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隣の一軒家はやけに静か  作者: クマ
とある一軒家
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侵入前日

2話分の予定だったものを1話に突っ込みました。

投稿ペースは維持を目指します。

 朝目が覚め、昨日の恐怖が消え失せていることに一安心した。

 ベッドから降り、眠い目を擦りながら眠気覚ましに思考を回転させる。

 玄関が空いている、不自然ではあるが、異常とは言えない。

 俺の祖父が住んでいた家は窓が少ないから玄関を開けて換気をしていた。

 …マンションに住んでいた、が。


「でも、風が流れていた。換気以外の理由なんてきっと無いはずだ…」


 それ以外の理由があるとしたら、いよいよあの家は得体のしれない異物となるだろう。

 考えている時点で既に異物ではあるが━━━━



ガツッ!



「っ…!」


 周りが見えていなかった。

 思考を巡らせすぎた。

 タンスに小指を痛打したようだ。

 痛みと刺さるような冷えた感覚が足を伝い、しばらく蹲った。

 痛みが引いてきた時、今どきどんなギャグ漫画でも見ないような下らないことをやってしまったと気づき、不本意ながらすこし笑ってしまった。


「間抜けだ…」


 普段やらないことをするからこうなる。

 俺は自分自身に言い聞かせ、タンスが目に留まったのでいつもと順番を入れ替え、朝食前に着替えることにした。


 やらないことは気をつけたほうがいいと学んだばかりなのに秒速で破っていたことに気づいたのは朝食を食べてからだった。


 制服に着替え…ていた。

 鞄を持ち家を出る。

 学校に行く方向にはあの一軒家もある。少し見ておこう。


 昨日、登校と下見で歩いた道。

 今まで歩き倒した道。今日はこの道が少し広く見える。

 いつもよりも俺の呼吸が深く長い気がする。

 変に落ち着いている。


 一軒家の前、外見を外から昨日と同じように確認する。

 視界が広く感じるからか、昨日よりも小さく見える。

 昨日は常に少し緊張していたせいだろう。

 落ち着いていく心のまま、昨日と同じように、しかし昨日よりも遠い位置から凝視した。


   やはり、少し空いている。


   微かだが、風も感じられる。


 再び心拍が上がりかけた俺を、そよ風が優しく撫ぜてくれた。

 玄関は、空いている。

 何かしらの理由で、空いている。


 たとえ夜でも、閉じることはないのだろう。


「考えるだけ無駄だろうなぁ」


 今はそう結論付け、高校へと足を向け直した。

 今日は風が吹いていた。

 学校につく頃には、緊張は完全に消えていた。

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━


「後輩にはもっとちゃんと勉強してほしいなぁ」


 昨日と同じ時間に、幸太と会話していた。

 彼の顔が懐かしく感じるのは、昨日一日が濃すぎたせいだろう。

 部活もやらない分、1日1日が薄かったと実感した。


「後輩以前に俺らは受験があるだろ〜」


 俺も半ば忘れていたが中学3年生、進路と受験がかかっている。

 まぁ安全圏の高校を志望しているため、そこまで危惧はしていない。


「明日誰かの家に忍び込もうと考えている人の発言とは思えないよ?」


「別に休みの日すべて勉強漬けな受験生なんて居ないだろ?…ん?」


 こいつ、今いつって言った?

 聞き間違いじゃなければ明日って言ったよな?


「明日?」


「え?何言ってんのさ、明日に決まってんじゃん!今日は金曜だよ。大丈夫?」


「ん、あ、そうだった、悪い」


 曜日感覚がかなり薄れていた。

 何かしら刺激があったほうがいいのかもしれない。

 近いうちに映画でも見に行こう。

 主導権を奪われたくないから幸太には言わない。


「なら明日俺の家に集合でいいか?」


「はいよ。例の家行く前に大乱闘でもするかね」


「お前強いだろ……」


 ミス部にも積極的な幸太だが、ゲームも得意なため有名なゲームである大乱闘やら格ゲーやらアクションには歯が立たない。

 俺はFPSやらサバイバルやらが好きなので、ゲームの趣味は微妙に合わない。


「まぁそういうことでよろしくな」


「本当になんでもないただの家だったらゲームでボコす&なんか奢ってもらうからな?」


「へいへい」


 ボコされないようにあの家に期待しながら、授業を受けて友人と話し掃除し、ゆっくりと帰路を辿った。

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━


「奇妙な一軒家」


 部活も終わり帰路を歩いているとき、そんな言葉が僕の口から零れた。


「ただの偶然、だといいんだけどな」


 僕は密かに危惧していた。

 彼の隣の家とあの家は繋がりがあるのではないかと。


「だって、あまりに…あまりにも…」


 そう喋りながら、自宅が少しずつ大きくなっていくのを見ている。



  そして、自宅の1つ前、つまり隣の一軒家を



     広い視界でしっかりと見る



「あまりにも、正反対だ。」


 その家は、人通りはなく、庭は雑草で溢れ、家の外側は苔や蔦で覆われている。

 僅かに見える家の塗装は青色。

 いかにも幽霊が居ますとでも言うような一軒家。


「……………」


 背筋を這う嫌な感覚を捨て去り、自宅に入った。

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

 インターフォンで目が覚める。

 今日は土曜日、AM10:02。

 俺は早起きは苦手だ。

 私服に着替え、いつもよりも少しだけ動きやすそうな服を着ている幸太を出迎えた。

 最初はいつものお決まりゲームの時間だ。


「家関係なくボコボコにされてるんだけど?」


 手加減してくれるかと思ったら、やはり一方的だった。

 これでも手加減とかなんとか。

 ぶっちゃけFPSとかアクションとかに手加減ってどうやって加減すればいいのか自分も分からないし、結果極端になるのは仕方のないことだ。


 ゲームとコントローラーを片付け、再準備と昼食を終えた後、我が家を出る。

 今回は携帯を持っている。

 下見をしていてよかった。

 10数秒歩き俺達2人は一軒家の敷地に入り、玄関の前に立っていた。

 思えばこの時点で不法侵入だ。

 そんな今更になって帰る理由を探し始める俺はつくづくビビリで心配症だ。


「僕なら絶対玄関開けっぱはしないと思うんだけどなぁ」


 幸太も同じことに気づき、不思議がっていた。

 仕方なく帰る口実を探す作業を中断し、玄関を見て応えた。


「換気かなんかじゃないの?」


「なんでわかるの?さては事前調査したの?研は用意周到だねぇ」


 日本語って細かいなぁ。

 少しのミスで簡単に気づかれた。

 苦し紛れに行動する。


「まぁ、入ってみるしかないね」


「珍しく研が行動的っ!」


 背中でツッコミを受け止め、俺はスライド式の玄関に手を当てた。

想定以上に長くなりました。

最後まで読んでくださりありがとうございました〜

家の中に入ったら幸太の視点もストーリーに

関わるように意識します。

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