14話 猪苗代湖
「ま、間に合ったー」
午後5時50分猪苗代湖にある天神浜キャンプ場の看板を見つけ、ホッと胸を撫で下ろした。
早朝かなり早く出発して約13時間、私としてはめいっぱい急いで約580km走った。
給油以外ほとんど休憩もせず、朝からプロテインバーしか食べていない。
それでも本来のチェックイン時間よりはだいぶ遅い。
まあ、青森から福島まで下道で一気に走る人も中々居ないと思うけど。
時間があれば観光したり温泉に入ったり、地元の物を食べたりもしたかったけれど、明後日の夕方には普通にアルバイトが入っている。
なんとか明日中に帰宅したい。
お昼の時点でなんとか日没までに到着出来そうだったので、キャンプ場に電話した。
まだ空きもあるしチェックイン時間も今回は融通してくれるとの事だった。
本当はビジネスホテルやネットカフェで泊まっても良かったんだけど、ここへは絶対に1度来たいと思っていた。
初めてソロキャンプをした時に仲良くなった女神様ことナナさんが、日本中を旅した中で1番感動した夕日を見たのがここらしい。
2回目来た時はそこまでじゃなかったと笑っていたけど、その時の感情や環境に大きく左右されるだろうから仕方ないよね。
ここ天神浜オートキャンプ場は、猪苗代湖畔の砂場にテントを張ることが出来るキャンプ場だ。
砂利の細い道を恐る恐る走って、キャンプ場の目の前にあるホテルのような建物でチェックインをするとお風呂もある事が発覚して、心の中でガッツポーズをした。
カブに乗ってキャンプ場に入っていくとすぐに、砂利から砂浜になった。
目の前には壮大な猪苗代湖。
潮の香りがしないのがなんだか不思議な気がする。
少し曇っていて夕日が隠れてしまっているけど、それでも湖がオレンジに染まっていて息を飲むほど綺麗だった。
キャンプ場は満員に近くてあまり良い場所が取れないかな?と思っていたら湖畔の場所がポッカリと空いていた。
炊事場とトイレが少し遠いけどラッキーだ。
日没まであと1時間もない。
急いで設営をする。
テントと椅子、テーブル、ランタンだけとりあえず用意して休憩をする。
あとは料理と寝る用意なのでゆっくりやればいい。
青森で買ってきた少しぬるいリンゴジュースを開ける。
飲みながら家族LINE、葵、それにナナさんにも自撮り写真を送る。
全員に
「私は何処にいるでしょうか?」
とささやかなクイズも付けてみた。
少し迷ったけど、リアムさんにも同じ写真と文章を送った。
1番最初に返答が来たのがリアムさんだった。
「天神浜オートキャンプ場?」
「早!なんでわかるの?」
「3日前までソコにいたからね。下道で1日でよく着いたね」
「13時間ほぼ走りっぱなしでした。日没までに間に合ってよかったー」
「僕は2泊したんだけど、とても良かったよ。曇ってない?」
リアムさんとはLINEでも果てしなく会話していられる気がする。
それにしても数日前に来ていたとは…大間崎のマグロ目的は同じ父真の影響があったとしても、今回は私はナナさんの影響だ。これはただの偶然とは思えなくなってきた。
心臓が高鳴る気すらする。
並行してナナさんからも返答が来る。とても嬉しそうだ。今度はナナさんとキャンプしてみたい。
ゆっくりと残りの設営を済ませ、焚き火を始めた頃、オレンジ色に染まった太陽が雲の隙間から「今日の最後に俺の本気を見せてやるぜ!」
とでも言わんばかりに神々しい光を湖に反射させた。
湖に向かって右側の山に太陽が沈んでいくのをゆっくりと眺め
ていた。




