初めての感情
「雅?!」
驚く凛桜を自分へと引き寄せて
雅は目の前の男と距離を取らせる
「んで、この人誰?知り合い?」
「知り合い…高校の同級生……」
ふーん…
凛桜の頭に顎を乗せてちらっと男の方を見る雅
……妖ではないし、まぁ普通のナンパだろう。
…許さんけど。
「えっと…凛桜ちゃん…?その人お友達かなんか?」
雅の睨みに耐えつつも田中は凛桜に問いかける
「えっと……まぁそんな感
「違うだろ。」
凛桜の言葉を遮って雅が凛桜の手を握る
驚いて固まる華奢な指を一つ一つ絡め取っていく
「こういう関係ってこと。
分かったらとっととどっか行ってくんない?」
繋いだ手を男に見せながらニッコリと笑う雅
口は笑っているが、
目からは人とは思えない気迫を感じる
「…じゃ、じゃあ凛桜ちゃんまたこんど……!!」
そう言って逃げる田中が見えなくなるのを確認して
雅は凛桜を覗き込む
「…大丈夫?怖かった?手、冷たいけど…」
ふるふると首を振る凛桜に慌てて自分の上着を被せる
「え……いや大丈夫だよ?」
「いや大丈夫じゃない。
虫除けだと思って着とけ。おい黒丸!」
近くで待機していた黒丸に声をかける雅
「凛桜とみんなの所戻ってろ。
ポップコーンは俺が並んどくから。」
頼んだぞ。と
黒丸の頭を撫でて凛桜とベンチへと戻らせた
「…………はぁ。」
大人気なかったか…?とは思うが、
他所の男に横取りなんてたまったもんじゃない。
それに……
なんだあの顔は…!
男に言い寄られている時は困ったような顔してたのに……
俺に気付いた途端安心しきった顔をしたと思ったら、
今度は耳まで……真っ赤にして………
「勘違いするだろあんなの……!」
雅は顔を覆って天を仰いだ
「凛桜大丈夫?」
「うん、大丈夫……ありがとね黒丸」
黒丸と共にベンチへと戻る凛桜
肩にかけられた雅のジャケットが風に煽られ、
その度にさっきの事を思い出す
田中君から私を守るための嘘で、行動で…
それは分かっている。
なのに…どうしてこんなに心臓がうるさいんだ。
「凛桜顔真っ赤。」
「うるさい…わかってる。」
隣でニヤニヤしている黒丸を睨みつつ、
凛桜は子供達の元へと急いだ
――――
「ふぅ……つかれた……」
自室のベッドに倒れ込む凛桜
遊園地での出来事から屋敷に帰ってくるまで
ぜっっんぜん気が休まらなかった…。
帰り中、子供達と楽しく話す雅はいつも通りで…
やっぱり遊園地でのは演技だよねって安心しつつ
少しモヤッとしつつ……。
「いやなんでモヤッとなの!」
枕に顔を埋める
良いじゃん。演技でよかったじゃん。
本心であんな事されてたらこれからどう接していいかわかんないじゃん!
そう思うのに顔の熱は治まらない。
あぁ…これは………"ときめいた"ってやつなんだろう。
「初めてが雅なんて……どうすればいいんだぁ…」
凛桜はベッドで悶えながら一日の終わりを迎えた
やっと雅の努力が伝わってきたのかもです。
ほのぼの回は一旦これで終了です!
子供達の冒険、雅と凛桜の恋模様…
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