女性ホルモンだ。いつかはこうなると思っていた。いくら化粧がうまくなっても、服装のセンスが良くなっても、男の体格や肌は隠せない。女性的な体を形作るためには、男性ホルモンの遮断と女性ホルモンの摂取が不可欠だった。女装者や性転換者のサイトでも、より女性らしさを求めるには女性ホルモンの摂取は不可欠と書かれていた。彼女が私に女性的になることを常に求め続けている限りは、いつか女性ホルモンの摂取を求めてくるものと覚悟していた。
求められたときどう対処するかは決めていなかった。受け入れれば男としての機能は消滅することはわかっていた。拒否すれば彼女と別れるしかなかった。私にとって彼女は絶対だった。彼女のいない人生は考えられなかった。彼女を捨てて男を維持してもどうなるのか。他に彼女を作って結婚して、幸せな家庭を作って、なんてできるのか。既に私の趣味は女装だというように、会社の人たちにも近所の人たちにも知れ渡っている。こんな変態に、普通の女性が付き合ってくれるはずもない。選択肢は一つしかなかった。彼女の求めを受け入れることだった。
私は彼女の求めを受け入れて女性ホルモンを毎日服用することにした。彼女は一層私にやさしく、そして美しくなっていった。彼女の傍にいれば幸せだったが、それだけでは物足りなかった。何とかして彼女と一体に成りたかった、しかし、彼女の意に反して関係を迫ることは私にはできなかった。
高木は私のことを気遣っていた。自分の結婚式が、私と片山智子を結びつけたと考えていたからだ。
「お前のこと、だいぶ悪い噂が色んなところで飛び交っているみたいだ。」
「女装のことか?」
「そうだ。お前は体形や性格は女性的だと思ってたけど、そんな趣味があるとは思ってない。片山智子に入れあげてるからだと思うんだが。」
「確かに、僕は彼女を愛している。彼女の求めには出来る限り応じたいんだ。」
「それが女装に結びつくのか?」
「彼女は女じゃないと愛せないんだ。でも僕を愛してくれている。そのギャップを埋めるにはこうしかないんだ。」
「女の服装をするだけならまだいい。ちょっとしたお遊びだと思えばいい。でもお前を見てると皮膚のなめらかさや体形まで女に近づいているような気がする。Tシャツの胸も膨らんでるみたいだ。太ったやつなら当たり前だが、痩せ型のお前の胸が出てるなんて尋常じゃないぞ。薬までやってるんじゃないか。」
「・・・」
「性同一性障害とかだったらしょうがない。でもそうじゃないんだろ? 自分の肉体まで彼女に捧げてしまうのか?」
「・・・」
「うちの嫁さんがこの前、片山智子にあったそうだ。レズビアンの可愛い女の子を見つけて付き合っているような口ぶりだったそうだ。その可愛い女の子っていうのがお前のことじゃないかって気がして。」
「でも、僕は彼女を愛してしまっていて・・・」
彼女は、私との間に子供を作ってもいいようなことを洩らしてした。一緒に暮らすことも考えているようなことも言った。私は嬉しかった。純粋に彼女の好意に感謝し涙が溢れた。彼女の胸に体をあずけると、初めて唇を私の唇に重ねてくれた。生まれてからこれほど嬉しかったことはなかった。このまま、中途半端に女のようになって、結局ずっと一人で暮らすなんていうことはしたくなかった。彼女に尽くしたかった。彼女の傍に一生ずっとおいてほしかった。女性ホルモンの影響か、気持ちがどんどん女性的になっていった。
体形もかなり変化してきた。胸と乳首が大きくなってきた。乳首にテープを張らないと擦れて痛んだ。走ると胸が揺れるような気がした。ブラジャーが手放せなくなったが、勤務中はさすがに着けているわけにはいかなかった。健康診断は言い訳をして受診しなかった。実家に帰省することもできなくなっていた。
女性ホルモンも十分に体中にいきわたり、私の外見から男の痕跡は徐々に失われていった。女装してランジェリーショップに行っても変態扱いされなくなった。女子トイレでも疑いの目で見られることがなくなった。逆に、会社で取引先の初対面の人に会っても、女性の方が男装されているんですか、と聞かれるようになった。男装時に男子トイレに入ると、男性に怪訝な表情をされるようになった。男性として勤務するのが徐々に難しくなってきた。もし、彼女と同居し養ってくれるのであれば、すぐにでも会社を辞め専業主婦になってもかまわないと考えるようになってきた。
そんなある日、ついに彼女が切り出した。既に病院の予約はしてあるというのだ。性同一性障害の知人のためにという理由で予約したようだった。つまり性転換手術を受けろということだ。見かけ上の男性の部分をすべて除去して女性のようになってほしいという要望だった。手術の予約は一ヵ月半後だったが、事前の診察もあるので、遅くともこの半月のうちに決断しなくてはならないと言われた。断れば、彼女との関係はここで消滅する。受け入れれば、これまでの男としてのキャリアは全て無意味なものとなり、女として半生を生きていかねばならない。六年余りしかたっていないが今の職場も離れねばならない。高木たち友人とも恐らく縁を切らざるをえないだろう。田舎の両親はとはどうなるんだ。最近会っていないが、自分がこのようにほとんど女になっていることはもちろん知らない。突然息子が娘になりましたといって理解してくれるのだろうか。それでも彼女と縁を切ることはできなかった。彼女抜きの人生など考えられなかった。彼女の求めであれば性を変えるなどということは、なんでもないことのように思えた。
しかし、唯一の心残りがあった。彼女と男としての関係だ。私のペニスは女性ホルモンの影響でほとんど能力が失われつつあった。既に朝立ちはしなくなっていた。自ら激しく刺激しても全く反応はなかった。唯一反応するのが、彼女と体が触れあっているときだった。彼女が私の体を抱き頬を摺り寄せたり、私の頬にキスしたりすると激しく反応した。いってしまいそうになるときもあった。私のペニスは彼女にだけは従順だった。
性転換手術を受ける条件として、彼女にお願いしようと思っている。これまで彼女に甘えることは頻繁だったが、私の要望を彼女に迫ったことはなかった。常に従順なペットだった。でも最後にお願いをしてみるつもりだ。私のペニスを、切り落とす前に一度でいいから彼女の体内に受け入れてほしいということだ。そうしたら、彼女の望みのままにペニスも睾丸も陰嚢もすべて切り取っていい、股間に彼女の擬似ペニスを受け入れる穴を開けてもいい、これまでの人生をすべて捨て去り今後は彼女の女として生きていくことでいい。すべて彼女の言いなりになるつもりだった。
つたない文章読んでいただきありがとうございました。
続編を公開いたします。少々濡れ場がありますのでノクターンノベルズに投稿します。18歳未満の方には申し訳ありませんがご了承ください。(「男性向け」ですが、もちろん女性は大歓迎)