紙飛行機
小学生になると学校でテストをやるようになった。
何回も悪い点を取って先生にもお母さんにも怒られた。
僕は泣くのを我慢しながら玄関に座っているとお父さんが帰ってきた。
「ただい…何だ?どうした?」
「テストで悪い点取っちゃって…。お母さんに怒られたの。」
僕がお父さんに言うと笑いながら言った。
「そっか~。怒られちゃったか。そういう時どうすればいいかわかるか?」
お父さんは笑顔のまま僕のランドセルを開けてテストを出した。
「わかんないよ…。お勉強する?」
僕が聞くとお父さんは手元で何かもぞもぞしている。
しばらくすると得意げな顔でお父さんが作った物を見せてくれた。
「こうだ!」
「何これ?」
「知らないのか?紙飛行機って言うんだよ。」
「テストぐちゃぐちゃにしたら怒られるよ。」
「確かに…。だけど見てろよ…。」
お父さんは振りかぶり紙飛行機を投げた。
綺麗な軌道で空を飛んでいく。
「うわー!」
僕が感動して見ていると
「どうだ?さっきまで見るのも嫌だったのものが面白い物に変わったろ?」
「うん。すごい飛んでったね。」
「だからあんなに玄関で泣くほど落ち込まなくてもいいんだよ!テスト何てこれから何回もやるんだからいちいち落ち込んでたらキリが無いぞ?あ、でも勉強はしろよ?お父さんがお母さんに怒られちゃうから。」
「お父さん言ってることめちゃくちゃだね。」
僕は笑いながら言った。
「悪い点取ったら出来るだけ遠くに投げ飛ばして忘れて気分切り替えな。お父さんも嫌なことがあったら紙飛行機で飛ばしちゃうから。」
父も笑いながら言った。
それから何度もお父さんと一緒に紙飛行機を作りどちらが遠くへ飛ばせるか競争した。
お父さんの飛行機は僕が作る物よりいつも遠くに飛んだ。
お父さんに作り方を教わってもお父さんに勝てなかった。
そんな日々からどの位経っただろう。
小学生の息子が部屋で泣いていた。
僕は部屋に入り話を聞いた。
「どうした?」
「皆よりテストでいい点が取れないんだ。」
息子はしゃくり上げながら僕の目を見て言う。
僕は笑顔で息子に言った。
「いい方法あるんだけど教えてやろうか?」
「何?」
「パパと一緒に外でようか。」
お父さんもこんな気分だったのかな?
そんな事を考えながら息子の答案用紙を持って手を繋いで一緒に外に出た。
「おーい!」
二階のベランダで煙草を吸っている元お父さんがこっちを見て手を振っていた。