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科学的異世界  作者: えとうるい
8/17

綾女タイム①

 

「「ふぁ?」」


「ふぁじゃなくてーだから化学準備室の掃除ー。じゃ、よろしく」


 田代は相変わらず癪に触る雑な説明をオレにして去った。


 …長財布、常時右ポケットに。覚えたぞ


「…あんたクラス同じだったのね…」


 化学室準備室の掃除をすることになった。ツンデレの綾女と。


「どちら様で?」


「はぁ?あんた…」


「はいさっさと済ませて帰りたいから早よ行くぞ」


「ちょ…あんたねぇ!」


 うるさいのを無視してオレは化学室へ向かった。





━━━━━━━━━━━━━━━





 〔何故態々面倒になりそうな対応を?〕


 からかってやらなきゃコイツの個性が死ぬだろ?


 〔成程、憂さ晴らしですか。ストレスなどないでしょうに〕


 お前オレをよく分かってんな。


 マインドと会話していると綾女が聞いてきた。


「てかあんたその手袋何?」


「おしゃれ」


 即答した。もう由端さんの時の失敗はしない。


「は?かっこいいとでも思ってんの?」


「思ってる。かっこいい」


「言っとくけどちょーダサいからね、あんたがつけると」


 そう言われたので、オレは振り返って返事をした。


「それはお前の感性だ。オレの話じゃない。そして身につけているのはオレだ。お前の感性を考慮する必要などない。オレがかっこいいと思っているならこれを身につける理由はそれだけで十分だ」




 そう言うと綾女は何か複雑な顔をした。理解できない故の顔ではない。何か、オレの話を何か自分の体験にでも当てはめているのだろうか。


 〔...勘違いクール童貞〕


 なんか言ったか


 〔別に...〕


「ここか?」


「化学準備室って見ればわかるでしょ。字も読めないの?」


「そんな感じ〜」


 オレはガラガラっとドアを開けた。


「…これ何年放置されてんだ」


 〔8年程でしょうか〕


「なんなのこれ…掃除って何処をよ…」


 部屋には三つの大きな棚と乱雑に未開封の段ボールが置かれていた。段ボールには厚く埃を被っている。


「段ボールの中身を棚に並べりゃ良いのかな」


「最悪。それにあんたなんかと」


 押してみるか。ツンデレは押しに弱い。


「女の子と密室で二人きり…」


「は?キッショ」


 あれ、なんで。


 〔…マスターは残念な人ですね〕


「冗談だよ。やれやれ、まずは箱開けていくか」


 オレは近くの段ボールを開封した。上には埃をかぶっているので埃が舞う。


「うぉ〜い」


「はぁ…面倒くさ」


 綾女もオレから一番遠い位置にある段ボールのそばへ行き、開封を始めようとした。


 意外と真面目なのかな。帰るかと思った。


 〔マスターなら帰りかねませんね〕


 否定しない


「きゃっ」


 綾女が積まれていた段ボールを落とした様だ。埃が高く舞った。


「あ、ごめんなさ…ケホッケホッ」


 この子結構素直だな。そうだ。良いこと思いついた。


「部屋の中身は、埃でした」


 段々と声が高くなる様に言った。


「は?」


「なァ、オマエ。粉塵爆発って言葉ぐれェ、聞いたことあるよなァ?」


「は?何?」


 台詞うる覚えだけど…まあ大体合ってるだろ


「粉は舞うと表面積が増えて燃えやすくなり、火がつくと急速に燃え広がるから爆発みてェになる」


 そう言いオレは右手を胸ポケットに入れて何かを取り出すそぶりをし、無意味に意味深な笑みを浮かべた。


「え、ちょまって何する気!ねぇ!待って!」


 おーおー良い反応だ


 ヒヒヒ、と笑い手を出した。


「やめ...」


「冗談だ」


 オレの右手にはのど飴が握られていた。


 綾女は涙目でこっちを睨んでいる。可愛い女の子の怖がる姿が見られただけで満足だ。今日だけ田代に感謝しておこう。


 オレはのど飴を雑に口に放り込んだ。


「あんた…大っ嫌い…」


 うん。反応がいいとやっぱり嬉しいな。


 〔…最低ですね〕


 お前にその属性は求めてないぞ


「ごめんて、換気するか」


 オレは換気扇のスイッチを入れた。


「あんたほんと許さない…」


 うん、正当な理由があって嫌われるならいいね。理不尽に嫌われるのは傷つく。やはりアニメに倣うと上手くいくね。


 〔そういう事ですか。それにしてもアニメに倣って手刀を撃ち死にかけたのを忘れましたか?〕


 うるへー


「いやごめんて。つい出来心で」


「…謝罪はもう良いわよ…許さないし…早く終わらせて帰りたい…」


 あらあらやり過ぎたのかしら。


 その空気のままオレらは作業をして、2/3程箱の中身を棚に並べ終わったところで、唐突に綾女が聞いてきた。


「あんた…中学何処よ…」


「ふぇ?なんで?」


「何処の中学行けばそんな品位の低い人間げ出来上がるのか気になったのよ」


 酷い言われ様だな


『地球の中学』ってのは説明めんどいから言わないでおこう


「中学行ってないけど」


 この世界のは、ね。


「は?じゃあどうやって勉強したのよ?塾?」


「塾なんかいくか。塾教師共は中学生は無限に時間があると思っていやがる」


 オレは記憶の中の悪魔共を思い出して苦悶の表情を浮かべた。


「独学だよ」


「…人との関わり方を知らないからこんな残念な人間になったのね」


「そんな感じー」


 ツンデレってよりは毒吐きキャラだな。


「お前は?お前は何処の中学行ってたんだよ」


「お前って呼ぶな…」


 おっとこれはチャンスだ


「陽菜」


「もっとやめて」


 すごく嫌そうな顔をされた


 赤面しろや


「じゃあ綾女はいずこの中学へ行かれてたんで?」


「あたしはホームスクールよ」


 ブーメランじゃん


「ブーメランじゃん」


「は?何が?」


「なんでもございませーん。段ボールまとめて一回捨ててくる。そっちのちょーだい」


「ん…」











「差し入れ買ってくか」


 ゴミ捨て場に段ボールを捨て終わってオレは自販機の前に立っていた。


「いちごラテとブラックコーヒーにしとくか」


 〔差し入れする様な心があったのですね〕


「普通にあるし君今日あたり強いよ」


 〔そうですか。少しマスターに対する嫌悪が出ているのかも知れません〕


「酷いこと言うねぇ。今夜君とはお話する必要がありそうだ」


「yes my lord」


「多用すんな」








「帰還」


「遅い。もうほぼ終わったわよ」


「そうか。じゃあ後オレやっとくよ」


「じゃああたしは帰らせてもらう」


「ほい。お疲れ様、これどーぞ」


 さっき買ったブラックコーヒーといちごラテを綾女の前に出す。


「これは…?」


 いちごラテをガン見している様だ。


「好きな方をどーぞ」


「…あんたこれに何か…」


「オレに毒見させて間接キスでもしたいんか?」


「…いちごラテ」


「うぃ、じゃーの」


「…ありがとう」


 綾女は小さくお礼を言って去っていった。


 オレは体の中の内圧を下げる様に息を吐いた。


「とぅかれた。精神的に」


 コーヒを開けて口に含んだ。ちょっと苦い。だがカフェインがなければ体は動かない。我慢して飲もう


 〔疲れるのは自業自得です〕


「なんでよ」


 〔...別になんでも〕


「てかこの世界にはアニメが足りないとおもう。つまりオレの生きがいが足りないんだ」


 〔そうですか〕


「いつかオレはアトランティスをアニメ大国にする」


 〔頑張ってください〕


 オレは残りの段ボールを開封し棚に並べ、軽く準備室に掃除機をかけて帰った。





━━━━━━━━━━━━━━━





「学校どう?」


 久しぶりに帰ってきた紗南さんに調子を聞かれた。


「順調です。紗南さんは仕事いま忙しいんですか?」


「ええ。なんか変な砕けたチップの解析させられてて」


 あれ?


「用途を調べてあとは丸投げすればいいんだけど踏まれて壊れてて調べらんないのよ」


 あ、あれれ


「しょ、しょのチップは何処で見つかったんですか?」


「妙な事件があった現場でよ」


「グギッッ…ゲホンッ!事件?なんの事件ですか?」


「それは言えないわ」


 あーらら。ビンゴだ。


「成程…」


「そういえば、これはそれとは関係ないけれど、最近地球人が襲われる事件が起きているから気をつけて」


「襲われる?」


「そう、記憶を消されるの」


「記憶を…消される?」


「記憶する役割の脳の部位に電気を流されて破壊されたみたいな感じで」


 なんやそれこっわ


「それはどういう…誰がどんな目的で」


「わかってないわ。でもそういう事件が何件も起きててターゲットが全員地球人なのよ」


 アンコモンの仲間か?てかあいつ今何してんだろ


 〔死んだでしょうね〕


 あそっか、殺されるって言ってたな。


 女として逝った訳だ。


 〔最低です〕


「オレ見た目じゃ地球人だってわからないですよ」


「そうね…でも気をつけてね…」


 治安わりーな技術進んでるくせに。やっぱ異世界なんだな

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