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夜空の渡り人  作者: 澪露
全てのはじまり
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渡り人

岡田病院を出ると、

そこには1台の車、隣には受付の女性がいた。


「さぁ乗って!雅君と黒丸君は適当に空いてるところにね」


万葉は凛桜を後部座席に案内し、自分も隣に座る。

運転は受付の女性がしてくれるみたいだ。


「普通の車で良かったです…」


妖なんて言うもんだから、

てっきり空でも飛ぶのかと思っていた凛桜は

少し安心する。


万葉は笑いながら女性に車を出すように伝えた。


3人と2羽を乗せた車は京都市内を通り過ぎ、

徐々に山奥へと入っていく。


万葉は

膝の上の黒丸を撫でている凛桜を見て話しかける。


「ではそろそろ説明させて貰おうか。

少し長くなるけど…

昔話だと思って聞いてくれたらいいよ」


万葉は静かに語り出した。




――昔…人間で言う室町時代のこと――


それまでは人も妖もあまり干渉せずにそれぞれ暮らしていた。

だがある時、一人の妖を筆頭に多数の妖が人里に降りて攻撃を仕掛けた。所謂「百鬼夜行」だ。


理由は

妖の里が人間に侵害されている

ということだった。


時代と共に知恵をつけ強くなっていた人間は

知らぬ間に妖の生活を脅かしてしまっていたのだ。


今までも小競り合いはあったが、

ここまで大きな戦いはこれが初めてだった。


人間側は時折現れる妖力を持った人間を筆頭に

百鬼夜行に応戦した。




その中である妖と人が出会う。



その妖は

人との戦いで仲間の妖が大勢消滅してしまうと感じ、

人間に協力して百鬼夜行を解散させる約束をした。


その人間は妖の約束を聞き承諾。

百鬼夜行の解散が成功した時には

妖の生活圈を侵害しないことを約束した。


これが妖と人が対等な約束で協力した最初の出来事であり、

この人間は…妖と人とを繋ぐ架け橋


最初の「渡り人」


となったのだ。



――――



「と、まぁこんな感じで無事に百鬼夜行は解散したんだけど、勿論妖からの反発が多かったんだ。」


万葉は車の窓から外を見る。


「見てごらん。こんな山奥にもコンクリートの道路はあるし、電柱だってある。

現代よりはまだマシだったとはいえ

室町時代でも人間は知恵を高め、

人数も爆発的に増えた。

妖達にとってはとんでもない脅威だったんだ。」


万葉は話を続ける


――――



そこで妖と人は正式に契約を結ぶことにした。


百鬼夜行で主力となっていた妖達は

昔からそれぞれで里を管理していたが、

その里に1人ずつ「渡り人」を配置する。

渡り人はその里の管理、守護を

里の長である妖と共に行う。


人間としては所謂「人質」を取られている状況だ。

渡り人になれるほどの妖力の持ち主は中々いない。

いざ妖と戦争するとなれば必要不可欠な人材だ。


そんな渡り人を差し出す代わりに人間側は

それぞれの妖に、人の利益になる任務を与えた。

人に害なす妖の抹殺や災害時の協力など多岐にわたる任務だ。


こうして約束ではなく

正式な契約を交わした最初の渡り人と妖は

任務の管理や命令、人と妖の均衡を保つために

五峯神ごぶじん

という組織を形成し

今は5名の妖と人でこの国を見守っている。



――――



「そんな渡り人に凛桜君は選ばれたんだよ。

もっとも…昔と比べて

現代では妖力を持った人間は極端に少ない。

渡り人がいない妖の里もあるけれど

任務さえ遂行すれば里は守られる決まりになっているんだ」


万葉は凛桜を見ながら話す。


凛桜は途方もない話に圧倒されながらも

懸命に頭を働かせる。


……ん?何かおかしい……


「万葉さん。私妖力なんて持ってないと思いますよ?不思議な事だって、

黒丸と出会うまで何も無かったですし…」


万葉は雅と視線を交し、ため息をつく


「やっぱり無意識だったんだね…

凛桜君。君は間違いなく妖力を持っている。

それもかなり強い。

今まで黒丸が不安がったり怖がったりした時、

君は妖力で黒丸を包んでいたんだよ。

まるで守っているように…」


………何の話だ?自覚が無いとはいえ

あまりに現実味のない話しだ。


釈然としない顔をしている凛桜を見ながら

万葉は続ける


「君が瀕死の黒丸を連れてきた日あったでしょ?

あの時も君はずっと黒丸を妖力で守っていた。

だからこの人になら黒丸を任せられると思った。

黒丸もこの人間の側にいれば

里を抜け出た説教をしに来る雅からも守って貰える…とでも思ったんだろうね…」


凛桜の膝の上でウトウトしていた黒丸は急に名前を呼ばれてビクッと飛び跳ねる。

そしてジーーーっと黒丸を睨む雅を見つけると

静かに寝たフリをかます。


凛桜は黒丸を撫でる手を止め、

膝の上の子ガラスを睨む。

だから昨日雅が部屋に来た時あんなに怯えてたのか。で、私に助けを求めた…と。


…………こいつ。実は結構ずる賢いな…?


勝手に里を抜け出して怪我して…怒られるのはイヤ。

本当にただの悪ガキじゃないか。


万葉は黒丸を見る凛桜の冷たい顔に笑う。


「まぁ、後でこってり絞られるとしても、

今回黒丸が凛桜君を見つけたのは大きな成果だ。

多少情状酌量の余地はあるだろうね。

……さて、そろそろ里の入口だ。

車を降りる準備をしようか。」


覚悟は出来たかい…?

そんな顔で凛桜を見つめる万葉。


「……よろしくお願いします。」


凛桜は万葉を見つめて頷く。


正直分からないことは多すぎる。

妖、百鬼夜行、渡り人、五峯神……自分がすべき事。

これらが自分の人生をどう変えるのか…


凛桜は不安を抱えながら車を降り

目の前の鳥居を見据える。



万葉先生は基本穏やかですが、怒らせると結構恐ろしい…らしい…?

淡々としながらもド正論で抉って来そうな感じです。


さて、とうとう烏天狗の里に来た凛桜。

これから待ち受ける運命に不安を感じたまま里へ入ります…!

次回は里のメンバー紹介ができるかな…?

楽しみです!

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