老年の知恵
掲載日:2026/03/08
人は生きていれば誰でも年を取る。
それがこの自然の摂理なのかもしれない。
遠くで鳥の声が聴こえてくる。静寂のなかに一滴の水を水面に落とすかのように、私は少しの間、黙って瞑想をしていた。
人はだんだん年を取っていく。そうして知恵を身につける。
『あなたはまだ若い頃のことを覚えていますか?』
そう問う青年がいる。
私は何も答えない。ただ微笑する。
外のテラスで私は客を取って話をしていた。
「年をとって分かったことは···」
「はい」
「世界には救いがある、ということだ。私は若い頃にひどく苦しんだ」
「そうですか」
「嵐の中の航海だったね。けれど嵐が過ぎ去れば、オアシスのような安らぎもあった····」「そうですね。」
「君は絵を描いていたね。」
「はい!ぜひ批評してください。見る人がない絵など意味がないので····」
饒舌の中、時は過ぎる。
ふと帰りがけに、その画家に問うた。
あなたは何のために······
生計のためもありますが、僕は絵が好きなので·····
それを聞きほっとした····
時は、美しい夢の半ばで過ぎ行き、人々はせわしく花を追い、みつばちは、働き、女王は、夢を見る。
また、小説を書くこともあるのだろうか····若い自分に、注文したらどういうものを書くのだろうか。
それを想うとふと苦笑してしまう·····




