GAME START!
「ただいま〜!」
玄関のドアを開かれ、ひとりの子供が入ってくる。
歳は10代前半、背丈は150cmぐらい、髪は夏の空のように青く、顔は童顔で可憐。ジャージ姿にカバンを提げた、恐らくは部活帰りであろうその少女?少年?はそそくさと靴を脱ぎ家へ上がる。
「真琴、おかえり〜」
「ただいまお父さん!」
奥の部屋から聞こえる父の声に元気よく答え、真琴と呼ばれたこの少年はすぐに脱衣所へ向かう。
部活に行く前に用意して置いた着替えを確認し、あっという間にジャージ、体操服、下着を脱ぎ、洗濯機へ放り込む。
ガラァッ
シャワーを浴びて、頭を洗い次に身体を洗う。そしてまたシャワーを浴び終えたら…
ガラァッ
手早く体をタオルで拭いてすぐに着替え、そしてまたカバンを持ち脱衣所を出て階段を上る。
そして……
ガチャッ
自分の部屋に戻ってきた、
「さ〜て、ダウンロードの具合はっと……」
〈〈〈『96%』Now Downloading…… 〉〉〉
「えぇ!? 3時間かかってもまだ完了してないの……?」
陸上部の練習が8時から11時まで、実にダウンロード開始から3時間以上が経過したが、映し出されるPCの画面には未だ96%と表示されている。
(VRWゲームだから容量が大きいのは仕方ないけど流石に大容量過ぎないっすか?)
今は2030年、3年前の2027年に開発された【VRW】システムは従来の常識を一変させた。
プログラム上で再現されたもう一つの世界。
希少だったことや設備費用の高さなどから出た当初は全然普及していなかったが、あれから3年経った今はボチボチと普及し始め、ゲームも製作されて数多くの有名タイトルがある。
そして今ダウンロードしているのはそんなVRWゲーの中でもFPS系オープンワールドMMORPGゲーム、タイトルは「END・AFTRE・ONLINE」
……主に銃器などの武器が使えるVRWゲームの中で最高の人気を誇る超有名タイトルだ。
このゲームが発表されたのはVRW開発が完了した年と同じく3年前、曰くこのゲームを開発した会社はVRWシステムの開発グループの主軸、大手企業の一つだったらしく、開発と同時進行でこのゲームの開発も進めていたらしい。
VRWゴーグル「World Diverd」VRWを扱うときには必要不可欠なこの機器、3年前は本当に酷い値段だった、今だって大人も懐を気にする程に高い値段なのだが僕が今まで生きてきた人生、家のお手伝いや、お正月に貰い貯めに貯めてきたお小遣いをありったけ全てを使い切り、僕はこれを購入することに成功した。
(……後悔などしていない、うん。)
そして兄の趣味の産物、ハイエンドPCを高度な交渉戦術にて入手し、今に至る。
時は2030年 3月23日 土曜日、中学一年生と二年生の狭間、春休み最初の日、
つまりはプレイする準備は万端、まあ残念ながら陸上部の練習があって朝からずっとは出来ないのだが練習時間が他の部より短いのは不幸中の幸いだろう。
2056年、第三次世界大戦が勃発。
徐々に激化し、全面核戦争となってしまったこの戦争により滅びかけた人類。
とても地上では生活できなくなってしまった地球。
富を持つ者は宇宙へと、そうでない者は地下へと生活圏を移し、長い時が経った。
そして2089年、約30年振りに地上へ出てきた人類を待っていたのは、過酷な世界に適応し進化を遂げた獣や昆虫〈エネミー〉やより多くの栄養を得る為に意思を持った植物〈イビルプラント〉大戦時の生き残り、戦闘AI〈ルールファクション〉などが跋扈する混沌と化した世界だった。
人類が地上奪還を誓って11年、人体強化や技術の復元などの開発を続け、ようやく創り上げた第二の人類最初の都市「アステッドシティ」を拠点とし、人類一丸となって協力し、世界を再び開拓する。
というのがストーリーの大筋という事になっている。
ちなみに、もちろん安全地帯外ならPK可能で、さっそく人類協力ムードをぶち壊す素晴らしい仕様となっているが、まあこれはFPSゲーとして仕方のないことだろう。
そして、このゲームがFPS系VRWゲーム最高人気な理由の最たる要因でもある特別なシステムがある。
……そう、その名も【ユニーク・ギア】ッ!!
自分のプレイスタイルやゲーム内の行動により自分に合った自分だけの装備が創造されるというロマン溢れるシステムだ。
入手条件は不明、サービス開始から1年経った今もユニーク・ギア所持者は総プレイ人口の0.001%にも満たないらしいが、元々ゲームクオリティが十分過ぎる程に高いのと、やはり【自分専用】の魔力は巨大で、こうして今日もまた一人の人間が「エンド・アフター・オンライン」……略して、「EAO」の世界へ誘われるのだ。
〈〈〈『99%』Now Downloading…… 〉〉〉
いつの間にか時は過ぎ、もうダウンロードは画面99%を表示している。
「――おっとッ!開始準備だ!」
急いでワールドダイバーを頭に被りパソコン前のベットに横たわる。
「ステンバーイ……ステンバーイ……」
攻略サイトや公式サイトからすでにゲームの情報は予習済み、序盤のコツやオススメ装備、おいしいクエストまで全て覚えている。
〈〈〈『100%』Download complete!〉〉〉
「GO!!」
■◇■◇■◇■◇■◇■◇■◇■◇■◇■◇■◇■◇■◇■◇■
一瞬視界が暗くなり、気付けば青みがかった空間に居た。
「おぉ〜、コレがVRWかぁ……」
人生初めてのワールドダイブに真琴は一人感慨に浸る。
ピコンッ
「おっ?」
目の前の空間にメッセージウィンドウが表示される。
〈〈〈END・AFTRE・ONLIENへようこそ!〉〉〉
〈〈〈貴方にはまず最初に貴方が操作するアバターを作成して頂きます。〉〉〉
〈〈〈一度作成したアバター内容は変更不可能なので慎重に作成して下さい。〉〉〉
(キャラクリエイトか、懐かしいなぁ…何年振りだろう……?)
久方ぶりのキャラ作成、そう言えば最近はずっと新しいゲームに手を出してなかったな。
一番最初に始めたオンラインゲームは確か3歳の頃、「Robotics battle online」だったかな……
他にやってたのは……忘れた。
(そう言えばまだやってるオンラインゲームはロバオンしかやってなかったなー)
もう結構の数のオンラインゲームが終わってしまい、衰退を続けていたPCゲーム業界だったが、そんな時にVRWが開発され、そこからまた繁栄し始めてきた。
理由は、VRWゴーグルは高くて買えないが、VRWを通してゲームに興味を持った人が多数いたこと、そして後に安くなり始めるであろうVRWゴーグルを後回しにし、PCが無くなる前に良さげなPCを買っておくという状況が大量に発生し、どうせ買ったんだし無料なんだったらオンラインゲームやろ、という流れでPCオンラインゲーム全体のプレイ人口が増えたからだ。
「よーし、やるぞ〜!」
僕はこういうキャラ作成には時間をかけるタイプ、しかも初のVRWゲーだ、これは気合い入れないと……
「ん?」
表示されているキャラ作成項目に珍しい選択肢がある。
〈一からアバターを作る〉
〈ランダムでアバターを作る〉
〈自分の姿からアバターを作る〉
「自分の姿から…アバターを作る……?」
最近のゲームはそんなことも出来るのか……
試しにその項目を押してみる。
ピコンッ…ブワァンッ
「おぉ〜!」
僕がその項目を押した直後、前方に鏡で見る自分の姿をした3Dアバターが現れた。
「スゲェー……」
自分の3Dアバターの周りを一周し、普段見れない自分の立体図を観察する。
(へぇ〜、僕って周りの人からこう見えてるわけかー……確かに女と間違えられても仕方ないかもしれない。)
顔は母似、体格は女子っぽくて声まで高め、生まれつきだから仕方ないが、やっぱり僕は男なのだからカワイイよりカッコイイがいい。
「…って今悩んでもしょうがないか……」
意識を切り替え、今はゲームに集中する。
(このままアバターを作るとか「特定して下さい」って言ってるようなもんだからなぁ〜、でも一から作るとなると時間かかるしな………あっ…これをベースにカスタマイズすればいいじゃん!)
我ながらいい閃きだ、
「よし、"これで行こう"!」
〈〈〈この見た目でよろしいでしょうか?〉〉〉
〔はい〕〔いいえ〕(*一度決定したら二度と変更できません)
――勝手にメッセージウィンドウが進む
「"はい"?」
もちろん僕は何も操作をしていない、じゃあ何故こいつは動いている?
ピコンッ
メッセージウィンドウが消える。
「へ?」
〈〈〈アバター作成が完了されました、あなたが操作するプレイヤー名を入力して下さい。(10文字以内)〉〉〉
〔「プレイヤー名を入力して下さい。」〕(*一度決定すると二度と変更できません)
「ハっ?」
(何が起きた? 「アバター作成が完了されました」ってそれってつまりどういう事だ!?)
キャンセルボタンは無い。
「え? えぇッ!? まさかもうこれ変更不可能な感じですかァッッ!?!???!」
――沈黙。
よくよくメッセージウィンドウを観てみると、枠の右端に小さく、マイクの表示が出ていた。
「あっ(察し)」
手を伸ばし、そのアイコンへ触れる。
ピコンッ
マイクの表示の上にバツ印が現れる。
「……………」
あー、なるほど、さっきのはつまり僕の声に反応してメッセージウィンドウが進んでいたと、フーン。
「こッんのクソッタレがぁぁァァァアアアッッッッッーーーーーーーーーーー!!!!!」
絶叫! だがそれも致し方無し、こんな罠に嵌められたような成り行きでアバター作成を終えたら誰でも叫びたくはなる。
(――いや! キャンセルボタンが無くてもさっきみたいなボイスコントロールだったらッ!!)
再度あのマイクアイコンを押して試してみる。
「アバター作成キャンセルッ! 戻れッ! あいるびーばっくッッ!!」
その他思いつくもの片っ端から試してみたが、表示される画面は一向に変わらない。
(無理だ………)
諦めよう。
アカウントを作り直すにしてもお金も時間もかかるし、こんな形で待ちに待ったゲームをお預けされるなんて到底堪えられない。
(……まあ、マナーを守ってプレイするとか有名にならなければ特定ってされないよね?)
幸いゲーム内には髪の毛の色を変えるシステムもあるらしいし、きっと大丈夫だよね!……たぶん。
無理やり心を納得させ、僕はプレイヤー名に取り掛かる。
(プレイヤー名か……)
悩む、ゲームのキャラの名前と言ったら自分の名前から取るっていうのが定石だが、僕の名前、伊織 真琴で思いつく良い名前が何一つとしてない。
まあそれは僕のセンスがないのが原因なのだろうが……
「うーん…」
悩む、大いに悩む、僕もプレイヤー名だけに1時間以上かけた事もあるし、ハマると本当に底なしの沼だ。
「ん?」
ふと、メッセージウィンドウ奥の、僕の3Dアバターに目がいく。
青髪のどっからどう見ても少年の男の子だ、ウン。
「にしても青か、青…ブルー……ルー……ルー!!」
『ルー』、なんかビビッときた、まあどうせプレイヤー名なんて人それぞれなんだし適当でいいか!
〈〈〈アバター作成が完了しました、あなたが操作するプレイヤー名を入力して下さい。〉〉〉
〔「Ruox」〕(*一度目決定すると二度と変更できません)
「よしっ!」
決定ボタンを押す。
……そして
〈〈〈プレイヤー名の入力が終了しました。それではEAOの世界をお楽しみ下さい。〉〉〉
僕の視界が再び暗転した。
■◇■◇■◇■◇■◇■◇■◇■◇■◇■◇■◇■◇■◇■◇■
………うおっまぶしっ!
少しの時間が経ち、僕が立っていたのは明るく、白くて広い部屋の中、的があるということはここは射撃場だろうか?
「こんにちは、新人探索者さん。」
「あっはいこんにちは!」
後ろから声が掛けられ、真琴は慌てて振り向きそれに答える。
「私は、あなた達「新人探索者の基本的指導をしています人型AI「エルルカ」です。」
僕の後ろにいたのは、銀髪で、スタイルも良く顔も美しい女性、を模したアンドロイドだった。
「これより、あなたにはサーチャーの基本、それぞれの武器の扱い方やこの世界での常識、より強くなる方法をご教授させて頂きます。」
どこかのSF映画の宇宙船の中に出てきそうな服装をした彼女が言葉を続ける。
「…それでは、さっそく武器の扱い方から実践していきましょう。」
「えっ、はい!」
(いきなりだな、いや、でもチュートリアルってどのゲームもこんな感じだったかな?)
「まず、武器には大きく分けて二種類の分類がされています。〔エネルギー武器か実体武器〕かです。」
「エネルギー武器はその名の通りエネルギーを消費し使用する武器を指します。特徴としては実体武器より軽量、低弾速、弾数が多いことです。」
「実体武器は、そのままの意味で実体を持っている物で攻撃をする武器を指します。特徴としてはエネルギー武器より重く、高弾速、装填数が少ないことです。」
エルルカさんの背後にあるえげつない量の武器棚から一つ彼女が手渡してくる。
「これは〔ハンドガン〕アサルトライフルやセミオートライフルなどには多くの場合射程や火力面などで劣りますが、携行性やコストの面では最良の武器です、運用する時は、ライフルなどの主力兵装が弾切れ、または使用不可能になった時などに副兵装として使うのがよろしいでしょう。」
「ではさっそく、的に撃ってみましょう。」
「お、おう」
すっごく丁寧な説明だったな、しかし長いッ!
渡されたハンドガンを的に構える。距離は50mぐらい。
バンッ!バンバンッ!
乾いた音を鳴らし銃口から弾が放たれる。現実よりも相当小さくはなっているのだろうが、それでもうるさい銃声だ。
そして狙いは……
「なかなかの腕前ですね、称賛します。」
ど真ん中の少し右に一発、その左下に一発、そしてまたその左に一発。
(Wow〜これはけっこう補正入ってるなー……)
ま、そこらへんの一般人が現実で銃を撃ってまともに目標に当てられるかなんてそんなの無理な話だし補正かけないとゲームになんないからね、仕方ないね。
「では、次はエネルギー武器の方のハンドガンをどうぞ」
そう言ってまた武器が手渡される。……いかにもSFチックな拳銃だ。
「よしと、」
ピチュンッ!ピチュンピチュンッ!
軽い音だ、反動もなく銃声も小さい。
放たれた紅い弾光は、まあ視認できるぐらいのスピードで的に向かう。
「こちら側もいい腕をしていますね、素晴らしいです。」
弾はほとんど真ん中周辺を焼き焦がす。
またエルルカさんが褒めてくれる、ただ無表情なんだよなぁ
「では次の武器をーー」
あれからいくつかの武器を実弾、エネルギーの順で撃たされ、そろそろ飽きてきた。
「では、次はこちらの武器をお使い下さい。」
そう言って次に渡されたのはスナイパーライフルだった。
(SRか……アレを思い出すな、)
僕が産まれて初めてプレイし、今はサービスを終了してしまったFlashゲーム、「マテライズ スナイパー」を、
2歳、兄がパソコンでやっていたゲームに興味を持ったのが最初だっただろうか?
基本、目標を狙って撃つだけという単純明快なそのシステムは2歳だった僕でも理解に苦しくなく、とても楽しくプレイ出来た。
きっと、僕のシューティングゲー好きもそこから始まったんだと思う。
(もう10年以上前か……)
ふと昔を思い出しながら手の中のライフルを構える。
バァァンッ!!
一際大きな銃声をあげ、先程よりも遠くに設置された的を貫く
……そのど真ん中を。
「中心……あなた本当に新人なんですか?」
そら10年以上ゲームで銃撃ってきたらそれなりには上手くなるでしょうね、今は風もないし基本照準に合わせて撃つだけだし…………それにしても
(なんかこの人不機嫌じゃないですかぁッ!?)
さっきからエルルカさんは不機嫌そうな表情だ、初対面よりも明らかにヒドくなっている。
(この人NPCだよね?逆にプレイヤーだったりするの?)
「あ、あのー、スミマセンがお聞きしたいことが……」
「はい、なんでしょうか? お答えできる範囲で回答します。」
やはりムスッとした顔でエルルカさんが答える。
「あなた、プレイヤーでは無いですよね?」
「――ッ ……いいえ、違いますが?」
ん?
「あっはいすいませんでした、」
僕はそう言うと手に持ったスナイパーライフルを彼女に向けた。
「―うひゃ!? あ、なな一体何をッ!!?」
仏頂面を崩し彼女は手を前に構えて目に見えて動揺する。
「あなた、中の人居ますよね?」
一応試しにだったが、反応を見ればすぐ分かる、明らかに先程のイメージとは違うキャラだ、これでもし本当にNPCだったら僕がギャップで萌えで燃え尽きます。
「…え、ハ…ハイ……」
シュンと肩を落とし、彼女は答える。
「私は運営の者です……今は訳あってここでこんな事をしています……」
「……なんで?」
「えっ、そっそれは……」
エルルカさんの目が泳ぐ。
「課長が…新規プレイヤーにアンケートをするついでにチュートリアルをする様子を間近で確かめて来いって……」
「えぇ……」
予想してたのより相当生々しい答えが帰ってきたんだけど、どう反応すればいいのこれ?
「………………」
「………………」
なんとも言えぬ空気、互いに口を開くことは無い。
(嵌められたみたいにアバター決められて、チュートリアルでこんな気分になるって、このゲーム本当に最高人気か……?)
「あっ!」
唐突に目の前の彼女が何かに気付いた様な声を上げる。
「そそういえば、アンケートに答えてくれたプレイヤーの方には豪華賞品があるんですよ!」
「へぇ〜」
「という訳で、アンケート…答えてくれます?」
「……はい。」
―◆□◆□◆―〔数分後〕―◆□◆□◆―
「こ、これで質問は終わりです! ご協力ありがとうございました!」
(意外と普通なアンケートだったな……)
質問の内容は、何故このゲームをプレイしようと思ったのかとかVRWを使うのは初めてかとか、今の現状でワクワクしているかとかそんな感じだった。……そして肝心なのは
「で、豪華賞品とは?」
「はい! 初心者応援セットです!」
「…………」(ショボそう。)
「あっ! 今ショボそうって思いましたね!」
僕の残念そうな顔に彼女が言う。
「実際にプレイしている私が言いますけど、序盤に活躍する嬉しいアイテムが沢山入ってるんですよ? そんな顔しないで下さい!」
さっきの仏頂面キャラとはまるで変わった彼女が盛んに話す。
実際、プレゼントボックスに贈られてきた『ビギナー応援パックSP』を見てみると、確かに攻略サイトでも紹介されていた安全地帯外のログアウトを安心してできる様にする『簡易型テント』や、火力が高く、中堅やランカーも使うアイテム『アーク・グレネード』が入っていたりと、中々豊富な品揃えとなっている。
「まぁ、確かに嬉しいものではありますけど……」
もうちょっと特別なものが欲しかったな、例えばEXPの獲得率上昇アイテムとか、強い銃とか……
「これがあるか無いかで戦術の幅が大きく広がるんですよ? ありがたみはそれが必要になった時によく分かるものです!」
どうせ短いアンケートだったしな、とりあえず得をしたと考えよう。
「そういえば、チュートリアルってまだ続いてますか?」
「え、はい続いてますが?」
「いや〜、武器の実射以外はネットで予習出来たので、できればそれ以外はカットして欲しいな〜って……」
「あ、そうですか、私も楽ですし良いですよ?」
色々な武器を使っておくのは良い、いつか使う時の参考になったり、相手が使ってきた時の戦術考察に役立つ。
こうして、チュートリアル、色々な武器の扱いが再開する。
「じゃあ次の武器はフォトンブレードです!」
「フォトンブレード?」
そう言って彼女が差し出してきたのは銀色のバトンみたいな見た目のモノだった。
「はい! 携行性に優れ、『超至近距離で』ではありますが相手に即死級の火力を叩き込めるロマン武器です。」
「ロマン武器って……」
それを受け取り、スイッチを押してみる。
ブゥイィンッ
「おわっ!」
僕の顔面を掠めそうな位置に青白く光り輝くエネルギーの刃が現れる。
「危なかったですね〜、スイッチを入れたらブレードが自分に当たって死ぬという事例がしばしばあるので気を付けて下さいね?」
「言うの遅く無いですかッ!?」
「てへぺろっ☆」
ブゥィンッ
「ヒッ! スミマセンデシタッ! 以後気をつけますッ!」
そんな事もありフォトンブレード…光剣の実践に入る。
今回は的ではなく人型のマネキンが目標みたいだ。
前方のマネキンへと駆ける、重さと空気抵抗が随分と違うがやはりバトンみたいな形状、陸上部の僕は持ち慣れている。
10数メートルぐらいを一瞬で駆け抜け、
ブゥィインッ、ブゥィンッ、ブゥイィンッ!
一体二体、続いて三体とマネキン達を斬り捨てる。
「わぁ速い! あなたリアルは運動部ですか?」
この世界で全力で走ったのは初めてかだったが……凄い、明らかに身体能力がリアルより高い! 癖になりそうなスピードだ……!!
「はいっ! そうですね、僕は陸上部ですよ♪」
上機嫌に答える。
「えっ……そうですか…」
やっちまった、みたいな顔をして彼女が返答する。
(あ、リアルの情報……)
現実の会話のノリで言ってしまった、以後気をつけよう……
次はグレネードランチャー、その次はロケットランチャー、そのまた次は普通にグレネードを投げたりとか何とかして………
「はいっ! 武器のチュートリアルは終了です!」
武器のチュートリアルが終了した。
「いや〜しかし凄いですねー!武器の評価はどれもA以上、全ての武器に適正ありますよッ!」
「それは…ありがとうございます、」
「いや〜やっぱり才能なんですかね〜? 私なんてもう3年やってるのに全然弾が当たらなくて……」
「……まずは当たる距離から練習していって、どんどん距離を離していくように練習すればいいんじゃ無いですか?」
「なるほど! さすが射撃が上手い人が言うことは説得力が違うなぁ!、これからは武器の練習をするようにします!」
(――まず練習自体してなかったのかよッ!!)
最初のクール系お姉さんアンドロイドキャラが跡形もないよッ!!
ともかくこれでやっとチュートリアルが終わる、 ………そういえば。
「そういえば、なんでアンケートとかやってたんですか? 別に売上に悩むほど人気がないタイトルじゃないでしょうに……」
「あー、それなんですが、」
彼女が少し困ったような顔をする。
「最近新規プレイヤーが少ないんですよ、なんか、今からやっても前からやってるプレイヤーの方々に追いつけないって……」
「実際追いつけないんですか?」
「いいえそんな事は無いです! 努力は必要ですが、腕と頑張り次第では追いつくどころか追越せます!」
なるほどな、やる気が出てきた。
「それでは改めてチュートリアルは終了です! これから頑張ってください、ルーさん!」
「あ、どうもありがとう御座いました、僕も貴女と話すの楽しかったですよ。」
僕の身体がライトエフェクトに包まれる。
「エルルカさんも武器の練習、頑張って下さいね〜!」
「はーい!」
その会話を最後に、また僕の視界は暗黒へと飲まれていった。
(さてと、やっと本編が始まる、これから僕のEAO生活が始まるのか……!!)
僕の期待が有頂天になる。
「俺の戦いはここからだッ!!」
溢れんばかりの期待と興奮、穢れを知らなかった頃のような目の輝きを放ち、真琴……ルーの視界は光に染まった。
どうも! 筆者の音狐 水希です!
この「エンド・アフター・オンライン」略して「エンアフ」または「EAO」は楽しんで頂けたでしょうか?
この物語は、私が今書いている「男の娘なんて言わせない!」の外伝です!
これ単体でも十分に楽しめるように書く予定ですが「男の娘なんて言わせない!」略して「おこいわ!」を見ていると気付くこともあります。気が向いたらどうか読んでいって下さい。
とりあえずこれから頑張っていきますのでよろしければ応援お願いします!
えっ?面白くなかった?
ちょ、ちょっと待って下さい!明日まで!(一週間後ぐらい)明日まで(一週間後ぐらい)お待ち下さい!これから面白くなるので本当に待って下さい!!お願いします! なんでもしますからッ!!
???「ん?今なんでもって?」
???「歪みねぇな?」
うわなんだお前らヤメ..ア"ァ"ーーーーーー♂
「男の娘なんて言わせない!」https://ncode.syosetu.com/n6088fu/