13話 キャンプとコーヒー
「ウゥゥゥゥーン!」
爆音のサイレンで飛び起きた。え?地震?ミサイル?
急いでテントのチャックを開けると、隣からリアムさんも出てきた所だった。
「今日も安全に行きましょう。」
声がスピーカーから大音量で聞こえてくる。
「ぎ、漁港の出港合図みたいだね。」
リアムさんがほっとした顔で呟く。
「バッチリ目が覚めましたね。」
言いながら身震いする。
「や、やっぱり青森だからね。藤沢より、さ、寒いね。」
私はテントの中からブランケットを引っ張り出してひざ掛けにする。
テントから出るとリアムさんがいなかった。
お手洗いかな。
このキャンプ場は火器の使用が禁止されていて、炊事場の中のガスコンロが有料で使用出来る。
暖かい飲み物を飲みたいけど、炊事場でお金払ってお湯沸かして、飲んだ後片付けするのめんどくさいなぁ、と思っているとリアムさんが戻ってきた。
ほい。
といってホットカフェオレの缶を渡してくれる。
リアムさんの優しさについ笑みが溢れる。
キャンプ場で平気で缶コーヒー飲んじゃうリアムさん。
…かなりイイ!
ちゃんとコーヒー淹れるのも良いけど、私は別にコーヒーにこだわりは無いし、缶コーヒーで充分。
一時期ウチの父もこだわって豆買ってカリカリやってコーヒー飲んでたけど、時間かかるし、最近はドリップがメインだ。
なんなら平気で缶コーヒーも飲む。
こういう気楽さがイイ。
と、父とのキャンプを回想して気付いた。
そうかリアムさんは確かうちの父にキャンプ習ったんだ。
父の影響か。
こういうちょっと良いシーンであの能天気な髭面を思い出してしまった。
イケメンとの朝チュンコーヒーなのに、台無しだ。
「か、缶コーヒーじゃ、嫌だった?」
怪訝な表情をしてしまっていたようで、リアムさんが心配そうに尋ねてくる。
「全然、全然。なんか父を思い出しちゃって。」
リアムさんが笑顔になる
「ま、真さん、いつも、は、晴ちゃんに、めんどくさいって言われるって、わ、笑ってた」
「この間なんてさ私と弟に「俺は拘らない事に拘ってるんだ!」ってめっちゃエラソーに言うの。ホントめんどくさい。」
リアムさんは少し不思議な表情になって。
「こ、拘らない事に拘る。か。」
と呟く。
「…それ、ぼ、僕分かるかも。」
と意外な事を言い始めた。
「し、仕事していると、この作業は自分のこだわりの為に、やってるのか、お、お客さんのためなのか、わ、分からなくなる時があるんだ。」
なんか急にリアムさんが仕事の話をブツブツと語り始めた。
なんだか少し興奮しているように見える。
なんだかいいな。
私もあんな風に仕事を夢中で語れるようになるのかな。
いくらでも話はしてられそうだけど、せっかく早起きをしたので、撤収して帰路に着くことにする。
帰りも高速なしで800km走らなければならない。
今日泊まる場所はまだ決めていないけど、行きたいキャンプ場がいくつかあるので福島まで戻りたいと思っている。
ビジネスホテルやネカフェでも、いいのだけれど、今回焚き火をしていないので、少し不満がある。
福島まで行けなくてもどこかでキャンプ出来たら嬉しい。
撤収が完了して荷物をカブに固定していると二度寝していたリアムさんが硬い表情でテントから出てきた。
「は、晴ちゃん。ら、ら、ら…」
「LINEですか?私も教えて欲しかったんです。」
リアムさんが笑顔になる。
多分私は笑顔通り越してデレデレしてしまったかもしれない。
「じゃあまた 」
そう言って早朝の肌寒い風を感じながら私は1人帰路についた。
なんだか今回は1人旅と思えないほど、ずっと誰かと関わってる気がした。




