長達の屋敷
広間の奥にはまた一つ大きな鳥居がある。
鳥居をくぐると
そこは……大きな玄関になっていた。
目の前にはとてつもなく広く長い廊下があり、
隅々まで掃除されているんだろう…
床の木目が美しく光っている
途方もなく大きい、そして美しい日本家屋だ。
つい見とれる凛桜を奥の方へと連れて行く雅
「ここが里の中心であり、凛桜が住む屋敷だ。
他にも族長の俺や雪、黒丸…仕えてくれる天狗達が
住んでいる。まぁ里の城だとでも思ってくれ。」
なるほど……ん?
頭領と族長が住むのは分かる。けど…
「雪さんと黒丸も一緒なんですか?」
「あぁ、言ってなかったか。
雪は先代族長の妻で、その族長は俺の兄。
つまり俺からしたら雪は義姉ってこと。
先代族長に不幸があって急遽俺が族長になったからね、雪には今でも里の内政を手伝ってもらってる。」
雅はため息をつきながら話し続ける
「そんな先代族長と雪の子供である黒丸は
いずれ族長になる。
なのに里の掟を破って一人で人の世に行くなんて…!
誘拐かも分からず里は大混乱だったんだ……」
黒丸……本当にタチの悪い悪ガキじゃないか。
アピールされたまま肉とかドーナツとか
ご馳走しちゃったよ……
「そうだ。もう一つ言ってなかったけど…」
雅は歩みを止め凛桜へ振り返る
「黒丸はまだ子供だから
一人で里を降りて野良の妖に襲われた。
まだ身を守る訓練も受けてないんだから当たり前だ。
そして……それはお前にも言えることだ。
身を守る術がない今のまま里の鳥居を出れば…
生き残れば奇跡って感じだろうな」
……なるほど。…………ん?
先を歩き出した雅に駆け寄る
「ならっ!
あの時私が頭領になるのを断って里を出てたら……!死んでたってことですか?!」
雅は振り返らずにスタスタ歩き続ける
「いや、死ぬ寸前で助けるつもりだったぞ?
そしたら嫌でも生きる為に仲間になろうと思うだろ?」
……何を淡々とぬかしてやがるんだコイツは……?!
「こんの腹黒………」
雅に付いていきながらつい心の声が漏れる
「おい…」
雅が静かに凛桜を睨む
「カラスはな…案外耳が良いんだ。よく覚えておけ」
…怖。美形が怒ると凄みが違うな…
凛桜は雅の後ろ姿を睨み返しながら付いていく。
しばらく歩き、ある扉の前で雅が立ち止まる
「ここがこれから凛桜の執務室、頭領の間だ。」
扉が開かれる。
凛桜は緊張しながらその中へ入っていった。
屋敷内には各天狗達の部屋の他にも
訓練場や救護室などの設備も整っています。
いつか紹介出来たらいいなと思っています。
次回は渡り人として契約を交わす凛桜と雅のお話です。
渡り人として凛桜がすべき事とは…?
渡り人はどんな存在なのか…
楽しんで頂けたら嬉しいです。