過去の愛し子
――――
昔むかし。
まだ神も妖も分かれていなかった頃のお話。
この国には龍がいた。
その名は白龍と黒龍。
ある時、黒龍が悪事を働くようになり
国に大きな影響を及ぼした。
その事態を重く受け止めた白龍は
相打ちになってしまったが黒龍を討ち滅ぼした。
――――
「で、ここに平和が訪れました。
……と思ったんだがな?」
銀はお茶を飲み、凛桜を見る
「凛桜は初めて聞くだろうが、
この話は妖なら子供の頃によく聞く昔話だ。
昔過ぎて資料も無いからな……実際のところどうだったのかは知らん。」
銀はどら焼きを口に運びながら話を続ける
「そしてここから話は鎌倉時代になるんだが…
これは事実に基づいた実話になる。」
銀は口を空にした後、再度語り始めた
――――
時は過ぎ、鎌倉時代。
とある神社の巫女が
当時国の将軍であった義満という男に進言した。
その少女が言うには
"白龍からのお告げがあった。
黒龍が目覚めた、止めねば災厄が降り注ぐ"
との事。
当時、陰陽師のような立場であった軍師も
妖による被害が増えてきていたことにより
巫女の言うことを信じ、巫女への全面協力を申し出た。
人間側の協力を得られた巫女、
今度は妖側にも同じく協力を仰いだ。
――――
「こうして巫女は最初の渡り人として
双方の力を借りて黒龍を封印した。」
銀はここまで話して凛桜を見る
「その巫女は自身を"白龍の愛し子"と名乗り、
その姿は白髪で青の瞳だったらしい。」
「……私の時と一緒だ……!」
銀は頷く
「外見もそうだが、光り輝くような力を使っていたとも言われている。
その事からも凛桜が愛し子なのは間違いないだろう」
「そうですね…。
でも私はお告げなんて聞いたこともないし…、
その巫女さんはその後どうなったんですか?」
凛桜の言葉にその場の全員が下を向く
「亡くなった…。」
雅が口を開く
「黒龍との対峙で…亡くなったそうだ。」
「え……、」
凛桜は言葉に詰まる
そんな凛桜を見つめ、銀は再度口を開く
「黒鱗の動き、
最近少しずつ増えている妖絡みの事件…
そして白龍の愛し子が現れた。
…黒龍の復活が近い可能性は高い。」
「………そうですか…」
凛桜はそれ以上言葉を紡ぐことが出来なかった
自分が持っている白龍の力……
過去の話からも黒龍を倒す為に必要な力なのだろう。
「あの……すみません質問が…」
静かな部屋に微かに響いたのは錫の遠慮がちな声
「黒龍の件はわかったのですが…
それと黒鱗がどう繋がるのですか?」
「確かに…。黒鱗の目的ってなんなんだ?
私の事誘拐しようとはしてたけど…」
凛桜も首を傾げる
銀はそんな二人を見て椅子にもたれる
「そこだ。そこがわからんのだ…。
まず、黒鱗は百鬼夜行後から密かに動いている組織でな。最終目的は"もう一度妖中心の世に戻す"事だ。
その為に黒龍の復活を目論んでいる。」
銀は錫の頭に手を置き、軽く撫でる
「基本的に黒鱗が絡む任務は危険が多いからな。
錫には伝えていなかった…すまない。」
「いっ…いえ!そんな…」
無抵抗に頭を左右に揺られる錫に少し笑いながら
凛桜は更なる疑問を銀に問う
「だとしたら…なんで黒鱗は私を殺さなかったんでしょう…?黒鱗からしたら邪魔される前に白龍の力を無くしたいんじゃ?」
「確かに……」
皆が考え込んでしまう
「まぁ少なくともこれから凛桜は1人での行動を控えてもらって。
この件は引き続き調べるしかないだろうな」
雅がそう話して凛桜の肩に手を置く
「色んな事が一気にわかって混乱するのもわかる。
だがな?前の愛し子のようにならない為に俺達は動く。悲観だけはするなよ。」
「うん…わかった。」
凛桜は複雑な心境のまま少しだけ微笑んだ
白龍と黒龍の関係が明らかになりました!
黒龍の復活を阻止する為、今できることは…?
引き続きよろしくお願いいたします




