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第40話 決意

本日1話目です

 途端ににぎやかになった医務室。

 その理由をガニエさん一人で賄っていると言えるけれど。


「話はエミリアちゃんから聞いたぞ」


「え?」


 ガニエさんにそう言われ、エミリアさんの方を向いたけど、彼女は柔らかい表情のまま俺に小さく頷いた。

 いつの間に……。

 もしかして俺が意識を失っている間にか?


「大変だったみたいね」

「ほんと全く許せないわね!」


「あの……」


「ん? 何だなんだ? いきなり土下座をしたかと思ったら、今度は鳩が豆鉄砲を食らったような顔をしやがって」


 お世話になった三人の威圧に思わず土下座ポーズをとってしまったけど、その後何やら雰囲気が違うと思いつつ、ゆっくりと顔をあげてガニエさん達を順番に見やる。


「大まかな話はエミリアちゃんから聞いたわ」

「そうよ! それでカズマが困ってるからって飛んできたのよ? わたしが来ても大して役に立たないけどね! あはは」


 何気に数日前からリュミさんは俺の事を呼び捨てにしている。

 俺は親しくなれたようで嬉しいばかりだけれど、そんなリュミさんは快活に笑いながらそう告げて来た。


「いえ……あの、済みませんでした」


 上げた頭をもう一度下げる。

 申し訳ない気持ちで執った行動だ。

 けれどそれを見て、ガニエさんは鼻で笑いながら口を開く。


「ふんっ……聞けば小僧はそうとう頑張ったらしいじゃねーか。なんでもギガスボアを倒したとかどうとかよ」


「わたしも聞いたわ。凄いじゃないカズマ」


「だけど装備を……」


「ああ、身包み綺麗さっぱり剥がされたんだってな? それも聞いてるぞ」

「だからこそ私達が来たのよ?」


「え?」


 やっぱり怒られるのだろうか?

 そう身構えたら違ったようで。

 ガニエさんとヘルミーナさんは、それぞれのマジックポーチから真新しい装備を取り出した。


「これを使え!」

「私も用意したわ。でも前と同じでは芸が無いと思ったから、少しだけ良い物よ?ふふふ」


「わたしはポーションよ!どうせもの凄く減ったんでしょう?」


 そう口にしつつリュミールさんもポーション類をごっそり出して来た。

 中には初めてみるような色合いのポーションも。


「下級中級上級ポーションを各50、それからエキストラポーションも10本持って来たわ」

「んなあああっ!」


 エレメスさんが装備類やポーションを見て腰を抜かすほど驚いた。


 あとで知ったのだけれど、エキストラポーションはたった1個で金貨2枚の価値がある。

 それもそのはずで、体力と魔力が全回復というすさまじさ。更には状態異常回復付。万能薬の効果もあるのだからそりゃもうその金額でも当然だろう。


「それから、これも装備しておくといいわ」


 そう口にしつつヘルミーナさんが差し出したものは、綺麗な涙型をしたペンダントだった。

 エメラルドグリーンに輝くその宝石のようなペンダントは、なんだろうか?


「んなああああ!?そ、それは!」


 俺が不思議がっていると、またしてもエレメスさんが目を見開く。形を見ただけでこれが何かが分かったようだ。

 俺は別に綺麗な物を装備したいとは思わないんだけど……。


 それでもヘルミーナさんが譲ってくれるものなんだから、ありがたく受け取るけど、受取りながら聞いてみる。


「これって……?」


「それは”クローク”を見破る魔道具よ。身に着けているだけで相手がぼんやり見えるわ」

「魔道具!?」


 どうやらエミリアさんは、那智さん達からの話を聞いた時点で”クローク”でのキルトレインだと把握していたようだった。というか魔道具とは……。

 

「あとは、これ自体に障壁の効果もあるし、INTも少しだけ上がるわ」


 なんてチート装備だ!

 そりゃエレメスさんが顎を外すわけだ。


「こんな凄いものを……」


 問題なのはこれがいくらくらいするものなのか、だ。

 買える金額なら良いんだけど。


「ふふふ」


 ヘルミーナさんは笑っているけれど、間違いなく俺が買えるような金額では無い筈。


「しょ、所持金が……今日ワイルドボアを1匹倒したんですけど、それでも全部で金貨5枚くらいしか……」


「ふふふ、それくらい分かって居るわ?だから言ったでしょう?面白そうだから私も乗るって」


「いや、だけど……」

「男の子はつまらない事で悩んではだめよ?」


 ヘルミーナさんはかがみこみ、俺の鼻をチョンと指で弾きつつそう言った。

 いや、これをつまらない事だと誰が言えるのかと。


「お姉ちゃんがそう言うんだから受け取っときなさいよ」

「ああ、その方がいいぞ。ヘルミーナがこんな事をするなんて俺は初めて見たがな!」

「失礼な口ね?相変わらずガニエは」

「そういうガニエはどうなの?」


「俺か?俺はこれだ!」


 そう口にしつつ出した武器と防具を俺に差し出した。


「防具はまあ前のと同じで良いだろう。武器の方はまだ20になってねえだろうから、ひとまずはこれで狩れ。ブロードソードだ。一応今回も両手で扱えるように柄は長くしてある」


 ブロードソード。

 レイピアよりも幅が広い両刃の剣。

 よくあるゲームなどでは両手で持つ大きな武器だと言われているけれど、それは実のところ間違いで、片手で持てるサイズの物が本式らしい。


「どうだ?良いだろ? 材料には小僧の大好きなワイルドボアの牙が混ぜてある。レベル10から使えるものだから小僧でも問題ないぞ」


 そりゃあ凄いな。

 あの牙にはグラディウスでも全く傷をつけられなかったし。

 そう思いながらガニエさんの説明を聞いていたのだけれど、ふいにリュミさんの雰囲気が変わり、目を吊り上げてガニエさんを睨みつけた。


「ガニエってほんと駄目ね!なんでドワーフってデリカシーがないのよ!」

「な、なんでだ」


 見れば結構本気でキレているような。

 突然怒られたガニエさんは焦りながらリュミさんに聞いた。

 するとヘルミーナさんが諭すように。


「カズマくんがトラウマを抱えていたらどうするの?ってリュミは言っているのよ」

「小僧がそんなタマか?」

「脳筋のあんたと一緒にするんじゃないわよ!」

「な、なんだと!」

「大体ね!あんたは昔からそう! 人の傷口を平気で抉るのよ!」

「そ、そんな事はない!」

「そんな事あるわよ!」

「あるわねぇ」

「うぐぐぐぐ……」


 なんだか俺の目の前で三人が言い争いを始めた。

 どうやらリュミさんは本気でキレなすったらしい。


 おろおろしているエレメスさんはとても仲裁できそうにないし、エミリアさんは……。

 そう思いながらエミリアさんを見やると、何やら考え事をしている。

 となれば。


「あの、俺なら大丈夫です」

「ほんとに!?」

「無理をしなくてもいいのよ?」


 二人は心配そうな表情で俺を見るが。


「いえ、無理ではなく、多分大丈夫です。最後は倒せましたし、そりゃあ実際にみたら最初は足が竦むかもですけど、そもそもギガスボアより弱いワイルドボアだから、きっと大丈夫ですよ」


 俺の言葉にガニエさんはホッとした表情を一瞬見せ、そしてニヤリと顔を歪めた。


「だろう?ほらな?」

「ほらな?じゃないわよまったく!少しは反省しなさいよ!」

「そんな感じだからラウラちゃんに何時も怒られるのよ?」

「うぐっ……それを言われると辛い……」

「言いつけてやるわ!絶対よ!」

「ま、待ってくれ……それだけは……」


 どうやらガニエさんにとって、ラウラという人はアキレス腱らしい。

 すっかり意気消沈してしまった。

 でも、リュミさんは俺の為にそこまで……。

 そう思うと凄く嬉しい。


「あの、本当にありがとうございます。それにリュミさんも、俺を心配してくれてありがとうございます」


 ガニエさんにお礼を言い、リュミさんを見やりながら心配をしてくれたお礼を言った。

 すると何故かバツが悪そうにリュミさんは少し視線を外した。


「ま、まあカズマが良いって言うならいいけどね? 実際その武器って凄く良いと思うし」

「だろう?ノーマルランクじゃあ最上級の出来だ。特にこだわったのは――」

「あ、そう言えばシバさん?」


 ガニエさんの説明を聞きながら、差し出されたブロードソードをみやっていると、何故かエミリアさんが横から口を挟む。


「はい?」

「おい!エミリアちゃん……せっかく俺が気分よく武器の説明をしていたのに水を差すなよ!」


 突然割り込まれ、ガニエさんは渋い表情を見せつつエミリアさんに苦言を呈した。

 だがそれでも一向に構わないようで。


「ガニエおじ様にも関係する事ですから黙っててください」

「お、おう……」


 ぴしゃりと言われ、ガニエさんは黙ってしまった。

 それを見やりエレメスさんやリュミさんは苦笑いを浮かべている。


「それでシバさん? レベルは今幾つになっていますか?」

「あ……」


 そうだった。

 ギガスボアを狩る前はレベル19だったのだから、もしかしたら……


 そう思いつつステータス画面を開けば。


「……に、24になってます」

「ふんなあああああああああああああああっ!?」


 俺の24発言でエレメスさんは目どころか鼻の孔まで大きく開いて驚いた。


「ほう……そういう事か」

「ふぅん……」

「なかなか頑張ってるわね」


 ガニエさんやヘルミーナさんリュミさんは意外にも落ち着いたものだったけれど。


「やはり予想通りですね」


 勝ち誇ったようにガニエさんを見やるエミリアさんに、とうのガニエさんは苦笑いを浮かべつつ言う。


「まあ、この武器は必要なくなったってことだ。返せ」


 そう口にしながら俺が持って居たブロードソードをひったくった。


「そう、ですか?……あ、そういえば」


「そうだ。レベル20を越えたら俺の所へ来いと言っただろ? だから武器を作ってやる。小僧専用の武器をな」


「……」


 エレメスさんはとうとう言葉すら口に出来なくなったらしい。

 顔が盛大に引き攣ってまるで痙攣しているかのようだ。


「でも、良いんですか?……俺は……」


 俺が言いたいのは、折角譲ってもらった武器を失くすような奴に、そこまでしてもらってもいいのかって意味で。


「何度もいうが、小僧のミスじゃねーんだろ?」

「はい……でも恨みを買ったのは事実だし」


「ふんっ、そんなもん、生きてりゃごまんとある。そんな事を気にして何になるんだ?」


 俺の言葉を聞いたガニエさんは、鼻を鳴らしつつ一笑に付した。

 そしてヘルミーナさんも同意見のようで。


「そうよ?このガニエなんて武器を頼まれても作らないというだけで、大勢の冒険者から恨まれているくらいなのよ?」

「ふんっ……武器を作るのは俺の勝手だ。俺が作りたい奴に作る。誰に指図される筋合いはねえ」

「ふふふ。相変わらず頑固ね」

「ヘルミーナ、おめーも同じだろうが!まったく……」

「ふふふ。そうね、私も気に入った人にしか特別な装備は売らないもの」

「だったら良いじゃねえか!」

「あら?悪いなんて一言も言って居ないわよ?」

「はぐぬぬぬぬ……」

「ふふふ」


 大きな顔で下から見上げるように睨みつけるガニエさんと、それを涼しそうな表情で受け流すヘルミーナさん。


 さっきから面白いなこの三人は。

 確かにエミリアさんが言ったように、似ているな。

 ただ、それを言えば俺が集中砲火を食らいそうだな。


 そう思って居ると、エミリアさんは俺の所へすすっとやってきて、


「似ているでしょう? 二人とも」


 そう苦笑いを込めて小声で口にした。

 そしてリュミさんだけはエミリアさんの言葉が聞こえたらしく、同じように苦笑いを浮かべていた。


「まあいい、とにかくだ、小僧は明日でも俺の工房へ来い!いいな? それからこの武器はやっぱりお前にやる。今晩何も得物を持って居ないのは落ち着かねえだろうからな!」


 ガニエさんはそう口にしつつ、ぶっきらぼうにブロードソードを再度俺に差し出して来た。


「あ、はい……有難うございます。あの、いくらですか?」


「両方とも大銀貨1枚だ。小僧の武器や防具は今後全てその金額で作ってやる。ユニーク級だろうが幻想級だろうがな」


「んなあああっ!?」


 エレメスさんが驚くのも無理もない。

 幻想級なんて、聞いた話では億を軽く超えるはずだ。


「そんな……いや、それは……」


 駄目だろそんなの。

 何だろうか? 心の中でモヤモヤとするものが込み上げ、それが消えることなく徐々に積もっていく。

 しかしそれでも話は進んでいく。


「エレメスは相変わらずうるせーな。……小僧はまあ気にするな。それだけ俺も期待をしてんだよ」


 その言葉の意味を俺は測りかねる。

 どういう意味で言ったのだろうか?


 俺はガニエさんからの武器を受け取りつつ、もっと深い意味があるのではないだろうか? と思った。


「そうね、私も今後大銀貨1枚で良いわ」

「やるわねお姉ちゃん。じゃあわたしもそうするわ!エキストラポーションでも高級万能薬でも、それからエリクサーでもね」


 エ、エリクサーって……やっぱアレだよな……。


「そ、それ程までに皆さんはこの転移者を……」


 思わずエレメスさんが呟くように口にしたけれど、エミリアさんを含むガニエさん達4人は真剣な表情を見せ、そして答える。


「俺らが何故冒険者を辞めたのかをお前は知らんだろう? 理由というか目的など知らんだろう?」


「いえ、一応は……」


「魔物の侵攻が止まり、パーティーのリーダーが冒険者を辞めたから、やる気が失せて一緒に辞めた――というのが表向きの引退理由だ」


「そう聞いています」


「だがな、本当の理由は別にある」


「それが、彼だと?」


「あくまでその可能性がある、というだけだけれどね?うふふ」


 ガニエさんではなく、ヘルミーナさんがそう答えた。

 言葉をとられてしまいガニエさんは一瞬で不貞腐れたけど。


「それは、あなた方のリーダーである、ギルドマスターも当然……」


 え?

 ガニエさん達と一緒に冒険をしていた人ってギルドマスター?どこの?ここの?

 思わず皆の顔をキョロキョロと見渡してしまった。


「勿論だ。エミリアちゃんが伝えている筈だしな」

「伝えていない訳は無いわね」

「はい、勿論です」


 にっこりと笑顔でそう返事を返すエミリアさんを俺は見やる。


「え?……もしかして……」


 もしかしてもしかして……。

 エミリアさんとの会話を思い出す度に、ある一つの事実に突き当たる。

 俺は恐る恐る伺うようにエミリアさんへと聞く。


「え、エミリアさんって、ここのギルドマスターの娘……さん?」


「ふふふ、はいそうですよ? 驚きました?」


 彼女はいつも通りの涼しい笑顔でそう口にした。

 いや、ちょっとまて。

 頭が混乱する。

 何故? なんでそんな人がカウンターに立って受付とかしてるんだ?


「なんだ小僧、知らなかったのか?」


 知る訳ないだろおおおおおお!

 思わず大声で叫びたくなったけれど、ここはグッとこらえる。


「え?いや、知る訳が」


「知らなくて当然かもしれないわね。ここの冒険者ギルド内でも知っている人は少ないのよね?」


「はい、ある貴族のご息女という建前にしていますし、姓も少し短くしていますし」


「貴族という意味では正解よね!」


 そうなるのか。

 確かにこの世界では、カーリア教教会と並んで冒険者ギルドが大きな力を持って居るから、その支部とはいえギルドマスターが爵位を持って居ても不思議じゃないってことか。


「私に爵位はありませんよ?シバさん」


 固まったまま考え込んでいたので気になったのだろう。

 エミリアさんはそう言ったけれど……。


「なんていうか……驚きました」


「ふふふ、でも私自身は何も変わりませんからね? 冒険者であり、ギルド員でもあり、そしてシバさんの担当員なのは何も変わりません。ですから今後もしっかりとサポートさせてくださいね」


「あ、はい。よろしくお願いします」


 何時ものような笑顔でエミリアさんに屈託なく告げられ、俺は考える事を思わず放棄したかのように返事を返してしまったのだった。


 ただ、一連の装備云々を格安で提供する話は、どうしても俺の中で納得が出来ない。消化できないと言った方がいいだろうか?


 このペンダントにしてもそうだ。


 本来なら絶対に持てないような魔道具だと思うし、そんなものを今の俺が受け取るのはおかしいんじゃないだろうか?

 

「どうしました? シバさん」


 俺が深刻な表情で悩んでいるからだろう。


「いえ……」

「もしかして、私がギルドマスターの娘だと知って、臆してしまいました?」


 おどけたようにそう口にしたけれど、見れば彼女の表情は少し不安の色を見せているようにも見える。


「あ、それは無いです。そもそも皆俺よりも雲の上のような人達ばかりなんで」


「では、何か他に?」


 どうするか……。


 そもそも疑問に思ったのは、こちらの冒険者の様子を思い出したから。

 苦しそうな表情を見せていた魔術師の女の子や、毎日見かけていて、人数が減っているパーティーもある。

 酷く汚れていて、武器や防具も傷だらけの冒険者も居る。


 そしてそんな人達は、俺みたいに恵まれた支援を受けさせては貰えないんだと。


「シバ……さん?」

「どうした? 小僧」


 俺が黙りこくった為に、目の前の全員が困惑の色を見せている。

 それでも俺は黙ったまま、そのまま真剣に考える。


 そもそも転移者だけを見て居れば、俺はステータスで恵まれてはいなかったのだから、ある程度は装備の支援を受けられたら嬉しいなで済ませられる。


 けど、こちらの人と変わらないという事は、この世界全体でみれば俺は別にステータスに恵まれていないわけじゃない。ごくごく普通のステータスだったというだけ。


 意味が相変わらず分からないけど、今では加護もちゃんとあるし。

 その加護にしても効果を俺が知らないだけで、ちゃんとその恩恵を甘受しているんじゃないかと、朧気ながらも思って居る節は有る。多分、恐らく。


 なのに俺だけがぬるま湯に浸かっていい訳ないだろ。

 貴族の坊ちゃんでもあるまいし。

 しかも同じ転移者である那智さんたちをも、きっとレベルもステータスも超えてしまったのに。


 考えれば考える程、俺ってただ甘えているだけじゃないか、と。

 自分よりも恵まれていない冒険者達の現実は、あえて考えないようにしていたんじゃないのか?と。


 確かに感謝の気持ちはあるし、実際に今生きて居られるのはここに居る人達のおかげなのは間違いない。けれど、だからといってそれをまともにこれからも、当然のように甘受し続けるのは間違っているような。


 正当な対価なくしての支援など単なる紐だ。

 俺は冒険者だ。

 弱いけれど、それでも与えられるだけの冒険者なんてクソのようなものだ。


 ならばどうする?

 答えは簡単だ。


 対価なき支援は断ろう。


 そう思った瞬間だった。


 俺の中で何かがカチリと切り替わったような気がした。


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