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隣の一軒家はやけに静か  作者: クマ
一軒家:2階
16/16

別再行動:研③ 電源

 ドアノブを握り続けすぎて手汗が溢れて来た頃に、ようやく部屋の中へ入る。

 気になることはいくつかあるが、考えても仕方がないことに思えた。



 何を見ればいいのかわからないが、とりあえず中央のモニタスペースへ向かい、操作画面を見る。


「あ」


 ここでようやく気づく、我ながら今更すぎる。

 操作に必要とするものはキーボードとマウス、つまりパソコンだった。


 ただのパソコンなら、家にある。

 何ということはないはず、ただのパソコンなら。


 この家に入ってから大分不信になったなと実感しながら、埃の被っ……ていないキーボードとマウスを操作し、開かれているものを片付けデスクトップを表示させる。


 ソフトウェアのバージョン……相応に古いようだ。

  アップデートのご案内が丁寧に画面右下に現れるが、触れるべきでないように思える。


 ゴミ箱を開くとおびただしい量のデータが破棄されていた。自動削除はされていないのか?

 ファイルデータの日付からどれくらい前か確認しようとしたが、右下に映る現在時刻が既にデタラメだったことから諦めた、おまけに時刻は進まずずっと止まっている。

 自動削除がされないのは時刻が止まってる影響なのか?表記が狂っているのではなく、コンピュータ内が狂っているのか、狂わせたのか。

 中身を確認しようとしたが、明らかに成人向けのデータだろうタイトルが上から3番目に表示されている。

 半ば反射的に完全消去する、後悔はしていない、いや他のデータの中身のこと。


 ネット検索ソフト……無し、時刻もめちゃくちゃだし、ネットからは切り離されているのかもしれない。

 アプデ通知は……よく分からないけど、そもそもこうなる前から更新していなかったのかも、くらいしか浮かばない。




 10分程かけてデスクトップの8割以上を埋め尽くすアプリを一通り確認したが、3割は1階の書斎のような資料物、6割が破棄案、失敗案だった。

 ゴミ箱に送っていた物もあるみたいだが、段々と送る余裕がなくなってやっつけ気味にデスクトップに配置していったのが察せられる、配列もメチャクチャだ。

 残る1割は現在稼働中のシステムの監視、操作、停止を管理しているものだった。

 このアプリは、部屋に入ったときに既に表示されていた為、最小化していたが、もしあの時ここで終了していたら仕掛けがどんな挙動を取っていたか想像もつかない。


 制御可能システムの中に玄関の項目は存在した、電気も通っている。

 だが、いくらON.OFFを切り替えても何も起こらない、応答を見せない。

 思い出す。

 恐らく制御端末が玄関前から消失しているせいなのだろう、玄関に通ってる電気は制御端末の副電源の役割をしていると見る。


「……仕方ない」


 玄関のアンロックは一旦諦め、他のシステム制御一覧を開き、ご丁寧に用意されていた部屋の間取りに合わせたソート機能を利用する。


 見覚えのある部屋の間取りに、数えて8個の○に、一回り大きな○が1つ現れる。


 1階のリビングのあの位置、最初に引いたレバー。

 別行動でトイレにも1つ○。


 疑いようもなく、この○は仕掛けのある場所だった。

 そしてこれを見ると、幸太が入った部屋にも仕掛けがあったらしい。

 報告してくれよ、と思ったけど俺も報告していなかった。

 今後、報連相はこまめにやろうと決意しつつ2階の仕掛けを見る。


 綺麗に四角く4等分された2階の4部屋はそれぞれ1部屋ごとに仕掛けが存在していた。


 あるものは部屋の隅に。

 あるものは部屋の壁に。

 あるもの……この部屋は此処に。

 あるものは━━━━


 そしてこの4つの部屋の仕掛けの4点を通る、大きな○が1つ。


 恐らく2階の仕掛けに同期している?と思われるがしたからなんだ?という印象。



 更にパソコンを操作しここを知っていこうと思ったが、1つ気づく。


 稼働済みの仕掛けの丸がゆっくり点滅している。

 仕掛け本体のON、OFFとパソコンから出力するON、OFFの権限が同じことが伝わるボタンもある。


 1つ試しにトイレの仕掛けをOFFにする。

 カチッという音が、俺の左側と後ろから鳴る。

 自分でやったのに肩がビクッと跳ね上がったのは知らなくていい情報だ。

 この部屋とガラクタ部屋の鍵が閉まったらしい。

 急いでONに戻し、鍵を開ける。

 どこの仕掛けがどこの何に関わっているのか分からない。


 そして、窓がなく、扉の隙間が殆ど無く酸素濃度が危険になる可能性がある部屋が存在する。

 それがガラクタ部屋だけならいいが、ないとも言い切れないし、このON、OFFが常に稼働するとも限らない。


 つまり、自分のクリック1つで幸太の部屋の鍵が閉まり、最悪開かなくなるリスクがあるということ。


 そこまで思考が行き着く頃には、手に持っているものはマウスではなく携帯になっていた。


 パソコンをそのままで放置し、携帯を起動する。


 部屋を出てから、幸太に1つ短いメッセージを送る。






 【そっちに行く。】






 送信完了のメッセージが出るより早く、携帯をポケットに突っ込む。

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