第92話 プリシラの考察
本日2話目です。
「居ないな、誰も……」
「はい、家畜もいません……」
相馬さん達と別れてから、俺とプリシラは村の西側半分を調べる為に動き回った。
とは言ってもある程度は家が寄り添うように建っているので、歩いた範囲的にはそこまででもないけれど。
「探査って球形状に範囲が働くから、地下とかにいても分かるんだけどな……」
「そうですね。ちゃんと1軒1軒調べましたから、漏れはないと思いますけど」
俺のサーチは、レベル29になった時点で中級サーチにレベルアップしている。
初級サーチの50mという範囲から50%範囲が増えて半径75mの範囲を索敵できるようになった。
なのでもしも地下75mよりも下に居るなら範囲から外れるけれど、まさかそんな深くに居るなんて事はないだろうし……。
「しかもさ、村中で一切争った形跡がないでしょ。って事はゴブリンに襲われたと断定も出来ないような気がする」
「はい、わたしもそれは思いました。ですけどじゃあ今の状況って一体なんだろう?と思うと、全くわからなくなってしまってます……」
プリシラの眉毛がへの字に歪んでしまって戻らない。
きっと俺の眉間には皺が寄っているだろう。
完全にミステリーだな、これは。
何か手掛かりでも残っていればまだ考えられるのに、そういうものも全く無い。
さっぱり分からないイラつきから、思わず頭を掻く。
妹の七海ならこういう謎解きが得意なのに。
つい義妹の事を思い出しつつ、こんな事ならもっとミステリー小説を読んでおけば良かったと思いながらも可能性を口にする。
「まさか無抵抗でゴブリンに攫われた?……流石にそれは無いか?」
「どうでしょう? 家の中までは見ていないので分かりませんけど、無抵抗で村全体の人が攫われるとかってあるんでしょうか?」
西側には家が26軒ほどあったけれど、どの家も鍵が掛けられており、中を見る事は出来なかった。
「ないだろな。……じゃあ、野盗の集団なら?」
「それも同じだと思います。そもそも争った形跡がないんですから」
「だよな。畑の野菜も綺麗なもんだ」
民家の前にある畑に育つ青々とした野菜を見やりながら、可能性を呟きつつそれを否定していく。
例えば、一家族だけならその可能性も無くもないと思う。
村全体がその家族を罠にかけてしまえば容易く行えるし。
それが二家族とか三家族になったところで同じだろう。
村の人口が300人程だとすれば、三家族程度なら容易に目的を達成できる。
あくまでも、人が人を攫ったとするならば――だけれど。
でもこれは違う。
なにせ全員が居なくなってしまっているのだから。
「ほんっと、村人全員で旅行にでも行ったかのようだ」
「……そうですね」
俺の何気ない言葉に、少しだけプリシラが怪訝な表情を見せた。
何か引っかかるものでもあるのだろうか?あれか?冗談を言ったみたいになったから、不謹慎だと思ったとかか?
だったら言い訳を考えなければだけど、どうもそうではないようで。
「ちょっとレイニーさんにお伺いしたい事があります」
「何か気付いた?」
「いえ、今はまだなにも」
「そか、じゃあレイニーさんの家に戻ろう」
「はい……」
何か見落としていないか?
もしくは考え違いをしていないか?
レイニーさんに確認する事があるとプリシラは言ったけど、どんな事を聞くんだろうか?
俺は頭を捻りながらレイニーさんの家に戻って行った。
◇
家の前には、既に絵梨奈さん達が戻って待っていた。
「その様子だと誰も居なかったみたいね」
「いませんでした」
俺とプリシラの表情を読み取ってそう言ったのだろうけど、それは絵梨奈さん達も同じようで。
「僕らの方も駄目だった。誰一人として居ないよ」
「何か手掛かりになるようなものは?」
「それもないね」
「しっかし、何処にいったんだろうな」
「まるで神隠しみたいよね」
正しくその通りだろう。
もっと言えば、まるで俺らが地球から忽然と消え去った時のような感じかもしれない。
向こうから見てどういう風に消えたのかが分からないからだけど、人為的じゃないと言われた方が今の俺らにはよっぽど説明がつく。
「ひとまず中にはいりましょう」
「そうだね」
そう言いつつレイニーさんの家をノックする。
するとオリヴァーさんが扉を開けてくれた。
「どうだ?」
「思った通り、誰もいなくなってます」
「そうか……まあ、奥にレイニーがいる」
そう言いつつオリヴァーさんは奥に入って行った。
俺達もそれに付いて中に入る。
レイニーさんの実家はそこまで大きな家ではなく、大きさ的には4DK程度だろう。
けれど、屋内に壁は一切なく、間仕切りとして寝室とそれ以外の場所を区切る厚手の布がぶら下がっているだけ。要するに、やたらとでっかいワンルームみたいな構造だった。
プリシラ曰く、田舎の民家は大体がこういった造りになっているらしい。
プライバシーもへったくれもないな。
そして間仕切りも何も無いがために、家に入ってすぐ、椅子にすわって憔悴したレイニーさんを目にすることになった。
マルタさんはそんなレイニーさんの傍に立って、背中をゆっくりと摩っている。
レイニーさんの表情を見ると、告げるのをどうしても躊躇してしまうけれど、結果を知りたいだろう彼女はゆっくりと顔を上げて俺達を見やる。
「残念だけど……」
「そう……」
その短い返事と共に、一瞬の内にレイニーさんの瞳に涙が溜まっていく。
そして、瞬きもしないまま涙が頬を伝って落ちて行った。
泣き叫ぶでもなく、喚き散らすでもなく、ただ静かに涙を流したレイニーさんを見やると、俺の心にズシンと重いものが圧し掛かるような気がした。
何とか俺が謎を解明できないものだろうか。
頭の回転は悪くない方だと思っているけれど、いかんせんこう言ったミステリー物は疎い。
そう思っていたら、プリシラが先ほど聞きたいと言った質問をするようだ。
「レイニーさん、一つ質問しても良いですか?」
俯いていたけれど、その言葉で彼女は顔をあげる。
返事は無いけれど、自身の目をじっと見ているからと思ったのか、プリシラはそのまま言葉を続ける。
「ご両親がお手紙を送り返して来た日はいつです? ご両親がこの村でお手紙を配達員さんにお渡した日付です」
そんなの分るの?
そう思っていると全員に分るようにプリシラが説明を始める。
「お金を送金したって言われたので思い出したんですけど、ゴルドを送金すると、受取り人に渡った日付がわかるんです」
「そうなの?」
「はい。仕組みまではわたしも分からないんですけど、受け取った証が証明票に魔法的なもので刻み込まれる筈で、レイニーさんはそれも受け取っている筈です。なのでその時の日付も分かる筈なんです。不正は、多分ですけど出来ないと思います」
凄いな……。
不正が出来ないような魔法処理を施しているとすれば、そりゃ確かに受け取った日付は分る筈だ。しかもその時、返信の手紙も受け取っているのだから。
プリシラの説明を黙って聞いていたレイニーさんは、マジックポーチから袋を取り出し、そこから証明書らしき一枚の紙を取り出した。
「日付は7月21日よ……」
「という事は今日は28日なので7日前ですね……」
日付を聞いてプリシアは顎に手を当てつつ思案を始めた。
プリシラは賢い。
INTが高ければ頭が賢いという事は無いらしいけど、それでも魔法使いの人は賢い人が多いらしく、プリシラもそれに漏れる事は無い。
そんな彼女が今、頭をフル回転させている。
そして一通り纏ったのか、静かに口を開く。
「わたし達が依頼を受けたのが、昨日の朝です。依頼自体はその前日の夕方には来ていた筈ですけれど、この村に一番近い冒険者ギルドは”シュテット”の町で、そこからトレゼアの冒険者ギルドに応援依頼が届くまでのラグが凡そ1日として考えます。実際はもう少しかかったかもですけど、その辺りは誤差ということで」
「うん、考えます」
プリシラの言葉を聞き逃さないように真剣に考える。
「そしてポエミの村が、シュテットの冒険者ギルドに依頼を出したのがその前日だったとするなら、その直前からレイニーさんにお手紙を送った7日前までの間は、この村の方達は無事だったという事になります」
あ、そうだな。
「すると……お金を受け取ったのが21日だから、それから25日までは無事だったってことか?」
「ざっくりとですけど、そうなりますね」
「ということは、25日から28日の今日までの間に居なくなった……」
「ですね、全てのイレギュラーを除外した上でですけど」
凄くプリシラが頼もしく思える。
今の彼女は不安そうな表情などではなく、まるで探偵か?と思える程に鋭い視線を皆に投げかけている。
「こうやって絞っていくと、確かに見えなかったものが見えるような気がする」
「はい。いつ頃居なくなってしまったのかを知るのは重要ですから」
「うむ、その通りだろう」
話を聞いた皆が妙に納得をしている。
プリシラさんカッコイイです。
ドヤ顔を見せない所なんて特に。
「その上で何故このような事が起こったのかの可能性を考えます」
「うん」
「さっきカズマさんが言っていた事も含めて考えるんですけど、可能性としては5個あると思います。矛盾や疑問を敢えて省くので、今はその部分をスルーしてください」
「分かった」
「それから、聞くに堪えない可能性も口にしますけど、レイニーさんごめんなさい」
「ううん、気にしないで……」
有難うございますとプリシラは頭を下げ、指を1本ずつ立てながら一つ目の可能性から口にする。
「1つ目は、ゴブリンに全員が攫われた可能性」
状況からみて低いだろうが可能性としては残るな。
「2つ目は、野盗に攫われた可能性」
これも1と同じだ。
「3つ目は、人為的や亜人以外の何かによって強制的に攫われた可能性」
これは、俺らが転移して連れてこられたケースを指しているんだろう。
だから無くは無いけど、可能性としては……どうなんだ?
「4つ目は、善悪を抜きにして権力を持つ方からの指示で移動させられた可能性」
今までの中でこれが一番可能性は高い気がする。
うん、高いな。
「5つ目は、危険を察知して、どこかに全員で逃れている可能性です。わたしの中では5つ目の可能性が一番高いと思うんですけど、この辺りの地理に詳しくないので……」
「確かに……一つ目と二つ目は矛盾だらけだし3つ目は、あれだよな?アーティファクト的な魔道具で飛ばさたって感じだよな?」
「はい、なので可能性としては4つ目と5つ目が残ります。人を集団転送させられるアーティファクトなんてそうそうあるとは思えないので。しかもこの村にいた全員をとなると尚更ないかなって」
「なるほど、確かに」
「あと、6個目としては、避難をする為に転送魔法で送って貰っているという可能性もありますけど……」
「あぁ……あたし達が最初に乗ったゲートね」
「はい、ですがその魔法を扱える方は、世界でも数名だと聞きました」
「そうだな、俺もそう聞いた」
皆が言うように、この世界には俺らが初日に乗ったゲートなる転送魔法が存在する。
けれどその魔法を扱える人は少ないどころか数名しかいないなら、そんな希少な人達がわざわざ村人を避難させる為に動くとは思えない。
よほどこの村に何か重要な秘密が無い限り。
「4つ目のケースで、ご領主さまが、村人の危機を察してどこか安全な場所に避難をさせているという可能性もあるんですけど、ここのご領主さまはどんな方です?」
「ここの領主様は……最悪よ……」
そうなのか……。
レイニーさんの表情が憎々しく歪んだ。
「税の取り立ては厳しいし、少しでも遅れたら村の若い女の子を連れて行くわ。帰って来た子は一人もいない……」
「まじでか?」
「ええ……」
「まあ、領主なんざどこも似たり寄ったりだ」
田所さんを始め俺ら転移者組全員が驚いているけれど、オリヴァーさんが言うように、プリシラやシルヴさんは全く驚いてなど居なかった。
「ということは村人全員を善意か義務で避難させるという線も消えちゃいますね」
「ええ、絶対に無いわ」
「では逆のケースですけど、ご領主様が強制的に移動をさせた線を考えますが、これもわたしとしては薄いと思います」
「なぜ?」
「まず、各家の前にある畑が一切踏み荒らされていないという事と、全ての家の鍵がかかっているという事」
「ああ、領主が強制的にというのであれば、必ず兵士が来る。兵士ならば畑など関係なしで踏み荒らすという事だね?」
「はい。無抵抗で全員が移動をさせられたとは思えないので、執政官が来たにせよ兵士は必ず同行していくと思います」
「そうだな。移動を強制させるなら兵は必ず連れて来るだろう」
「そして4つ目ではないとわたしが思う一番の理由は、今日の昼過ぎにわたし達がベルテの馬商に嵌められた、という事です」
「あ、そっか。既に強制移動をさせているなら、あたし達なんて放置でいいものね」
「そうです。あの時間帯に別のルートから強制移動をさせていた可能性も無くもないのですが、総合的にみれば低いと思います。無人の村を見られたくないといった理由も考えられなくもないのですが、それをしても結局は意味がありません。ずっと封鎖をしておく事なんて到底無理なので」
「なるほどね……」
「ではレイニーさん、この辺りにどこか300名の方が身を潜められる場所に心当たりはないです? 鉱山の坑道跡でも洞窟でも」
プリシラが一番可能性があると考えた5つ目だ。
俺もこの可能性が一番高いような気がする。というかそうであって欲しいという願望が強いのかもしれないけれど。
「最長でも4日間という事は、人数から見てもそこまで遠くに行ってはいないんじゃないかなって思います」
プリシラの言葉を受け、レイニーさんは俯きながらも懸命に思い出そうと記憶を手繰る。
その間俺らは知らず息を止めて、彼女の言葉を待った。
「残念だけど、どこにも無いわ……小さな洞窟ならあるけど」
「そうですか……」
「300人だものね……」
「確かに多いね。しかもその人数が生活出来なきゃだし」
「家畜も一緒となると、東京ドームくらいないと無理だぞ」
田所さんが俺らしか分からない例えを言った。
案の定レイニーさんやマルタさんは小首を傾げているし。
とはいえ、確かに5人や10人なら身を潜められる洞窟は有るだろうけど、300人ともなれば広大な洞窟、それこそ鍾乳洞くらいしかない気がする。
ん?……鍾乳洞?
鍾乳洞って、確か石灰岩が雨水で溶けて出来上がるんだったよな?
七海に無理やり教え込まれたうろ覚えの知識を掘り起こしつつ、もしかしてと思い聞いてみる。
「この辺りの地質って分かります? 来る途中、白い岩が沢山剥き出しになっていたんで気になったんですけど」
「うーん……気にしたことなんて無いから。……でも白い岩は、随分昔にだけど、切り出して建物の壁用に売られていたって亡くなったお爺ちゃんが言っていたわ」
当たりだ。
「やっぱりか……」
「あ、それって石灰岩? 言われて見ればそんな気はするわ」
「そうか! 僕も何か見たことが有るような気がしたんだけど、確かにカルスト地形だよね、この辺り一帯」
俺の言葉に呼応するかのように、絵梨奈さんや相馬さんも気付く。
が、田所さんは気付かなかったらしい。
「ん? それが何か意味が有るのか?」
「鈍いわね蓮司は。一眞が言いたいのはこうでしょ? 石灰岩に覆われた地形なら必ず出来るものがある」
「そうです」
「だから何だ?」
「鍾乳洞よ。それも凄く大きな」
「石灰岩ってのは弱酸性の雨水に溶けやすいらしいんですけど、その影響で大きな洞窟も出来やすいんですよ。それこそ数億年とかって物凄い長い年月が必要ですけど」
「でも300人が避難できるような所なんて無いんだろ?」
「そこなんですけど、鍾乳洞って入り口が狭くて中が広いんですよね。最初は入り口なんて無いんですけど、中に空洞ができちゃって、そこに雨水が溜まっていけば、段々と水の圧力に耐えきれなくなって山肌から水が噴き出すように出るんです。だから鍾乳洞の入り口は大量の水を噴き出す川も殆どセットになっているんです」
「く、詳しいな」
「いえ、妹がこういうのが好きで、それで俺も覚えちゃっただけです。って、続き話していいです?」
「あ、お、す、すまん……いでっ!」
バツが悪そうに田所さんは謝ったけれど、話の腰を折ってしまった罰なのか絵梨奈さんがワンドで小突いた。
「しかもそういった入口は、というか水の出口は、下手をすれば殆どの人が知らないくらい山の中にあったりするし。でも、昔は石灰岩を切り出していたって話なら、その近くに鍾乳洞がある事を知っている人が居ても不思議じゃないような気がするんですよ。まあ、鍾乳洞があるなら、ですけど……」
俺の説明を聞いて、納得をしたように頷きながら相馬さんが口を開く。
「可能性はあると思うよ。石を切り出していたって事はそれなりの大きさの山だろうし、鍾乳洞の入り口は山や崖の斜面にしか出来ない筈だからね。なだらかなこの辺りの土地には入り口は出来ない」
「そうですよね。だからレイニーさんが知らない可能性は十分あると俺は思います」
「それに、ゴブリンやオークが住みつかないように入口に蓋をしてしまって、普段は見つけられないようにしている可能性もありますね」
プリシラが、ならではの発言をした。
そうか、こっちの世界はそういう事も気にしなきゃなのか。
「うわぁ、この世界だからこそね」
「俺の故郷には昔銀が採れていた山があってな、その坑道もそのまま残って居るんだが、確かに入り口は厳重に封鎖されていた。それこそ魔法で封印をして」
すると何かを思い出したのかレイニーさんが口を開く。
「そう言えば……」
その言葉でプリシラ以外の全員がレイニーさんに詰め寄る。勿論俺も。
「レイニー!有るのか!」
「レイニーちゃん!」
「あるのか!?」
「あるの!?ねえ、どこ!?」
「ちょっ!」
あまりの気勢にレイニーさんは椅子ごと思いっきり体を後ろにそらした。
あと少しで椅子がバランスを崩してひっくり返ってしまう程に。
「ちょ、ちょっとまって!」
「あ、すみません」
「すまん……」
皆、恥ずかしそうに、申し訳なさそうな表情を見せているけれど、早く言葉の先を知りたいがために、あまり謝っているようには見えない。
かく言う俺もその一人だけど。
「そういう場所があるかもしれないんですね?」
落ち着いた表情のプリシラがそう問えば、レイニーさんは小さく頷いた。
「わたしは行った事が無いんだけど、村からもっと北に行った場所に、さっき言った石材を切り出していた場所があるわ。この村からその方向に向かって川もあるし、確かにこの村が水不足になった話は聞いた事がないわね」
「「そこだああああああ!!」」
「ひっ……」
「ちょっ……」
オリヴァーさんと田所さんが大きな声でハモったからか、マルタさんがびっくりし、レイニーさんがまたもや仰け反った。
この二人は反省しない人だな。
「きっとそこですね」
「その場所はここからどれくらい離れています?」
「村からだと1時間くらい歩いた所よ」
結構な距離だな。
「今から行くとなると日没1時間前ってところだな」
「それでも行った方が良いと思います。ね、カズマさん」
「うん、少しでも早く確認をしておいた方がいい。道は分かります?」
「ええ、途中までなら。でも方角は分るわ、目印があるから」
希望が持てる状況になったからか、レイニーさんの瞳に生気が戻った。
よし、なら行くしかないだろ。
最悪川沿いを登って行けば、そこに行けるだろうし。
「じゃあ俺達だけで行ってきますから……って、ここも安全とは言えないか」
避難をしているとすれば、ここにゴブリンが現れるという事だ。
そんな中、防具もないレイニーさんたちを置いては行けない。
「そうですね。もしも皆さん避難をしているなら、ここが危険だからって理由だと思います」
「元々わたしは行くつもりよ?」
「俺もだ」
「っ!」
「もちろん私もだよ」
オリヴァーさんのパーティーメンバー全員が行く気満々だったらしい。
道中、ちょっとだけ声を発してくれたマルタさんは、また恥ずかしくなったのか手を挙げるだけに留めているけれど。
「分かりました、じゃあ直ぐに出発しましょう」
「了解!」
「はい!」




