下見②
敷地内に入り、右に曲がると花壇があった。
今日は無風のようだし、十分にこの家に意識を向けられるだろう。
正面から見た感じだと、この家は敷地の真ん中に家があるようだ。
「敷地を一周、細かく見て帰ろう」
思えば敷地のどこに家があるかすらも今更知った。
見ているようで見ていないものだ。
花壇を見てみる。
花の種類はよく知らないけど、よく手入れされているのがわかる。
雑草も生えていない。
「雰囲気が変わらないように見えたのは気のせいじゃないようだ」
言葉に発することで頭にメモをしたあと、俺の中ではやはり誰かが手入れをしているのを見ていないだけの普通の一軒家かもしれない、という気持ちが少し増した。
「む……」
嫌とは言っても多少は期待していたんだ。
思ったより普通で苛つくのも無理はない。
そう言い聞かせ、少し早足で探索を続けた。
20分経ち、敷地の周りを一通り探索し終えた。
結論から言うと、あまりに普通だった。
「やっぱりただの勘違いだったのかなぁ」
だが、人気の無さだけは勘違いでなさそうだ。
仮に持ち主がいたとして、この庭(庭というか趣味の広場だったが)は相当綺麗に手入れされている。
ずかずかと無許可に歩き回られて何も言わずに見ているはずがない。
「…とりあえず、帰って幸太に連絡しよう」
この家は人の通いがないだけで普通と。
人が居ないのに庭がキレイという矛盾は、学校に通っているときに誰かがやっているのだろう、と勝手に自己解決していた。
携帯を家に置いていなければ今すぐその旨の連絡をしていたのだが、こうなると少しもどかしい。
そしてすぐそこにある我が家に足を向け、歩きだそうとした、が、それが実行されることはなかった。
理由は、ただ風が吹いただけ。
しかし、その風は家に向かって流れていった。
今日は、風が吹いていたか?
「えっ…」
俺は自分が言った言葉すらも遠く聞こえる程、少し心拍が上がり体が少しだけ強ばっているのを感じながら、ゆっくり玄関の方を振り返った。
家の周りを探索していたときの1場面が勝手に映し出される。
家の反対側、カーテンの閉められた窓の上の換気扇。
その換気扇は、回っていたのだ。自宅のトイレの換気扇も常に付けたままだし、その時は気にも留めなかった。
あの時は。
空気の道が出来ると、風が流れる。
そのことを無意識に思い出しながらスライド式の玄関を凝視した。
玄関は、僅かに開いていた。
風は、そこに向かって吹いていた。
止まった思考の間を、冷たい風が通り抜けていく。
思わず放心していた直後、反射的に俺は家の方向へダッシュしていた。
走れば歩いたときよりも更に早く着くはずの我が家が、今は学校への通学路よりも長く遠いものに感じた。
家に帰り夕飯を食べた後、自室で一人考えをまとめていた。
今思えば、一軒家なんだ。
誰かが居て玄関を開けていてもおかしくはないのだ。
防犯的にはどうかと思うが…しかし、あそこは確かに人の気配がない。
考えれば考えるほど疑問しか湧かない。
「ひとまず、こんな調子じゃ幸太がいないともっと掘り下げることなんて無理だろうな…」
中に入ってすらいないのにあそこまで焦ったんだ。
今日の学校で行った選択は断然正解だ。
ここから先の考察は、休みの日に幸太と一緒に考えよう。
そう決めた後、幸太に連絡をするのを忘れていたが、疲労と今日の下見であの一軒家に見た目によらず不気味な気配を感じたため、携帯を持つことは無かった。
そして、窓からあの一軒家が映る自室のカーテンを閉じ、眠りについた。
伏線をかなり意識。ちょっと不自然かも?
空気の道についてはうろ覚えで書きました。
理科的に変なら教えてください〜。
今までどおり不自然な点やミス等どんどん
教えてください♪
追記:改稿によりかなり変わってます。
ストーリーに支障は無いですけど
話に入り込みやすいようにするために
増やしました。よろしくです〜