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第63話 罰

本日3話目です。

「来たみたいだね。いいよ、入ってくれて」


 ジークフリードさんが入ってくれと口にすると、ドアが開き、入って来たのは達磨のようなドワーフが二人とヘルミーナさんとリュミさん、それから初日に見たきりだった土方さんまでも。


 ドワーフの一人はガニエさんで、もう一人は知らない人だったけれど、恐らくその人にグラディウスを売ったのだろう事は容易に想像がついた。


「5人ともよく来てくれた、まあ掛けてよ」


「久しぶりだな、ジーク。大体3年ぶりか?」


「そうだね、それくらいになるかな」


「ジークは相変わらず見た目が変わらないわね」


「ほんと。変な呪いにでもかかってるんじゃない?」


「あはは、酷いなあ相変わらず」


 久しぶりに会ったと言うのに、酷い言われようである。

 とはいえ言われたジークフリードさんも、笑いながら受け流しているところをみると、やはり相当に仲がいい間柄に思えてくる。


 そんな光景を見やりながら、俺はいつもの三人を見やり、小さく頭をさげるだけに留める。


 そしてジークフリードさんは、最後に入って来たドワーフの一人を見やりながら口を開く。


「セルド、忙しいところ有難う」


「いえいえ、ガニエ師匠とジークさんの要請ですから当然でさあ」


 どうやらもう一人のドワーフはガニエさんのお弟子さんらしい。

 セルドさんの言葉を聞き、笑顔で小さく頷いたジークフリードさんは、最後に土方さんへ口を開く。


「ヒジカタ殿もご足労させたね」


「いえ、必要な事です」


 本来ならば同じ貴族なのだから、いくら爵位が下だとはいえ、土方さんだけがジークフリードさんに敬語を使う必要は無い。


 けれど、土方さんは男爵位を持つとはいえ現役の冒険者なのだから、冒険者である以上貴族の称号など意味を持たない。単に青白銀ミスリルランク冒険者と、それを取りまとめる冒険者ギルドの長という立場関係でしかない。


 だから当然土方さんは、ジークフリードさんに対して敬語が必要になるという訳だ。勿論エレメスさんに対しても。


「ひ、土方さん……」


 そんな土方さんを諸星は唖然とした表情で見やって居る。

 そして土方さんは、そんな諸星など既に眼中にないかのようだった。 


「さてモロボシ君。君に紹介をする必要は無いけれど、ここに居る5人の内3人は、僕が冒険者をしていたころに苦楽を共にした仲間なんだ。それが今は冒険者を辞めてフリーになって、そこに居るシバ君のサポートを率先してやっているらしい。誰に命令された訳でもなく、自らの意思と判断でね」


「え……?」


 驚いた表情で俺の顔を見やるけど、俺は諸星の顔を見る事は無い。


「身内びいきで聞くに堪えないかもしれないけれど、この三人は非常に優秀で、大陸でも相当名が通って居る英雄達なんだ。残念ながら3年前に僕と一緒に引退をしてしまったけれどね」


「そりゃおめえがあんなことを言ってくるからだろうが……」


 ぼそっとガニエさんが反論をした。


「あはは、そうだったね。でもまあそれは今は良いでしょ。それでね、シバ君の武器を作ったガニエというドワーフの鍛冶師、こいつが作る武器は相場があってないような業物なのは、もしかしたら聞いた事があるかもしれないけれど、そのせいでこいつには弟子がわんさかいる。今も何人か面倒をみているんだよね?ガニエ」


「ああ、今は5人だ」


 見かけや言動と違って、ガニエさんは非常に面倒見がいい。


「ここまで聞いてみて、何か気付くことはないかい? モロボシ君」


「っ……」


 何も言えなくなった諸星を、冷たい視線のまま見据えるジークフリードさんは、更に淡々と言葉を続ける。


「もう口もきけないか。まあ、追及はまだ終わって居ないからこのまま続けるけれどね。もう分かって居るかもだけれど、トレゼア周辺の町に居る鍛冶師は、全員がガニエの弟子か、もしくは何らかの繋がりが深い人物ばかりなんだ。トレゼア内ならそんな事はないけどね? なにせ鍛冶師が多いから」


 そう、諸星は自分からわざわざ網に飛び込んでしまった。


 もしもトレゼア内や旅の行商人にグラディウスを売ったとしたら、ここまで早く判明する事は無かっただろう。でもこいつは深く読み過ぎて、あえてカルデラの外へわざわざ出向いてしまったがために、自ら発覚を速めてしまったという事らしい。


 元弟子の一人であるセルドさんのお店に、武器を売りに行ったのが運の尽きという事だった。


「とはいってもどのみち同じかな? その武器にも掛けているんだよね? アレを」


「ええ、かけている武器よ。カズマくんが持って居たものを見せて貰ったから、ちゃんと確認済み」


 ジークフリードさんの質問に答えたのはガニエさんではなくヘルミーナさんだった。という事は、何かしらの魔法でも掛けているのだろう。


 って、初日にヘルミーナさんに武器を見せてくれと言われたのは、そういう意味もあったのか……自分が魔法を掛けた武器かどうかの確認のために。


「とまあ、そういう訳なんだけれど、君には何を言っているのかいまいち理解できないと思う。だから、今からガニエとヘルミーナがそれを証明する。モロボシ君はそれをただ見ているだけでいいからね」


「っ!」


 反論など聞かないと言わんばかりに目で威圧をされ、諸星は口を開きかけたけど何も言わずに口を噤んだ。


「じゃあガニエ、ヘルミーナ頼むよ。ついでに説明もね」


 投げた! 色々と投げた!


 投げたジークフリードさんは、座り心地がよさそうな大きな椅子にどっかりと体を沈め、そして楽しそうにくるくると回り始めた。まるで子供の様に。


 それを見てもガニエさんは何も突っ込みを入れない。


「ああ分かった、セルド、武器を寄越せ」


 そう言われたセルドさんは、マジックポーチからグラディウスを取り出して、ガニエさんに手渡した。


 俺には一目見て分かる。

 それは正しく俺が使っていた愛刀グラディウスだった。


「これは間違いなく俺がカズマに売ったグラディウスだ。それを貴様はゲルクマルスのセルドの店に売ったな? 違うか?」


 セルドさんもこの場に居る以上、売ってないなどという言い訳は通用しない。

 諸星は脂汗を流し、乾いた唇を何度か舐めた後に口を開く。


「ひ、拾った……そう!拾ったんだよ!ゲルクマルスに行く途中で! ラッキーってな具合で売ったんだよ!」


 何て往生際が悪いんだ。


 でも諸星の言葉など予想の範囲内だったのか、ガニエさんは微動だにしない。当たり前か。


「ほう……拾ったのか? いつだ?」


「お、一昨日だ!」


「それで貴様はこの武器を、ゲルクマルスにある鍛冶屋に持って行ったんだな?」


「そ、そうだ、何か悪いか!?」


「いいや? 武器だからな、使用しなくなったら売るのは当然だ。その方が武器も喜ぶ」


「じ、じゃあ問題ないじゃないか!」


「だがな? そうなりゃカズマと貴様の間に誰かが持って居たって事になるが、貴様はどう思う?」


「そんなもん当たり前だろ! 馬鹿じゃねえのか?短足ドワーフが!」


 短足と言われてガニエさんどころかセルドさんもピクリと眉毛を動かした。

 どうやらドワーフは足が短い事を気にしているらしい。


「おい、一つ良い事を教えてやる」


「な、なんだよ」


「さっきジークが言ったが、どうやら俺の装備は俺が思うよりも遥かに特別らしい」


「何言ってんだ?頭おかしいのか?」


「まあ聞け。それでな? 俺の装備が特別だと言われている理由は何個かあるんだが、貴様は知っているか?」


「い、いや?知るわきゃねえだろ」


「そうか。俺はな、自分の装備に誇りを持っている。ゆえに売るときにある細工を施してんだよ。魔法でな。それが特別だと言われている理由の一つだ」


「ま、魔法……?」


 意外だと言った表情を諸星は見せた。

 そしてそれを見たガニエさんは、


「ふんっ……お前、ドワーフが魔法を使えねえなんてもしかして思ってんじゃねえだろうな? もしそう思って居るなら勉強しなおせ。武器一つ作るにも魔法を使って作ってんだよ。まあ、確かにこの魔法は俺が掛けたもんじゃねえんだけどな」


 盛大に鼻を鳴らしながら苦情を言った。


 確かにガニエさんは付与術師エンチャンターだとエミリアさんは言っていたし、魔法が使えないなんて事は無い。諸星の、というか俺らの元世界の勝手な思い込みだ。


「……」


「俺がこのエルフに施して貰った魔法ってのはな、その武器を手にした人数と魔力パターンを記憶する魔法なんだよ。……しかも順番通りな」


 それがどういう意味を持つのかなど、諸星じゃなくても分かる。

 先ほどかから滴る汗が止まらないようだ。


「そ、んな……」


「自分で言ってりゃ世話ねえが、俺の武器はナイフ一つにしても人気がある。ただのナイフ1本ですら金貨1枚出すってー貴族のアホも居るくらいだ。ゆえに盗難もそれなりに多い訳だが、盗難にあった時に少しでも元の持ち主に戻るようにと、隣にいるエルフに施してもらった魔法がそれだ」


「……」


「そしてここに俺が作った武器がある。間違いなくこれは俺がカズマに売ってやった武器だが、さて、今から魔法をかけてみるが、何人の魔力パターンが刻まれているか、予想してやろうか? カズマは何人だと思う? 因みにこのグラディウスは他の客に見せてねえし弟子も嫁も、む、む、娘も触ってねえ」


 なんだ?ガニエさんの表情が途端に歪んだぞ? まあ元から歪んでるけど。


 とはいえそんな失礼な事を思って居る場合ではないので、グラディウスに触った人を思い出してみる。


 その武器を握ったのは諸星を除けば5人。ガニエさん本人と、俺。それからヘルミーナさんもだな。あとは売られた時に受け取ったガニエさんの元弟子であるセルドさん。そして、天地だけだ。


「6人ですね。諸星は5番目だと思います」


「そうか、予想と一人多いが、俺が知らない奴に握らせたのか?」


「はい、アマチって同級生の転移者に」


「あいつか……それなら6人ってぇ人数は正解だろう。じゃあかけてみるぞ。おい貴様、最後通牒だ。しっかりその目で見てろ」


 諸星を見やりながらニヤリと顔を歪めつつ、ガニエさんは手に持つグラディウスに魔法をかけた。


 すると、グラディウスが光り輝き、刀身部分に聖刻文字ヒエログリフのような模様が浮かび上がる。


 翻訳機能でも読めないとなると……エルフ語、それも古代エルフ語か?


「ふむ……俺には読めんが、ヘルミーナなら読めるだろ」


「ええ、勿論よ。魔力パターンが刻まれた人数は、カズマくんが言った通り6人ね」


 読めないのに魔法をかけてどうするつもりだったのか。

 あ、ヘルミーナさんが居るから問題ないのか。彼女は古代エルフ語も読めるみたいだし。


「ってぇ事だ。この魔法を施したのは、ここにいるエルフだから間違いなんざ起こる筈もねえ。あと、これでも証拠が足らねえというなら、刻まれた魔力パターンと照合してもらう事も出来るが、どうする?」


「いや、要らないでしょ」


 椅子に座ってクルクルと回っていたジークフリードさんは、ピタリと止まってあっさり告げた。

 ずっと回って居たけれど、目は回っていないのだろうか?


 とはいえ諸星がこの魔法の事を知って居れば、もう少し対処のしようもあったかもしれない。例えば、自身は握らず全く関係ない第三者に握らせて取引するとか。


 けれど、この魔法は殆どの人が知らない故に、対処のしようもない。

 現に土方さんも初めて知ったようで、驚愕の表情を浮かべている。

 諸星は決定的な証拠を突きつけられ、がっくりと項垂れているだけだ。


「こういう結果になったが、どうするよ? ヒジカタ」


「勿論、全てをギルドマスターに一任します」


 ガニエさんに問いかけられた土方さんは、侮蔑の眼差しで諸星を見やりながらそう口にした。


 そしてガニエさんは項垂れる諸星を蔑みながら見つつ、


「まあ、こいつは最後まで認めなかったが、これだけ揃えりゃ十分だろ」


「そうだね。まだ証拠はあるんだけど、これで十分かな。じゃあシバ君、何かモロボシ君に言いたい事や聞きたい事はあるかい?」


 お、俺?

 突然振られてしまって少し焦る。

 が、考えてみる。


 そして、どうしても聞きたかった事を思い出し、諸星を真っすぐに見やりながら問う。


「なんで、殺そうとするほど俺の事が嫌いなんだ? 俺、お前にそこまでの事をしたか?」


「っ……」


 俺の問いにも唇を噛んで俯いたままの諸星。

 けれど俺はもう少し聞いてみる。


「元の世界でもやたらと突っかかって来てたし、家の力までつかって陰湿な虐めもしてくれてたけど、俺はお前に恨まれるような事をした覚えは全くないんだよ。……なあ、教えてくれないか? どしてだ?」


 それに答えたところで諸星の罪が軽くなるわけではないし、俺も罪を軽くするように陳情するつもりもないが、どうしても聞いておきたかった。

 きっと、今聞かなきゃ今後聞ける機会はないと思って。


 すると、俺の方を睨みつけながら、諸星は憎々しげに口を開く。


「……お前が気に食わないからだよ。ゴミのくせに。それ以外ねえ」


 気に食わないからって、それだけかよ……。

 それじゃあまるで小学生の理屈じゃないか……。


「そうか。そんなガキっぽい感情で俺は何年も虐められていたんだな……」


「ああそうさ!ムカつくんだよ!お前の存在自体がよお!!」


 怒りでブルブルと震えながら俺を呪い殺さんばかりに睨みつける諸星に、俺はもう何も聞きたい事はなくなった。これ以上聞いても何も言わないだろうし。


「わかった。そういう事なんだな。もう良いです、ジークフリードさん」


 話は終わった。

 後はジークフリードさんが罰を諸星に告げるだろう。


 そう思いながらジークフリードさんを見やった。

 けれど、ジークフリードさんは少し納得がいっていないかのような。


「もう良いのかい?……何となくまだ隠している気がするんだけどね? 切っ掛けとか、明確な理由をね」


 人の行動原理には、ほゞすべからず動機というものが存在する。


 だからきっと諸星が俺を虐めたのにも、明確な動機が存在するのは分かっている。気に食わないなら気に食わなくなった理由があるだろうし、存在が許せないなら許せなくなった理由があるのは分かっている。


 でも、それを聞いても結局どうにもならないと俺は判断した。


「いいです。言いそうにないですし、聞いても俺にはどうにも出来ない理由のような気もしますし」


「そうかい?……わかった。では、コホンッ……トレゼア冒険者ギルド、ギルドマスター、ジークフリード=フォン=ローゼンブルグの名において宣告する」


 俺の返事に頷いたジークフリードさんは、一つ咳払いをして、裁定に必要な口上を口にした。

 そして続けて罪と罰も。


「カズマ=シバ君に対しキルトレインでの殺害を企てた犯人は、ユキオ=モロボシと断定する。よって転移者特別法の規定通り、全ての権利を永久に剥奪し、私財も全て没収し、ユキオ=モロボシはトレゼアからの永久追放処分とし、また、帝国及び小群国家全ての都市部への出入りを禁止する」


 こうやって諸星の悪事が暴かれ、あっけなく罪と罰が確定してしまった。

 罰を告げられた諸星は、俯きながらも床を睨みつけている。


 でも、やっぱり王国にはそこまで要請できないんだな。

 いくら冒険者ギルドが強大でも、王国にはいない筈の転移者の扱いに口を出せないとかかもしれない。


 あ、という事は諸星は王国に逃げる可能性もあるわけか……。


「くっ……そ……」


「マジックポーチと装備全てをこの場で剥ぎ取れ」


「「はい!」」


 ジークフリードさんの言葉を受け、屈強なギルド員が諸星を羽交い絞めにし、次々と装備を外していく。


 幾ら転移者だからとはいえ、諸星はまだ初心者でしかない。

 レベルの高いギルド員にとっては赤子を扱う程に容易い。


 ゆえにさしたる抵抗もさせないで、とうとう諸星は下着1枚になった。


 普段なら恥ずかしがるだろうエミリアさんは、全く表情も変えず、ただ諸星を睨みつけたまま。


「最後に君に言っておく。君は、喧嘩を売ってはならない相手に喧嘩を売った。その事をよくよく覚えておいた方がいい。それから、もう次は帝国法で裁かれるのだから、同じようなことをすれば、確実に君は奴隷に落ちる。それも唯の奴隷ではなく一生解放されない鉱山奴隷だ」


 鉱山奴隷は死刑よりも厳しい罰だと言われている。

 誰も彼も死を望んだ方がましだという扱いを受けるのだと。


「鉱山奴隷に落ちた者は、鞭で打たれながら過酷な労働を強いられ、大抵は数年で死亡する。日の光がない穴倉の中でだ。君はそんなみじめな死を迎えたくはないだろう? だからよく考えたまえ。次は決して無いのだからね」


 口調は全く変わりは無いけれど、それでも今までに無い、笑顔とは真逆の冷たい視線を諸星に投げかけながら、ジークフリードさんはそう忠告を諸星に対して口にした。


 そして、その言葉に続けるような恰好で、土方さんも口を開く。


「性格的に危険な人物だという事は最初の段階で気付いていたんだが、俺もなかなか人に自慢できるような生活を元世界で送って来たわけではないからな。何とか矯正してやりたいと思ってお前を拾ったんだが、たったの10日でやらかしてしまうなど思ってもみなかった俺が甘かったようだ」


「土方さん……」


「もう普通に会う事もないが、これだけは言っておく。お前はこの世界を舐め過ぎだ。その舐めた性格がある限り、お前は必ず死ぬ。いや、恐らくは俺らがお前を粛清に動く事になるだろう。それをよく覚えて置け。だが……残念だよ」


 厳しい言葉の最後に、土方さんの本音が聞けた気がした。


 この人が昔どんな人だったのかは知らない。

 だけど少なくとも諸星をどうにかしてやりたいと思ったのは確かだろう。

 にも拘わらず結局何も出来なかった。


 そんな気持ちが最後の言葉に現れたのかもしれないなと。俺はそう思った。



 そして、諸星はその後、持ち運ばれたアーティファクトに手を無理やりに翳させられ、全ての権利を失った。


 これで諸星はステータス画面を見る事も出来なければ、メニューも開けないし加護との接続も切れてしまった。


 それはまるで手枷足枷をされたまま放逐されるのと同じだ。


 けれど、今後も諸星が俺を狙う事が出来るか出来ないかと言えば、出来る。


 アーティファクトとの接続が切れたとしても、レベル自体は上がるのだから。”クローク”はもう使用できなくなったけど、ステータス的に強くなろうと思えば強くはなれるし。


 しかも王国に渡るという一番の懸念がある以上、もしかしたら加護を復活させられる環境を手に入れてしまうかもしれない。


 エミリアさんはその辺りを気にしていたけれど、俺の予想でも、きっと諸星は俺の命を狙って来るだろう。今すぐでは無いだろうけれど。


 だからそれまでに俺は、自分で自分の身は守られるようにしなければ。勿論仲間となったプリシラちゃんも。彼女に被害が及ばないとも限らないのだから、彼女の身も守られる程に。


 そう決意をしつつ、暴れる諸星を冷静に眺めていた。


 もう、俺はこいつに興味など全く無くなったかのように。


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