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短いお話

恋花のヒミツ

作者: 蒼井托都

鬱蒼とした薄暗い並木道を、ナズナはゆっくりと歩いていた。

並木道の先には、父親の墓があった。


父親は17歳のナズナを17歳の時に授かったので34歳。

ナズナが17歳にして初めて父親とマトモに話す機会を得た時には、

とてもじゃないが高校生の娘がいるような男には見えなかった。

父親は若かった。親として向き合うにはあまりにも若すぎた。

いつまでも父親としてではなく、一人の男として付き合っていきたいとさえ思った。

それは、既に手遅れな病気を抱えた父親には無理なことだった。


父はあたしの産まれる瞬間を見届けてすぐに、母と別れたという。

それからあたしは、ずっと母と二人で生きてきた。

17歳の夏、一人の男が夕方のファミレスで声をかけてくる。

若くて遊び慣れていそうな見た目とは裏腹に誘い文句がぎくしゃくしてて、それがあたしには不信感を好感に変えるきっかけになった。そのぎこちなさが好きだった。

その時にはそれが、父が17年ぶりに会って話をする娘に対して抱いていた緊張の裏返しであることなど、全然気付いていなかった。

その夏、男と何度か同じファミレスで「偶然」出会い、他愛もない会話を繰り返す。

そして秋の気配が近づいてきた頃、男が最後通告を告げる。

「もう会えない。でもよかった」

それが最後に聞いた言葉だった。

それから間もなく、男は死んだ。


ナズナは道端で摘んだ白い花を手にしていた。

父親はどんな見た目でもお構いなく、白い花が好きだと言っていたからだ。

でもよくよく考えてみると、父の好きな白い花とは母が常々言っていた好きな花と同じであった。

ナズナは一生母には勝てないのだと悟った。


薄暗い秋の道はもう少しだけ続いているらしい。

墓前の父に花を手向けたら、父を父として受け入れようと、ナズナは誓った。

この僅かな時間で父と過ごした日々を思い返そう。

そして、父に恋をしていた日々には別れを告げよう。


お父さんがお父さんじゃなきゃよかったのに。


誰も知らない、

白い花だけが知っている恋。

2006年頃のとても古いお話なのですが・・・いろいろ若気の至り感がすごく・・・

と読み返してみてやけに冷静にツッコミを入れてしまえるくらいには、僕も大人になったんだなと思います。というか大丈夫かなこれ。

今、父親として登場した人間と同じくらいの年齢になりましたが、普通に声かけたらおそらく怪しいと思います。声かけられても女の子はできれば回避してほしい(真顔

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