子ガラスの奮闘
「着いた。岡田病院。」
……ネットでは野生動物を診察して貰える動物病院…と書かれている。
院内は夜だということもあり、患者はいなさそうだ。
受付の女性に状況を説明するとすぐに診察室へ通される。
「どうぞお入り」
恰幅の良い穏やかそうな中年男性が白衣姿で立っている。
「おやおや…随分とボロボロのカラスだねぇ。よく持ちこたえたもんだ」
話しながらでもテキパキと子ガラスの診察を行う医者。
「君が保護してくれたんだってね。お陰でこの子は今生きられてる。ほんとにありがとうね。」
優しく微笑む医者。だがすぐに顔が曇る。
「君…随分疲れた顔してるね…?受付で待っといても良いよ?」
医者が提案をしてくれた。その時、
バサバサッ!!
「カァ……カァァ!!!」
途端に激しく暴れる子ガラス。
医者も驚いて慌てて宥める。
「私……ここにいた方がいい?」
そう問いかけるとすぐに大人しくなる子ガラス。
まるで言葉を理解しているように。
「…結構カラスって頭良いんですかね……?
私は大丈夫なのでこの子の傍にいさせてください」
誰かに必要とされるのはなんか嬉しいもんだ。例え小さなカラスでも。
医者はゆっくり微笑む。
「わかったよ。子ガラスがしたいようにさせてあげようか。」
時折苦しそうな鳴き声を出す子ガラス。
凛桜は懸命に声を掛けながら治療を見守った。
―1時間後―
医者が眉をひそめる。
「うむ…。右足の骨折に左翼からの出血…。
一体何があったんだ?ってくらいの怪我だね…」
医者は疲れきって寝ている子ガラスを撫でながら凛桜を見る。
「恐らく歩けるようになるまで1週間。入院させることも出来るけどどうする?君仕事もあるでしょ?
病院としてはどちらでも大丈夫だけど…」
医者が苦笑する。
「起きた時に君がいないことに気付いたらこの子は恐らく暴れるね…困った患者だ…」
確かに…せっかく治療したのにまた暴れたら…とは思う。
しかし仕事はどうする…?
「この子を家で看病させてください!」
考えるより口が先に動いていた。
冷静に考えれば仕事が優先だ。わかっている。
けど……この子は私を頼ってくれている。
どうしてもこの子が元気になり、飛び立つ姿が見たい。そう思ってしまった。
「わかった。じゃあ、1週間後にまた来てくれる?
その時にまた診察させてね。」
医者はそう言うと何やらメモをくれた。
「基本カラスは何食べても大丈夫だから。興味示すもの食べさせてあげてね。あと、包帯は一日に一回替えてあげてね。やり方はそのメモに書いたからね。
それと…」
医者は楽しそうに笑う
「恐らく明日から沢山のカラスが来ると思うけど、子ガラスの仲間だろうし気にしないでね?
カラスって頭良いし愛情深い生き物だからね。」
「わ……かりました…」
………カラス来すぎて大家さんから苦情来たらどうしよう…
そんな事を思いながら明日からの生活に不安と期待を感じる。
「……とりあえず朝一で在宅ワーク申請しよ。」
夜も深けた道。家に帰る道はいつも寂しいものだったが、今日は少し気が楽だった。
――真夜中の病院。医者が誰かと電話をしている――
「そう。見つけたよ。全く無茶をしたようだね。
…だけどそのお陰で君らの探し物も見つけたようだけど。」
笑いながら話す医者はどこか楽しそうだ。
窓から差し込む月光。
その光が作り出しているのは…
人とは思えない姿の影だった
カラスって結構可愛い顔してますよね……
分かってくださる方中々いないんですけど。
きっと凛桜も子ガラスの可愛さに心動かされるものがあったのかも…?と思います。