別再行動:研①
暗く、肌寒い。
俺の苦手な感覚をすべてコンプリートされているこの状況、別行動は非常に心細い。
「なんのために幸太呼んだんだよ…」
自分が引き起こしたことを他人のせいにしようとする悪い癖を感じながら、あながち間違って無いのかもしれないとも思う。
確か呼んだ理由って俺がチキンだからだし。
(思ったよりもアクティブなんだな幸太…)
中学に進学して以来、外で遊ぶ機会なんて殆ど無かった。
回想に想いを馳せる前に、微妙に開けたままだったドアを再び押し、部屋に入った。
1階は、違和感はあるが生活感のある部屋がほとんどだった。
まぁ僕が調べたのはトイレで、幸太が入った部屋が何なのかは知らないが。
…2階は、生活に必要なものは、少なくともこの部屋には見当たらなかった。
この部屋、玄関から見るなら2階の右下に位置する場所。
ここの壁は鉄だろうか?
その類の金属で出来ていた。
冷たい空気が漂う。
特有の閉鎖感覚と不穏な雰囲気に襲われる。
証明の暗さが更に不安を加速させる。
焦燥感で視界が狭まる前に、深呼吸をする。
落ち着け…
もう何度目か忘れたが再び頭に言い聞かす。
極めて不自然なわけでは、ない。
1分ほど費やし落ち着きを取り戻す。
足はまだ動かないが、もとの広さを取り戻した視界で部屋を見渡す。
重く冷たい空気流れるこの部屋には、ガラクタ、ガラクタ、鉄くず、がらくた、がらくた、我楽多、……
使えそうもない機械の部品や、そもそもこれは機械だったのかと疑問を抱くようなものが転がっていた。
この部屋に、なんの意味があるのだろう。
考えを集中したくてドアに触れていた手を離す。
瞬間、反射的に再びドアをつかむ。
冷静さを取り戻していて正解だった。
2階。
この一軒家の2階。
廊下に囲まれた部屋が4つの、2階。
廊下に窓は無い。
つまり4部屋にも窓なんかない、1つも。
…その状況で、隙間の殆ど見えないこのドアを締めたら…どうなる。
焦りから回る思考のせいで頭痛がする。
ズギンズギンと波のように響く。
響くたびに、回る思考が少しずつゆっくりになっていく。
最後に再び深呼吸をし、再び掴んでいるドアに加えている握力が無意識に強まる。
「…あ」
一番最初に入手した、ポケットに突っ込んだものを取り出す。
事の始まりといえばそうかもしれない。
タオル。
「玄関と同じ使い方をすることになるなんてな…」
鍵はかからない仕様。
でも挟んだほうが空気が回りやすいから、硬めに丸めて挟み込む。
この家…想像以上に危険かもしれない。
おそらく建てられた当初は普通の一軒家だったのだろう。
どっかの誰かが好き勝手にリフォームしてくれやがった…と考えるのが自然だろう。
安全性に欠ける…。
安心の息を吐き、ほぼダメ元で探索を始める。
だって金属製の壁だよ?
普通あるん?
…誰に向かって話しかけているんだろう。
気を取り直し、ひとまずガラクタに手を伸ばそうとした。
ごりゅっとした感触が、右足を襲う。
「……!」
釘を踏んだかのような激痛に襲われ、右足を跳ね上げる
足元に四角い部品が落ちていた、見慣れない物体…興味がないわけじゃないが今はそれどころじゃない。
部品の角をかかとで踏んだ。
出血も何もしていないが、痛みが引くまで右手で押さえる。
いつもより少し早い鼓動を感じる。
少し血の抜けたような冷えた感触が時折流れるが、大半は痛覚で感じない。
痛みに慣れてなくて少々涙がでた。
これで中3である自分が情けなく思いながら、足元に注意しつつ、探索を再開した。
と、思ったけど。
幸太の部屋は、普通の部屋なのだろうか。
ひとまず、パッと見の様子を連絡しておこう。
【1つ目の部屋】
金属の壁で覆われてた。
部屋の中には謎の部品やらなんやらが
転がってる…ちょっと不気味。
そうそう、平気そうならいいけど、
空気の通り道は確保しとけよ。
仕掛けは今から探すつもり。
動いちゃった今はもう分からないけど
リビングのレバーで何が動いていたんだろうね。
「送信」
さて、探索を再開しよう。