儚い約束
「ありゃ…もうこんな時間だ」
幸がスマホを見て驚く
「ほんとだ…もう3時半か」
凛桜もスマホを確認し、顔を曇らせる
「ん?リオどした?」
顔を覗き込んできた幸に凛桜は言葉を詰まらせる
「えっと……その…、」
「…うん。ゆっくりで良いよ。」
幸は凛桜から顔を離し、ゆっくりとコーヒーを飲む
数分、沈黙が続いた後
「これから幸の記憶を消さなきゃいけない…」
絞り出すような凛桜の言葉に幸はゆっくりと頷いた
「だと思ってた……。
だって!私だけ全部知ったままな訳ないもん!」
アハハ!と笑った幸を見て凛桜は顔を歪める
「幸…ごめんね………ごめん」
「やめてよ!そんな……そんな顔…」
幸は下を向いて肩を震わせる
「記憶…消した後はもう会えないの………?」
「うん。会えない…。」
「そっか………。」
凛桜はバックから小瓶を取り出す
「これを飲んだらすぐ眠くなると思う。
さっき話した美花達のとは違って数分で目が覚めるの。そして起きたら……全部忘れてるから…」
そこまで話し、凛桜は小瓶を幸の前へと置いた
「幸が起きるまでちゃんと近くで見守ってるから。」
「ありがとう。」
小瓶を受け取った幸は両手でその小さな容器を握る
「これで……お別れなんだねぇ……」
溢れた涙が震える手に落ちる
「うん…今までありがとうね…!」
凛桜からも耐えきれなかった雫が零れる
「私ね…本当の高校生の時も、その前も……
こんなに一緒にいて楽しい友達初めてだった……!」
凛桜は幸の両手を自身の手で包み込む
「幸せなひとときを…ありがとう…っ」
「こちらこそ…リオと出会えて良かったよぉ…!」
嗚咽をもらしながら、幸は満面の笑みを浮かべる
「絶対にっ…また思い出して会いに行くからな!!」
グイッ……
小瓶を一気に空にした幸が笑う
「あははっ…!そうなったら…良いなぁ…」
凛桜は目元を拭いながら同じく笑みを零す
幸が寝息を立てるその時まで、
2人はお互いの手を離すことはなかった
――――
「おっ、動き出したみたいだぞ。」
「ほんとだね、私の事も探してる感じ無さそう。」
人気の無いビルの屋上。
雅と凛桜は端に座って幸を見守っていた
「良かった、机に置いてたお持ち帰りのドーナツも持ってくれてる!」
そう言って笑う凛桜を見て雅は優しく微笑んだ
「…もう吹っ切れたのか?」
「んー…どうだろう」
雅の問いに少し悩む凛桜
「まだしばらくは今回のこと考えちゃうと思う。
けどさ?なんか知らないけど…
あまりお別れって感じないんだよねぇ……」
また会えちゃったら良いなぁー
そう言って足をユラユラ揺らす凛桜
「んな事……って言いたいが、」
雅は幸を見下ろしながら苦笑する
「あの子ならやりかねんなぁ…」
でしょ?!
凛桜は笑いながら雅の言葉に頷いた
晴れやかな笑顔、その瞳に少しの寂しさを滲ませながら…ずっと過去の親友を眺めていた
これにて妖力解放編終了です!!
長かった……!長かったよぉ!
それなのにここまで読んでくださる方々……!
ほんと一人一人に御礼言いたいくらいです!
これから凛桜と雅、周りの妖達は本当の敵を知り、
本当の苦しさを味わうことになると思います。
これから始まる〖恋と破滅への物語〗…
どうぞよろしくお願いいたします。




