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第91話 神隠し

本日1話目です

 この世界の街道は基本的に歩きやすい。


 そりゃあ道路が綺麗に整備されているわけではないので、都会の歩道程ではないけれど、俺が言うところの歩きやすいは、高低差が余りないという歩きやすさ。


 険しい峠を越えるというよりも緩やかな丘を越えると言った方が適切で、そこまで急な坂道ではないし、疲労が溜まってきても万能薬を少し飲めば回復する事も相まって、長時間の歩行が全く苦にならない。


 そればかりか見た事がない景色ばかりなので、楽しさすら感じてしまう程だった。


 日本で例えるならば、写真でしか見た事ないけれど、山口県の秋吉台のような丘陵地帯。


 街道沿いのところどころに白い岩が突き出ているところなんてそっくりだ。石灰岩とかなんだろうか?


 しかも、今は会話をする相手も居る。

 これが俺にとっては非常に大きな意味を持つのは間違いなく、会話をするだけで楽しい。


 いや、極端に言えば、一緒に歩いてくれる人が居るだけで楽しいのだから、今までどれだけぼっちだったのかと。


 ただ、そんな会話をしつつ歩いている間にも一つ気になった事があって、俺はその疑問を口にする。


「でも何でこのルートを?ここってチャーターしなきゃ通らない道ですよね?」


「ああ、今朝早く馬車をベルテでチャーターした」


 ん? 今朝早く?


「ベルテの馬商でチャーターしたんですよね?」

「ん? そうだが?」


 もしかして他にも馬商があるのか? いや、確か馬商は1軒しか無い筈。だとすれば今日キャンセルが出たとかか?


 そう思っていたら、俺と同じように気になったのか相馬さんが口を開いた。


「ちょっとまって、今朝って何時ごろ?」


「確か朝9時ぐらいだ」


「俺らよりもほんの少し後ですね……」


「……」


 相馬さんは何かを考えているのか、黙ってしまった。


 俺らが馬商へ行ったのが8時過ぎで、それから直ぐに出発したから、確実に俺らよりも後にオリヴァーさん達は出発している事になる。


 いつ抜いたんだ?

 って、いくらでも抜けるか。


 一瞬疑問に思ったけれど、それが直ぐに当たり前だと思い直す。

 1時間ごとに休憩してりゃその時にでも追い越せる。


 とはいえ馬商は、他に馬車と御者が居たのにも関わらず、あのいいかげんな御者を貸し出して来たのかもしれない。そう思うと更にイラついた。


「今度絶対に文句を言ってやろう」


「でも、じゃあ何故馬車が居なかったのかな?」


 田所さんが俺と同じ思いを口にしたけれど、それまで何かを考えていた相馬さんも口を開いた。


 確かにそう言えば、馬車が居たような形跡もないし、俺らはすれ違っても居ないはず。……すれ違っていないよな?いまいち自信はないけど。


 そう思っているとある意味期待通りの返事が返って来る。


「逃げやがった」


「あー……」

「ハハ……」


 憤懣やるかたないと言った表情をオリヴァーさんが見せる。

 そして俺はここでもかと呆れた表情を見せると、今度はシルヴさんも機嫌が悪そうに口を開く。


「私達は突っ切って欲しかったのだけれど、ゴブリンの大群が現れた途端、走竜が恐れて止まったんだ。だから戦うしかなく、4人が馬車を降りて戦いだした直後にね……」


 何度も思うけど、そんな事があっていいの?


 まあ、俺らが乗って来た馬車もさっさと逃げたみたいだし、有るんだろうなあ。

 と思ったらそんな事は普通にあるらしい。


「別に不思議でもなんでもない。ゴルドは前金で受け取っているし、旗色が悪くなれば逃げて当然だ。長期契約で雇った御者なら逃げないが、いわばその日限りの契約なんだから義理も何にもない。だから逃げて当然なんだが、それでも腹は立つ」


 理解はしているし納得もしているけれど……ってところか。

 額にぶっとい青筋を立てて怒っているけれど。

 顔は厳つく体もデカいんだから非常に怖い。


「俺らも乗って来た馬車に逃げられましたからね……」


「とりあえずは次の村がポエミって話だから、まあ何とかなるが……すまないな」


 そう言って再度俺達に向けて謝って来た。

 この人達が悪いわけじゃないのに。


 それに、何度も謝ったりお礼を言われるのは好きではない。

 俺的には田所さんくらいの切り替えの早さが、むしろ丁度いいとすら思っているし。


「いやいや、謝る理由がないでしょう」


「いや、まあ、色々とな」


 何の事を言っているのかは分からないけれど、何時までもこんなことを繰り返しても仕方がない。


「でも、どっちの方角に逃げたんですかね」


「僕らはすれ違っていないよ?」

「そうだな、俺も見ていない」

「あたしも」


 皆が顔を見合わせながらそう言うけれど、プリシラだけはどうやら違ったようで。


「あ、わたしは見ましたよ? 丘を越える直前の休憩場所で、皆さんが林の傍の小川で涼んでいる内に結構な速度で通り過ぎて行きました。空の馬車だったのでよく覚えています」


 なんとプリシラだけは見ていたようだ。


 プリシラは優しく、俺らは小川で涼んでいる内にと言ったけれど、実際はストレス発散とばかりにやけくそになって結構大騒ぎをしていた。子供か!というくらい。特に絵梨奈さんと田所さんが。

 だから俺らは気付かなかったんだろう。


 けれど、プリシラが口にした次の言葉で疑問を覚える。


「ただ、今だから変だなって思うんですけど、その時に御者さん同士で視線を合わせて頷いていたようにも……」


 どういう事だ?


「その馬車は当然知り合いだろうけど……」


「はい、それだけを見ればごくあたりまえなんですけど、でも、もしも前方でゴブリンが発生して居たら、同じ馬商の馬車なら危険を知らせると思いません?」


「あ!!」

「そうだよ!」


 プリシラの疑問は尤もだ。

 疑問に思ったのも今だからこそだろう。


「でもそれだと……」


「もしかして、俺らは嵌められたってことか?」


「そうかもしれないですね……」


 今更戻って問い詰めるにも、ベルテまで歩いて二日はかかる場所まで来ているし、どうにも出来ないけれど、これはちょっと……。


 皆の顔が得も言われぬ色に染まった。

 何か裏があるんじゃないか?と。


 とは言っても、そうなればゴブリンが人族に操られているという事にもなる。まさか逆はないだろうし。


 でもそんな事が出来るのか?


 いや、俺が知っているこの世界の事なんて微々たるものだから、出来るか出来ないかなんて判断できないけど。


「オリヴァーさん」


「なんだ?」


 難しい表情を見せながら黙って歩いていたオリヴァーさんは、俺の返事に顔を向ける。


「人族がゴブリンを操るって事あります?」


 俺の質問を受けて少し考える素振りを見せた。


「どうだろうな。ゴブリンとの会話は辛うじて成立するが、意思の疎通とまでは無理だろう。ただ……ゴブリンの上位種ならもしかしたら。勿論、ホブゴブリンなんざ見た事も無いから分からないが……」


 そうだろうな。

 ここに居る人達は俺を含めた全員がドングリの背比べみたいな感じだし、情報も似たようなものだろう。


 こんな時にエミリアさんがいてくれたら、直ぐに答えを導き出してくれるだろうに。

 居ない人ねだりをしても仕方がないとは思いつつも、ついついエミリアさんの優しい笑顔を思い出した。


 でも、もしも今回の襲撃が仕組まれたものだとするならば、きっと裏で糸を引いている人族が必ずいるのは間違いない。それも結構大掛かりな。


 そしてそれは即ちこの先のポエミでも、もしかしたら……。


 不意に凄く嫌な予感がして寒気を感じた。


 この寒気が気のせいならば良いのだけれど……。





 何となく重苦しい空気のまま、それでも会話自体は続けながら歩き、あと少しでポエミの村が視界に入ると教えて貰った頃、田所さんが思い出したかのように口を開く。


「そう言えば、ゴブリンと戦った時に見た司馬君の剣は何だ?」


 それだけを聞けば何を言っているのかサッパリ分からないだろう。

 現にオリヴァーさん達のパーティーはそんな顔を見せている。

 だけど相馬さんはその時の状況を見ているからか、分かったようで。


「あ、それは僕も気になった。剣だけが光っていたし、威力も凄かったし、何かその武器に秘密がある?」


 どうするか。


 その理由を知っているプリシラは、明後日の方向を向いて知らん顔を決め込むように口笛すら吹いている。

 その姿があからさま過ぎて、思わず笑えて来そうになるけれど。 


 とはいえ、相馬さん達だけなら何も考えずに教えただろうけれど、オリヴァーさん達がいる以上、今言うのは得策じゃない気がする。理由は簡単で、俺がこの人たちをまだ良く分かっていないから。


 なので少しだけ誤魔化す。


「秘密というか、ガニエさんのレア武器なんですよね、これ」


 そう言いつつ青白く輝くチタニウムブレイドを鞘から抜いて見せた。

 いつ見ても綺麗だ。


「綺麗ね……青白って事はミスリルが入ってるの? というか防具も同じ色ね」


「正解です。俺、魔法も使うんでミスリルを入れて貰ったんです。防具は、どうもガニエさんの娘さんがわざわざ作ってくれたらしいんですよね。ミスリルって高質化にも役立つらしいんで」


 その言葉に相馬さんと田所さんがニヨリと笑った。


 重苦しい雰囲気を引きずっていたので、それが払しょくされたのは喜ばしいことなんだけど、何となく気になる。


「ふぅん……だから今はステッキを持ってないのね」


「はい。というか、なんか相馬さんと田所さんの二ヨ顔が非常に気になるんですけど」


「ん?何のことだ?」


「そうだよ?別に僕は普通だけど?」


 いやいやいや、明らかに先ほどまでとは違うでしょうに!

 とは思ってもこの様子だとどうせ聞いても教えてくれないんだろう。

 だから俺はさっさと諦める事にした。


「まあいいです。どうせこの依頼から帰ったらお礼を言いに工房へ行くし」


「一眞。……それ、良くないフラグよ」


 眉根を歪めつつ、絵梨奈さんは突然そんな事を言いだした。


「あ!うええええ!?」


「やっちまったな」


 死亡フラグとか縁起でもない!

 途端に背中を変な汗が流れた。


「やめてくださいよ。っていうか、俺、帰ったらプロポーズするんだとかじゃないんだから、フラグでもなんでもないでしょ」


「まあ、それに比べれば弱くはあるな」


「ですよね? 良かった……」


 なんで変な汗をかかなきゃならないんだと。

 そう思っていたら、プリシラが何かを思い至ったのか、ハッとした表情を見せつつ意を決して聞いてくる。

 

「カ、カズマさんってこの依頼が済んで戻ったら誰かにプロポーズをするんですか?」


「なんでそうなる!」


 俺は光の速さで突っ込んだ。

 しかも何故か不安そうな表情を見せているし。

 そう思ったら絵梨奈さんが少し笑いながら説明をしてくれるようだ。


「さっきのは例えよ?」


「そうなんですか?」


「僕達の世界にはね、特定の出来事を起こす為の条件をクリアしたら、それをフラグが立つって言っているんだけれど、良くないフラグというのは、その条件をクリアしてしまったら確実に不幸が訪れるみたいな感じなんだ」


「ああ、そういうのはこっちにもあるぞ。俺がもし帰らなきゃ娘を頼むとか言えば大体死ぬ。そういう意味だろ?」


「はい。でも、あるんですか……こっちでもフラグ」


「あるな。フラグとは言わんが」


「あ、なるほど。わかりました」


 分かってくれて嬉しいよ。

 おかげで武器の話を誤魔化す事が出来たから良かったし。

 と思ったらそうは問屋が卸さなかった。


「ってことはだ、その武器が光るのはガニエさんのレア武器だからって事だよな? 魔力を籠めたら光るとかか?魔道具みたいに」


 あんた、まだ引っ張るのか!

 少し恨めしそうに田所さんを見やるけれど、この人は鈍感だから全く気付いてくれない。


 なので俺は勘の鋭く空気が非常に読める、大人の元サラリーマン相馬さんに向けて目で訴えかけた。


 今その話をしないで欲しいですと。


 すると流石相馬さんだと思える程に、直ぐにピンと来たのか直ぐに話を変えようと動く。


「そう言えば司馬君」

「はい?」

「ちょ……」


「野営の道具って何を揃えたんだい?」

「えっと、そうですね……」

「……尚樹さん……」


「あー、それあたしも気になる。すっごいの手に入れたんじゃないかって」

「え、絵梨奈まで……」


 どうやら絵梨奈さんも気付いてくれたようだ。

 俺を見やって軽くウインクをしてくれた。


 ただ、それでも気付かない田所さんは、話を遮られて急に不貞腐れてしまった。

 けれど折角だからここは放置だ。後で説明をすればいいでしょ。


「テントは毛布とかもセットで大き目なのを一応二つ買いました。エミリアさんが紹介してくれた道具屋マーサって店で買ったんですけどね」


「ふんふん、それで?」


「あとは木の食器や鍋とか金串とか金網とかザルとか調味料も一通り。ああ、炭や薪も一応多めに買っておきました。野営中に森に入るのも危ないと思って」


「お、良い感じね」


 するとプリシラが満面の笑みで口を開く。


「お米も買いましたね!」

「そうそう、米も買いました」


「まじでか!?」


 不貞腐れていた筈の田所さんが米に食いついた。

 それを見て相馬さんと絵梨奈さんがニヨリと影で笑ったのは見逃さない。


「こっちの米って高いから、僕らは硬いバケットで我慢したんだけどね」


「結構な量を買っといたんで、ここにいる全員分は余裕でありますよ」


「えへへ~。ありますよ~」


 大層ご機嫌なプリシラがそこにいる。

 そりゃそうだ。袋詰めにされた米10kgを5個も買ってしまったし。


 だってプリシラたんが、凄く欲しそうな視線を俺に投げかけて来たんだもの。

 とはいえプリシラたんの為なら、少々高くても買う選択肢しか俺には無かった。


 それが例え10kgで銀貨2枚もしたとしても、ゆめぴ〇かの4倍の値段だとしても、プリシラたんの喜ぶ顔が見られたので後悔は微塵もしていないばかりか、調子に乗ってあと5袋買ってしまう所だった。


「凄く助かるよ。僕らも野菜とか薪とかは一通り多めに揃えたから、お互いが持ち寄ってってすればいいね」


「肉は現地調達でもいいしな」


「そうですね。魔獣の予備も一応ありますけどね」


「あたし達もあるわ。あ、もしかしてあれがポエミ村?」


「そう、あれがわたしが育った村よ」


 野営の話をしながら歩いていると、目の前が開けたと思ったら、絵梨奈さんの言葉通り小さな村が眼前に見えた。


 ここまでかなりの時間、長く緩やかな登り坂を歩いて来たのだけれど、村がある場所は少し眼下にあり、見た感じ、山間の小さな村、と言った感じだった。


 とはいえ日本のそういう限界集落的な田舎とは違って、周囲を高い山で囲われているという事はない。


 民家は集中しているし、村の周りには簡易的にではあるけれど柵が施してあるし、その外には畑に使っている土地も沢山ある。


「ポエミの村って何人くらいが住んでいるんです?」


「んー、300人くらいかな。何処にでもある平凡な村よ」


 返事を返してくれたレイニーさんは、ちょっと気が急いているように見える。


 まあ無理もないか。いくら飛び出してきたとはいえ、家族が心配なんだろう。


 とは言っても話を聞くに、もしかしたら妹や弟の事しか心配していないような気がするけれど。

 まあ、その辺りは触れないで置こう。


「俺達は一先ず村長の家に行きますけど、レイニーさん達はどうします?」


「俺らはレイニーの実家にまずは顔を出すさ。それからはまだ決めていない」


「宿屋なんて無いけど、空き家は何軒かある筈だし、って、シバさん達はどうするの? まさか行き成り野営?」


 ちょっと心配そうに俺達を見た。

 うん、やっぱり優しい人だ。


「俺らは村長がその空き家を提供してくれる筈です」


「じゃあ心配いらないわね」


 そうこうしている内に、村の入り口付近まで到着した。


 けれど……。


「なんだか雰囲気が暗い?……違うわね」


「これは、カズマさん……」


 プリシラと絵梨奈さんも気付いたようで、少し不安げな表情を見せた。


「ゴブリンに家畜を襲われてしまっているからじゃないか?」


 田所さんはそう言うけれど、どうも違うような気がする。

 それが証拠に同じように不安を覚えたのか、レイニーさんが一人走り出した。


「わ、わたしちょっと様子を見てくる!」


「っ!」


「お、おい、ちょっと待て!」


「済まないシバ殿、私達は先に行くよ。もしも何かあったら連絡をしてくれると有難い。こちらもするから」


 そう丁寧にシルヴさんが頭を下げながら、前を走る3人を追い掛けて行った。


「なあ? もしかして、結構不味いのか?」


「蓮司も漸く気付いたみたいね。もしかしたらさっきのゴブリンに繋がっちゃうかもよ?」


「そうだね、僕もこの雰囲気はちょっと気になる」


「とりあえず俺らも行きましょう!」


「はい!」


 俺は激しい胸騒ぎを感じつつ、少し小走りで村の中に入って行った。



 気になった一番の理由。

 それがどうやら当たっていたようだった。


「どういう事?これ……」

「人の気配が……無いな。探査サーチにも生体反応は見えないし」


 村の中央だろう場所まで到着し、周りを見渡すけれど、まだ夕方前の午後4時なのに人が一人も表に出ていないばかりか、田所さんが言うように、半径75m圏内の家屋からは生体反応が一切見られなかった。


「この様子じゃあどこの家にも人は居なさそうですね」

「というか家畜もいないね」


 すると、少し離れた民家からレイニーさん達が出て来た。


 レイニーさんの顔色は蒼く、自力では立って居られない程に憔悴しているようで、今はそれをマルタさんが支えている。


 俺達は直ぐに駆け寄り、状況を聞く。

 凡そ答えが分かっている言葉を投げかけるのは辛いけれど、仕方がないと割り切りながら。


「どうでした? 家の人は居ました?」


「い、いないわ。いなくなってる……なんで?」


「これは一体どういう事だろうか? 他の家からも気配がしないみたいだけれど……」


 レイニーさんは震えながらそう言い、シルヴさんは懐疑的な視線で周囲を見渡しながらそう言った。


「探査範囲でしか今の所わかりませんけど、人や家畜が全部消えてますね」


「うそ……ティナ、ヘレナ、クルト……どこ行っちゃったの……」


 そう呟くように言ったレイニーさんは、崩れるように地面に座り込んだ。

 それを支えるように、マルタさんが彼女の背中をさすっている。


 一体この村で何が起こったんだ?

 ぐるりと村を見渡しながら考える。

 まずは確かめる事から始めなければ。


「とりあえず、まだ探査サーチをしていない家もあるから、何人かで纏って調べて見ましょう。オリヴァーさん達はここで待っていてください。レイニーさんが心配なんで」


「わかった、恩に着る」


「俺らは元のパーティーで別れるか?」


「そうですね、俺とプリシラで西側半分を見ますから、田所さん達は東側半分を調べてみてください。あと、調べる時間は今から30分で、30分経ったら一度レイニーさんの家に戻ってください」


「了解」

「分かったわ」


 三人の頷く姿を見て俺も頷き返し、そしてプリシラを見やる。


「じゃあプリシラ行こうか」

「はい!」


 そうして俺らは、突然降って湧いたような奇妙な謎の解明に動き出した。


 もしも村全体の生体反応が本当に消え失せてしまって居るとするならば、俺らの手には負えない事件かもしれないと思いつつ。

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