舞の準備
祭囃子の音合わせなどが聞こえてくる中、
凛桜は5人程の白狐に囲まれていた
「そっちもう少し引っ張れます?」
「このくらいですかね…」
「耳飾りこっち持ってきて!」
ひたすら両手を開いて立っているしかない凛桜を素早く着飾っていく侍女達…
「髪飾り痛くありませんか?」
「はい、大丈夫です…」
痛くは無いが随分と重い……。
自分が今どうなっているかは分からないが、
少なくとも人生で一番着飾っていることは確定だ。
「どんな感じだ?……お!良いな!想像以上じゃ!!」
扉が開かれ、目隠し用の幕が上げられるのと同時に
銀が目を丸くして驚いている
「あ、ありがとうございます……
あの…今私どんな感じなんですかね?」
「大層お美しくていらっしゃいますよ」
「ええほんと!衣装もピッタリですし、
姫様のイメージに合うように少し手を加えたのが正解でした!」
「………ありがとうございます…」
口々に褒められた凛桜は顔を赤くして苦笑する
「銀様、お願いいたします。」
侍女の1人が銀に筆とお猪口を渡す
それを受け取った銀は凛桜に近付きそっと微笑んだ
「最後の仕上げじゃ。口を軽く閉じなさい」
凛桜は言われた通りに口を閉じ、
銀は凛桜の顎をそっと上へ向ける
「本来は婚姻の儀に母親がするものだがな…
お前を魔から守る為、今回は私にさせてくれ」
銀は凛桜の唇に筆を添わせ、丁寧に紅を引く
「うむ……綺麗だ凛桜。本当に……」
銀は優しく凛桜の手を握る
「凛桜、堂々と舞いなさい。今のお前はこの世で一番美しく、そして清らかな存在だ。大丈夫、絶対に上手くいく。」
銀は凛桜から離れ、侍女の持ってきた姿鏡に凛桜を映す
「どうじゃ?自分の姿は」
「うわ………凄い…」
凛桜は目の前に映る自分の姿にそう呟くしか出来なかった
頭に乗せられた金の髪飾り、それに繋がるようにつけられている耳飾り……
そして銀糸で白い衣装に刺繍されている水流のような模様と龍
そんな華美な衣装にも負けないくらい華やかに仕上げられた見たこともないような自分の顔……
「自分じゃないみたい……」
「そんな事ない!土台が良いから映えるんだ。」
銀の言葉に大きく頷く侍女達
銀は凛桜の前から鏡を退かす
「ではそろそろ本番だ。行けるか?」
銀の言葉に凛桜は頷く
「行けます。」
凛桜は銀に付き添われ、
ゆっくりと幕の外へと歩き出した
――――
銀は凛桜と共に指定の場所に着き、侍女達によって衣装の最終調整をされていく
「小規模にしたとはいえ、やはり結構賑やかだな。」
銀は凛桜を手招きし、
廊下を覆っている幕から周囲を覗く
会場となる館の中庭には沢山の楽器や神への供物、煌びやかな飾りに埋め尽くされている。
その中庭を囲むようにそびえ立つ館の廊下には
既に多くの妖たちが着席しており、自分の舞で始まる祭りを心待ちにしている
そんな人々の目線の先、
中庭の中央に設置されている大きな舞台…
「あそこが舞台だ。
時間になったらここで被衣を被せる。
あの橋を渡って舞台の中央に行ったら被衣を取り、音楽に合わせて舞が始まる……どうだ?」
「どうだと言われましても……緊張が最高潮ですね。」
「まぁそうだろうな…」
凛桜の言葉に苦笑する銀
「姫様、お時間です。」
侍女の一言で場の空気が一気に張り詰める
侍女達は後ろに下がり、銀は凛桜に被衣を静かにかける
「最後の演出はあくまで"出来たら"の話だ。
自分の妖力の流れを把握して判断しろ。」
銀は被衣を整え、凛桜の頬へと優しく触れる
「凛桜の晴れ舞台、楽しみにしておるぞ。」
「はい、ありがとうございます。」
凛桜は頷き、橋の手前まで進んでいく。
凛桜の両隣に立つ人達が橋に続く幕に手をかける
「……参ります。」
幕が開かれるのと同時に辺りは静寂に包まれる。
自身を照らす眩しいほどの光に目を細める凛桜
皆が……この場にいる全ての視線が
今、自分に向いている。
「……ふぅ…」
凛桜は静かに息を吐き、静かに足を踏み出した。
被衣ですが、実際の舞に使われているかは不明です。
だけどあれけっこう好きなんです…すごく風流を感じると言いますか……雅な感じが好きなのです!




