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煮詰まった思考 2

『これも!これもすごいでしょ?』

住人は唐突に話題を変え、壁際にずらっと並んだ棚を示した。


“苦しみ食材”、“悩み調味料”……

棚には数えきれない程の種類か並んでいた。

どれもこれも体に悪そうなものばかり。


『これを見せるとみんなが誉めるのよ。すごいですねって。鍋の大きさや、かき混ぜ方を誉めてくれた人もいたわ』


確かにすごい数で、棚の上に整理されて置いてあった。


私はその一つを手にとって見てみた。


悩み調味料のラベルには

“まばたきすること”

と書いてあった。


違うものを見てみると

“息を吸うこと”、“聞こえること”

などがあった。


「?、この “息を吸うこと” は、楽しみ調味料にもなりますよね?」


すると住人はすごい形相になり、私の手にあった調味料を荒々しく奪い取って瓶ごと鍋の中へ放り込んだ。

さきほどの “素朴な疑問” のような質問は、見事にもみ消された。



『誉めてくれない人はキライなの。私の思い通りの言葉をくれないとイヤなのよ』



私は再び誉めどころを探してみたが、疑問しか思い浮かばない。

まだひとつも住人に対して根本的な理解をしていないからだ。


「この大鍋、何で煮詰め続けているのですか?」

“素朴な疑問” のような質問が続いてしまう。


『…』


「美味しく食べる為に煮詰めているのですか?」


『そ…そうなのよ。美味しくなるように煮詰めているのよ!』


「では、何故増え続けているのですか?」



『…私、寂しいの』

答えたくない質問には沈黙か、話題を変えることで無かったことにするらしい。


「なんで寂しいのですか?」


『私のことを理解してくれる人がいないからよ!』


「ええと…先ほど私が質問したのは、あなたを理解するためのものですが…」


『私に都合の良い質問しか受け付けないの!』



ここの住人に都合が良い質問とは何だろう?

何も理解していないのに、上手く質問できるだろうか?



とても難しい問題だ、と私は思った。

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