別再行動:幸太②
爪先がまだちょっとひりひりするけど、僕が僕に割り振った最後の部屋に向かう。
現在の時刻は14時28分、研はもう次の部屋に行ったのだろうか。
2階が終わったらまたリビング横の書斎へリベンジすると決意していると目的地の扉の前に着いた。
「開けよっかぁ……」
そんな謎に気の抜けたつぶやきをしつつ、扉を開けた。
部屋の様子は、一言で言うなら女子の私室のような普通な風景だった。
けど、今までどの部屋もぶっちゃけて言うなら白壁の殺風景に無地な置物だったから、この彩られた風景は良く言えば異世界のように、悪く言えば異物に見えた。
配色は青を基調に黄色や緑など明るい色を使われていて、男の子なんて無縁な部屋なイメージを受けた。
「どっかの女の子の部屋だったらやばいよな……」
まぁそうだったら謝ろうと軽い結論をつけ、扉を閉めて中の探索を始める。
かる〜〜〜く部屋を探索した感想としては、彩色は鮮やかだが部屋の目立った置物は特になかったりなど女子の部屋(仮)にしては男子の部屋と何ら変わらないというか、別にあまり躊躇う必要なかったなと安心した、期待はしてなかったと思う、多分。
ということで机の中やクローゼットも探していくことにしよう。
「何か見つけても気にしないことにしよう、探索が基本キホン……」
我ながら洗脳呪文みたいなことを唱えてるなと思いつつ、引き出しを開け、さらに細かく探索を始めた……。
「………………」
思い出せない。
思考が回らない。
集中力が機能しない。
人の集中限界は45分と聞く、今はとうに45分を過ぎているし、もともとそこまで持続して集中させてはいない。
原因はわからない。
記憶を辿ろうと必死に思い出そうとしてもこの部屋に入り、軽く探索してから引き出しなどを開けて探索を広めたあたりで脳内の映像がぼやけていく。
いつしか無気力に横向きで倒れていた身体を立ち上がらせる力もなく、頭を青と緑色のクローゼットへ向ける。
クローゼットは開いている。視界もクリアではなくぼやけ始めてきたが、開いていることは最低限理解できる。
「ぁの………………」
あのクローゼットを開けて、何があったんだ。
言葉にして下がる瞼に抵抗しようとしたが、無駄だった。
そんな思考が最後に弾け、幸太の意識は深く落ちていった。