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“湖”のような生活を目指す!
「祝、自活…っ」
窓から少しだけ身を乗りだしグーッと伸びをする。
そよぐ風を頬で感じながら、目を閉じてみた。
風の香りが甘い4月。
子供の頃からずっと夢にみていた自立を叶えた。
神奈川の郊外、緑豊かなこの地方都市に拠点を決めたのは、大学生時代の夏休みにゼミの仲間と来たこの土地が気に入ったからだった。
大きな川があって森があって、そこから少し登った場所に街がある。そんな地形が良いのか、いつも心地好い風が吹いていてそれがとても懐かしく感じたのだ。
振り返るとなにもない部屋に、少し大きめのリュックと数箱の段ボール。ここからスタートだと思うと少々不安ではあるが、楽しみが完全に勝っていた。
イチから始めよう。
静かで自分なりに豊かで、優しい時間を過ごせる毎日。
これまでみたいには、もう絶対にするもんか。
ザアと強めの風が吹き込んで来たので窓を閉める。
そうだ、まだカーテンもない。
近くの商店街に行って、カーテンと今夜の夕飯をゲットだぜ。
パーカーを羽織って財布を持ち、玄関を出る。
しっかり施錠。
真新しいキーホルダーに付属の鈴がチリリと可愛らしく鳴った。