幸と凛桜
翌日、午後1時頃……
「じゃあ俺ここで待ってるから。」
「うん」
「………なんかあればすぐ連絡しろよ。」
「うん……」
心ここに在らず…って感じではないな。
雅は目の前で少し俯いている凛桜を見て
困ったように頬を搔いた
凛桜はこれから幸の記憶を消しに行く。
本来なら面識のない者が行った方が良いのだろうが、
凛桜たっての希望もあり了承した…のだが。
「別に普通にドーナツ食べて帰ってきても良いんだぞ?」
記憶はこの土日に消せば良いんだ。
まだ機会は沢山ある。
無理してしんどい思いをしなくても…
そう思うのに目の前の少女は小さく首を振る
「最後だから……自分で終わらせたい。」
「…………、」
まぁ俺が何言っても聞くヤツじゃないよな…
眉を下げた雅は微笑みながら凛桜の肩を掴む
「ならもう腹決めて行ってこい!」
そのままくるっと凛桜を反転させる
前方にあるのは待ち合わせ場所のドーナツ屋。
強ばる凛桜をそっと前へ押し出す
「……行ってきます」
そう言って歩き始めた凛桜を
雅は優しく見守っていた
――――
店内に入ると
奥のテーブルに座っている幸と目が合った
「リオ!ありがとう来てくれて!」
満面の笑みで手を振る幸に
こちらも少し心が和らぐ
「幸こそ…昨日の今日でごめんね。
あれから体調とか大丈夫?」
「ぜーんぜん平気!けど……」
幸は少し寂しそうに笑う
「美花の事はやっぱりまだ考えちゃう…かな。」
「そうだよね…。私もだよ。
だから…幸には全部伝えるね。
美花のことも…要のことも。」
凛桜は少し考えながら言葉を紡いでいった
「そっか…要君は……、そっかぁ……」
話を聞き終えた幸は顔を覆ったまま口を閉じる
「幸…ごめんね、辛い気持ちにさせちゃって…」
「いや違くて!いや、違くもないんだけど、」
うーん…と唸りながら幸は凛桜を見る
「正直複雑な気持ちではあるよ…。
やり過ぎではあるけど、美花のしたいことも気持ちは分かるし。要君についても可哀想…って気持ちはある。だけどね?」
幸は目を細める
「凛桜がそれで罪悪感を感じる理由は無いよ。
正しい事をした。それは確かなんでしょ?」
「した……。したんだよ。
あそこで鬼を倒さなければ被害は拡大していたし、
美花達を止めなければ3人は助からなかった…っ」
涙を必死に堪える凛桜に幸は頷きながら手を握る
「そうだよ。リオは正しい事をして人の命を救ったんだよ。私もその一人…。
本当にありがとうね、リオ。」
凛桜は幸の言葉に頷き、その硬い表情を解いた
幸と凛桜の最後の思い出です。
そして次回で妖力解放編最後です!
引き続きよろしくお願いいたします。
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