第6話 ごみステータス。
本日6話目です。
結果。
ゴミだった。
レベル? 5ですがナニカ?
ステータス? 10ばかり並んでますがナニカ?
というか、転移者なら必ず持っている筈の加護も無いんですが、もしかしてバグデスカ?
「まさか加護が無い転移者が現れるとは……」
「ええ、初めてね……」
「成長指数は……すまんが俺には口に出来ん」
成長指数はオールCだった。
最低ランクのDじゃないだけ良かったと思うべきか。
土方さん達が見せた、憐れむような視線が豆腐のメンタルを削る削る。
そして天地と並んで立っているだろう、柊さんの表情を想像するだけで胸が苦しくなる。
「も、もしかしたらオーブの不具合かもしれないぞ?これじゃあ補正は補正でもマイナス補正でしかないしな」
「あ、あぁ、そうだな」
今までずっと寡黙で無表情だった元日本人男性の仲間に可能性を指摘された土方さんは、自らの手をオーブに翳して見る。
操作方法が違うのか、そこにどんな数値が表示されたのかは見えなかったけれど……。
「どこにも不具合はないな……」
「そ、そうか……俺のはどうだ?」
そう言って今度は獣人の人がオーブに手を翳す。
自身のステータスを確認して、異常が無かったのだろう。
気まずい視線を一瞬俺に投げかけたあと、直ぐに視線をそらした。
「ハハハ……」
それを眺めていた俺は乾いた笑いしか零れない。
「え?マイナス補正って、じゃああの人めちゃくちゃ弱いって事?」
「重いものも持ち上げられない?」
「いや、加護もないんだろ?」
「うわー……可哀そう……」
「む、惨いでござるよ」
周りから同情なのか嘲笑なのか、ひそひそ声が無数に聞こえた。
そして、
「ぷくく……うっひゃっひゃっひゃ」
当然のように諸星は腹を抱えて笑い出した。
ゴミなのか?もしかしてゴミ野郎なのか?加護すらねーってバグじゃねえのかよ! と大笑いをかましてくれた諸星なんて知らん顔すれば済む話だけれど、それでも今回転移したほゞ全員の嘲笑ともなれば、流石に穴があったら入りたくなる。
要するに、俺はレベルもステータスもダメダメだったらしい。
だったらしいというか俺が見ても分かる。なんせ加護すらないのだから。
しかも、ステータスなんてこちらのヒュームの、しかも一般人と殆ど変わりは無いどころか、むしろ低いかもしれないと。
土方さん曰く、転移者ボーナスも得られなかったんじゃないかと。
というか補正はどうあれ加護無しとか、どんな虐め?
俺はこっちに来ても虐められる運命なのか?しかも今度は世界そのものから。
目の前が真っ暗になって、体に力が入らない。
ガクガクと震えそうになるのを堪えるので精一杯だった。
一体どうしてこうなったんだろうか?
ステータスチートはどこ行った?
勇者の加護はどこ行った?
賢者の加護でもよかったんですけどね?
神様、見てます?このステータス。何とか言ってくださいよ。
いったい俺が何をしたと言うのか……。あんまりだよ。
お願いだから何でもいいので加護をください……。
「こ、この中にお金が入っている。それからこれが君専用のマジックポーチだ、さ、先ほども言ったように君の魔力と繋がっているから、他の人に渡しても使えないのでそのつもりで」
あまりに居た堪れない気持ちになったのか、定型句を口にする土方さんも動揺しっぱなしだ。
「はい……」
がっくり項垂れつつオーブから手を離し、言われるがままにお金が入った袋とマジックポーチを無意識で受取る。そして列から外れふらふらとおぼつかない足取りで元の場所まで戻り、壁に寄りかかりつつ思わず三角座りで膝を抱えた。
なんか諸星のアホが笑いながら俺の肩をバンバンと叩くけど、そんなもん知った事ではない。
というかそう言えば随分と肩が痛いな。
諸星のステータスが俺よりも随分高いせいだろうか? そうなんだろうな。
俺はその現実をさっそく知り、小さく溜息をついてばかりだった。
俺のチート無双は!?
ケモミミエルフハーレムは!?
どうしてなんだよおおおおおおおおおおお!
俺は心の中で思わずカ〇ジばりに絶叫した。
◇
その後全員がオーブへと魔力を繋ぎ、結果的にやはり天地と柊さんは飛びぬけたステータスと加護だったらしい。
その他の人もこの世界で見れば優秀過ぎる程に優秀で、アホの諸星ですら獣人の戦士並の腕力と瞬発力を持ち、そこそこの魔力をも持って居たらしく、例えるならヒュームと獣人の良いとこどり状態らしい。
はあ……。
「全員終わったな。まあ、なんだ……あー……それぞれ得手不得手があるだろうから、冒険者に限らず自分にあった人生をこれから歩んでくれ。加護にしてもこれからの行いによって変わる可能性も無いわけでは無いし、もしも今望んだ加護持ちではなくても悲観にくれることのないように」
それって俺を慰めてくれているんですね?わかります。
……さっきまで冒険者になれなれ煩かったのに。
っていうか、そもそも変わる可能性の加護が無い俺はどうすりゃ?
少し顔を上げて恨めしそうに土方さんを見やれば、思った通り俺に視線を向けて居た。それどころか、見ればほぼ全員の視線も俺に向いている。当然憐むような視線で。
何これどんな針の筵? 罰ゲームでしかないじゃん……。
俺は小さく縮こまっていた体を更に縮めた。
「うおっほんっ……まあ、これで皆はステータスという個人情報ページを開くことが出来るようになった筈だ。ステータスオープンと唱えれば開けるから、今のうちにその使い方を十分理解してくれ。因みに――」
俺と目が合った事で少し気まずくなったのか、咳払いをした土方さんはステータスページを確認するよう話を逸らした。
仕方がないので俺もステータス画面を開く。
ああ、本当にゲーム画面のようだ。
立体ホログラフのように空中に表示されるステータス。
燦然と輝く10の数字の数々。
いやはや、覚えやすいキリの良い数字がズラッとならんでるなあ。ハハハ……。
ああ、俺ってこっちの世界じゃあ17歳なんだ。
そういえば1月1日で全員が1歳年をとるとかなんとか言ってたな。
ステータス画面には2ページ目もあるって?
スキルや着用した装備はそっち?……加護も?
はあ……そんな事今はどうでもいいか。
その後、どんよりとした梅雨空のような気持ちは晴れる事もなく、この部屋から出たあと何をすべきかを教えて貰い、全ての説明は終了した。
「ではこれで説明を終了する。これより君たちは新たな人生をスタートさせることになったが、貴重な同胞たちよ、くれぐれも命を粗末にはしないようにしてくれ。そしてこの中から一人でも多くの優秀な冒険者が育ち、モンスターを滅し、人類に益をもたらしてくれん事を期待する。さあ、旅立ちたまえ!」
その言葉で皆はさっそく行動を開始するようだ。
俺は未だに膝を抱えている。
どうしろって言うのか。
加護も無けりゃ現地のヒュームよりも低いステータスなのに。
こりゃあ冒険者は無理かな……。
思わず冒険者ではない、別の職を探そうかどうするか考えてしまったその時だった。
「あの……司馬君?」
膝を抱えてぶつぶつと呟いて居たら、天使のような声が聞こえた。
顔を上げれば、目の前には微笑みを携えた女神のような柊さんが。
元気出して?と無言で慰められた気がする。ちょっと嬉しい。
隣に居る天地は余計だけどさ。相変わらずイケメンだな!こんちくしょう!
「……」
とはいえ、呼ばれても返事を返す気力もなく、黙って柊さんの言葉を待つ。
「あの……司馬君さえよければだけれど、いっしょ――」
「柊君と天地君、ちょっと良いかな?」
柊さんの発言に被さるように、遠くから二人を呼ぶ声が聞こえた。
見れば土方さん達冒険者パーティーの面々だ。
何だろうか?もしかしてレギオンへのお誘いか何かか?
でも柊さんは今何を言おうとしたんだ?
言葉を紡ごうとした時にいきなり呼ばれたものだから、柊さんは少し面食らっているようだ。
「何でしょうか?」
柊さんが面食らってしまっているので、天地が口を開いた。
まあ、天地も呼ばれたのだから、こいつが返事を返しても何にも問題はないのだけれど。
堂々とした立ち居振る舞いで近寄って来る土方さんは、素直にかっこいいと思える。
ああ……こんな人に成りたかったな。
「君たち二人を正式にスカウトしたいんだが、どうかな?」
「えっと……」
俺の予想通り、天地と柊さんへの勧誘だった。
そんな二人はお互いの顔を見合いながら、どうするか思案しているようだ。
無言で会話をすんじゃねえ!羨ましい。
そしてそんな中で俺は既に空気でしかない。
なんだか無性に寂しくて涙が零れそうだ。
「土方さんの所はどんなレギオンですか?」
「お、いいね。こんな状況でも焦って食いつかずに、ちゃんと情報を得ようとする思慮深さは大切だ」
「それはどうも……」
褒められてもほゞ無表情の天地大河。
ていうか俺に聞いてくれよ!俺なら直ぐ食いつくぞ。針に餌を付けなくても食いつくボラだぞ。返しがなくてもバレたりしないぞ!
そんな心の言葉など知る由もない土方さんは、一瞬俺を気にしたようにもみえたが、直ぐに機嫌が良さそうに自身のレギオンの説明を始める。
「我々のレギオンは、今から君らが行く”トレゼア”という町をベースの一つにしているレギオンだが、現在われわれのレギオンに在籍している冒険者は88名居る」
88人って大きいのかな。
言い方から考えれば大きいんだろうな。
そんな俺の素朴な疑問を他所に、勧誘は続く。
明日も6話投稿しますです。