第94話 怪しい雲行き
リメイク前にほゞ追いついたので、本日より1話ずつの投稿とします。
「だからの移動ですか……」
「ああ、面倒だが村が全滅するよりはいいからな」
明らかに機嫌が悪そうな村長が、俺等に向けてそう言った。
とか言う俺も先ほどのレイニーさんに対する物言いに、若干イラついていたりするけれど。
あれから村長と村長の息子が一人、それと村の男性が何人か洞窟の前に出てきてお互い自己紹介を済ませ、それから軽く話を聞いたのだけれど、どうやら洞窟に逃げ込んだのは、ゴブリンの大規模な襲撃を警戒しての事らしい。
要するに一昨日から毎日夕方になったらこの洞窟に避難をしていたという。
とはいえそれは大人だけ。
子供や老人は一昨日移動したまま家畜の世話をしつつ過ごし、大人達は家の様子を見がてら昨日一昨日と戻り、少しの農作業を行って家の戸締りをして夕方になる前に出発をしていた。
どうやら俺たちが到着する直前に移動を終えたようで、もう少し早く俺達が到着していればミステリーには成らなかったと思うと、余計に馬車の御者にイラついた。
とはいえ何故そんな極端な行動に出たのか。
それは幾つか理由があるそうだけれど、一番の理由は徐々に増えてくるゴブリンの数に危機感を覚えたから。
およそ3週間前、最初に依頼を出した頃は夜に数匹程度で家畜を襲いに来る程度だったのだけれど、その後徐々に増えて行き、数日前には無数のゴブリンが夜中に現れたそうで、暗闇を徘徊する無数の足音を耳にすれば流石に村人全員生きた心地はしなかったと。
それで、2度目の依頼を掛けた事もあり、今度こそ冒険者が動いてくれることを期待しつつ、ここ二夜を洞窟で過ごしていたのだとか。そして今日が三夜目。
因みに、ゴブリンは小さいからか、普段は畑を踏み荒らす事もなく歩きやすい場所を選んで歩く習性があるそうだ。
だから家の前の畑も無事だったという事。
色々謎が分かってホッとした。
とはいえ。
「そりゃ確かにそうしたくなるかもなあ」
「そうですね……」
「あと、ベルテにいる俺の昔馴染みから手紙が来たってのもある」
村長の話を聞き、オリヴァーさんとプリシラが渋柿を食ったような表情と共にそう口にしたら、話に割り込む様に、少し年配の男性が口を開いた。
その男性は最初に村長と並んで出て来て、ちょっと気になっていたのだけれど、顔には大きな傷があり、見るからに体が大きく冒険者然とした風貌だった。
「あなたは?」
「俺はディルク。この村の出身で、今はこの村を守ってる傭兵崩れだ。一応昔は冒険者もやっていた。もう一つ言えば、そこにいるレイニーに弓を教えたのも俺だ」
「そうよ。一応は師匠みたいなものね。一応だけど」
「ははは、ちゃんと教えてやっただろ?」
「ちゃん……と? あれが?」
なるほど、元冒険者か。
弓の師匠だと口にしたレイニーさんは酷く嫌そうだ。
ディルクさんはそれを見て笑っているけれど。
「ははは、確かにちゃんとでは無いか。だがそれはまあ良いとして、それでな、俺の所に来た手紙が厄介だったんだ」
「やっかい?」
「ああ、その昔馴染みは情報屋みたいなこともしていてな、それでベルテの馬商から無視出来ない情報を仕入れて、それを俺に教えてきたんだが――」
また馬商かよと思いながら話を聞いてみると、なるほどかなり厄介な内容だった。
『数日の内にポエミの村を本格的に潰そうとしている。どんな奴らかまでは分からないが気をつけろ』と。
それを聞いた瞬間に、数時間前に俺達が遭遇したゴブリン戦の後、プリシラが口にした言葉と重なって疑念が増す。
何故馬商なのかは分からないけど、馬商はきっと何かを知っている。
それどころか、深く関わっていると。
「馬商ですか……」
「なにか絶対に有るだろ、あそこ」
「ああ、間違いないだろうね。そもそも馬商は他方に移動をする事が仕事柄多いから、それを隠れ蓑にして何かよからぬ事を企んでいるのかもしれない」
「国や貴族の諜報活動部隊は商人が多いって昔から決まってるしな」
プリシラと田所さんが険しい表情を見せつつそう言えば、レイヴさん達も頷きながら肯定した。
「そうですね。……村長、ディルクさんでもいいですけど、ベルテにある馬商って、変な噂や悪い噂とかあります?」
「いや、儂は殆ど村から出ないから分からんが……」
そう言いつつ村長はディルクさんの方を向いた。
何か知っているか?と言った具合に。
「確かにそこの彼が言うように、商人を隠れ蓑にしてそういう活動や闇稼業をしていたりする奴は居るんだが、ベルテの馬商の悪い噂は聞かないな。……というか俺もこの村に戻って5年は経つし、俺の昔馴染みからベルテの馬商の話がでたのも初めてだ。……でもなんでそんな事を?」
少し訝し気にディルクさんはそう聞いて来た。
俺達は馬商が怪し過ぎると決めつけているからだろうけど。
「いえ、この村に来る途中、ベルテの馬商で馬車をチャーターしたんですけど、村まであと1時間ってところでレイニーさん達がゴブリンに襲われたんですよ。それでその時の馬車の動きが少し気になったんで」
「何?どういう事だ?」
レイニーという名前を出したからか、ディルクさんは彼女に問いかけた。
「正確に言えばね、わたし達とこの人達は別のパーティーだったんだけど、わたし達が先に進んでいた時、いきなり50体以上ゴブリンが湧いて出てきて、それをこの人達に助けて貰ったのよ」
「ご、50か……」
「50……」
レイニーさんが俺達を指し示しながらそう言うと、ディルクさんや村長の息子さん――名前はルッツさん――が驚愕の表情を浮かべつつ俺達5人を見やる。
そして少しだけ俺の装備を見やり、納得をしたかのように一つ頷いて口を開く。
「いい装備だ。レベルもそれなりなんだろう」
「ディルクさんと同じくらいなんじゃないですかね」
かなりあてずっぽうで言ってみたけれど、人に指導を出来るくらいなんだからレベル30くらいはあるような。
だが、俺の言葉を聞いたディルクさんは少し笑いながら、否定でも肯定でもない言葉を口にする。
「ははは、まあゴブリンやオークの討伐はしていたが、もう引退しちまってるから腕は落ちてる」
「なるほど」
という事はレベル20は確実に越えているってところか。そればかりかオークもってなればやはり俺に近いかそれ以上の気もする。
っと、話が逸れだした。
「それで話を戻しますけど、その時に馬車を操縦していた御者が気になる行動を執ったんですよね。いや、執らなかったって言った方がいいか。……あ、あれ?」
「ん?儂は意味が分からんのだが……」
「俺もだ。済まないがもう少し分かる様に言ってくれないか?」
「か、一眞?」
言っている最中、自分は何を言っているんだろう?と不意に思ったら、案の定相手にはてんで伝わらなかったようで。
戸惑いの表情を浮かべるディルクさんと村長を見て、人に伝えるのは難しいなと思いながら順序だって説明をする事に。
「えっと、俺達とレイニーさん達は別々の馬車をチャーターして進んでたんですけど、レイニーさん達が先にゴブリンに遭遇して、戦闘になって、それから直ぐにレイニーさん達が乗っていた馬車は逃げ帰ってしまった。ここまでは良いです?」
「ああ」
「そうして少し後で俺達もその場所に遭遇するわけなんですけど、それ以前にレイニーさん達を乗せていた馬車とすれ違っているんです。なのに御者同士は何も無かった。視線を交わしたくらいの挨拶しかね」
やはりかいつまんで説明をするのは駄目だね。
きちんと説明をしたからか、ディルクさんも村長も今度はしっかりと理解をしてくれたようだった。
「そういう事か。確かにあんたが言う通りだな。前方で戦闘があるなら仲間には知らせる筈だが、それが一切無かったってことだろ?」
「はい」
言いたい事は理解してくれたようだけど、その言葉の意味を咀嚼すれば当然ながら二人には更なる疑念が沸き起こるのは必然なわけで。
顔を顰めつつ何事かを考えながらディルクさんは村長に向く。
「村長……こりゃあ……」
「ふむ……」
「何かあるんですね?」
「何かあるというか、ここ1か月でゴブリンが急に増えだしたんだが、今年に入ってからちょくちょく嫌がらせっちゅーか揉め事がな」
「揉め事?」
「よく分からんが、村を明け渡して別の所に村を作れってな、領主様の指示でとかどうとか言われておる」
「父さん……あまりそれは言わない方が……」
ここでどういう訳か村長の息子のルッツさんが説明をする事に難色を示した。
何故難色を示したのかは俺には分からないけれど。
「まあそうなんだが……いや、もう別の村も被害にあっとるからな、外の人に言うしかない」
「でも……」
「なあに、責任は全て儂がとる」
そう言いつつ話し始めた内容にこれまた驚いた。
この辺りの村と町を統治する領主が、ポエミ村を含めた二つの村の立ち退きを突然要求して来たらしい。
伝えに来た執政官に理由を聞いても教えて貰えないし、教える必要などないの一点張りで、しかも代替地は全く開拓すらされていない原野でしかないそうで、金銭的な補償も何も無い。
酷い話だと思うけど、領主の命令だったら仕方がないんじゃないか?と聞いていて最初は少し思ったけれど、どうやらそれはこの国の法律を分かっていない俺だからこそだったようで、ディルクさんに詳しく聞いてみるとなるほど確かにと思えるものだった。
「確かに領主や国は村人を移動させられる権利を有しているんだが、その場合はしっかりと整地をされた代替地を用意した上でしか行われないし、尚且つ迷惑料としてゴルドも支給されるんだ。それは帝国法で決められている」
「なるほど。しかも理由も言わなかったと……」
「ああ、全くな」
そう聞かされて、更に厄介な話になって来たぞと思わずにはいられなかった。
そして洞窟の入り口での問答で、俺達を信用していなかった理由が理解できた。
「統治している領主って、シュテットやベルテの町も含みます?」
「ああ、含む。シュテットはシュミット男爵家が統治する一番大きな町だ」
これで聞いた話と今日起こった出来事の辻褄は合うか。
何らかの方法でディルクさんの昔馴染みが情報を仕入れて、それをディルクさんに伝えた。
そして途中で俺等が襲われたのは、きっと妨害だろう。余計な冒険者がポエミの村に入らないようにする為の。
シュテットも領地の一つならば、領主が調べればトレゼアに依頼が回った情報を掴む事は出来るかもしれないし。
でも何でだ?
何で村を二個も移動させたいんだ?
俺はその事が無性に気になった。
何か関係性が有るんだろうなと。
しかも全てを繋げれば、首謀者はゴブリンを操っている可能性があるという事。
むしろそれが事実だとするならば、到底国が看過するとは思えない程の事案だろう。
そう思っていると相馬さんが険しい表情で俺に問いかける。
「司馬君、これは……」
「ですよね。かなり大きな話になりそうです」
「どうするの?」
絵梨奈さんがそう聞いて来たけれど、どうするもこうするも無い。
携帯電話みたいな通信手段があれば、直ぐにエミリアさんに連絡を入れられるんだけど、そんな便利なものなど無いのだから、一先ずは俺達で出来る事をするしかない。
つまりはゴブリンの討伐だ。
「きな臭いにおいがしますけど、それでもまずはゴブリンの討伐ですね」
「そうだな、複雑な話はそれからだ」
「うん、そうね」
「わたしもそれで良いと思います。けれど一つ疑問が……」
「なんだ?」
田所さん達は討伐で良いとは言ったけれど、プリシラだけはそれでも一つ疑問があるようだった。
そしてプリシラの言葉を聞いたディルクさん達は、当然プリシラに視線を集中させつつぶっきらぼうに返事を返した。
するとおっさん連中に注目されたからか、もしくはやはり内向的な彼女だからか若干たじろいでしまった。可哀そうに。女の子にはもっと優しくしてやって欲しいのに。
「あぅ……えと、あの、ディルクさんは強そうなのに、な、なんで村はゴブリン退治の依頼を出したんです? オーク討伐の経験があるのでしたら20体くらいなら余裕ではないかなって思うんですけど……。 それに、家畜を襲われた時とかどうしてたんです?」
俺を含め恐らく全員が抱いていた疑念だろう。
俺と同じくらいのレベルだと思っているかどうかは分からないけれど、少なくともプリシラが言ったように20体くらいなら何とか出来るんじゃないかと。
プリシラの言葉に俺達は小さく頷きながらディルクさんの言葉を待つ。
「あー、その事か。まず、家畜を襲われるのは夜だ。だが、残念ながらこの村で戦えるのは俺だけだからな。毎晩見張りを続けるのは不可能だ。そもそも夜中に1人での見張りや見回りは流石に危険過ぎるのも理由の一つだ」
「そりゃそうか」
「そういう事だったんですか」
「ああ、一応、村を囲う柵は村の奴らとこしらえたが、結局は戦える見張りが何人かいなきゃ意味がないしな」
まあ、そうだな。
どれだけ危険かは夜に戦っていないので想像でしか無いけれど、モンスターは夜に活性化するって話もあるし、言っている事は矛盾していない。
「それに、俺が昼間に起きていなきゃ、家畜どころじゃ済まないだろうってのもあるからだな。夜に襲って来るとは言っても、昼間に襲って来ない訳じゃあない」
「なるほどね」
一応辻褄は合うか。
俺はプリシラに目を向け、小さくお互いで頷き合った。
「それで、何故ギルドに依頼をしたかだが、恐らくは大きな巣がある。100体単位のゴブリンは昼間だとしても俺一人じゃ到底無理どころの騒ぎじゃない。だから二度目の依頼をかけた。最初は俺だけでどうにか出来たんだがな、増える速度が尋常じゃ無かったから、経験則で危険だと判断して依頼を村長にかけてもらった」
「お、おい、ディルク……」
え?100体?というか何で村長はきょどってる?
そして突然湧いた100という数字に相馬さんや絵梨奈さん達の視線が俺に集まる。
いや、俺も知りませんって!っていうか皆も依頼書は見たじゃないですか。
何故俺を見るのか解せぬと思いながらも、もしかしたら依頼書を持って居るのが俺だからかもしれないなと思いながら、依頼の内容をディルクさんに告げる。
「100体って、俺らが受けた依頼書には、巣どころか30体程度のゴブリン退治としか書いてありませんよ?」
「なに? ちょっと見せてくれないか?」
そう言われ、俺はマジックポーチから依頼書を取り出して、ディルクさんに見せた。
「確かに30と書いてあるな……。どういう事だ?村長」
今度はディルクさんが混乱する。
そして横に居る村長に確認をするかのような視線を送った。
すると極端な程に村長は狼狽を始める。
「わ、わわわ儂はちゃんと息子に言ったぞ? お、おい、ルッツ、ちゃんと依頼は出したんだろ?」
「え?……父さん……」
ルッツと呼ばれた男は愕然とした表情で村長を見やった。
嘘丸わかりじゃねえか!
「ルッツ、本当か?」
「あ、……えっと、その……」
気が弱そうな、すこしナヨっとした村長の息子は、ディルクさんの鋭い視線を受け、居心地が悪そうに視線を逸らして父親を見ている。
というか、明らかに父親を非難の目で見ている。
すると、どういう訳か行き成り村長がキレ出す。
「はははははっきり喋らんかあ!」
え?いや、あんたそんなに汗をかいて何言ってんの?
と思ったけれど、話の顛末まで黙って居る事に。
「あの……100体って依頼を出すと、依頼料が割高になるって言われて……」
「ルッツ、誰に言われたの?」
村長に言われたと分かっているくせに、レイニーさんが追い込みをかけた。
息子の隣で村長は額に汗を流し始め、話を合わせろとでも言いたげな視線をルッツさんに送っている。
それを受けてか、父親の顔とレイニーさんの顔を交互に見やりながら、諦めたような表情で口を開く。
「た、たまたま……な、仲良くなった冒険者の人から……」
「だから30人にしたと?」
「は、はい……」
若干どころかかなり目が泳いでいるけれど、まあ、この際どちらが指示を出したかなんてどうでも良い。
問題はそれが許されるのか?という事。
そう思っていると絵梨奈さんが俺に聞いて来る。
「ねえ一眞、それってありなの?」
何故俺!?俺が知っているわけないじゃん!
なので俺はプリシラ達に聞いてみた。
「俺が知っているわけが……プリシラたん、どうなの?」
「え?あ、はい。ある話だとは聞きます。けれどあまりに数が違う場合は全滅をさせずに戻る事も許されますね。倒した数はギルドカードを見ればある程度分かりますから」
「まあ、そうだろうけど……」
なんだろ? なんとなく納得できない。
そりゃあ、依頼を出して日が開けばゴブリンやオークの数も増えるだろうし、もしかしたら今日の俺等が倒したみたいに減る事だってあるのは分かる。
けど、依頼料が高いからって虚偽の依頼を出すのは……。
こっちは命がかかってるというのに。
そう思っていたら相馬さんが口を開く。
彼も何か思う所が有るようだ。
「司馬君の言いたい事は分かるよ、僕達は命がけだからね」
「ですよね……」
「まあ、ぶっちゃけて言うとだ、君達が数時間前に倒したゴブリンで今回の依頼は終了したって判断をされても俺等は文句を言えないって事になるが、どうするんだ?村長」
思いもしない援護射撃をディルクさんが口にした。
確かにそうなんだけど、俺はそれを言おうとは思っていなかったのに。
突っ込まれた村長はあからさまに狼狽しつつ口を開く。
「そ、それは困る!」
そりゃ困るよね?
でもねえ……。
「でもまあ、今それを言っても始まらないんで、もう少し依頼の内容を詳しく教えて貰えますか? じゃないと退治出来るかどうかも分からないんで」
「ぼ、冒険者さん達が退治してくれるんじゃないんですか?」
「冒険者が来れば何とかなると思ってたから村の者は頑張れたんだぞ!」
村長と息子――ルッツが驚いたように口を開く。
驚かれても、虚偽の申告をしたのはおたくらなんだけど。
俺は少し呆れつつも、喧嘩にならないようにこちらの考えを伝える。
「いえ、100体だけならまだ良いし、もしかしたら残り100もいなくなっているかもなんですけど、それが巣穴ってなればちょっと話を聞いてみないと判断できないです。なんせ巣穴を潰した経験がないんで」
巣穴どころかつい数時間前に初めてゴブリンを屠ったばかりですけどね。
少し自虐的に心の中でそう言った。
「なんだと……じゃあまだこんな生活が……」
愕然とした表情を見せつつ少しよろけた村長だけれど、俺等もここは譲れないし、そもそも時間がもうない。
もしも今晩攻めて来るなら早めに村に戻っておきたいし、それなりに準備も必要だ。
なので少し強めに言う。
「いいから一先ず詳しく説明をしてください」
俺が少しイラついているのが分かったからか、ディルクさんも村長に向けて口を開く。
「村長、ちゃんと説明をすべきだぞ」
「わ、わかった……」




