20話 帰路
目を覚ますと、私は見慣れない車の助手席でブランケットを掛けられていた。
外を見ると都心部に見える。
渋滞しているようでゆっくりと進んでいる。多分首都高。
隣でリアムさんが運転をしている。
「すいません。寝てしまいました。」
「…だ、大丈夫。疲れているだろうから、ね、寝てていいよ。た、体調はどう?」
「体調は大丈夫です。多分。」
後ろを見るとカブが緑色のロープで固定されている。
エンジンがかからなくなってしまったカブは、怒っているようにも悲しんでいるようにもみえる。
車体のあちこちに泥が付いている。
「…直るのかな。」
私がそう呟くとリアムさんが言った。
「な、直るよ。多分。キャ、キャブに水が入ったのかもしれない。」
「キャブ?リアムさんバイク詳しいんですか?」
「い、今免許取ろうと思っていて。ば、バイク調べてて。」
ダッシュボードの上にあるパンフレットを指さす。
教習所とバイクのパンフレットが数冊置いてあった。
「か、カブみたいな、小さめのバイクを、の、のせて旅したくて。」
私たちは色々な話をした。
リアムさんの仕事はやはり大変で、ものすごく時間がかかることだとか、バイクYouTuberの動画編集をしているからバイクに詳しくなったとか、バイクで走ってみたい道が沢山あるだとか、家に帰るのが久しぶりだとか。
私たちには共通の話題が多く、何時間でも話してられそうだった。
時々父の名前が出てくるのが少し嫌だったけど。
「こ、こんなにしゃべったのは、ほ、ほんとうに久しぶりだ。ノドが、い、痛い」
リアムさんはそう言って笑った。
喋るのが苦手なので仕事でもあまり電話は使用しないらしい。
苦手と言っても滑舌が悪いだけで、冗談もいうしゆっくり喋るのでとても話しやすい。
途中サービスエリアに立ち寄って、2人でランチを食べた。
雨は相変わらず土砂降りだったけれど、雷は鳴り止んでいた。
再び助手席に乗ると、やはり安心感に包まれてウトウトしてしまう。
私は父の車を運転してキャンプにも行くけれど、何故か遠出するならバイクが良いなと思っている。
カブでどこへ行こう?そう考えた方がワクワクするし、旅をした。そういう感覚を強く感じるから。
外を見ながら、うつらうつらそんな事を考えているとリアムさんが呟くように小さな声で言った。
「じ、実は晴ちゃんと、一緒には、走って帰りたいとお、思ったんだ。だ、だから早く青森を出発してて。」
ドキドキする。こ、これは告白されるヤツ?
私はそのまま外の方を向いて聞こえないふりをしてる。
「き、気持ち悪いかもし、しれないけど…連絡貰えて、う、嬉しかった。」
それきりだった。
多分私は顔が赤くなってしまっていると思う。
…嬉しかった。
返事をするべきかどうか迷っていると、リアムさんは私が寝ていると判断したのか、ラジオを小さい音量で掛けた。
FM横浜のDJが落ち着いた声で、交通情報を読み上げていた。




