10話 意識
記念に私もカブと写真を撮ってもらった。
店員さんが、どこかに貼っておいてくれるらしい。
「次回来たら探してみてね」
と、言われ、少し楽しみが出来た。
ってゆうか、もう一度ここまで来るのかな?私。
そのまま近くのお土産屋さんを巡り、お土産のマグロの値段に恐れ慄き、数店舗で価格調査をし、そして購入には至らなかった。
キャンプ場に戻るとテントが4つ増えていた。
自転車で来ている人もいるようだ。
更にバイク乗りの中年夫婦がバイクから荷物を下ろしている。
女性が居て少し安心した。
夜になったらここから2km位の所にある温泉施設でお風呂に入って、夜ご飯もそこで食べるつもりだ。
これから数時間完全フリータイムである。
このキャンプ場のルールで焚き火が出来ないのは残念だけど、いつもと少し違う潮の香り感じながら、まったりする。
椅子に座ってウトウトしていると、さっきマグロ丼屋さんにいた外国人の夫婦が話しかけてきた。
…英語で。
こう見えて私晴子、小中高、大学とずっと英語を習ってきております。
テストもまぁ、苦手分野ではありません。
でも、ほぼ何言ってるか半分も分かりませんでした。
今までの英語の勉強は何だったんだ。と少し悔しくなる。
せめてゆっくり喋っていただければと交渉してみたものの、上手くいかず、誠に不本意ではあるが、スマホで翻訳しながら会話した。
最初は、隣に座っている人形可愛いね。オシャレなバイクだね。写真撮っていい?
的な会話から、どっから来たの?
マジ?東京からカブで?
クレイジーガールだな!
え?1人で泊まるの?
いくら日本が安全とはいえまずいだろ?
親はいないのか?
と、旦那さんが途中からヒートアップしてきたものの、スマホで翻訳しながらなので、中々会話がスムーズには行かなかった。
まあ、夫婦は要するに私の事を心配してくれ、見た事のないチョコレートをいくつかくれた。
更には
私たちはここで車中泊するから、一緒に車で寝たらいい。
もしくは何かあったら駆け込んでこい。助けてやるから。
防犯対策は何か持っているのか?と確認してきたので防犯ブザーと痴漢対策アプリ、それに親と位置情報を共有している事を説明した。
最後まで 旦那さんは女の子が外で一人で寝るだなんて、と納得いかない様子ではあったが、奥様になだめられ、連れられて車でどこかへ出かけて行った。
それから、確かに可愛い女子大生である私が1人でキャンプする事に対する警戒心が薄れていたな、と思い直し、少し反省した。
しばらくテントの前で葵とLINEしたり、マミに写真を送ったり、気になっていたアニメの最新話をみたりしてゆっくりと過ごした。
夕方になり、私は貴重品と着替えだけを持って、近くの温泉施設へ向かった。
キャンプ場を出て少し走ると小さなプレハブのような小屋にマグロ発送します。と書いてある旗がはためいているのが見えた。
要チェックや!
とつぶやきながら、カブを駐車場に止め店内に入ると、さっきのお土産屋さんのマグロより大分安い。
コレだ!と思い、自宅分とおじいちゃん家、それから従姉妹の彩ちゃんの自宅分を購入して自宅に発送した。
温泉施設に行く前にガソリンを入れ、コンビニの位置を確認する。何を買う予定も無いけれど、コンビニがあるだけで何故か安心出来る。
そういえば、東北に入ってからだろうか。コンビニの入口が二重扉になっているのはなんでだろう?雪対策かな?と疑問に思ったりした。
向かった温泉、大間温泉環境保護センターは森の中の高台にあって、穏やかな雰囲気の建物だった。
おんせん、おんせん。
と口ずさみながら建物に入っていった。
私ちょっとスキップしちゃったかもしれない。
建物の中に入ると右側に下駄箱があったのでスニーカーを入れて下駄箱の鍵を閉める。
少し進んだ所に受け付けカウンターがある。
背の高い男性が受け付けをしている最中だった。
そちらに向かっていくと男性が振り向いた。
色白で鼻が高く口の周りを髭が覆っている。
長髪でかるくウェーブがかかっている。少し外人っぽい雰囲気がある。大きなベッドフォンを首に付けている。
私と目が合うと男性の目が大きく開き
「は、晴ちゃん?」
と言った。
「え?」
私がキョトンとすると男性が
「あっヤベ」と小声で言ったのが聞こえた気がした。




