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家族




鏡台で頭を打って、私は死んだはずだ。

最期の通院をするため、メイクをした後に転んで。



なのに、畠中アキの見ているものは、綺麗な白い天井に、傷一つない割れたはずの鏡台、おまけに隣の部屋にアキを「お母さん」と呼ぶ小さな女の子と背中向けてパソコンに向き合う夫らしき人がいる。



「幼稚園のお迎えは、俺が行っといたよ。昼まで眠っているなんてアキもお義母さん達が来たりして疲れてたんだろ」



幼稚園?俺?おかあさん?

ブラック企業で、フルで働いたあげく、燃え尽きてうつ病を発症して、通院して、仕事復帰の見込みもないアキは、布団にもぐったまま頭は、大混乱した。



おまけに、結婚した事も子供を産んだ事もない。



アキを「お母さん」と呼んだ女の子は、「お父さん 」らしき人の周りをうろうろした後、アキを見た。



まだ4、5歳だろうか?実家暮らしのアキの妹の子供達と同じ年くらいだ。小さな瞳は、ずっとアキを不安そうに見ている。


「お母さん、体わるいの?」

不安そうに、「お父さん」らしき人に聞いた後にアキを見て泣きそうな顔をした。



「大丈夫よ」

アキは、思わず口にした。自分でも驚きつつ、その女の子の不安をどうにかしてででも取りのぞきたい気持ちが勝った。



「よかったあ!」

可愛い白いフリルのついたスカートのすそをもじもじさわりながら、満面の笑みで笑う女の子を見て、なぜかアキはほっとした。


「愛、お母さんがお昼ごはん作るまでお部屋で遊んでたら?おばあちゃんにかわいい熊のぬいぐるみもらっただろ?」

「お父さん」らしき人が女の子に顔を見て優しい笑顔で「愛」と呼ばれた女の子は、うなずくと、アキから見えない隣の部屋に走っていく。



「愛」の「お父さん」らしき人の横顔をアキは、どこかで見たことがある。



「直人?えっ!」

アキは、思わず起き上がった。「お父さん」らしき人が振り替える。



それは、まぎれもない3年前にアキと別れ、同僚とすぐに出来ちゃた結婚したアキの元カレの佐伯直人だ。



「なんでいるの?」

思わず言っていた。直人が結婚してからは、同僚のアキとは正反対の性格の適度に仕事で手を抜き、適度に職場で愛想をまいてた近藤奈美がアキを嫌っていたため、結婚後から一切、連絡すらとっていない。



むしろ、職場で結婚式にアキのみが休職中と言う事もあり、呼ばれなかったのがとどめになった。



直人が振り向き、少し困った顔をした後、苦笑いをする。



「なんでって、結婚してるし、夫で愛の父親だから?」

困ったように笑うと直人は、午前中から幼稚園から電話が来て、アキと連絡がつかないと幼稚園から電話が来て、半休をとって、愛を迎えに行ったと言う。



「疲れているとこ悪いんだけど、愛のお昼お願い、俺は仕事行ってくる」

手早くスーツに着替えると、直人はアキの娘らしい愛を置いて、家から出て行ってしまった。



突然、聞きなれないスマホの着信音が、手元で鳴りアキが怯えながら着信画面を見ると、アキがブラック企業で燃え尽き、うつ病になり、妹家族を大切にしてアキを見捨てた母親からだ。



怖くなり、1度拒否にしてしまったが、遊んでいた部屋から「娘らしい」愛がキョトンとした顔をして、アキを見る。



「お昼ごはん、今から作るから待っていて」


自分の口から飛び出した言葉に驚いたが「娘らしい」愛が、ニッコリ笑い、また遊んでいた部屋に戻った。



また着信音が鳴る。



アキは、恐る恐る電話の受信のマークをスライドさせた。



「ああ!もう!なかなか繋がらないんだから!愛ちゃん元気?それより、聞いてよアキ、早織がなかなかうつ病よくならないし、引きこもり始めたの、愛ちゃんいて悪いんだけど、空いてる日にでも実家に来てくれない?」

久しぶりの、元気な母親の声だったが、アキは混乱した。



早織はアキの妹で、結婚して二人子供がいるはずで実家にいるはずだ。



いるはずだけど、引きこもり?うつ病?アキは、ますます混乱した。



「じゃあ、平日頼むわね!」

母親からの電話は、相変わらず一方的に切られ、ツー、ツー、と静かな機械音しかしなかった。



目の前にある窓からは、手入れされた小さな庭が見える。



呆然としていたアキだが、どうやら本当に転生してしまったようだ。











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