第41話 加護の変化
本日2話目です
怪訝そうに見やっている皆を横目に、俺は急いでステータス画面を見る。
「ああ、やっぱり」
「どうしました?」
エミリアさんは俺の一連の行動に少し眉根を歪め、心配そうに見やりながらそう聞いて来た。
でもこれで確信した。
いや、加護の意味を確信したという訳ではなく、先ほどまでの俺の考えは間違いではないと。
ならばその気持ちを伝えなければ。
「いえ、あの、お願いがあります」
「……なんだ?」
俺がずっと難しい表情を見せていたからか、ガニエさんも同じように難しい表情をみせている。
というかこの人は普通にしてても厳めしい表情なのだけれど。
「俺への支援ですけど、凄くありがたいんですが、今後、正当な対価が支払えないなら受けられません。いや、今後じゃないな、今回の事も含めてです」
そう口にしつつ、ヘルミーナさんから受け取ったペンダントやインナー類を彼女に差し戻し、リュミさんにポーションを戻し、そしてガニエさんにブロードソードとライトアーマーを差し戻す為にマジックポーチから装備を取り出した。
「…………」
「ふぅん……」
「あららら……」
ガニエさんは厳めしい表情のまま全く動いてくれず、ヘルミーナさんは目を細めながら受け取り、リュミさんは二人を見て少し焦っている。
けれど、エミリアさんは違った。
「はい。それで良いと思います」
理由も聞かず、即座に受け入れてくれた。しかも少し笑顔が見える。
エレメスさんは、何だか俺を見る目が変わったような気がする。
なんていえば良いか、意外だというか、言葉にすれば『へぇ~、こいつそう言う奴なんだ』といった感じの表情。
いずれにしてもネガティブでは無いと思いたい。
「それで本当に良いんだな? 小僧」
腕組みをしたまま俺を睨みつけるように見られるとめちゃくちゃ怖い。
でも、もう決めた事だ。
俺もガニエさんを真っすぐに見据える。
「はい」
「装備はどうする?」
「勝手な言い草ですけど、出来たら盗られたものと同じものを定価で売ってください。ヘルミーナさんもリュミさんも」
「カズマくんは私達の善意が重いと。だから無にしたいのね?」
冗談とも本気ともとれるようなキツイ言葉をヘルミーナさんが口にした。
ただ、彼女からはガニエさんから発せられるような威圧感などは全くない。そればかりか少し柔らかくなったような気すら感じる。
「いえ、そういう訳ではなく、甘えてばかりじゃ駄目だと思ったからです」
「ふーん、カズマはそういうタイプなのね」
リュミさんは納得したような顔を見せる。
ヘルミーナさんは腕を組んだまま、俺の真意を読み取ろうとする。
「それは、今後私達と対等に付き合っていきたいから……という意味?」
「そうです。これからも色々教えて貰わなきゃならない事なんて一杯あると思いますけど、それでも装備や回復薬に関してはこれ以上甘えるわけにはいきません」
「ふふ。それで良いと思いますよ、シバさん」
そう口にしたエミリアさんの表情は、先ほどよりも更に笑顔になっていた。
「エミリアちゃんも何か思う所があるのね?」
「いえ、私はシバさんの気持ちを尊重したいだけです」
「ふんっ……わかった。カズマの言う通りにしよう」
そう口にしたガニエさんは、俺が差し出したブロードソードを受け取ってくれた。
ただ、少し不機嫌そうな表情は変わらないけれど、ガニエさんが俺を呼ぶ呼び方が小僧ではなくなったという意味は、勝手な想像だけれど、それの意味するところは、少しは認めてくれたとか、そういう事かもしれない。
「皆さんありがとうございます」
そう言って俺はもう一度頭を下げた。
「良いって事よ」
「そうね、でもそれなら私からも一つお願いがあるわ」
「なんでしょうか?」
折角の気持ちなのに、俺のわがままで無にしてしまった事には変わりは無い。
だから、どんなお願いなのか分からないけれど、出来る限り受け入れよう。
そう思いながらヘルミーナさんを見つめた。
「これからは対等な立場なのだから、私達を貴方の仲間にしてくれる?」
「あ!そうよね、当然よね!それは譲れないわ!」
姉の言葉に即座にリュミさんが同調した。
でも、仲間?って?
「え? えっと……」
どういう意味だろうか?
困惑顔でヘルミーナさんとリュミさんを交互に見やるけど、彼女達は微笑みながらガニエさんの方を向き、
「ガニエ? まだカズマくんに言いたい事があるのでしょう?」
「別に納得をしていないって感じじゃ無いわよね?」
「カズマの考えに納得はした。だが言いたい事は、ある。……カズマは、ヘルってのを当然知ってるな?」
「はい」
何で今それを口にしたのか。
疑問を覚えつつも素直に返事を返したけど、それにガニエさんはニヤリと笑いつつ、
「俺は3度目のヘルを経験して、漸くクリアした時に自分の限界を知った。次は無理だとな」
ということはこの人はレベル150を越えているという事になるのか……。
「私もそうね。あれは本当に地獄だったわ」
「わたしは2個目の時でもしんどかったわ……」
姉妹二人とも思い出したのか、美麗な顔が言葉通り歪む。
「私は、リュミさんの苦労を見て既にげんなりとしてます」
そういえばエミリアさんもそんな事を言っていたな。
どうやら全員がヘルを好まないらしい。
まあ、当たり前か。必要な経験値が倍とかそんな生易しいレベルじゃなく10倍とかいわれているらしいし。
でも、この人たちのレベルって一体いくつなんだろ?
「カズマ、俺らのレベルが気になるか?」
「はい」
タイミングよく聞かれてしまい、思わず素で返事をしてしまった。
だがガニエさんはニヤリと顔を歪めながら答える。
「俺は166でヘルミーナとリュミールは幾つだったか?」
「私はレベル173ね」
「わたしはまだ121よ!」
まだって……リュミさんってその言い回しが好きですよね。
というか想像通り二人のレベルはめちゃくちゃ高い。リュミさんも大概高いし。
っていうか、え? そんな人達が何故俺の仲間に? いや、多分パーティーにという訳では無いだろうけど。
そう思って居たら、珍しくエレメスさんが言うようだ。
「このお二人は元は青白銀ランク冒険者なんだ。勿論エミリア嬢の両親もだ。特にお父さんの方は未だにこちらの世界の人族で最高レベルだ。確か188か?」
「そうですね」
「すご……」
「ああ、そういえばナディアの方も俺より高かったな」
「ええ、確か169ね」
「ナディアとは母の名前です」
俺に向けてエミリアさんがそう教えてくれた。
そっか、皆冒険者で同じパーティーだって言ってたな。
それで全員同時に引退したと。
「わたしはまだ白金よ!」
「おめえだって実力と実績からいえば青白銀じゃねえか」
「リュミさんは私に付き合って冒険者を休止してますからね」
「だって一人で狩りしてもつまんないもの。それに皆の考えに同調してるってのもあるしね? 錬金術は楽しいし、アクセサリー造りも楽しいし」
冒険者である限り、他の職業をメインですることは出来ない。
それは高ランク冒険者なら尚更で、その理由は、高ランクならば所属をする国やギルドから突発的に依頼を出される事もしばしばあり、特に所属する国からの依頼はほゞ強制であるから。
ゆえに何かの別の職業を本気で行いたいならば、一度冒険者登録から外れなければ成らなくなる。
今まで積み上げて来た地位だの名誉だのを一旦金庫にしまい、鍵をかけて眠らせるのだとか。
「それでだ、カズマに一つ確認というか質問がある」
「なんですか?」
「あー、その前にエレメス」
「はい」
「今から聞く話は絶対に誰にも言うんじゃねえぞ。そして一切質問をするな」
「え?」
エレメスさんは、突然何を言うんだろうかと若干困惑している。
それでもお構いなしでガニエさんは話を続ける。
「もしお前から漏れたって俺らが思ったら、分かってるな?」
「意味があまり分かりませんが……でしたら、はい、お約束します。エレメス=ガイエルの名に懸けて」
「ふんっ、お前の名なんざどうでも良い、重要なのは約束するかしないかだけだ」
「ふぐっ……約束します」
惨い。なんと理不尽な要求をするガニエさんだろうか。しかも毒まで混ぜるとか鬼か。
まだ何も聞いていないのに約束をするエレメスさんもエレメスさんだけど。
とはいえ一体何を聞こうとしているのか。
「という訳で聞くが、加護だ。お前のな」
加護?……ああそうか、そう言えばエミリアさんは、この人達にだけは言うって言ってたな。
エレメスさんは知らないので、何言ってるの?といった顔をしているけど。
「加護……はい」
「加護が生まれたってー信じられねー話はエミリアから聞いて驚きはしたが、俺は加護を持って居ない奴が加護に目覚める事もあると前から思っていたからな。ヘルミーナもそうだろ?」
「そうね、加護は先天的なもの。という説が通説なのだけれど、人の全てを把握している訳ではないどころか、把握していない人の方が遥かに多いという事を鑑みれば、十分有り得る話だとは思っていたわ。それに、もしかしたら単に視えなかっただけ、という可能性もあるもの」
「だろ?だからそれはこの際どうでも良い。聞きたい事は別にある」
そんなもんなのだろうか?
まあそういう考えも有るか。
記録に無いからと言って、それが絶対とは言い切れないって事か。
「もしかしてその加護の内容が変わったんじゃねえか?」
思わずドキッとした。
するとガニエさんの言葉を聞いたエレメスさんの表情が強張る。
これ、自分が聞いて良い話じゃないんじゃないか?といった具合に。
でもどうしてわかったんだろうか?
というかどうするか……加護が変化した事を言ってみるか?
隠しておいて俺だけで考えるよりも皆で考えて貰った方がいいと思うんだけど、エレメスさんはそこまで言っても大丈夫な人なのだろうか?
そんな風に考え込んでいると、やはりエミリアさんは俺の機微に敏感のようで。
「大丈夫ですよ? シバさん」
この人に隠し事は出来ないんじゃないか?
まあ、そもそも隠し事をするつもりもないけど。
そう自分に結論を出した。
「はい、変わってます。いえ、つい先ほどまた変わりました」
「やはりな……って、今”また”って言ったか?」
ニヤリと笑った後、直ぐに訝しみ、そして驚愕した。
忙しい人だな。
「はい。加護が生まれてから変わったのは二度目です」
「おいおいおいおい……それはいつだ?」
いつというのはどっちだ?
まあいいや、両方言ってやれ。
「二度目はついさっきですけど、加護が生まれてから最初に変わったのは、実はいつ変わったのかは分からないんですよね」
「ついさっき……ああ、なるほどな。それで最初のはいつ気付いた?」
「二日前です」
「ふぅん……それで、どんな内容になったの?」
難しい顔を見せるガニエさんとは違い、優しく聞いてくるヘルミーナさん。流石年の功。いや、ガニエさんは80歳らしいけど。
「【原初の胎動】から【原初の息吹】に変わって、さっき【原初の匍匐】になりました」
「ほう……」
「ねえ、でもそれって……」
ガニエさんは目を細め、リュミさんは何かに気付いたようだ。
それに釣られてヘルミーナさんも。
「ええ、無から始まって”胎動”になって次が”息吹”。それから変わったら”匍匐”って、まるで生命の営み……」
「そう!それよ!」
「おいおいおいまてまてまてまて!! そんな加護なんて聞いた事がないぞ?それじゃあまるで出世魚じゃねえか」
「そうなったら次の加護は……例えば立ち上がるとか歩くとか、走り出すとか?」
「いきなり飛んでしまうかもしれないわよ? 原初の飛翔とか」
「それもあるわよね……」
焦るようにそう口走ったガニエさんだけど、姉妹は構わず次の加護を予想する。
全く耳に入って居ないかのようだ。
「お前ら俺の発言をスルーしてんじゃねえ!!」
「……私的にはリュミさんの案に一票です」
「え、エミリアちゃんまで……」
「「ハハハ……」」
自身の発言を無視されたガニエさんはがっくりと項垂れた。
俺とエレメスさんは乾いた笑いしかでない。
「ガニエの出世魚発言はどうでも良いわ」
「そうね。だけれどガニエ? 貴方は何か別の事にも気付いているのよね? 出世魚云々以外で」
「ぐっ……まあな。ちょっとばかし俺の想像の上を行きそうだが、考えとしては恐らくお前が思った事と似たようなもんだ」
ムシをされ、いきなり別の話を振られたのにガニエさんは素直にそう答えた。見た目怖いけど良い人だ。
とはいえ、二人が思って居る別の事が気になる。
「どういう意味です?」
「そうだな。まず、加護が変化する時とはどういう時かを考えるべきだが、エレメス答えられるか?」
「は、はい、多くの場合……いえ、殆どの場合、ステータスがある一定以上まで上がった状態で、更に何か重大な出来事を経験した時に変化をします。それこそ生死に関する程に重大な出来事です」
どうやらサブギルドマスターのエレメスさんは、ガニエさん達に頭が上がらないようだ。
先ほどから変な汗をかきっぱなしに見えるし、質問をされるたびに直立不動になっている。昔めちゃくちゃしごかれでもしたのだろうか?
「そうだ。逆に言えばそれだけ変化はしないという事でもある」
「そうですね。私は一度しか変化をしていません」
エレメスさんは一度なのか。
「俺とヘルミーナは何度か変化をしているが、そのどれもがとんでもない出来事の直後だった」
「そうね……あれは凄かったわ。……死んじゃうかと思ったもの」
昔を思い出すかのように、遠くを見つめるような視線でヘルミーナさんが呟いた。
「だが、カズマの加護はいきなり変化をした。二度目は大体想像つくが、最初のは自分でいつか分からないような出来事でだ。違うか? しかも二度目は間違いなく生死うんぬんは関係ねえし、ステータスも多分関係していねえ」
「シバさん。先ほど変わったというのは、対価で支援をという話に繋がりますか?」
「はい、凄い支援を今後も貰えるって話になって、それって本当にいいんだろうか?と疑問を覚えて、辞退をしようって結論を出した瞬間でした」
「それって……」
またまたリュミさんが何か思ったようだ。
「ええ、私もリュミと同じ感想だけれど、まだ分からないわね」
ヘルミーナさんも俺の言葉で何か思う所があったようだけれど、伝えた俺が正直言って全く理解をしていない。一体どの部分が気になったと言うのか。
そう自分の言葉を反芻しつつ悩んでいると、横からエミリアさんが次なる質問を投げかける。
「ではもう一つ、私とパーティーを組んだ時には加護は変わって居なかったのですよね?」
それを聞かれるとは思ったんだけど……。
「すみません……あの時は結構頻繁にステータス画面を見た筈なんですけど、2ページ目は殆ど見ていなかったから気付いていないんですよね……」
「そうですか……」
うわぁ、あからさまに肩を落とされてしまった。
だ、駄目な弟子ですんません……。
俺がエミリアさんの態度に狼狽していると、今度はリュミさんが口を挟む。
「じゃあいつまで遡れば気付いているの? 変わっていない時ね。あと、加護が生まれたのは結局いつなの?」
「あとそうね、先ほど変わったのはどうして気付いたのかしら?」
リュミさんもヘルミーナさんも長い耳をピクピクと動かしながら、興味津々と言った感じで聞いてくる。
エルフは好奇心旺盛という話は本当らしい。
けれどガニエさんは少し呆れ顔だ。
「お前ら……別の質問を同時にするなよ……しかも三つもよぉ……」
「ははは、いいですよ。えっと、加護が生まれた事に気付いたのが狩りの初日の夜です。これは多分ですけど、最初のファブリを倒した瞬間なんじゃないかなって思います」
「ふんふん」
「それから二日前まで一度目の変化に気付きませんでした。さっきのは、何か体の中でスイッチが入ったような感覚を覚えたんですよね。そんな感覚は初めてでした」
「ふぅん……」
「てーことは、こっちに来て2日目の夜以降から8日目までってことか。……なげえな」
「あららら」
「すみません……」
「勘違いすんな。叱ってるわけじゃねえ」
「顔が怖すぎるのよガニエは。可哀そうにねえカズマくん」
「確かに怖いわよね、ガニエの顔は。岩みたいだし」
姉妹二人してガニエさんを弄る。
確かにガニエさんって怖いけど。
そういえばヘルミーナさんもつい先日から俺の事を名前で呼ぶようになった。
エミリアさんは相変わらずシバさんだけど。
「煩いぞ。俺のこの顔は元々だ。こんなんでもかーちゃんは惚れてくれてんだからほっとけ!」
「趣味が悪いにも程があるわね」
「なのになんであんなに可愛い娘が生まれるんだろ?」
「それはヘルタが美人だからに決まっているわ」
「あ、そっか。そうね、うん」
二人で勝手に話を逸らして勝手に納得してしまった。
それを聞いていたガニエさんは額に青筋を立てている。
「おん前ら、うっさいぞ!いい加減話が進まねえじゃねえか!」
「ふふふ、ごめんなさいね」
「ごめーん」
「全くよお……かーちゃんと娘を褒められちゃあ、なんも言えねえじゃねえか……」
どうやらガニエさんは愛妻家で子煩悩らしい。
ジロリと二人を睨みつけるけれど、どこか嬉しそうだ。
そしてエルフの二人は全く反省をしていないな。
「あらあら……ふふふ、ごちそうさま」
「あーもうどうでもいい、で、話を戻すが、お前の加護は……まあ、ヘルの話にここで繋がる訳だが――」
「もったいぶらずにさっさと言いなさいよ」
「うぐ……恐らく、俺の予想では、経験値が多く入るんじゃねえかと考えた。もしくはレベルアップに必要な経験値が少なくて済む。単純に考えりゃあそっちの方が正解だろう。ヘルミーナもそう思ってんだろ?」
好きにしろと言った具合に投げだしたガニエさんは、途中リュミさんに突っ込まれつつも自身の考えを述べ、最後にはヘルミーナさんに同意を求めた。
それを受けた彼女は意味深な笑みを浮かべ、頷きながら、
「そうね。状況が分かりにくいのだけれど、その可能性は十分あるわ」
すると二人を遮るようにエレメスさんが口を開く。
「ちょっと待ってください二人とも。ステータスの上りが、例えば成長指数が加護の変化で”C”から”B”になるとかは稀に有りますけど、必要な経験値が少なくなるなんて……」
焦る様にエレメスさんがそう口にしたけど……。
そうか、成長指数も稀に変化するのか。
どう考えても最初の頃よりもSTRとかが多く入っている気はしてたんだ。
というか変化毎に指数も変わってる気がするんだけど……。
そんな俺の疑問など知らないガニエさんは、エレメスさんをジロリと見やりながら、
「ないとは言い切れんぞ?」
「今まで無かった加護。だからこそ無いとは言い切れないわね。もちろん、聞いた三つの加護では勇者の加護になりそうだとは到底思えないけれど。でもね、カズマくんはエミリアちゃんが見初めた子よ?」
その言葉にガニエさんも大きく頷きながら、
「そうだ。実は俺もそれが一番気になったし、もしもカズマがエミリアちゃんに連れられてこなけりゃ、これっぽっちも思いもしなかっただろう」
二人の言葉にエミリアさんは俯き加減になる。
全員の視線が彼女に注がれる。
「私は……」