強くなるために
――夜、訓練所――
凛桜は一人で刀を振るっていた
るいの事は気になる。だが…
「頭領として前を向かないと……!」
立ち止まっている暇は自分には無い。
自分には守らないといけない者たちがいる…
それを今日子供達と関わって改めて感じた。
「はぁぁぁあ!!」
刀に妖力を溜め、水塊を一気に天へ放つ
「そんでぇ……っ!!」
落ちてきた雨粒の一つ一つを再度操り刀へと纏わせる
妖力の強弱を付けられるようになった今
基本的に任務でも野良に負けることはないが……
どうしても未だに雅には勝てない。
「はぁ……疲れた。」
刀を置いて座り込む凛桜
何もしてないと色々考えてしまうから
こうして体を動かしているが…
「ダメだな…本当に弱い。」
精神的な弱さが自分の太刀筋に現れている…
そりゃ勝てないはずだ。
深呼吸をして星空を見上げた
「………ん?」
翼が羽ばたく音が近づいてくると思ったら…
「凛桜!!!どうした大丈夫か?!」
雅が焦った顔で上から降りてきた
「どしたの…?」
何をそんなに慌てている?何かあったのか……?
雅は凛桜の肩を掴み顔を覗き込む
「座り込んでどうした?!しんどいのか…?」
……あぁ。やっぱりこの人は優しいな。
「休憩してただけ。心配かけてごめんね…
あと色々ごめんなさい…。任務も休んじゃったし…」
あんな事があっても叱るでもなく心配してくれる。
「何回も言ったけど、お前は悪くない。
……まぁ、怪我してるのに訓練してるのは悪いな。」
雅の睨みに軽く笑いを返す
「大丈夫。昔から怪我は早く治る方だから。
だからちょっと稽古つけてくれない?」
起き上がり刀を握る
「私はまだ雅に真正面から勝てたことない。
…多分今のままじゃ一生勝てないと思う。」
力だけじゃなくて内側も強くならなきゃ。
るいの件は忘れない。
今回の件は自分が強くなるきっかけに昇華する。
そして強くなった暁には
「強くなったらきっと…
きっともうあんな迷いなんて捨てられる。」
どっちも助けられるようになる。
凛桜は雅に向けて刀を構える
「凛桜……お前の何倍も生きているから言えるが
全て助けるなんて無理なんだ。
強くなっても手から溢れ落ちる命なんて数え切れない。それでも…」
雅は刀を構える
「救える命を増やす為に力は必要不可欠ではある。
だから付き合ってやるよ…お前の気が済むまで。」
切りかかってきた凛桜の刀を正面から受ける雅
ビリビリと腕に伝わる衝撃に顔を歪めながら笑う
「随分強くなったと思うが…まだ足りないのか?!」
刀を押し切って凛桜を宙へ飛ばす雅
凛桜が体勢を立て直す前に風の刃を作って放つ
「全ッッ然足りないね!
こんなんじゃ守れるものも守れない!!」
風の刃を水塊で消しながら刀に水を纏わせて
雅へ再度攻撃を仕掛ける
強く…つよくつよくつよく!!もっと力を……!!!
「はぁぁあ!!………うっ?!」
突如凛桜の動きが止まった
なんだ……心臓がうるさい…!
息が……!
「凛桜?!」
駆け寄ろうとした雅を巨大な水流が突き飛ばす
「ぐっ………!凛桜………お前…!!」
雅は痛む体を起こすと目を見開いた
暴れる水の柱は凛桜を中心にして
周囲の物を次々に壊していく
真ん中にいる凛桜は胸を抑えて苦しみ叫んでいた
制御出来ていない妖力が凛桜の体から溢れ、
白いモヤが揺れながら大きくなっていく
雅は血の気が引いていくのを感じる
まずい…これは………
「妖力の暴走だ……!!!」
とうとう力の一線を超えてしまった凛桜
雅は果たしてどうするのか?
次回もよろしくお願いいたします。




